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京都地方裁判所 昭和57年(行ウ)45号 判決 1988年2月23日

京都府熊野郡久美浜町字平田

原告

一ノ尾愷良

右訴訟代理人弁護士

加藤英範

森川明

京都府中郡峰山町字杉谷小字イバラ山一四七番地一二

被告

峰山税務署長

竹原功

右指定代理人

佐藤明

土屋睦美

三好正幸

西沢毅

国越照清

岸本卓夫

主文

一  被告が原告に対し昭和五六年六月二二日付でした昭和五五年分の所得税の更正処分及び昭和五六年九月四日付でした昭和五五年分の無申告加算税賦課決定処分のうち、課税総所得金額六二万九〇七一円を超える部分を取消す。

二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一申立

一  原告

1  被告が原告に対し昭和五六年六月二二日付でした昭和五四年分及び昭和五五年分の所得税の更正処分並びに昭和五六年九月四日付でした昭和五五年分の無申告加算税賦課決定処分をいずれも取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  主文三と同旨。

第二主張

一  請求の原因

1  原告は、豊岡中央青果株式会社に勤務する傍ら賃織業及び農業を営む者であるが、被告に対し、本件係争年分の確定申告をした。

被告は原告に対し、昭和五六年六月二二日付で昭和五四年分及び昭和五五年分の所得税の更正処分をし、昭和五六年九月四日付で昭和五五年分の無申告加算税賦課決定処分をした(以下、これらの処分を本件処分という)。

原告は、本件処分に対し、異議申立及び審査請求をした。

以上の経過と内容は、別表1記載のとおりである。

2  しかし、本件処分には次の違法事由がある。

(一) 被告の調査担当者は、原告に対する税務調査にあたり、事前通知なく臨場し、調査の理由を開示しなかつた。

(二) 本件処分通知書には更正処分の理由が附記されていない。

(三) 被告は、原告の本件係争年分の所得金額を過大に認定した。

よつて、本件処分の取消を求める。

二  請求の原因に対する認否

1  請求の原因1の事実は認める。

2  請求の原因2の事実中、事前通知をしなかつたこと、本件処分通知書に理由が付記されていないことは認め、その余は争う。

三  抗弁等

1  被告の部下職員は、昭和五六年六月四日と同月五日の二回にわたつて原告方に臨場し、本件係争年分の所得金額の計算の基礎となる帳簿書類等の提示と事業内容の説明を求めた。しかし、原告は、調査の理由及び調査の必要性を開示しない限り調査に応じられないとして帳簿書類等を提示せず、質問にも応答しなかつた。

そのため、被告はやむなく反面調査のうえ推計課税の方法で本件処分をしたのであつて、本件処分に手続的瑕疵はない。

2  課税所得金額

A 賃織業による営業所得金額

(第一主張)

(一) 原告は、峰山税務署管内に事業所を有し、織元代行店富田峰一の下請として金・銀箔入りでない袋帯の賃織業を営む者であり、その営業所得金額は、別表2記載のとおりである。

(二) 同業者の選定と算出所得率の算定は、次のとおりである。

被告は、原告の所轄税務署である峰山税務署管内の同業者のうちから、本件係争年分で次の条件に該当する者を抽出したところ、別表3記載のとおりの事例を得た。

イ 織物加工の賃織業を営む個人で、袋帯の製造を行なう者。

ロ 富田峰一(織元代行業)の下請加工を行なう袋帯製造業者で、金・銀箔入り(引箔)の袋帯を加工していない者。

ハ 青色申告書を提出していること。

ニ 年間を通じ継続して事業を営んでいること。

ホ 他の事業を兼業していないこと。

ヘ 不服申立又は訴訟係属中でないこと。

右同業者は、営業地域、営業形態、取扱商品等において原告と類似性があり、青色申告であるからその数値は正確である。従つて、右同業者から算出所得率を算出し、これを原告に適用することには合理性がある。

(第二主張)

別表5の被告の第二主張欄記載のとおり。

(原告の主張に対する認否)

別表5の被告の認否欄記載のとおり。

B 水稲、梨及び柿の栽培による農業所得金額

(第一主張)

別表9記載のとおり。

(第二主張)

