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京都地方裁判所 昭和58年(行ウ)34号 判決 1986年4月10日

京都市東山区泉涌寺東林町一〇番地

原告

布瀬忠

右訴訟代理人弁護士

高田良爾

京都市東山区馬町通東大路西入る新シ町

原告

東山税務署長

伴恒治

右指定代理人検事

佐山雅彦

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

被告が昭和五七年三月五日付で原告に対してした、原告の昭和五三年ないし昭和五五年分の所得税更正処分(但し、昭和五五年分については、裁決によって一部取り消された後のもの)のうち、昭和五三年分の総所得金額が一〇〇万一、二〇〇円を、昭和五四年分の総所得金額が一五〇万四、二〇〇円を、昭和五五年分の総所得金額が二四二万五、六三〇円を、いずれも超える部分を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、京都市東山区泉涌寺門前町四番地において、「布瀬商会」の屋号で竹製品加工製造卸売業を営む白色申告納税者である。

2  原告が昭和五三年ないし昭和五五年分(以下本件係争年分という)の所得税の確定申告をしたところ、被告は、昭和五七年三月五日、原告に対し、所得税更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をした。

そこで、原告は、被告に対する異議申立て及び国税不服審判所長に対する審査請求をしたが、その経緯及び内容は、別紙1記載のとおりである。

3  しかし、右各更正処分(但し、昭和五五年分については、裁決によって一部取り消された後のもの、以下本件処分という)には、次の違法がある。

(一) 被告の部下職員は、原告の要求による第三者の立会いを認めず、調査理由を開示しないで、原告に対する税務調査を行った。

(二) 被告は、原告の本件係争年分の総所得金額を過大に認定した。

4  よって、原告は、本件処分のうち、請求の趣旨第一項記載の各金額を超える部分の取消しを求める。

二  被告の答弁

請求原因1及び2の各事実は認め、3の主張は争う。

三  被告の主張

(本件税務調査について)

1 原告が提出した本件係争年分の所得税確定申告書は、所得金額欄に所得金額が記載されているのみで、収入金額及び必要経費の記載がなく、所得金額の計算の基礎の記載を欠く不十分なものであった。そこで 被告は、右確定申告書に記載された原告の本件係争年分の所得金額が適正なものかどうかを確認するため、部下職員に原告の所得税調査を命じた。

2 被告の部下職員は、昭和五七年一月二二日以降数回にわたって、原告の自宅又は事業所に臨場し、原告が本件係争年分の所得税確定申告書に記載した所得金額が適正なものかどうかを確認するための所得税調査である旨を告げた後、原告に対し、所得金額の計算に必要な帳簿書類等の提示を求め、さらに、第三者の立会いは認めない旨を説明し、原告の理解と協力を得て調査をしようとしたのである。しかし、原告は、その都度「今は、手が離せないから後で連絡する。」とか「見せる必要はない。」とか「今日は見せない。仕事がある。」と言い、また調査に関係のない第三者の立会いを強要するばかりで、右部下職員の調査に応じようとしなかった。

3 そこで、被告は、やむを得ず推計により所得金額を算定することとし、原告の取引先等の調査を行い、その結果に基づいて、原告の本件係争年分の事業所得金額を算定したのである。

4 原告は、被告の部下職員が 税務調査の際、第三者の立会いを認めなかったり、調査理由を開示しなかったことが違法であると主張する。

しかし、税務調査において第三者の立会いを認めるかどうかは税務当局または調査担当者の合理的な裁量に委ねられているところ、被告の部下職員は、本件税務調査において、第三者の立会いを認めれば、税務職員に課せられた守秘義務(所得税法二四三条)の関係から、原告の取引先等の関係の秘密保持に種々の懸念を生じ、無用に調査を硬直させ、適正かつ十分な税務調査の妨げとなると思料し、その合理的な裁量に基づき、立会人の退去を求めたのである。

また、所得税法二三四条には、質問検査権の行使に際し、調査の理由及びその必要性の開示をしなければならない旨の規定はなく、これらは質問検査権を行使するうえの法律上一律の要件とは認められないうえ、本件において、被告の部下職員は、原告の所得税調査のため昭和五七年一月二二日に原告の事業所へ臨場した際、原告に対し、本件係争年分の確定申告書に記載された所得金額が適正なものかどうかを確認するために調査に来た旨を告げているのである。

したがって、本件税務調査は適法である。

(本件処分の適法性について)

1 原告の本件係争年分の事業所得金額は、次の被告主張額欄に記載のとおりであり(その計算方法については、別紙2参照)、本件処分の額は、いずれもこれを下回るから、本件処分は適法である。

年分

被告主張額(円)

本件処分の額(円)

