京都地方裁判所 昭和50年(ワ)577号 判決 1977年9月05日
原告
ブルース槌田
右訴訟代理人
酒見哲郎
右同
田中実
被告
北川弘
右訴訟代理人
田辺照雄
主文
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一、請求の趣旨
1 被告は原告に対し、京都新聞朝刊社会面に二段幅で、「謝罪広告」および末尾の「北川弘」および「ブルース槌田殿」の部分は二倍活字、その他の部分は一倍活字として、別紙謝罪広告通り謝の罪広告を一回掲載せよ。
2 被告は、原告に対し、金四、一六五、〇〇〇円および内金三、八六五、〇〇〇円に対する本訴状送達の日の翌日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、被告の負担とする。
4 第二項につき、仮執行宣言。
二、請求の趣旨に対する答弁
1 主文第一、二項と同旨
2 仮執行免脱宣言
第二 当事者の主張<以下、省略>
理由
一当事者間に争いのない事実ならびに<証拠>を総合すると次のとおり認められる。
1 原告は、昭和四〇年六月アメリカアーモスト大学英文学科卒業後、同年七月来日し、二年間同志社香里学校で英語の教べんをとり昭和四二年七月帰国した日系三世のアメリカ人であるが、同人は、フランスソルボンヌ大学で一年間小説や詩の勉強をした経歴をもち、アーモスト大学在学中には詩で賞を取り又優等で卒業した経歴を有している。
2 被告は、昭和二七年同志社大学英文学部を卒業後、昭和四二年まで貿易商の株式会社西村商店に勤務し、その後、国際観光旅館香月楼、技研トレデイング株式会社等に勤務した後、昭和四五年四月から、花園大学英文学部の英語の教師となり、昭和四九年四月からは滋賀大学経済学部の英語教師となり、現在同大学経済学部の助教授である。被告は、中学校時代から英語に興味をもつて勉強し、中学校及び大学時代に、英語弁論大会、英語暗誦大会で三回賞を受けた経験があるが、大学卒業後勤務した西村商店では、外国人相手に英語で貿易取引をする仕事の関係上、外国人との交際も深く、被告の英語力が一層養われた。但し、被告には、留学或いは海外旅行の経験はない。
3 被告は、少年時代から「平家物語」を愛読していたが、昭和三八年秋ころ、「平家物語」の英訳を志ざすに至り、昭和四〇年八月、原典を注訳のついている岩波書店の覚一本平家物語に決めて本格的に翻訳をはじめたが、どうしても日本人的表現が出ることが免れないので、翻訳に際して、友人の元ライフ誌の記者であつたデイビツト・バーガーミーニーに協力を求めて翻訳作業を続けた。即ち、被告は、同人から、自己の英訳について点検を受け、文章のスタイル、言葉の用法につきサジエスシヨンを出してもらつた上で、原典にしたがつて翻訳文を決定していく作業を約七、八ケ月間続け、二人で平家物語一巻の七章ぐらいまで綿密な検討を加えた。
4 しかし、右翻訳に協力してくれたバーガーミーニーが四一年春帰国することになつたため、被告は、同人の後任を求めていたところ、知人の同志社大学教授ケーリ夫妻から同志社香里高校で英語の教師をしている原告を紹介されたので、既に翻訳してある七章を示して原告にバーガーミーニー氏と同じような英訳の助力校訂を求めたところ、原告はいい作品だといつて承諾をしたので原告と翻訳作業を続けることになつた。原告から承諾を受ける際、原、被告間には出版する場合両者が共同翻訳者となる旨の契約はなされなかつた。当時被告は原告に協力者ASSISTANT校訂者PROOFRE-ADERになつてくれと頼んだに止まる。
5 翻訳作業は、まず被告が原典にしたがつて英語訳をなし、それをタイプして原告に渡し、原告が右訳文の文法上の間違い用語の訂正、ぎこちない英文、堅苦しい英文、退屈平板な英文を原告が考えた適当な英文に変更しその訂正変更部分について、被告が原典を原告に説明しながらいつしよに再検討を加え、最終的に、被告が原典と照合して訳文を決定する方法であつた。なお、原告には「平家物語」の原典を読み、理解する力は全くない。