別表一三の被告の第二主張欄記載のとおり。

なお、第二主張は、第一主張の理由とした原告の梨及び柿についての昭和五三年分の収入金額が原告本人尋問の結果により理由がないとされたため、新たな推計方法による収入金額を主張したもので、時機に遅れた攻撃防禦でも、自白の撤回でもない。

(原告の実額主張に対する認否)

別表一三の被告の認否欄記載のとおり。

C 給与所得金額

別表一八記載のとおり。

D 雑所得金額

別表一八記載のとおり。

E 所得控除額

別表一九記載のとおり。

F 以上によれば、原告の本件係争年分の課税所得金額は別表一九記載のとおり本件処分を上回つており、本件処分は適法である。

四  抗弁に対する認否等

1  被告主張の頃に被告の部下職員が原告方に臨場したことは認める。

2  所得金額について

A 営業所得金額

(被告の第一主張に対する認否)

別表2記載のうち、売上金額、雇用費及び事業専従者控除を認め、算出所得率、減価償却費及び支払利息を争う。

なお、難引代控除前の売上金額は別表5の原告主張欄記載のとおりとなる。

(被告の第二主張に対する認否及び原告の実額主張)

別表5の原告の主張欄記載のとおり。

B 農業所得金額

(被告の第一主張に対する認否)

別表9記載のうち、水稲、梨及び柿の売上金額を認め、その余を争う。

(被告の第二主張に対する認否及び原告の実額主張)

別表一三の原告の主張欄記載のとおり。

被告の第二主張は、時機に遅れた攻撃防禦方法であり、自白の撤回にも当たる。なお、原告は、その本人尋問において被告が第一主張の前提としている昭和五三年分の収入金額が間違つているとは言つておらず、また、被告の第一主張の売上金額を認めている。

C 給与所得金額及び雑所得金額

給与所得金額は認める。

D 所得控除額

認める。

第三証拠

記録中の証拠に関する調書記載のとおり。

理由

一  原告が、豊岡中央青果株式会社に勤務する傍ら賃織業及び農業を営む者であること、被告に対して本件係争年分の確定申告をしたこと、被告が本件処分をしたこと、以上の経過と内容が別表1記載のとおりであることは、当事者間に争いがない。

二  推計の必要性

原告は、調査担当者が事前通知なく臨場し、調査の理由を開示せず、また、本件処分通知書に理由付記がないと主張する。

しかし、被告が質問検査権を行使する際の事前通知、具体的調査理由の告知など実施の細目については、実定法上特段の定めがなく、権限ある調査担当者の合理的選択に一任されているものと解されるところ、調査担当者が昭和五六年六月四日と同月五日の二回にわたつて原告方に臨場したことは当事者間に争いがなく、原告本人尋問の結果によれば、原告は、昭和五六年六月四日に原告方を訪れた税務署員二名が名刺を差出して所得税申告についての調査のため本件係争各年分の帳簿を見せて欲しい旨を告げたのに対し、延期を求め、翌日の面会を了解したものの、翌五日に税務所員が原告方を再度訪れるや、民主商工会事務員を立会わせ、調査の具体的理由を明らかにしない限り調査に応じられないとしたことが認められ、右経過に徴すると、事前通知をせず又はより具体的な調査理由を開示しなかつたことが調査の違法事由になると認めるべき特段の事情は窺えず、かかる特段の事情の主張立証はない。

本件処分通知書に理由が付記されていなかつたことは当事者間に争いがないけれども、いわゆる白色申告書に係る更正処分及び無申告加算税賦課決定処分に理由を付記しなければならないとする規定はないから、理由付記がないから違法であるとは言えない。

以上によれば、原告が手続の違法事由として主張するところは理由がなく、被告が推計課税の方法で本件処分をするも止むを得ないものがあつたと認められ、本件処分に手続的瑕疵はない。

三  課税所得金額(特に明記しない限り、本件係争各年分について)

A  賃織業による営業所得金額

原告本人尋問の結果によれば、原告は、昭和四九年から肩書住居地でいわゆる賃機を始め、主として息子夫婦らに行なわせ、本件係争年当時、保有する三台の織機のうち一台を動かしていたことが認められる。

