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京都地方裁判所 昭和51年(ヨ)983号 決定 1976年12月23日

債権者

都タクシー株式会社

右代表者

筒井忠光

右代理人

猪野愈

外一名

債務者

細見勇夫

主文

債権者が債務者に対し金八万円の保証をたてたときは

1  債権者が債務者に対して有する別紙請求債権目録記載の債権の執行を保全するため、右債権に満つるまで債務者所有の有体動産を仮に差押える。

2  債務者は、右請求債権目録記載の債権金額を供託したときはこの決定を停止し、又はその執行処分の取消を求めることができる。

理由

一本件仮差押申請は、賃金仮払を命ずる仮処分判決が上訴審において取消されたのであるから、右仮処分判決に基き既に支払われた賃金は当然返還されるべきものであるとしてこの返還請求権を被保全権利とするものであることが明らかであるが、賃金仮払を命ずる仮処分のように本案訴訟の判決確定前にその訴訟物たる権利又は法律関係につき仮に満足を受けさせるいわゆる満足的仮処分が上訴によつて取消された場合には、民事訴訟法一九八条二項の規定が類推適用され、右仮処分の債務者は同債権者に対し、同条により仮処分によつて債権者が既に給付を受けたものの返還を請求することができるとともに、これを別訴によつて請求することもできると解するのを相当とする。

これを本件についてみるに、本件疎明資料によれば、債務者が申請外平岡昭らと共に債権者に対し、昭和四七年三月から同四九年二月までの新旧賃金制度により生ずる賃金の差額を未払賃金として仮払を求めた当庁昭和四七年(ヨ)第三七九号仮処分申請事件について、同四九年六月二〇日、債権者に対し債務者に金二六万二九九四円の未払賃金の仮払を命ずる仮処分判決がなされ、これにより債権者は同日債務者に余儀なく右金員を支払つたこと、債権者は右判決を不服として大阪高等裁判所に控訴したところ(同庁昭和四九年(ネ)第一三九七号仮処分控訴事件)、同裁判所は昭和五一年一一月一一日右仮処分判決を取消し、前記仮処分申請を却下する旨の判決を言渡したこと(仮処分に関する判決に対しては上告ができないから同判決は特別上告の有無にかかわらず右言渡によつて確定―民事訴訟法三九三条三項、四九八条参照)が一応認められる。

右事実によれば、右の仮処分判決が賃金仮払を命ずる満足的仮処分であることはいうまでもないから、右仮処分判決が上訴によつて取消された以上、前記理由により債権者は債務者に対し右仮処分判決に基いて支払われた前記金員の返還を請求することができる筋合であり、本件仮差押申請は被保全権利についての疎明があるということができる。

二次に保全の必要性について判断するに、本件疎明資料によれば、債務者は昭和五一年八月二〇日債権者から解雇されて給料収入がなく、特別に資産もないことが窺われるから、保全の必要があると認められる。

三よつて本件仮差押申請を相当と認め、主文のとおり決定する。

(野田栄一 佐々木寅男 松田清)

〔請求債権目録〕

一、金二六二、九九四円

但し、債権者が債務者に対して有する京都地方裁判所昭和四七年(ヨ)第三七九号仮処分申請事件の判決に基づき仮払いした金員についての大阪高等裁判所昭和四八年(ネ)第一三九七号仮処分控訴事件において同年一一月一一日右判決が取消されたことによる返還請求権

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