右英訳作業に用いたタイプ、コピー代、資料購入費用等の諸経費は全て被告が負担し、被告は原告の協力にむくいるため、原告を飲食に誘い、旅行に連れて行く等し、さらに、原告に習字をおしえる等の便宜をはかつた。原告に金銭上の報酬が出せないことは最初から原告にいつてあつた。原告の協力により、昭和四一年七月ころ、第一巻及び第二巻の翻訳が一応完成し検乙第一及び第二号証が製本されたが、原告がアメリカの父に送るため右製本を欲しがつたので、不十分な部分を検討し訂正した上で、約二ケ月後に、検甲第一及び第二号証を製本し原告に一部手渡した。検乙第一、第二号証にはないが検甲第一及び第二号証には、Translated by Hiroshi Kitagawa and Bruce Tsuchidaとの記載がある。この記載は被告が深く考えて原告にこの記載をさせたのではないが当時被告は原告の協力に感謝しこの調子で全部完成したら感謝の気持を表わすため原告を共訳者として遇してよいという気持があつたことは事実で被告は原告にそれをもらしていた。
6 被告は、昭和四二年一月ころ、原告に手紙を英文筆記してもらい、ユネスコに対し「英訳平家物語」の出版依頼をしたが、その時の手紙には、被告が「英訳平家物語」の翻訳者で、原告には右翻訳を監修してもらつている旨の記載がある。
7 原告の右翻訳に対する前記協力は、昭和四一年二月から原告が帰国した昭和四二年七月まで続いた。このため原告は、一週間に約二〇時間、夏休みには一週間に三〇ないし四〇時間、総計二〇〇〇時間位費したといつているが定かではない。
3 原告は、昭和四二年七月帰国したが、その時点で「平家物語」の六巻一〇章ぐらいまで一応の翻訳は終了していたので、被告は、右翻訳を再校訂するため、アメリカにいる原告に三巻から六巻までを郵送したところ、原告は、三巻について訂正等をして被告のもとに郵送してくれたが、それ以外の部分については、原告は返送して来ずその協力は受けられなかつた。
9 被告は「平家物語」の翻訳につき原告の協力が得られなくなつたので、その後、ジヨン・ミラー・メリー・ラウス、ドナルド・モレル、サリー・ウオーレン、デイビツト・オーエンス、ジエフリー・シヤピロ等の外国人から原告と同様の協力を得て「平家物語」の翻訳をすすめ、昭和四七年二月ころ「英訳平家物語」が一応完成するに至つた。そこで被告は、東京にあるアメリカの日本研究センター所長であるケネス・D・バトラーを通じ出版社の紹介を求めたところ、同人から東大出版会を紹介され、昭和四七年五月一日、同出版会と単独で本件「英訳平家物語」の出版契約を締結した。
10 昭和四八年八月末ころ、被告は折から来日していた原告と会い、「英訳平家物語」の出版について話をしたが、その際、原告は、被告の「英訳平家物語」の出版についての全米向N・H・K放送の原稿を訂正してくれた。その原稿には、「英訳平家物語」の翻訳についての原告の役割は記載されていなかつた。その頃被告は原告に、原告への謝辞を本のacknowledgementとして書いたが出版社が許してくれないのだといつたところ原告はそれに関心を示さなかつた。
11 「英訳平家物語」の出版は、昭和五〇年二月ころ校正が終了し、出版宣伝のためのパンフレツト(乙四号証)が刷り上がるに至つた。被告は、同年三月始め、原告の妻の弟である川北喜博に会つた際、右パンフレツトを渡し「英訳平家物語」が出版されることを告げたところ、同人から、原告に出版の連絡がなされた。連絡を受けた原告は、東大出版会に対し検甲第一及び第二号証のコピーを郵送するとともに、「英訳平家物語」の出版につき自分に対しフエアー・クレジツトを要求する手紙を郵送し、同時に、被告に対しても、ほぼ同様の内容の手紙を郵送したが、被告への手紙は、被告自身を非難する内容ではなかつた。原告からの要求を受けた東大出版会は、同出版会のチーフ・エデイターのアーボレーダが窓口となつて原告と電話で交渉をかさね、最終的には原告に対し、謝辞を書き改め、タイトルページ、カバー、ケースにin colloboration with Bruce T. Tsuchidaと記載することの同意を求めたが、原告はその提案に応答せず、交渉のため妻を派遣するから、同人の来日まで出版を中止するよう要求したため、出版は一時延期されるに至つた。
