京都地方裁判所 昭和57年(わ)1540号・昭57年(わ)1541号 判決
裁判所書記官
上田清一
本店所在地
京都市伏見区深草中ノ島町三三番地の二三
法人の名称
日下部産業株式会社
代表者の住居
京都市右京区梅津大縄場町六番地の六
嵐山ロイヤルハイツ三階五一六号
代表者の氏名
日下部省蔵
本店所在地
京都市下京区西木屋町通四条下ル船頭町二三一番地
法人の名称
日下部興業株式会社
代表者の住居
京都市伏見区深草中ノ島町三三番地の二三
代表者の氏名
日下部勝人
本籍
京都市下京区寺町通五条上る西橋詰町七九二番地
住居
京都市伏見区深草中ノ島町三三番地の二三
会社役員
日下部勝人
昭和六年三月二二日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官中村紘毅出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人日下部産業株式会社を罰金四〇〇万円に、被告人日下部興業株式会社を罰金八〇〇万円に、被告人日下部勝人を懲役一年二月に処する。
被告人日下部勝人に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人日下部産業株式会社(以下「被告日下部産業」という)は、京都市伏見区深草中ノ島町三三番地の二三に本店を置き、遊興飲食業を営む会社、被告人日下部興業株式会社(以下「被告日下部興業」という)は同市下京区西木屋町通四条下る船頭町二三一番地に本店を置き、旅館業及び遊興飲食業を営む会社であり、被告人日下部勝人は、被告日下部産業の取締役兼被告日下部興業の代表取締役として右両被告会社の業務全般を統括掌理しているものであるが、被告人日下部勝人は、右両被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て
第一 昭和五四年三月八日から同年一〇月三一日までの事業年度における被告日下部産業の所得金額は四、八四九万九、六二五円でこれに対する法人税額は一、八八二万四〇〇円であったにもかかわらず、公表経理上売上及び雑収入の一部を除外するなどし、これによって得た資金を無記名の定期預金等として留保するなどの方法により所得を秘匿した上、昭和五五年一月四日、京都市伏見区鎚屋町無番地所在の伏見税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の右被告会社の所得金額は二、二〇七万六、八九七円で、これに対する法人税額は八二五万一、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右事業年度の正規の法人税額一、八八二万四〇〇円との差額一、〇五六万九、二〇〇円を免れ
第二 昭和五四年一一月一日から昭和五五年一〇月三一日までの事業年度における右被告日下部産業の所得金額は四、七七二万二、三五五円で、これに対する法人税額は一、七八九万三、九〇〇円であったにもかかわらず、前同様の方法で所得を秘匿した上、昭和五六年一月六日、前記伏見税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の右被告会社の所得金額は三、二五三万四、一六四円で、これに対する法人税額は一、一八二万六、九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右事業年度の正規の法人税額一、七八九万三、九〇〇円との差額六〇六万七、〇〇〇円を免れ
第三 昭和五三年一〇月一日から昭和五四年九月三〇日までの事業年度における被告日下部興業の所得金額は一億四、四七三万三、〇四八円でこれに対する法人税額は五、六〇七万四、一〇〇円であったにもかかわらず、公表経理上架空の支払手数料を計上するなどし、これによって得た資金を無記名の定期預金等として留保するなどの方法により所得を秘匿した上、昭和五五年一一月三〇日、京都市下京区間之町五条下る大津町八番地所在の所轄下京税務署において同税務署長に対し右事業年度の右被告会社の所得金額は七、三七五万六五七円で、これに対する法人税額は二、七八九万七、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の正規の法人税額五、六〇七万四、一〇〇円との差額二、八一七万六、九〇〇円を免れ
第四 昭和五四年一〇月一日から昭和五五年九月三〇日までの事業年度における右被告日下部興業の所得金額は八、六三三万四、五二三円で、これに対する法人税額は三、二三〇万六〇〇円であったにもかかわらず、前同様の方法で所得を秘匿した上、昭和五五年一二月一日、前記下京税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の右被告会社の所得金額は六、五六九万五、一二〇円で、これに対する法人税額は二、四〇五万一、一〇〇円(この金額には計算上の誤りがある。)である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右事業年度の法人税額三、二三〇万六〇〇円との差額八二四万九、五〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人日下部勝人の当公判廷における供述
