京都地方裁判所 昭和56年(行ウ)16号 判決 1985年6月19日
京都府船井郡園部町六三番地
原告
小山吾一郎こと 小山五一郎
訴訟代理人弁護士
高田良爾
京都府船井郡園部町小山東町溝辺二一番地二
被告
園部税務署長
菊池和夫
指定代理人検事
森本翅充
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実
第一、当事者の求める裁判
一、原告
被告が、昭和五五年一月二一日付で原告に対してした、原告の昭和五一年分ないし昭和五三年分(以下本件係争年分という)の所得税更正処分(以下本件処分という)のうち、昭和五一年分の総所得金額(事業所得金額)が一二〇万円、昭和五二年分の総所得金額が一三一万七、〇〇〇円、昭和五三年分の総所得金額が一四六万九、〇〇〇円をいずれも超える部分を取り消す。
訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決。
二、被告
主文同旨の判決。
第二、当事者の主張
一、本件請求の原因事実
1 原告は、園部町本町一八番地で「小山電気商会」という屋号で電気工事業を営んでいた白色申告納税者であるところ、本件係争年分の確定申告をしたところ、被告は、昭和五五年一月二一日、本件処分をした。そこで、原告は、異議の申立、審査請求をしたが、その経緯と内容は、別表1記載のとおりである。
2 しかし、本件処分には、次の違法がある。
(一) 被告の部下職員は、本件税務調査をするについて、調査理由を開示しなかった。被告は、このような違法な調査に基づき本件処分をしたから、本件処分は、違法である。
(二) 被告は、原告の本件係争年分の総所得金額を過大に認定した違法がある。
二、被告の答弁
本件請求の原因事実中1の事実は認めるが、2の主張は争う。
三、被告の主張
(本件税務調査について)
被告は、本件税務調査のため、部下職員を、昭和五四年一〇月八日以降本件処分をするまでの間、数回にわたり臨場させた。
同職員は、原告に対して所得金額の計算のために必要な帳簿書類等の提示を求めたが、原告は「調査の理由及び必要性の開示をしなければ調査に協力できない。」旨申し述べて帳簿書類等を全く提示しなかった。
なお、同職員が同年一二月五日原告宅に臨場した際、原告は、思い出して書いたというメモを提示したが、これを書き写すことを拒否し、「帳簿書類等はすべて焼却した。」と申し立てて提示しなかった。
そこで、被告は、仕方なく反面調査のうえ、本件処分をしたもので、本件税務調査には、違法の点はない。
(本件処分の適法性について)
1 原告の本件係争年分の事業所得金額は、別表2記載のとおりである。以下分説する。
年分 被告の主張額(円) 本件処分の額(円)
昭和五一 六八八万九、六九七 六三六万七、三二四
昭和五二 六六六万八、二八一 六一七万七、九〇二
昭和五三 四三五万七、七二五 四三一万六、八八四
2 別表2の<2>売上原価について
<2>売上原価の内訳は、別表3記載のとおりである。
3 別表2の<1>売上金額について
(一) 同業者の平均原価率の算出
(1) 被告は、園部税務署、福知山税務署、上京税務署、右京税務署及び左京税務署管内の青色申告納税者の中から、次の条件に合致するものを抽出した。
<1> 電気工事業を営んでいる個人であること。
<2> 青色申告書を提出していること。
<3> 年間を通じて継続して事業を営んでいること。
<4> 売上原価(外注費を含まない額)が、昭和五一年分は四〇〇万円から一、二五〇万円まで、昭和五二年分は三五〇万円から一、一五〇万円まで、昭和五三年分は二五〇万円から七五〇万円までの範囲内であること。
なお、右基準は、原告の売上原価が、昭和五一年分は、八二七万八、八五七円、昭和五二年分は七四二万六、〇三六円、昭和五三年分は五〇四万三、二九四円であるところから、上限、下限共、原告の売上原価のおおむね五〇パーセント前後とした。
<5> 雇人費(電気工事作業に従事する事業専従者の給与額を含む)と外注費との合計額(以下人件費等という)が、昭和五一年分は二〇〇万円から七〇〇万円まで、昭和五二年分は一五〇万円から五五〇万円まで、昭和五三年分は二〇〇万円から七五〇万円までの範囲内であること。