12 原告の妻寿々子が来日し、昭和五〇年四月二三日、京都ロイヤルホテルにおいて被告、原告の妻寿々子、同人の母及び弟、東大出版専務理事箕輪成男、オーチス・ケーリ、同志社香里高校の源川教師等で前記交渉のための会合がなされ、原告の妻の強い要求に押された被告は「英訳平家物語」のタイトル・ペコジ、カバー、箱などにtranslated by Bruce. T. Tsuchida and Hiroshi Kita-gawaと原告の氏名を上に表示することを承諾し、かつ翌二四日右出版による印税は原告、被告で折半する旨合意が原告、被告、東大出版会の三者間で成立した。当時被告はこの合意に不満で、少くとも訳者としての氏名は被告を原告より先に書くべきであり、原告の寄与は前半までだから印税も原告が四分の一被告が四分の三であるべきだと主張したが原告の妻は検甲一、二号を楯に被告の主張をきかなかつたのと被告は自分の業績として滋賀大学にこの平家物語の翻訳を届出ているのでこの出版が出来なくなれば大変なことになることを恐れ不本意ながら前記合意に同意した。
甲第二号証の一ないし四は、その時の合意書であるが、翌日、原告側からの申出により、翻訳者の名前の表示を被告を上にする事になり同年四月二五日、前記三者間で甲第三号証の一ないし七の合意書が作成された。そして、昭和五〇年五月六日、原被告と東大出版会との間で「英訳平家物語」の出版契約が締結されるに至つた。甲第四号証はその時の出版契約書である。
13 被告は、「英訳平家物語」の翻訳についての記者のインタビユーに応じ、その中で原告の役割にも言及したが、右インタビユーに基づく、昭和五〇年五月一八日付京都新聞朝刊の記事は、原告の役割につき「同志社香里高校で英会話を教えていた日系三世のブルース・ツチダ氏に、訳のリズムの調整を依頼した。……一年半にわたつて訳のリズムの調整に協力したブルース・ツチダ氏の名前を共訳者として掲げている」と記載されており、これは主に被告の発言による記事である。原告は、右記事を不満として本件訴訟を提起するに及んだ。
以上の事実が認められ、<証拠判断略>。
二そこでまず原告が、本件「英訳平家物語」の共同著作権者であるか否かについて検討する。
翻訳とは「ある国語で表現された文書の内容を他の国語になおすこと(広辞苑)Websterにはrending into ano-ther language express the sense of in the words of another language inter-prete explain or recapitulate in other words.とある」をいうから翻訳者とは特定の国語で書かれた原典の意味を理解した上で、その原典を他の国語で表現できる者をいい、ある翻訳がなされた場合、その翻訳物の著作権は、特段の意思表示なき限り、そういうことをなし遂げた人に帰着することはいうまでもない、しかして原典の翻訳作業に複数の者が関与した場合、誰が翻訳者であるのか問題となるが、翻訳作業に関与した者の中から翻訳者を決定するには、関与者が基本となる翻訳、校訂、再校訂、完訳と続く一連の翻訳作業の中で如何なる役割を担なかつたかという質的面と関与者が翻訳された書物の全体の如何なる分量の翻訳作業にたずさわつたかという量的面とを相関的に評価して決定すべきである。特に関与者の翻訳作業の中での役割を評価するにあたつては、翻訳には、原典に対する正確な理解と移し換える国語への精通が必要であるから、右関与者の原典の理解力、移し換える国語の精通性の程度が重要な要素となる。