一 被告人日下部勝人の検察官に対する供述調書(検二二二号)
一 被告人日下部勝人の大蔵事務官に対する質問てん末書(検二〇二号ないし二二一号)
一 池田正の検察官に対する供述調書(検一八七号、一八八号、一九二号)
一 池田隆司(検一六七号)、池田正(検一六八号ないし一八六号、一八九号ないし一九一号)、斉藤義勝(検一九三号、一九四号)、日下部省蔵(検一九五号)の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官作成の査察官調査書(検八号((一一七号))、一四号((一一二号))、一五号((一一三号))、二四号((一〇五号))、二五号((一一四号)))
一 池田正作成の確認書と題する書面(検一二号((一〇八号)))
判示第一、第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の査察官調査書(検一〇〇号、一〇六号、一一五号、一一六号)、現金預金有価証券等現在高確認書(検一〇一号)
一 池田正作成の確認書と題する書面(検一〇二号、一〇三号、一〇七号、一〇九号ないし一一一号)
一 西村日出男作成の確認書と題する書面(検一〇四号)
一 登記官増永俊一作成の登記簿謄本(検一九八号)
判示第一の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(検九六号)、法人税確定申告書謄本(検九八号)
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(検九七号)、法人税確定申告書謄本(検九九号)
判示第三、第四の事実につき
一 大蔵事務官作成の査察官調査書(検九号、一七号、一八号、二〇号、二二号、二三号)、現金預金有価証券等現在高確認書(検二一号)
一 池田正(検七号、一六号、一九号)及び池田隆司(検一〇号、一一号、一三号)作成の各確認書と題する書面
一 登記官坂田暁彦作成の登記簿謄本(検一九六号)
判示第三の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(検三号)、法人税確定申告書謄本(検五号)
判示第四の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(検四号)、法人税確定申告書謄本(検六号)
一 検察事務官作成の電話聴取書(検二号)
(法令の適用)
被告人日下部勝人の判示第一ないし第四の各所為は、いずれも行為時においては昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の法人税法一五九条一項に、裁判時においては改正後の法人税法一五九条一項に該当するが、犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人日下部勝人を懲役一年二月に処し、情状により同法二五条一項を適用して同被告人に対しこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
更に、被告人日下部勝人の判示第一、第二の各所為はいずれも被告日下部産業の業務に関して、同判示第三、第四の各所為はいずれも被告日下部興業の業務に関してそれぞれなされたものであるから、両被告会社については右昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項により判示各罪につき同じく改正前の法人税法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、被告日下部興業については情状により同条二項を適用し、両被告会社の判示各罪はそれぞれ刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により、それぞれ各罪の罰金額を合算した金額の範囲内で被告日下部産業を罰金四〇〇万円に、被告日下部興業を罰金八〇〇万円に処することとする。
(量刑の事情)
本件は、旅館業及び遊興飲食業を営む被告人日下部勝人が、昭和五三年一〇月から昭和五五年一〇月までの二年間にその経営にかかる両被告会社の所得合計一億三三二三万円余りを秘匿し、法人税合計五三〇六万円余りをほ脱したという事案であって、両社通じての平均申告率は約六〇パーセントにすぎず、犯行の手法についてみても会社の経理顧問から正規の利益の報告を受けていながら、低額の申告を指示するなど悪質であり、動機についても将来の営業不振にそなえて内部留保を蓄積をしようとしたことにあるが、格段酌量すべき事情とも認め難く、以上の諸事情に徴すれば、被告人らの刑事責任はいずれも重大である。
しかし、他方で被告人日下部勝人は、本件について修正申告をして既に本税分は完納し、専門の税理士に依頼し会計処理の正常化に努めるなど反省の情も多分に認められること、同被告人には約二〇年前の風俗営業取締法違反による罰金前科一犯以外には格別前科はなく、両被告会社も同種事案による処罰歴のないことなど被告人らに有利な事情も認められるので、これらの諸事情も併せ考慮して主文のとおり量刑した次第である。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 西村清治 裁判官 小沢一郎 裁判官 塩見久喜)