なお、右基準は、原告の人件費等(事業専従者小山博行の給与相当額を含めたもの)が、昭和五一年分は四四五万五、八一〇円、昭和五二年分は三六五万八、〇二八円、昭和五三年分は四八五万八、六四四円であるところから、上限、下限共、原告の人件費等のおおむね五〇パーセント前後とした。
<6> 他の事業を兼業していないこと。
<7> 不服申立て中又は訴訟係属中でないこと。
(2) 原告の電気工事は、工事材料費が原告負担の場合と得意先負担の場合とがあり、工事収入は、工事材料費と労務の量によって左右される。そこで、材料費(売上原価)及び労務の量(人件費等)のいずれもが、原告と類似する同業者を選定するため、右<4>、<5>の条件を設けて同業者を抽出したところ、別表4の1ないし3記載の同業者平均原価率がえられた。
年分 同業者平均原価率
昭和五一 四一・一六
昭和五二 四一・〇九
昭和五三 三三・四一
(二) <1>売上金額は、<2>売上原価を右同業者平均原価率で除して計算した額である。
4 別表2の<3>一般経費について
<3>一般経費は、審査請求の際原告が申し立てた額である。
5 別表2の<4>雇人費について
従業員名 昭和五一年分(円) 昭和五二年分(円) 昭和五三年分(円)
坪内正 一六七万二、七〇五 二〇五万五、八九四 二三一万八、六四四
小山憚行 一二八万〇、〇〇〇
合計 三五九万八、六四四
なお、これらの額は、原告が異議申立の際に申し立てた額である。
6 別表2の<5>外注費について
<5>外注費は、取引先ナカオデンキ商店に対する外注工賃の額であり、原告が、異議申立の際申し立てた額である。
7 別表2の<8>専従者控除額について
<8>専従者控除額は、原告が、確定申告の際申告した額である。
8 原告の本件係争年分の所得金額について
別表2の<9>所得金額は、別表2の計算方法によってえられた額である。
(まとめ)
本件処分には、手続上の瑕疵はないし、原告の所得金額を過大に認定した違法はない。
四、被告の主張に対する原告の反論
(本件税務調査について)
被告の部下職員は、原告に対し事前通知をせずに臨場し、原告の調査理由の開示要求に対しても応じなかったため、原告は、帳簿類を提示しなかったのである
(原告の本件係争年分の事業所得金額について)
1 別表2の<3>一般経費、<8>事業専従者控除額、別表3の2、3の各取引額を認める。
2 別表3の1の訴外ツルタ電機株式会社(以下ツルタ電機という)との取引は、次のとおりである。
(一) 昭和五一年分
仕入金額は、四一九万七、九八二円であり、このうち二九万三、六一五円は、家電品である。したがって、この家電分は、区別して計算されなければならない。
なお、ツルタ電機は、同年七月、原告とパチンコ店空調工事一式二六四万一、三一〇円の取引があったように計上しているが、原告は、訴外前田賢治とツルタ電機とが取引をするのに同訴外人に名義を貸したままで、実際の取引をしたものではない。
(二) 昭和五二年分
仕入金額は、五二九万九、七二七円である。同年二月分三六万五、〇〇〇円、同年七月分一〇〇万一、二一九円は、売上原価に該当しないから、被告主張額から控除しなければならない。
3 別表3の4の訴外株式会社昭和電工社との取引は、パイプのペンキ代であり、5の訴外若松電気工事株式会社との取引は、電気工事をするための天井穴あけ工事代であるから、いずれも仕入金額に該当しない。
4 別表2の<4>雇人費について
(一) 昭和五一年分 二〇三万二、七〇五円
坪内正 一六七万二、七〇五円
大下武子 三六万〇、〇〇〇円
(二) 昭和五二年分
坪内正 二〇五万五、八九四円
大下武子 三九万〇、〇〇〇円
アルバイト 六万四、〇〇〇円
(三) 昭和五三年分 四七七万一、八二八円
坪内正 二三一万八、六四四円
小山博行 一二八万〇、〇〇〇円
前田勝博 七〇万九、一八四円
西田俊樹 四万四、〇〇〇円
大下武子 四二万〇、〇〇〇円
5 別表2の5外注費について
原告が、ナカオデンキ商店に対し、外注費として、次のとおり支払った。その内訳は、別表5記載のとおりである。
年分 外注費(円)
昭和五一 二五八万〇、〇〇〇
昭和五二 一五万九、〇〇〇
昭和五三 一二五万〇、〇〇〇
6 推計方法の誤りについて
工事材料の仕入金額(売上原価)と工事収入金額(売上金額)との間には、相関関係がない。原告のような電気工事業者の場合、工事材料費と人件費等(雇人費、外注費)が、売上原価を構成する。したがって、被告が、仕入金額(売上原価)だけから、同業者平均原価率を算出するのは、税務会計上誤った計算である。