而して原告が被告に与えた援助は前記認定のとおり被告の行つた英語訳につき文法上の間違いを正し、用語の訂正、変更、リズムの調整を行い、英語を母国語とする人から見ると感ぜられるぎこちなさを正し、更にそれらの訂正、変更部分につき被告から原典の説明を受けて二人で再検討し、最終稿は被告が決定したものであるから原告の寄与は、被告には難しいぎこちなさの除去、リズムの調整という質的に高い部分を含んでいるがこれを以て翻訳とみることは相当でない。このことは被告は原典を理解し、これを英語に訳し得る能力をもつているから作品のよしあしは別として単独でも翻訳をなし得るのに対し原告は原典を理解できないのであるからそもそもそうした翻訳ができないことを考えても明らかである。(原告代理人は被告は海外へ行つたことがないからこの種の翻訳はできないといつているが一概にそうとはいえない)この点につき証人箕輪成男は「日本人が行つた粗訳を英語としてリーダブルものに直す作業も翻訳者として名前を列ねるに値する」と原告に有利な証言をなしているが被告の翻訳したものが英語としてリーダブルでなく、原告の寄与なくして翻訳というものが全く成立たないというのでもない本件特に原文を理解できない原告の場合には適切でなく、原告の寄与行為は校訂というのが一番ふさわしく、東大出版会が最初に提案したin collaboration withというのが正しい表現というべきである。特に本件の場合原告の寄与は本件平家物語の約半分について行われたに過ぎないのであるからその全部について原告を翻訳者とみるのは過ぎたものであり、たとえ原告の寄与が翻訳と評価されるとしても全体の四分の一に過ぎないから印税も四分の一だといつた被告の主張は合理的であつたといわねばならない。これらの点につき原告は寄与不分離性という言葉で寄与がその一部であつても文学作品の故を以て全体として評価を受けて差支えないと主張し又甲第一一号証により平家物語の最初の六巻の英語への翻訳の質の優秀さは原告によつてもたらされたもので、被告の特別多い英語を書く能力から生れたものではないといい、原告が訂正した例として第三巻八章の第一草案の一頁から三頁までの間で六二ケ所を掲げている。例えば(1)被告がrecalledとしたのはぎごちないからこれをcalled backとした(2)被告がreturnedとしたのは間違いではないがthus were able to returnとした方が俊寛が帰れなかつた事実を劇的に表現するのに役立つている(3)正確な英語ならwas the only one whoであるがこれでは全体の文のリズムが間の抜けたものになるので冒頭にonlyだけを掲げるのがよいという工合に被告の行つた翻訳にはぎごちなさ、不正確さ、退屈さ、平板さ、弱さ、堅苦しさがあるのでこれを原告が訂正したとしている。但し被告は右の原告の指摘に同調できるのは十六、七ケ所で他は出版校正者に委してよいものか、原告の訂正が却つて正しくなく被告の方で又訂正したものもあつたとしていることは乙第一一号証によつて明らかであるとともに日本文学への造詣深く日本でも著名なコロンビア大学教授のドナルドキーンはアメリカでも本件原告が行つたような寄与を以て翻訳とはいつていない、原告が甲第一一号証で指摘している個所の前記(1)のごときはどちらでも大差のないことでrecalledをcalled backとしたから特に優れたものになつたとはいえない。同証人が甲第一一号証の一部に目を通した限りでは原文に通じない原告が訂正したため却つて原文の意を損つている個所もあると証言し、又被告本人尋問の結果によると、「英訳平家物語」の和歌の部分は被告が先づ翻訳し原告が加筆訂正した部分が多いが本書が出版された後に出たThe Asian Studentの書評欄(乙一五号証)では「本書では詩の訳が唯一の深刻な欠点only serious flaw in this bookである」と指摘しているといつた工合に種々な評価がなされているのであるから本書の前半に原告が与えた寄与を以て本書全部について原告の功績であるとみたり又原告が行つた校訂が翻訳と同質、同程度だとみるのは相当でない。原告の主張は採用できない。