1  原告の売上金額については、当事者間に争いがない(原告は、同主張の難引代控除前の金額を売上金額として主張しているにすぎない)。

2  被告は第一主張として同業者の算出所得率により算出所得を推計しているが、原告は経費の実額を主張しているから、まず、原告主張の経費について検討する。

ア 別表5記載の各項目のうち、当裁判所の認定欄の☆印の金額は当事者間に争いがなく、☆印の金額は、被告の第二主張に徴し、これを認める。

イ 自動車関連費(自動車税、自動車保険料、出石モーター分、車検及び修理費、ガソリン代及び減価償却費)について、弁論の全趣旨により真正に成立したと認める乙一八号証、原告本人尋問の結果によれば、交通事情の悪い丹後の原告方付近では自動車を使用しないで生活、営業することは殆ど不可能であること、原告は、自動車を二台保有し、バン型式の一台は農業用として肥料等の運搬に使用し(農業所得の経費として減価償却されている)、他のセダン型式の一台を賃織業及び原告夫婦と息子夫婦の生活のために用いていること、織物業の織元(発注者)との原材料、製品の運搬は殆んど織元において行つていることが認められ、また、弁論の全趣旨によれば、原告は電灯代、電話代など家事用にも使用する項目についてはその五〇パーセントを事業用として主張し、被告も概ねこれを認めている。これらの事実によれば、自動車関連費についても、それぞれ五〇パーセントを家事用とし、その余の五〇パーセントを事業経費と推認するのが相当である。

自動車税の金額は当事者間に争いがない。自動車保険料は、昭和五五年分の金額は当事者間に争いがなく、昭和五四年分については、成立に争いがない甲一二八号証により原告主張の金額を認める。昭和五四年分の出石モーター分の修繕費は、甲二八号証の成立を認めるに足る証拠がなく、他にその支払を認めるに足る証拠がない。昭和五五年分の車検及び修理費の金額については当事者間に争いがない。ガソリン代は、成立に争いがない甲二四号証、五八号証、六二号証及び原告本人尋問の結果により原告主張の金額を認める。

右各項目の五〇パーセントは、別表5の当裁判所の認定欄記載のとおりである。

なお、自動車の減価償却費については、被告が事業用であることを争うものの金額を明らかに争わないから、弁論の全趣旨により原告主張の別表6記載番号7のとおりと認め、後記のとおりその五〇パーセントに当たる八万九三一〇円を必要経費と認める。

ウ 電灯代について、原告主張の金額が支払われたことは争いがなく、成立に争いがない甲二三号証、原告本人尋問の結果により真正に成立したと認める甲五三号証及び同供述によれば、原告主張の電灯代は織機の動力(モーター)分を除くその余の電気代の二分の一であること、工場の電力設備と居宅の電力設備とがほぼ同規模であること、工場の電灯設備は四〇ワット以上の電灯が九台、二〇ワット以下の電灯が七台であることが認められ、原告主張の電灯代を事業経費と推認する。

エ 灯油代について、成立に争いがない甲二四号証、五八号証及び原告本人尋問の結果によれば、丹後地方は冬の間雪に閉ざされ暖房なくしては作業し難く、原告が同主張の灯油代を支払ったこと、工場に灯油ストーブ三台を起き、居宅の暖房としては電気コタツとガスストーブを使用していることが認められ、原告主張の灯油代を事業経費と推認する。

オ 昭和五四年分の京都機料に支払った消耗品費については当事者間に争いがない。なお、被告は原告が昭和五四年分に京都機料に支払った消耗品費のうち三六万七八〇〇円を新しい織機を稼動させるための支出であるから織機の取得費であると主張し、原告は後日に購入することもできた消耗品を偶々織機と同じに購入したからといって織機の取得費されるべきではないと主張するところ、弁論の全趣旨により真正に成立したと認める乙二二号証をもつてしては右被告主張を認めるに足らず、右被告主張の金額を減価償却資産の取得費と認めるに足る証拠はない。