原告は、すべて孫請であるのに対し、本件同業者は、下請であるから、利益率が異なる。したがって、この点で類似性を欠く。
五、原告の反論に対する被告の反駁
1 原告は、異議申立時、ツルタ電機からの仕入金額として次のとおりの額を主張したが、この額は、ツルタ電機からの回答額と同額ないしは極めて近似した額であるし、審査請求時も同じことがいえるから、原告の主張額は、措信できない。
年分 原告の異議申立時の主張額(円)
昭和五一 七〇八万〇、四四八
昭和五二 六二〇万五、三七四
昭和五三 四八一万九、一二五
2 別表3の4、5の取引は、各取引先が原告に対して支給した材料費であることが、各取引先の回答から明白である。
3 雇人費について
原告は、異議申立時乙第一九号証を提出したが、これには、原告主張にそう趣旨の記載がある。ところが、原告本人尋問の結果によると、乙第一九号証は、甲第四二号証の工事日報に基づくと述べているが、乙第一九号証の記載と甲第四二号証の記載との間には、齟齬があり、原告が異議申立時に主張した額と審査請求時に主張した額との間にも極端な差異があるから、直ちに原告主張の雇人費を認めるわけにはいかない。
仮に、大下武子に給料を支払ったとしても、それは、家事従事員に係る給料として家事上の経費になるだけで、事業所得金額の計算上必要経費には該当しない(所得税法四五条一項一号参照)。
4 外注費について
原告は、ナカオデンキ商店に対する外注費として、被告主張額以上を主張し、甲第四、五号証、同第一三ないし第四一号証を提出している。しかし、甲第四、五号証は、本件訴提起後に作成されたにすぎない。
そのうえ、原告がナカオデンキ商店に支払ったと主張する金額は、原告の売上先である若松電気工事株式会社に原告が請求した金額と同額である。しかし、外注費の金額が、受注額と同額になり、原告の口銭分が皆無であるということはありえない。
5 推計の合理性について
本件同業者は、電気工事会社からの下請であるから、原告と同様建築会社の孫請である。
原告が営む電気工事業では、工事に必要な材料の仕入れと売上とが対応することは、いうまでもない。
本件同業者の中には、仕入金額中に家電の仕入分を含めたものがあるから、原告の仕入金額の総額を基礎にして推計することには、合理性がある。
第三、証拠関係
本件記録中の証拠関係目録記載のとおり。
理由
一、本件請求の原因事実中1の事実は、当事間に争いがない。
二、本件税務調査について
本件に顕われた証拠を仔細に検討しても、被告の部下職員のした本件税務調査に原告主張の手続的違法があったことが認められる証拠は、どこにも見当たらない。
したがって、原告のこの主張は、採用しない。
三、本件処分の適法性について
1 売上原価について
(一) 別表3の2、3の各取引は、当事者間に争いがない。
(二) 別表3の1の取引(ツルタ電機との取引)について
(1) 公務員が職務上作成したものであるから真正に作成されたものと認められる乙第二三号証によって成立が認められる甲第一号証と乙第七ないし第九号証とは、いずれも原告とツルタ電機との間の本件係争年分の取引が記載されたものであることが認められるが、両者には、誤差があり(別表6参照)、その原始資料の提出がないため、どちらが正確であるのかの判断ができない。
しかし、成立に争いがない甲第四三ないし第四五号証は、ツルタ電機担当者の全取引の請求書の控であることが認められるから、当裁判所は、同号証によって、原告とツルタ電機との間の本件係争年分の取引を計算することにする。そして、それが、別表6の<3>である。
(2) 原告は、昭和五一年七月のツルタ電機との二六四万一、三一〇円の取引を否認し、その取引は、ツルタ電機と前田賢治の取引であると主張し、証人前田賢治の証言によって成立が認められる甲第二号証の記載や同証言及び原告本人尋問の結果中には、これにそう供述部分がある。
ところで、前掲甲第四三号証によると、前田賢治の店舗(てんぐパチンコ店)の冷暖房排気設備工事のため、ツルタ電機は、同店舗に、次の納品をしたことが認められる。
日時 区分 金額(円)
(いずれも昭和五一年)
六月一九日 照明 六四万二、九九〇
七月一四日 一般 三万三、〇〇〇
〃〃 照明 一三万〇、五〇〇
〃一五日 〃 二万〇、九〇〇