三しかし、このような場合でも原被告間の合意又は被告の特段の意思表示があれば、原告に著作権を与えることは可能であり、原告は、原被告間には、「英訳平家物語」の共同翻訳者になる旨の合意があつたと主張するので、この点につき検討する。
前記認定によれば、原稿である検甲第一、第二号証に、原、被告を共同翻訳者として表示されているがこれが原被告間に於て、原告を翻訳者とする旨契約がなされた上表示されたものでないこと前記のとおりである。又前記認定のとおり、被告が書いたユネスコに対する「英訳平家物語」について出版依頼の手紙、及び被告の「英訳平家物語」の出版に関するN・H・Kの全米向放送の原稿の中で、原告を「英訳平家物語」の共同翻訳者として取扱つておらず、原告は、それらを認識しながら異議を全く申し述べていないこと、さらに「英訳平家物語」の出版に際し、原告が郵送した東大出版会及び被告に対する手紙の中に、共同翻訳者という言葉が使われていないことに照らして考えると、検甲第一、第二号証を以て原告を本件英訳平家物語の共同翻訳者とする旨の原・被告間に合意があつたとか原告がその旨意思表示したと推認することはできず、被告の意中として将来原告の寄与が全翻訳に及ぶような大きなものとなつた場合これに報ゆるに原告を共同翻訳者とする考えがあつたことを認めうるに止まるのであるからこれを以て原告を共同著作権者であるとみることはできない。
四次に、前記認定によれば、昭和五〇年四月二三日、原被告間に本件「英訳平家物語」のタイトルページ等に、原告を共同翻訳者である旨表示し、かつ印税を折半する旨の合意が成立したので、この合意成立により、原告が、本件「英訳平家物語」の共同著作権を取得するに至つたと解する余地があるのでその点から被告が、原告の本件英訳平家物語の共同著作権を侵害したか否かにつき検討する。
被告が昭和四七年五月一日英訳平家物語の出版契約を東大出版会と単独で締結し、昭和五〇年三月ころ、出版のはこびとなつたが、被告のこの行為は、右のような意味で原告が本件英訳平家物語の共同著作権を取得する以前の行為であるから、侵害行為とは言えないが、被告へのインタビユーに基づいて書かれた昭和五〇年五月一八日付京都新聞朝刊の記事はこの合意の後のことであるから原告の英訳平家物語の共同著作権者としての名誉を毀損するものであるか否かを検討するに、被告が前記記事のもとになつた原告の本件翻訳作業への寄与を「訳のリズム調整」といつたことは原告の寄与を原告の考えているように共同翻訳者だとみるなら不正確であるが原告の寄与は被告の行つた訳文に対する校訂というべきものであるから、やや軽い感じはあるがリズム調整という表現を用いても原告の寄与を特別不当に低く表現するものとはいえず、さらに「一年半にわたつて訳のリズム調整に協力してくれたブルース・ツチダ氏の名前を共訳者として掲げている」との記事も原告の「英訳平家物語」の共同著作権が、原被告間の前記契約に基づく以上、被告が認識した事実に立脚するものであるから、右表現が原告の「英訳平家物語」の共同著作権者としての名誉を毀損するものであるということはできない。損害賠償とか謝罪広告をせねばならぬ程の違法性はない。
五よつて、原告の被告に対する本訴請求は、理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(菊地博)
謝罪広告<略>