カ 減価償却については、原告は、別表6記載のとおり主張する。別表6記載のうち番号7は自動車関連費であるが、その五〇パーセントに当たる八万九三一〇円を必要経費と認めること前記のとおりである。被告は原告が昭和五四年分に京都機料に四這った消耗費のうち三六万七八〇〇円が織機の取得費であり減価償却として別表8記載のカツコ内の額が増加すると主張するが、この主張を認めるに足る証拠がないこと前記のとおりである。なお、被告は建物減価償却費が別表4記載分と別表6記載番号9分との合計額になると主張するところ、右別表4記載分は別表6記載番号8分を訂正したものであり、計数上別表4記載が正しいと認められる。その余の原告主張は被告において争わない。そうすると、減価償却費は、別表6記載番号1ないし6と同番号7の五〇パーセントとの合計額、別表4記載と別表6記載番号9との合計額となり、結局、別表5の当裁判所の認定額記載のとおりとなる。

キ 雑費については、これを必要経費と認めるに足る証拠がない。

3  以上によれば、その余の判断をするまでもなく、原告の営業所得金額が別表5の当裁判所の認定欄記載のとおりとなること、計数上明らかである。

B  水稲、梨及び柿の栽培による農業所得金額

1  原告の収入金額

弁論の全趣旨により真正に成立したと認める乙一六号証、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告は、田三七アールを所有し一〇アールを借りて水稲を栽培するほか、畑を長砂から一〇アール、田村恵治から約一五アールの合計二五アールを借りて梨及び柿を栽培して農業を営んでいることが認められる。

被告は、第一主張として別表9記載のとおり主張し、第二主張として別表一三の被告の第二主張欄記載のとおり主張する。しかし、被告が第一主張の前提とする原告の昭和五三年分の収入金額については、成立に争いがない乙五号証(原告が久美浜町役場に提出した農業所得計算書)をもつてしても、同号証に記載の金額が正確に漏れなく計上され、これ以上の収入が存しないとは認め難く、他にこれを認めるに足る証拠はないから、昭和五三年分から推計する第一主張より、同地域の同一年分の同業農家の平均標準所得金額に基く第二主張の方が合理的なものと思料される。よつて、まず、被告の第二主張を検討することとする。なお、原告の主張は、被告の第一主張を援用したもので、農業収入の実額主張ではない。

原告は、被告の第二主張が時機に遅れた攻撃防禦方法であり、自白の撤回であると主張するけれど、被告の第二主張は、右のとおり、より合理的な推計方法による収入金額を主張したもので、これが訴訟を遅延させるものとは解されないし、所得は本来被告の立証責任に属する時効であつてこれにつき被告の側で自白が成立するものではないから、被告の右主張は時機に遅れた攻撃防禦でも、自白の撤回でもなく、右原告の主張は理由がない。

(一) 水稲の収入金額は、当事者間の争いがない。

(二) 梨及び柿の収入金額

証人工藤敦久の証言により真正に成立したと認める乙一三号証によれば、被告主張の同業農家標準所得金額が認められ、この認定を左右 するに足る証拠はない。なお、原告が借りている畑は前記のとおり約二五アールであるから(前掲乙一六号証には田村恵治からの借畑が一反七畝弱と記載されているけれども、たやすく採用し難い)当事者間に争いがない梨の栽培面積二〇アールを差引くと、柿の栽培面積は約五アールとの計算になる。

そうすると、梨については、被告主張のとおりの収入金額が認められ、柿については、被告主張の額の一〇分の五の収入金額が認められる。

なお、昭和五五年分の柿の収入金額は、右によれば五万八五八五円となるが、原告は同収入金額を被告の第一主張を援用したとはいえ九万四九〇六円と主張しているから、これを九万四九〇六円と認めるべきである。

(三) 昭和五四年分の雑収入は、これを認めるに足る証拠がない。

2  経費

ア 原告主張の経費について、別表13記載の各項目のうち、当裁判所の認定欄の☆印の金額は当事者間に争いがなく、☆印の金額は、被告の第二主張に徴し、これを認める。

イ 雇人費について、原告本人尋問の結果により真正に成立したと認める甲一三九号証ないし一四三号証及び同供述によれば、原告主張の雇人費のうち昭和五四年分の長砂、一ノ尾、坂本及び木下分が認められるものの、その余の分を認めるに足る証拠はない。

ウ トラクターの機械償却費について、原告はトラクターを昭和五三年に三人共同で購入したと主張するけれども、原告本人尋問の結果中の同主張に沿う部分は、同供述によりその購入名義人が訴外野瀬博と認められること、前掲乙五号証にもその償却費等の記載がないことに徴し採用し難く、他にこれを認めるに足る証拠はない。

