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京都地方裁判所 昭和58年(ワ)1531号 判決 1984年1月26日

原告

文晩生

被告

築紫正宣

ほか一名

主文

被告らは原告に対し各自金一八五万一〇六四円及びうち金一六五万一〇六四円に対する昭和五七年四月二三日から、うち金二〇万円に対する昭和五九年一月二七日から各支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを五分し、その四を原告の、その一を被告らの各負担とする。

この判決第一項は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

被告らは原告に対し各自一〇六四万五五三六円及び内九六四万五五三六円に対する昭和五七年四月二三日から、内一〇〇万円に対する昭和五九年一月二七日から各支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

一項について仮執行宣言

二  被告ら

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  (交通事故の発生)

事故日 昭和五五年一〇月一一日午前九時二〇分頃

事故場所 神崎郡能登川町垣見七一四番地先路上

加害車 被告正宣保有、同紀美子運転の軽乗用自動車(八八滋い四七七六号)

被害者 原告

態様 加害車が北西に進行中、左前方を同方向に進行中の自転車に乗つた原告が停止したのに気付かず追突した。

2  (受傷の内容及び程度)原告は、右交通事故により次の傷害を負つた。

病名 腰・臀部打撲・仙骨骨折

昭和五五年一〇月一一日より同年一一月一五日迄三〇日間能登川病院に入院。昭和五五年一一月一六日より昭和五七年四月二三日迄同病院に通院。同年四月二三日症状固定。自賠法施行令二条所定第一二級相当の後遺症が残つている。

3  (損害)原告は事故当時米のかつぎ屋をし一か月三〇万円の収入を得ていたが右事故によりかつぎ屋の仕事ができなくなり、症状固定以後も困難な状況であつて損害は次のとおりとなる。即ち、

(一) 休業損害 五一〇万円。一か月三〇万円の収入があり昭和五五年一〇月一一日より昭和五七年四月二三日迄一七か月間休業した。

(二) 治療中の慰謝料 九四万円

(三) 入院中の雑費 一万八〇〇〇円。一日五〇〇円の割合による三六日分。

(四) 後遺症慰謝料 二〇〇万円

(五) 逸失利益 二五八万七五三六円

就労可能年数六年そのホフマン係数五・一三、労働能力喪失率一四パーセント。

(六) 弁護士費用 一〇〇万円

(七) 被告から昭和五八年一二月六日一〇〇万円を受領したので右(一)ないし(五)の損害額から控除する。

4  (責任)被告筑紫正宣は自賠法三条の保有者責任を、被告筑紫紀美子は前方不注視による民法七〇九条の過失責任がある。

5  よつて、原告は被告らに対し各自一〇六四万五五三六円及び内九六四万五五三六円に対する昭和五七年四月二三日から、内一〇〇万円に対する本判決言渡の日の翌日である昭和五九年一月二七日から各完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  被告らの認否及び主張

請求原因1の事実を認める。同2の事実は知らない。同3の事実は否認する。同4の事実は認める。

第三証拠〔略〕

理由

一(事故の発生と責任) 請求原因1及び4の事実は当事者間に争いがなく、右事実によると、被告正宣は自賠法三条により、同紀美子は民法七〇九条によりそれぞれ原告が被つた損害を賠償すべき責任がある。

二(損害)

1  成立に争いのない甲第一ないし第九号証、同第一九号証の一ないし三、同第二四号証、乙第二号証、同第六ないし第八号証及び原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると次のとおり認めることができる。

原告は、右事故により滋賀県神崎郡能登川町大字猪子一四の一、能登川病院で、腰、臀部打撲、仙骨骨折の診断を受け、昭和五五年一〇月一一日から同年一一月一五日まで三六日間入院し、同月一六日から同五六年七月一三日まで(実治療日数六八日)通院して治療を受け、同月一三日症状固定したが、なお右仙骨部に圧痛を残している。その後も圧痛を訴え右同病院に通院しているがレントゲン検査結果によると骨折部は治ゆしている。

2  右事実と原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると、本件事故と相当因果関係があると認められる損害額を次のとおり認めることができ、この認定を左右するに足りる証拠はない。

(一)  入院雑費 一日五〇〇円の割合による三六日分の合計額一万八〇〇〇円。

(二)  逸失利益 原告は、大正六年五月一七日生れの女性であつて二七、八歳の頃から米のかつぎ屋を業としてきたことが認められるけれどもその収入額と経費を認めるべき適確な証拠がないから賃金センサス昭和五七年第一巻第一表女子労働者学歴計六三歳の平均年収一九七万九二〇〇円を基準とし、逸失率を入院期間三六日間について一〇〇パーセント、退院後の昭和五五年一一月一六日から症状固定日である昭和五六年四月二三日までの一六〇日間について八〇パーセント、その後三年間(そのホフマン係数二・七三一)について五パーセントとして算定するのが相当でありこれによる逸失額は一三三万三〇六四円である。

197万9200×36/365=19万5209………………………<1>

197万9200×160/365×0.8=86万7595………………<2>

197万9200×0.05×2.731=27万0260………………<3>

<1>+<2>+<3>=133万3064

(三)  慰謝料 本件事故の態様、被害者の負傷の部位内容程度、治療経過、後遺症の内容程度その他一切の事情を斟酌すれば原告が慰謝料として請求しうべき額は一三〇万円とするのが相当である。

(四)  原告が右(一)ないし(三)の損害合計額二六五万一〇六四円について被告から一〇〇万円を受領していることは原告において自認するところであるからこれを控除すると残額は一六五万一〇六四円となる。

(五)  本件訴訟の経過、難易度、認容額等を総合考慮すると本件不法行為と相当因果関係ある損害として請求しうべき弁護士費用の額は二〇万円をもつて相当と認める。

三 よつて、原告が被告らに対し連帯して一八五万一〇六四円及びうち一六五万一〇六四円に対する損害発生の日以後である昭和五七年四月二三日から、うち二〇万円に対する本判決言渡の日の翌日である昭和五九年一月二七日から各支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条一項、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 吉田秀文)

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