昭和五三年分

一七八万一、三〇八

昭和五四年分

五三七万八、六二六

三六三万四、一九二

昭和五五年分

七二四万七、七〇三

六四五万〇、五三九

以下この金額の算出根拠について分説する。

2 別紙2の<1>売上金額

売上金額の内訳は、別紙3記載のとおりである。

3 別紙2の<3>算出所得金額

算出所得金額は、右の売上金額に別紙2の<2>同業者所得率を乗じて得た金額である。

(一) 同業者所得率の算出

(1) 被告は、京都市内の各税務署管内において、竹製品加工製造卸売業を営んでいる個人事業者のうち、青色申告書を提出している者で、本件係争年分を通じて次の<1>ないし<4>のすべての条件に該当する者三件を選出した。

<1> 他の事業を兼業していないこと。

<2> 年間の売上金額が五〇〇万円以上三、二〇〇万円未満の範囲内であること。

なお、右基準の売上金額の範囲は、原告について売上金額が本件係争年分のうち最も多い昭和五五年分の売上金額のおおむね一五〇パーセントを上限とし、下限は売上金額が最も少ない昭和五三年分のおおむね五〇パーセントとした。

<3> 年間を通じて継続して事業を営んでいること。

<4> 不服申立て又は訴訟が係属中でないこと。

(2) 右の基準は、原告の事業内容に基づいて設定したものであり、この基準により選出された同業者は原告と業種及び事業規模が類似し、かつ、事業所の所在地も原告と同じ京都市内である。そして、この基準による同業者の選出は、大阪国税局長の通達に基づき機械的に行われたものであり、その選出に当たって恣意の介入する余地はない。さらに、これらの同業者は青色申告納税者であるから、その金額等の算出根拠となる資料はすべて正確である。

したがって、被告がこれらの同業者の所得率(売上金額から売上原価、一般経費、外注費及び給料賃金を控除した金額の売上金額に対する割合)を基礎に、原告の本件係争年分の事業所得金額を推計したことは合理的である。

(3) これら三件の同業者を整理したのが別紙4であり、同業者の本件係争年分の平均所得率は、次のとおりである。なお、原告の事業専従者は一人であるから、同業者のうち事業専従者が二人以上の場合については、一人当たりの単純平均専従者給与額を算定し、その専従者一人分以外の専従者給与額を給料賃金に含めて計算した。

昭和五三年分 三七・五六パーセント

昭和五四年分 三九・五六パーセント

昭和五五年分 三六・一六パーセント

(二) 右同業者の平均所得率に基ずき、原告の本件係争年分の算出所得金額を計算した結果は、次のとおりである。

昭和五三年分 三八七万七、一六五円

昭和五四年分 六〇〇万五、一二三円

昭和五五年分 七七一万三、三七〇円

4 別紙2の<4>特別経費

特別経費は、原告の京都信用金庫東山支店に対する支払利息である。

5 別紙2の<5>事業専従者控除額

事業専従者控除額は、原告の申告額である。

6 別紙2の<6>事業所得金額

事業所得金額は、前記算出所得金額から特別経費及び事業専従者控除額を控除した金額であり、原告の本件係争年分の事業所得金額は、次のとおりである。

昭和五三年分 三一一万九、六二三円

昭和五四年分 五三七万八、六二六円

昭和五五年分 七二四万七、七〇三円

四  原告の反論

(本件税務調査について)

1 税務調査の際、第三者の立会いを求めることは、被調査者の正当な権利であり、これを禁止したり違法としたりする法規はない。税務署職員は、公務員として、憲法が定める国民の基本的人権を尊重し、擁護する義務を負うのであるから、被調査の人権を侵害し、または侵害するおそれのある税務調査に第三者を立ち会わせることは、人権侵害を防止、抑制する意味で、むしろ憲法上の要請であるというべきなのである。

したがって、第三者の立会いの排除を求めること自体、立会いの第三者が現に調査を妨害しているとか、妨害しようとする明白な危険があるなど特段の事情がない限り、違法な税務調査として許されないというべきである。そして、本件では、右の特別の事情に該る事実はない。

2 被告が主張する守秘義務は、第三者の立会いを拒絶する理由とはなり得えい。

すなわち、税務当局は、昭和五六年一〇月の大阪国税局長による税務調査の際には第三者の立会いを排除すべしとの通達以前は、第三者の立会いを認めていたし、大阪国税局管内の税務署の中には、現在でも第三者の立会いのもとに税務調査を行っているところもある。そして、これらの場合に、守秘義務が問題とされたことは全くないのである。また、守秘義務を強調するのであれば、被調査者のみに対する税務調査であっても、税務署職員が取引先等について知り得た秘密を漏らすおそれがあるから、許されないことになってしまうであろう。

3 以上の次第で、本件税務調査は違法であり、本件処分は、税務調査における第三者の立会い排除に応じない原告に対するみせしめとして行われた違法な処分である。

(本件処分の適法性について)

1 別紙2の<1>売上金額、<4>特別経費及び<5>事業専従者控除額は認め、その余は否認する。なお、<4>特別経費については、他に国民金融公庫への支払利息がある。