C  給与所得金額

給与所得金額は、当事者間に争いがない。

D  雑所得金額

雑所得金額は、原告において明らかに争わないから、自白したものとみなす。

E  所得控除額

所得控除額は、当事者間に争いがない。

F  以上により、原告の本件係争年分の課税所得金額を計算すると、別表二〇記載のとおりとなると、計数上明らかである。

四  そうすると、本件処分は右の認定した課税所得の範囲内で適法であつて原告の請求に理由がなく、その余はその余の判断をするまでもなく違法であつて原告の請求に理由があると認められる。

五  よつて、右理由がある限度で原告の請求を認容し、その余を棄却し、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井関正裕 裁判官 田中恭介 裁判官 榎戸道也)

別表1

申告・更正等の経過表(昭和54年分)

<省略>

申告・更正等の経過表(昭和55年分)

<省略>

別表2

営業所得金額(被告の第一主張)

<省略>

(注)被告昭和61年11月20日準備書面7丁裏に支払利息81,613円、事業所得金額1,052,233円とあるは、誤記と認める。

別表3

同業者算出所得率表(昭和54年分)

<省略>

同業者算出所得率表(昭和55年分)

<省略>

別表4

建物減価償却費算定表

<省略>

別表5の1

昭和54年分の営業所得(原告の主張、被告の第二主張、当裁判所の認定)

<省略>

注 「*」は金額を認め事業用であることを争い、「-」は不知又は争う。

なお、争いのある部分については、別表5の3「別表5注記」記載のとおり。

別表5の2

昭和55年分の営業所得(原告の主張、被告の第二主張、当裁判所の認定)

<省略>

注 「*」は金額を認め事業用であることを争い、「-」は不知又は争う。

なお、争いのある部分については、別表5の3「別表5注記」記載のとおり。

別表5の3――別表5注記

原告主張の経費(別表5)に関する争点

――――――――――――――

売上金額

(原告) 被告主張の売上金額を認めるが、難引代と難引代控除前の売上金額とを各別に計上した。

自動車関連費――自動車税、自動車保険料、出石モーター分、車検及び修理費、ガソリン代及び減価償却費

(原告) 賃機である原告が代行店等に往復しなければならない様々な場合があり、およそ交通事情の悪い丹後の田舎で自動車を使用しないで営業できる者は希である。代行店を往復すれば30ないし60km、機料品店、鉄工所等も30kmはあり、毎週100kmは走行するから、ガソリン代が多すぎるとも言えない。

(被告) 原告は自動車(ニッサンオースターセダン)を代行店、機業品屋、筬を磨く人に関する用務のためなど、専ら事業の用に供していたと供述する。しかしながら、代行店は糸及び製品の取扱いを自ら行っており、原告の居住する平田地区は親機の自動車が毎日巡回しており、佐藤機業店との納品集荷は田中運送店が行っており、代行店との業務に自動車は必要でなかった。また、原告と取引のある機業店屋は有限会社京都機料商会と梅田機料品店であるところ、織機の購入先である京都機料商会は自己の自動車で織機の運搬、据付、補修、保守等を行うであろうし、梅田機料品店との取引は昭和54年に4回、昭和55年に1回に過ぎない。筬を磨く人の送迎は、筬磨きに係る費用の支出がないことからみて、ごく僅かである。なお、原告のガソリン代は比較的多量で、その大半は業務以外の使用であろう。少なくとも、原告は自動車を二台保有し、その一台がバン形式のものであることからすると、セダン形式のものは家事用と考えられる。

電灯代

(原告) 被告は織機が一台しか動いていないから電気料を三分の一とするが、工場のスイッチは一であり、全体を点灯しなければ仕事ができない。

(被告) 電灯代のうち必要経費と認められる金額は別表7記載のとおりであり、その余は争う。

灯油代

(原告) 丹後地方は冬の間雪に閉ざされ、10月頃から4月頃までは暖房なくしては作業できない。

(被告) 灯油代及びこれが業務用に使用されたことは争う。

電話代

(原告) 電話代総額の二分の一である。

接待交際費

(原告) 昭和54年分は、富田関係分¥21,000円、川村関係分¥13,000円、工場増築関係分¥3,000円であり、昭和55年分は、富田関係分¥38,000円、佐藤関係分¥28,500円、関関係分¥800円である。