〃二〇日 一般 二六四万一、三一〇
(合計) 三四六万八、七〇〇
〃一二日 リベート値引 一〇万九、三〇九
そして、当裁判所が真正に作成されたものと認める乙第二四、二五号証によると、前田賢治は、昭和五一年七月、この支払のため金額二五〇万円と二〇〇万円の約束手形二通を振り出したところ、二五〇万円の約束手形は、原告が取立裏書のうえ、原告の普通預金に入金されたし、他方二〇〇万円の約束手形は、原告が、ツルタ電機に裏書譲渡したことが認められる。
原告が、前田賢治とツルタ電機との間の取引に名義を貸しただけであるなら、何故、前田賢治の振り出した二五〇万円の約束手形が、原告の普通預金に入金になるのかの説明がつかないし、二〇〇万円の約束手形は、原告が回り手形としてツルタ電機に裏書譲渡したとみるのが自然である。
以上の次第で、原告のこの主張は、事実に即さない主張として排斥する。
(3) 原告は、原告とツルタ電機との昭和五一年分の取引中二九万三、六一五円相当の家電品の取引が含まれているところ、家電品は、材料仕入と区別して計算されるべきであると主張している。
しかし、公務員が職務上作成したものであるから真正に作成されたものと認められる乙第三四ないし第四一号証によると、本件同業者の中には、顧客から家電品を頼まれて仕入れ、それを青色申告書には、売上原価(仕入金額)に計上したものがあることが認められ、この認定に反する証拠はない。
したがって、原告の売上原価の中に家電品の仕入が混入していても、そのままにすることにし、別個に、家電品の仕入を集計してそれに利益率を適用して算出することをしない。
(4) 原告は、昭和五二年分について、同年二月分三六万五、〇〇〇円、七月分一〇〇万一、二一九円が売上原価に該当しないと主張しているが、この主張には、全く具体性がないから、採用しない。
(三) 原告は、別表3の4、5の取引が仕入金額に該当しないと主張し、原告本人尋問の結果中にはこれにそう供述部分がある。
しかし、公務員が職務上作成したものであるから真正に作成されたものと認められる乙第二七、二八号証によると、原告主張の取引は、いずれもB材(電線、パイプ、スイッチなど)の仕入代金であることが認められる。
したがって、原告のこの主張は、採用しない。
(四) まとめ
原告の本件係争年分の売上原価は、別表7記載のとおりである。
2 同業者原価率について
(一) 証人石橋昭夫の証言によって成立が認められる乙第一号証、同第二号証の一ないし三、同第三、四号証の各一、二、同第五号証の一ないし一二、同第六号証の一ないし三や同証言によると、被告主張の税務署から青色申告納税書による同業者調査表の送付をえ、これを整理したものが、別表4の1ないし3であることが認められ、この認定に反する証拠はない。
(二) 別表4の1ないし3には、一部誤記があるから、これを訂正すると、別表8記載のとおりになり、別表8から、同業者平均原価率を算出すると、次のとおりになる。
年度 同業者平均原価率
昭和五一 四一・一六
昭和五二 四一・〇九
昭和五三 三三・三六
(三) 本件同業者は、原告と同じ業種であり、同じ地域で営業をしており、抽出するについての条件にも合理性があるから、本件同業者は、原告と類似性があるとしなければならない。
(四) 原告は、売上原価と売上金額との間には、相関関係がないと主張しているが、当裁判所は、原告の営む電気工事業では、売上原価と売上金額とに相関関係があると考えるから、原告のこの主張は、採用しない。
被告は、同業者を抽出するについて、条件の一つとして、売上原価の類似性だけではなく、雇人費と外注費の合計額の類似性を挙げているのであるから、このことによって、本件同業者は、原告の営業規模と類似性があるとすることができるのである。
原告は、孫請ばかりであるところ、本件同業者は下請ばかりであるとも主張しているが、原告本人尋問の結果によると、原告も一部直請をしていることが認められるから、孫請ばかりであるとするのは、事実に基づかない主張であり、採用できない。
3 原告の売上金額について
売上金額は、前述した売上原価(別表7)を、同業者売上原価率で除した額であるところ、その額は別表9の<1>売上金額欄記載のとおりであることは、計数上明らかである。
4 一般経費について
原告の本件係争年分の一般経費が被告主張の額であることは、当事者間に争いがない。
