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京都地方裁判所 昭和54年(行ウ)5号 判決 1979年9月21日

京都市中京区新京極通四条上る中之町五五〇番地

原告

松本安弘

京都市中京区柳馬場通二条下る

被告

中京税務署長

郷野五藤治

東京都千代田区霞が関三丁目一番一号

被告

国税不服審判所長

岡田辰雄

右被告両名指定代理人

高須要子

西野清勝

信田尚志

高田正子

被告中京税務署長指定代理人

上田富雄

竹見富夫

被告国税不服審判所長指定代理人

西村浩

安岡喜三

主文

本件訴えをいずれも却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

(請求の趣旨)

一  被告中京税務署長が原告に対し昭和五一年一二月二五日付でなした原告の昭和四八年分、同四九年分、同五〇年分所得税の更正処分のうち、総所得金額について昭和四八年分が九四七、八一一円、同四九年分が一、〇一二、一四二円、同五〇年分が一、四八一、一一六円をそれぞれ超える部分を取消す。

二  被告国税不服審判長が、昭和五四年三月一二付で原告に対してなした右更正処分についての裁決を取消す。

三  訴訟費用は被告らの負担とする。

(請求の趣旨に対する本案前の答弁)

主文と同旨

第二当事者の主張

一  原告(請求原因)

1  原告は肩書地において土産物(菓子)商を営み、被告中京税務署長(以下単に「被告税務署長」と称す。)に対し、昭和四八年分ないし同五〇年分所得税についておのおの法定期限内に次のとおり申告を行なった。

<省略>

2  これに対し、被告税務署長は昭和五一年一〇月頃から同五一年一二月頃までの間、原告に対し、所得税法二三四条の規定に基く質問検査を行なったあと、昭和五一年一二月二五日付をもって次のとおり更正処分(以下「本件更正処分」ともいう。)を行なった。

<省略>

3  そこで原告は、昭和五二年二月九日付をもって被告税務署長に対し異議申立を行ったが、同署長は同年五月一六日付をもって棄却の決定(以下「本件異議決定」ともいう。)を行なった。

4  このため原告は昭和五二年六月一三日付をもって被告国税不服審判所長(以下単に「被告審判所長」と称す。)に対し審査請求を行なったが同審判所長は昭和五四年三月一三日付で、昭和四八年分及び同五〇年分については棄却、昭和四九年分については総所得金額三、五九五、〇九八・税額二八八、一〇〇円と一部取消す旨の各裁決(以下「本件裁決」ともいう。)を行ない、右裁決書謄本はその頃原告に送達された。

5  ところで右処分において被告税務署長は、所得税法二三四条の要件を具備せぬまま、又その許容範囲を超えた違法な質問検査を行ない更に所得金額の計算においても事実誤認の推計で更正処分をなし、又異議申立審理に当っても、国税通則法八一条ないし八六条の各規定に従って原処分の適法及び推計更正の当否を審理することのない違法性があり、被告審判所長は、右処分の違法事実の判定を誤り、又原処分の事実誤認を見過す不当性が存在し原告の容認出来ないものである。

よって本訴提起に及ぶ。

二  被告(本案前の答弁の理由)

本件訴えは出訴期間を徒過し不適法である。

すなわち、原告の審査請求についての裁決は、昭和五四年二月二一日になされ、右裁決書の謄本は、同年三月一三日に原告に送達された(乙第一号証の一、二)。従って、原告は、行政事件訴訟法一四条一項・四項により本訴を遅くとも昭和五四年六月一三日までに(中京税務署長に対する訴えは同月一二日までに)提起すべきであるのに、同月二〇日にこれを提起したものであるから、本件訴えは出訴期間を徒過した不適法な訴えである。

第三証拠

被告らは乙第一号証の一・二を提出した。

理由

一  弁論の全趣旨によれば請求原因1ないし4の各事実(本件更正処分・異議決定・裁決の各存在、課税の経過)を認めることができる。

二  その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正に成立したものと推認すべき乙第一号証の一、二によれば本件更正処分は昭和五一年一二月二五日、本件裁決は同五四年二月二一日にそれぞれなされ、右裁決書謄本は同年三月一二日に発送され、翌三月一三日に原告に送達されたことが認められる。また、本件訴えが昭和五四年六月二〇日に提起されていることは本件記録に照らして明らかである。

ところで行政事件訴訟法(以下「行訴法」ともいう。)一四条一項は取消訴訟の出訴期間につき「処分又は裁決があったことを知った日から三箇月以内」と規定しており、同条四項の規定も斟酌するならば、本件更正処分については昭和五四年六月一二日まで、本件裁決については同月一三日までにその取消訴訟を提起すべきであり、本件訴えの提起が出訴期間を徒過していることは明らかである。

三  そうすると、本件訴えは不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田坂友男 裁判官 東畑良雄 裁判官 岡原剛)

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