昭和54年分の京都機料に支払った消耗品費

(原告) これら消耗品は後日に購入することもできた物で、偶々織機と同じに購入したからといって、織機の取得費とされるべきではない。また、所得税施行令183条では取得価格が¥10万円未満の場合は必要経費算入が認められており、この10万円以下かどうかは、工具、器具、備品については一個又は一式毎に判定することとなっている。

(被告) 原告が京都機料に支払った消耗品費として主張する昭和54年分¥393,500円のうち、¥367,800円は新しい織機を稼働させるための支出であるから織機の取得費である。

減価償却費

(原告) 別表6記載のとおり。

(被告) (1) 原告が京都機料に支払った消耗品費として主張する¥393,500円のうち、¥367,800円は織機の取得費であるから、減価償却費として別表8記載のカッコ内の額が増加する。

(2) 別表6記載のうち、番号7は上記自動車関連費であるから争い、その余は認める。

(3) また、建物減価償却費は、別表4記載分と別表6記載番号9分との合計額となる。

雑費

(被告) 新聞代が業務の必要経費であったこと、作業衣が業務に使用するものであることは争う。

難引代

(被告) 原告主張の難引材を認めるが、これを控除した金額を売上金額とする。

支払利息

(被告) 昭和54年分は、織信(丹後織物信用組合浜詰支店)¥81,613円と京銀(京都銀行久美浜支店)¥95,606円のうち¥9,405借入金1,029,400円に対する支払利息(¥15,567円+¥16,703円)÷借入金額(¥1,029,400円)×事業資産の購入費用相当額(¥300,000)との合計¥91,018円を認める。昭和55年分織信¥183,204は認め、その余は事業との関連が明らかでないから争う。

――――――――――――――

別表6

減価償却計算書

昭和54年分

<省略>

昭和55年分

<省略>

別表7

電灯料のうち必要経費の全額

<省略>

別表8

消耗品費を減価償却資産に振替えることにより、増加する減価償却費( ( )書の金額 )

<省略>

※ 昭和54年分については、年の中途で取得しており、当初の原告の計算のとおり4ヵ月分を償却費とした。

別表9

農業所得金額(被告の第一主張)

<省略>

注1 A=原告の昭和53年分の10アール当たり収入金額(原告が久美浜町役場に提出した農業所得計算書記載の金額)。

B=昭和54年分の昭和53年分に対する10アール当たり収入金額の割合(別表10記載のとおり)。

C=耕作面積(梨20アール)。D=収入金額。E=標準所得率(注3)。F=特別経費控除前の所得金額。

昭和54年分は、A(35万円)×B(95.09%)×C(20アール/10アール)=D(66万5630円)

D(66万5630円)×E(61%)=F(40万6034円)

昭和55年分は、A(35万円)×B(62.39%)×C(20アール/10アール)=D(43万6730円)

D(43万6730円)×E(53%)=F(23万1466円)

注2 A=原告の昭和53年分の収入金額。B=昭和54年分の昭和53年分に対する10アール当たり収入金額の割合(別表11記載のとおり)。D=収入金額。E=標準所得率(別表12記載のとおり)。F=特別経費控除前の所得金額。G=昭和53年分の特別経費控除前の所得金額(原告が久美浜町役場に提出した農業所得計算書記載の金額)。

昭和54年分は、G(8万円)÷E(56%)=A(14万2858円)

A(14万2858円)×B(46.72%)=D(6万6743円)

D(6万6743円)×E(42%)=F(2万8032円)

昭和55年分は、A(14万2858円)÷B(112.60%)=D(16万0858円)

D(16万0858円)×E(59%)=F(9万4906円)

注3 梨の標準所得率は、昭和54年が61%、昭和55年が53%であり、これは峰山税務署が毎年作成し、町村役場、農業団体等にも公開し、農業所得者の所得税及び住民税申告の指針として広く利用しているものであり、客観的且つ公正妥当なものであるから、この標準所得率により特別経費控除前の所得金額を推計することは合理的である。

