京都地方裁判所 昭和49年(行ク)1号 決定 1975年4月07日
申立人(原告、選定当事者) 西庄栄一
<ほか五名>
右申立人六名代理人弁護士 高田賢造
同 古城磐
同 丸島秀夫
同 高村正彦
被申立人 京都市長 船橋求己
右代理人弁護士 納富義光
被告 京都府知事 蜷川虎三
右代理人弁護士 前堀政幸
右指定代理人 富田実
<ほか二名>
主文
本件申立を却下する。
理由
一 申立の趣旨及び理由
1 申立の趣旨
申立人西庄栄一ら、被告京都府知事蜷川虎三間の昭和四七年(行ウ)第一三〇号都市計画決定処分取消請求事件(以下、本訴という。)につき、京都市長船橋求己を訴訟に参加させることを許可する。
2 申立の理由
申立人らは、本訴において被告が昭和四六年一二月二八日京都府告示第七二七号によりなした、京都市伏見区淀水垂町及び同市同区淀下津町の区域を市街化調整区域とする旨の都市計画決定処分の取消しを求めているが、被申立人京都市長は指定市の市長として、本件都市計画決定の原案を作成し、京都府知事に意見を具申するほか、都市計画法二章二節に定める事務の実質的部分を処理し、管理し、執行した実質的当事者である。
これに反し、京都府知事は形式上の当事者にすぎない(地方自治法二五二条ノ一九、一項一三号、同施行令一七四条ノ三八、都市計画法八七条一、二項、同法施行令四五条)。
よって、行政事件訴訟法二三条により京都市長を訴訟に参加させることを求める。
二 被申立人京都市長の意見及び理由
1 意見
主文同旨
2 理由
行政事件訴訟法二三条一項の趣旨は、行政訴訟にあっては、訴願前置の関係から多くの場合行政処分自体に対する不服の訴えについて訴願裁決庁が被告としてあらわれ、実際に処分をなした処分行政庁が必ずしも被告にならないことがあり、この場合、処分行政庁や関係行政庁を訴訟に引き入れて攻撃防禦に参加させ、訴訟資料を豊富にし、適正な審理裁判を実現しようとするにある。
しかるに、都市計画法一五条一項一号によれば、市街化区域及び市街化調整区域に関する都市計画は京都府知事の専権に属しており、調査資料もととのっているはずであって、ただその決定に際して京都市長と協議することになっているにすぎないから(同法八七条一項)、京都市長を参加せしめなくとも訴訟資料に欠けることはありえない。
よって、京都市長を本訴に参加させる必要はない。
三 被告京都府知事の意見及び理由
1 意見
主文同旨
2 理由
本訴において申立人らが取消を求めている都市計画決定は行政処分に該当しないから、京都市長を本訴に参加させる必要はない。
仮に、右都市計画決定が申立人らに対する行政処分であるとしても、同決定をなしたのは京都府知事であって、京都市長は法制上京都府知事が同決定をなすにあたり意見を具申し、かつ、協議したにすぎないものであるから、京都市長を本訴に参加させなければ京都府知事が訴訟上不利益を被るおそれは全くないし、また、申立人らの訴訟遂行上も何ら得るところはない。
仮に、右決定が本訴において取消されることがあるとしても、京都市長が本件都市計画区域内の土地の権利制限に関する許可権を有するのは法制による反射的効果にすぎないのであるから、同市長に何ら不利益が及ぶものではなく、同市長を本訴に参加させる実益はない。
なお、申立人らが京都市長の参加を求めているのは、申立人らが本件都市計画決定区域にある申立人ら所有の土地について京都市との売買交渉をなすにあたり、訴訟行為を通じて京都市の公式の考えを知ることを目的としているものと推測されるが、右目的は本件参加申立を理由付けるものではない。
四 当裁判所の判断
本訴記録及び本件参加申立事件の記録によれば、申立人らを原告とし、京都府知事を被告とする本訴が昭和四七年三月二五日提起され現在係属中であること、申立人らは同月二八日京都市長を行政事件訴訟法二三条にもとづき本訴に参加させるべき旨の申立をなしたことが認められる。
そこで、本件申立の適否につき検討する。
行政事件訴訟法二三条の立法趣旨は、行政処分に対する不服の訴えについて、形式的に被告となっている行政庁のほかに、実際に行政処分をなした行政庁を訴訟に参加させ、攻撃防禦を尽させて訴訟資料を豊富にし、適正な審理裁判を実現しようとするものであるところ、申立人らが本訴において取消を求めている都市計画決定をなした行政庁はあくまで本訴における被告京都府知事であって、都市計画法上、同被告が右決定をなすにあたり指定都市の長と協議する旨規定されている(同法八七条一項)ことから直ちに京都市長にも決定権限が分属するということはできず、従って、同市長は行政事件訴訟法二三条の行政庁に該当しない。
また、都市計画法八七条二項によれば、指定都市の長は同法二六条、二七条、第三章、六五条一項に定める事務を処理する場合が存する旨規定されているが、これらの事務はいずれも都市計画決定がなされた以後に実施されるものであるから、京都市長が右規定によって事務を処理する権能を有しているとしても、そのことから同市長が都市計画の決定自体に関与しているものということはできない。
従って、いずれの見地からしても京都市長が都市計画決定処分をなした行政庁であると解することはできず、行政事件訴訟法二三条の参加の要件を欠くものといわなければならない。
よって、申立人の本件申立は理由がないからこれを却下することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 上田次郎 裁判官 孕石孟則 安原清蔵)