京都地方裁判所 昭和39年(ワ)953号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕一、原告が一般乗用旅客自動車運送事業並びにこれに附帯する事業を経営するものにして、訴外谷口洋の使用者であつたこと、昭和三九年二月六日午前一〇時三〇分過頃京都市東山区東大路通五条の交差点南詰横断歩道から数メートルの地点以南に、東大路通馬町の交差点の信号待ちの車輛が車道および電車軌道上に停滞していたこと、右停滞車輛中の最後尾に停止していた小型四輪貨物自動車(京四な七八―〇三号)を運転していた被告が右側から前進しようとして、右にハンドルを切り僅かに発進したこと、その時右被告運転の自動車と訴外谷口洋運転の乗用自動車(京五あ八六―六二号)とが接触したことは当事者間に争がない。
二、右争のない事実に、<証拠>を総合すれば訴外谷口洋は一般乗用旅客自動車運送事業を経営する原告に昭和三六年一〇月一六日より雇われて自動車運転の業務に従事していたものであるが、昭和三九年二月六日午前一〇時三〇分過頃、原告の命を受けて、原告所有の普通乗用自動車(京五あ八六―八二号)を運転し、原告のために、京都京東山区今熊野の剣神社の近くの原告の得意先に赴くべく、同市同区園石段下南にある原告園営業所を出発し、東大路通りを南行して、東大路通五条の交差点を越えた。そのとき前方東大路通馬町交差点の信号待ちの車輛が車道および南行(東側)電車軌道上に前記東大路通五条の交差点南詰横断歩道から数メートルの地点まで二列になつて停滞していたので、訴外谷口洋は、右車輛の後尾に追随しては、なかなか進まれそうにないと思い、法定の除外事由がないのにその二列に並んでいた自動車を追い越そうとして、その右(西)側の北行電車軌道上を時速約四〇キロメートルで急ぎ、相当の距離を南進したところ、右停滞車輛中の南行(東側)電車軌道上の最後尾に停止していた小型四輪貨物自動車(京四な七八―〇三号)を運転していた被告も、北行電車軌道上を南行しようとして、まさか後方より北行電車軌道上を南行して来る車輛はないだろうと軽信し、後方を確認せずに右にハンドルを切り僅かに発進し、その運転自動車々体の前部が電車軌道の中央より西側に少し出たとき、その自動車前部に前記訴外谷口洋運転の自動車が後方より来てこれに接触したことを認めることができ、右認定に反する<証拠>は措信できず、その他に右認定を左右するに足る証拠はない。
三、およそ、法定の除外事由のない限り車輛は道路中央から左側の部分を通行しなければならないことは道路交通法第一七条の明定するところであり、被告は前記のとおり右法条に違反して右側通行をしようとして、発進したものであり、車輛は法定の除外事由なき限り右側通行は禁止されているとはいえ、自動車運転者としては被告ならびに訴外谷口洋のごとく、これに違反して右側通行を敢てなさんとするもののあることに思いをいたしまた、緊急用務のため右側を通行する車輛もないとはいえないから本件の如き場合には、後方より来る車輛等のなきことを確認して発進すべき注意義務を負つていたものといわなければならないのに、被告はこれを怠り、前記のとおり後方を確認せずして、その運転車輛の前部を道路中央より僅かではあるが西(右)側に出させたため、本件接触事故を惹起したものであるから、右事故の発生につき、被告に過失があつたものといわなければならないが、一方訴外谷口洋の過失について考えるに正当の理由により右側を通行するときでも、その車輛の運転者は、徐行の上前方左右を注視し、事故の発生を未然に防止すべき注意義務を負うものと解すべきであるのに、前記のとおり訴外谷口洋は、法定の除外事由なくして、右側を通行し、しかも時速約四〇キロメートルで漫然進行し、本件接触事故を避け得なかつたのであるから、右事故の発生につき自動車運転者として守るべき前記注意義務を怠つたものといわなければならず、本件接触事故は訴外谷口洋と被告との前記過失が競合して発生したものでその責任の割合は、前記事情を考え合せれば、訴外谷口洋八、被告二と認めるを相当とする。 (常安政夫)