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京都地方裁判所 昭和35年(ワ)685号 判決 1964年11月02日

理由

(証拠)を総合すると、訴外大東寿正は昭和三五年頃以前から、被告と内縁の夫婦として、(同人等は昭和三六年正式婚姻した)被告の現肩書の処に於て被告名義で喫茶店をその奥で所謂音楽事務所を経営し或は食糧品の卸売買等をしていたものであつて、右喫茶店の名義こそは被告であつたが、実際の最終的経営の責任者は右訴外人であつた。

ところで右訴外人は音楽事務所の経営や食糧品の卸等の商売がうまく行かず従つて取引のため振出の手形が順調に落ちないこと等のため次々と取引銀行をかえ、昭和三五年六月頃から訴外株式会社近畿相互銀行と当座取引を始めることになつたが、右訴外大東寿正にはその信用がなかつたので同訴外人名義では右銀行との取引ができないところから便宜内縁の妻である被告名義で右の銀行取引を開始した。もつとも当時そのことは被告に於ても知つていたけれども、あくまで取引は被告名義を使用した訴外大東寿正の取引であつて、勢い手形や小切手も被告振出名義でしていたがそれは訴外大東寿正が被告名義で振出していたもので、換言すると、振出人は大東光子こと大東寿正であること、が認められ、更に昭和三五年六月末頃訴外大東寿正が原告に訴外安川電機株式会社の株式五〇〇株の買付の委託をし、右買付ができて同年七月五日頃現株を受取ると引替えにその代金並に手数料の支払のため、当時大東寿正が使用していた前田某が前記の例に従つて被告名義の原告主張の小切手を振出したものであることが窺える。果して以上認定の通りであるから、唯単に右小切手を被告が振出したことのみを原因としてその小切手金の請求をする原告の本訴請求は到底認容しえない。

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