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京都地方裁判所 昭和39年(タ)18号 判決 1964年10月09日

原告 滝下勝子

<外四名>

右原告ら法定代理人親権者母 滝下マサコ

右原告ら訴訟代理人弁護士 猪野愈

被告 京都地方検察庁検事正 岡原昌男

主文

原告らはいずれも本籍大韓民国全羅南道長興郡冠山面南松里五九八亡呉一南の子と認知する。

訴訟費用は国庫の負担とする。

事実

原告ら訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、その請求原因として、

「(一) 原告らの親権者母滝下マサコと主文記載の呉一南とは、昭和一九年四月三日兵庫県朝来郡生野町において結婚式を挙げ、昭和三八年六月二五日呉一南の死亡にいたるまで夫婦生活を続けて来たものであるが、その間に、原告らは、呉一南を父として出生したものである(出生日、勝子 昭和二〇年二月一九日、玲子同三一年九月二二日、博子 同二三年一月二五日、博 同二四年八月三〇日、節子 同二六年六月八日)。

(二) よつて、原告らは、韓国民法第八六四条にもとづき、呉一南の死亡を知つた日から一年内である昭和三九年五月二一日、認知を求めるため、本訴に及んだ。」と述べ、

証拠≪省略≫

被告は、口頭弁論期日に出頭しないが、陳述したものとみなした答弁書によれば、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、「原告主張の事実はすべて知らない。」というのがその答弁である。

理由

≪証拠省略≫によれば、原告ら主張(一)の事実を認めうる。

法例第一八条第一項は、子の認知の要件は、その父又は母に関しては、認知の当時父又は母の属する国の法律に依りて之を定め、その子に関しては、認知の当時子の属する国の法律に依りて之を定める、と規定している。

よつて、原告らの父呉一南の本国法について考える。

朝鮮人の本国法決定問題については、国際私法における本国法指定の趣旨から考えて、朝鮮の現状を、大韓民国(南鮮)と朝鮮民主主義人民共和国(北鮮)との二つの政府を中心とする二つの国家とみて、当事者の身分関係にそのいずれがより密接な関係をもつかの観点から、その本国法を決定するのが相当である(法例第二七条第三項、第一項の不適用)。

本件の呉一南の本籍地は大韓民国の支配地域に存在するのみならず、甲第二号証によれば、呉一南は死亡当時大韓民国在外国民登録法にもとづいて大韓民国の国民として登録していたことが認められるから、呉一南の本国法は同人死亡当時の大韓民国の法律であると解するが相当である。

韓国民法(昭和三五年一月一日施行)第八六四条は、父又は母が死亡したときは、その死亡を知つた日から一年内に、検事を相手方として、認知請求の訴を提起することができる、と規定している。

強制認知に関する韓国民法の右の規定は、日本民法第七八七条と異なるが、韓国民法の右の規定は公の秩序又は善良の風俗に反しないものと解するが相当である。

したがつて、呉一南の本国法として右韓国民法第八六四条を適用すべきである。

よつて、昭和三九年五月二一日提起した原告らの本訴請求は正当としてこれを認容し、民事訴訟法第八九条人事訴訟法第一七条第三二条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 小西勝)

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