5 雇人費について
(一) 原告は、被告の主張額のほかに、次の雇人費を主張しているので判断する。
(1) 大下武子分
公務員が職務上作成したものであるから真正に作成されたものと認められる乙第三二号証によると、大下武子は、原告の妻が病弱で耳が不自由なため、家事労働のため原告方で働いたものであることが認められ、この認定に反する原告本人尋問の結果は、採用しないし、ほかにこの認定に反する証拠はない。
そうすると、大下武子に対する支払は、原告の営む電気工事の業務労働の対価ではないことになるから、これを原告の事業所得金額の計算上雇人費に計上することは、到底無理である。
(2) 昭和五二年分のアルバイト分
原告は、その本人尋問で、昭和五三年分の手帳(甲第四二号証)は現存するが、昭和五二年分の手帳はないと供述しているから、昭和五二年中にアルバイトに支払われた事実と金額を、手帳で確認できない。したがって、この主張は、採用しない。
(3) 昭和五三年分の前田勝博分、西田俊樹分
成立に争いがない乙第一九号証、原告本人尋問の結果によって成立が認められる前掲甲第四二号証、原告本人尋問の結果によって成立が認められる同第六号証、同第八号証や同結果を総合し、原告主張の各金額を雇人費として認める。
(二) まとめ
原告の本件係争年分の雇人費は、別表9の<4>雇人費記載の額である。
6 外注費について
原告は、本件係争年分の外注費として、別表5記載のとおり主張し、その証拠として、甲第四、五号証を提出している。
しかし、公務員が職務上作成したものであるから真正に作成されたものと認められる乙第二九号証によると、甲第四、五号証は、原告のメモによって作成されたにすぎず、ナカオデンキ商店こと中尾春彦の所持する帳簿や領収書控にもとづいて作成されたものではないことが認められる。そうすると甲第四、五号証の正確性についての証明がないことに帰着する。
そこで、当裁判所は、成立に争いがない乙第二二号証の一によって、被告の主張額を正当として認める。
7 事業専従者控除額
原告の本件係争年分の事業専従者控除額が、被告主張の額であることは、当事者間に争いがない。
8 事業所得金額
原告の本件係争年分の事業所得金額を、被告主張の計算方法によって計算すると、別表9の<9>記載のとおりになり、これを本件処分の額と対比すると次のとおりである。
年分 裁判所の認定額(円) 本件処分の額(円)
昭和五一 七一一万一、六八九 六三六万七、三二四
昭和五二 七三六万七、八〇九 六一七万七、九〇二
昭和五三 四六七万〇、四三七 四三一万六、八八四
四、むすび
本件処分には、原告主張の手続的瑕疵はないし、被告が原告の本件係争年分の事業所得金額を過大に認定した違法がないことに帰着するから、原告の本件請求は、失当として棄却を免れない。そこで、行訴法七条、民訴法八九条に従い、主文のとおり判決する。
(裁判長判事 古崎慶長 判事 武田多喜子 判事補 長久保尚善)
別表1
申告・更正等の経過
<省略>
別表2
原告の所得金額
<省略>
別表3
仕入金額の内訳明細
<省略>
別表4の1
同業者の原価率表(昭和51年分)
<省略>
別表4の2
同業者の原価率表(昭和52年分)
<省略>
別表4の3
同業者の原価率表(昭和53年分)
<省略>
別表5
原告主張の外注費
(一) 昭和五一年分 合計 二五八万〇〇〇〇
<1> 五一年 一月 三〇万〇〇〇〇
<2> 五一年 二月 三〇万〇〇〇〇
<3> 五一年 三月 二〇万〇〇〇〇
<4> 五一年 四月 一七万〇〇〇〇
<5> 右 同 三万〇〇〇〇
<6> 右 同 二八万〇〇〇〇
<7> 五一年 五月 四〇万〇〇〇〇
<8> 五一年 六月 四〇万〇〇〇〇
<9> 五一年一二月 五〇万〇〇〇〇
(二) 昭和五二年分 合計 一五万九〇〇〇
<1> 五二年 一月 九万八〇〇〇
<2> 右 同 一万一〇〇〇
<3> 五二年 七月 五万〇〇〇〇
(三) 昭和五三年分 合計 一二五万〇〇〇〇
<1> 五三年 四月 九〇万〇〇〇〇
<2> 五三年 五月 二〇万〇〇〇〇
<3> 五三年 六月 一五万〇〇〇〇
別表6
原告のツルタ電機との取引一覧
51年分
<省略>
52年分
<省略>
53年分
<省略>
別表7
仕入金額の内訳明細
<省略>
別表8
同業者の一覧表
<省略>
<省略>
<省略>
別表9
裁判所の認定した所得金額
<省略>