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京都地方裁判所 昭和49年(タ)28号 判決 1974年11月07日

原告

大下千鶴子

右訴訟代理人

坪倉一郎

被告

小林利一

被告

小林ちよ

被告

小林利文

主文

昭和四七年五月四日京都府綴喜郡田辺町長に対する養子縁組届出によつてなされた未成年者小林尚之(代諾者親権者被告小林利文)と被告小林利一、同小林ちよとの間の養子縁組は無効であることを確認する。

訴訟費用は被告らの負担とする。

事実《省略》

理由

一原告と被告小林利文とは昭和四七年四月二二日調停離婚した夫婦であり、その間に生れた訴外小林尚之(昭和四五年三月二八日生)については、右離婚の際に親権者を被告利文、監護権者を原告と定められたこと、ところが昭和四七年五月四日、京都府綴喜郡田辺町長に対し、右尚之が被告小林利文の両親である同小林利一、同ちよ夫婦との間に、親権者である右利文の代諾で養子縁組をした旨の届出がなされ、右届出は同日受理されたこと、右代諾については監護権者たる原告の同意承諾がなかつたことは、当事者間に争いがない。

二ところで養子縁組の無効確認の訴において、本件のように第三者が原告となる場合には、養親および養子を必要的共同訴訟の共同被告とすべきものと解されるが、養子が満一五歳に達しない間は、離縁の訴の場合に関する民法八一五条、八一一条を類推適用して、縁組が無効である場合にその法定代理人となるべき者が当事者としてこれから、又はこれに対して訴を提起することができると解するのが相当である。思うに右訴訟において養子の利益を保護する者として右の場合の法定代理人(通常養子の実親あるいは後見人である)が最も適任者であるし、また養子縁組無効の訴は理論的には確認の訴であり、形成の訴である離縁の訴と性質の差異はあるにしても、その実質はいずれも養子縁組の効力に関する訴でありその判決確定後は実親や後見人が現実に養子を監護養育する結果となるものであるから、右法条の類推適用を許しえない理由がないからである。

従つて、本件訴訟において、被告利文を本件縁組が無効である場合の尚之の親権者として尚之に代位して被告としたことは適法である。

三父母の離婚に際し、その子供について一方が親権者、他方が監護権者と定められている場合に、監護権者の承諾なくしてなされた親権者の養子代諾は無効と解するのが相当である。思うに、養子縁組がその子の利益にかなうか否かは監護者にも判断させるのが望ましく、また右代諾を有効として監護権者の知らない間に、あるいはその意に反してその監護権を消滅させることは監護者制度の趣旨に照らし不当である。そうとすれば、本件において親権者被告利文のなした本件養子縁組の代諾は監護権者たる原告の承諾がなかつたから無効であり、従つて本件養子縁組は適法な代諾を欠き無効である。

四よつて、原告の本件請求は理由があるので、これを認容し、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (折田泰宏)

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