別表10

梨の10a当たり収入金額計算一覧表

<省略>

注1)<1>ないし<3>は統計年報に記載された数値であり、<4>ないし<6>はそれに基づいて得た数値である。

注2)<3>は「青果物卸売市場調査」結果による。

注3)<3>の「その他の都市」とは、京都市中央卸売市場第1市場、京都市内青果市場及び舞鶴市場以外の京都府内の市場をいう。

別表11

柿の10a当たり収入金額計算一覧表

<省略>

注1)<1>ないし<3>は統計年報に記載された数値であり、<4>ないし<6>はそれに基づいて得た数値である。

注2)<3>は「青果物卸売市場調査」結果による。

注3)<3>の「その他の都市」とは、京都市中央卸売市場第1市場、京都市内青果市場及び舞鶴市場以外の京都府内の市場をいう。

別表12

近畿五署の柿の標準所得率表

<省略>

別表13の1

昭和54年分の農業所得(原告の主張、被告の第二主張、当裁判所の認定)

<省略>

注 「-」は不知又は争う。なお、争いのある部分については、

別表12の3「別表12注記」記載のとおり。

別表13の2

昭和55年分の農業所得(原告の主張、被告の第二主張、当裁判所の認定)

<省略>

注 「-」は不知又は争う。なお、争いのある部分については、

別表12の3「別表12注記」記載のとおり。

別表13の3――別表13注記

農業所得(別表13)に関する争点

――――――――――――――

梨及び柿の収入金額

(原告) 被告の第一主張を認める。

梨については、原告は全くの素人であり、梨園として不適当な土地であり、給水設備もなく、屑梨が多く、昭和54年には台風12号、16号による落果も多く、収入が低かった。柿の耕作面積は、田村恵治から5アールを借りている。別表14ないし17記載の標準所得金額は、その出所が不確実で信用できないうえ、1アール当たり所得金額が7,000円から5万円と格差が大きく、推計の基準として合理性がない。

(被告・第二主張) 原告と同じ平田地区の同業者(農家)の梨及び柿の1アール当たりの標準所得は別表14ないし17の記載のとおりである。右同業農家は、原告と立地条件(地区)を同じくしているから、右標準所得から原告の所得を推計することは合理性がある。

昭和54年分の梨は、539,320円

平均標準所得金額(26,966円)×栽培面積(20アール)

昭和54年分の梨は、135,470円

平均標準所得金額(13,547円)×栽培面積(10アール)

昭和55年分の梨は、409,800円

平均標準所得金額(20,490円)×栽培面積(20アール)

昭和55年分の梨は、117,170円

平均標準所得金額(11,717円)×栽培面積(10アール)

雇人費

(原告) 交配、間引き、豆袋掛け、二重袋掛け等の手伝いとして雇人費を支払ったこと、甲138号証ないし144号証のとおりである。

(被告) 梨の交配は、その作業時間が約32時間で原告ら夫婦が二日で行え、短時間の集中作業であるから雇人を確保することが困難であり、間引きの作業時間は116時間、袋掛けの作業時間は約220時間で、梨の豆袋掛けは原告の妻が他にアルバイトに行っている程であるから雇人が必要であったとは思えず、梨の二重袋掛けは比較的長期間(三週間位)に作業すればよく、自家労力で賄えるから、原告主張の雇人の事実はない。

機械償却費

(原告) トラクターは、田植前に三度に分けて田を起こす耕運用で、昭和53年に三人共同で購入したもので、その償却費は、昭和54年分として、111,500円÷3=37,166円、昭和55年分として、116,900円÷3=38,966円である。普通自動車バンについては、別表5の3記載のとおり。

(被告) 普通自動車バンについては、別表5の3記載のとおり。

――――――――――――――

別表14

梨を栽培する同業農家(平田地区)の1アール当たりの標準所得金額一覧表(昭和54年分)

<省略>

別表15

梨を栽培する同業農家(平田地区)の1アール当たりの標準所得金額一覧表(昭和55年分)

<省略>

別表16

柿を栽培する同業農家(平田地区)の1アール当たりの標準所得金額一覧表

(昭和54年分)

<省略>

別表17

柿を栽培する同業農家(平田地区)の1アール当たりの標準所得金額一覧表

(昭和55年分)

<省略>

別表18

給与所得及び雑所得

<省略>

別表19

原告の課税所得金額(当事者の主張)

<省略>

別表20

原告の課税所得金額(当裁判所の認定)

<省略>

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