推計の合理性に関する主張は争う。

2. 原告が営む竹製品加工製造卸売業には、様々な製品を取り扱う者が含まれているが、何を製造するかによって、原価率、一般経費率や雇人費率が異なってくる。

したがって、本件の同業者三件を基礎として、原告の事業所得金額を推計するに当たっては、これらの同業者が、少なくとも取扱製品の点において、原告と類似していることが必要である。

ところで、本件係争年分の原告の取扱製品及びそれが売上金額に占める割合は、扇材(扇骨の材料)が約四〇パーセント、竹刀(竹刀の材料)が約四〇パーセント、扇立、色紙立等の工芸品が約二〇パーセントであり、これらは、いずれも半製品である。

ところが、本件の同業者三件は、竹製品製造加工卸売業を営むというだけで、どのような製品を取り扱っているかは明らかにされていない。そうすると、これらの同業者の中には原告と全く業態を異にする華道具、茶道具、書道具や美術花籠等を製造している者も含まれているかもしれないのである。

したがって、本件の同業者三件は、取扱製品が明らかにされない以上、原告と業態の類似性があるとすることはできないから、これらの同業者を基礎とした推計に基づく本件処分は、推計の合理性を欠く違法な処分である。

3 原告と本件の同業者三件とは、雇人の数において事業規模が異なる。

したがって、本件処分は、推計の合理性を欠く違法な処分である。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、ここに引用する。

理由

一  請求原因1、2の各事実(原告の営む事業及び本件処分の経緯と内容)は、当事者間に争いがない。

二  本件税務調査の適法性について判断する。

1  証人表正良の証言によると、被告の部下職員表正良は、昭和五七年一月二一日から同年二月二六日にかけて、六回にわたり、原告の自宅や事業所に臨場し、うち五回については、原告に面接したこと、表正良は、同年一月二二日の最初の原告との面接に際し、身分を明らかにし、原告に対して、原告の本件係争年分の申告所得金額が正しいかどうかの確認のために調査に来た旨を告げたこと、表正良は、原告との面接の都度、原告に対し、事業内容の説明や帳簿の提示を求めたが、原告は忙しいとか必要がないなどと述べてこれに応じなかったこと、表正良は、同年二月二六日の原告の自宅への臨場の際、民主商工会の事務局員一名が同席していたので、原告に対し、退席させるよう求めたが、原告はこれを拒否したこと、そこで、表正良は、原告に対し、同年三月三日までに帳簿等を持参して来署するよう告げて、原告方を辞去したが、原告がこれに応じなかったので、被告は、反面調査の結果に基づき、原告の本件係争年分の所得税更正決定処分を行ったこと、以上の事実が認められ、この認定に反する原告本人尋問の結果の一部は、前記証言に照らして採用しない。

2  ところで、税務調査に第三者の立会いを許すか否か、あるいは、臨場の際に調査理由を開示するか否か、さらには、どの程度の理由を開示するかは、権限ある税務職員の合理的な裁量に委ねられているというべきところ、表正良が、民主商工会事務局員の立会いを認めなかったり、具体的かつ詳細な調査理由を開示しなかったことについて、その裁量権濫用の事実が認められる証拠はないから、表正良の右措置を直ちに違法とすることはできない。

3  したがって、原告の本件税務調査が違法である旨の主張は、採用しない。

三  本件処分の適法性について判断する。

1  売上金額

原告の本件係争年分の売上金額が次のとおりであることは、当事者間に争いがない。

昭和五三年分 一、〇三二万二、五九二円

昭和五四年分 一、五一七万九、七八四円

昭和五五年分 二、一三三万一、二二三円

2  算出所得金額

(一)  推計の合理性

(1) 証人田中邦雄の証言によって成立て認められる乙一ないし七号証の各一、二及び同証言によると、被告は、被告主張の基準と方法によって同業者三件を選出したが、その本件係争年分の事業所得の明細は別紙5の1ないし3記載のとおりであることが認められ、この認定に反する証拠はない。

右事実によれば、これらの同業者は、原告と同じ竹製品製造加工卸売業を営む者であり、営業地域や売上金額の点で類似性が認められるうえ、青色申告納税者であるから、その資料は正確であると認められる。

したがって、これら三件の同業者の所得の内容を基礎に、後述のとおり必要な修正を施したうえで、原告の本件係争年分の事業所得金額を推計することには、合理性があるというべきである。

(2) これに対し、原告は、同業者の取扱製品が原告と同じであることが明らかでない以上、原告とこれら三件の同業者との類似性はないと主張する。

しかし、原告本人尋問の結果によると、原告の取扱製品は扇骨材料、竹刀材料、工芸品であるが、原告の行う製造工程は、長竹を一定の寸法に輪切りして細かく割り、これを窯の中でたいた後に何段階かに分けて削るというものであることが認められるのに対し、証人田中邦雄の証言によると、被告のいう竹製品加工製造卸売業とは、取扱製品は竹製品一般であるが、竹を仕入れて一定の寸法に切り、これをたて割りにして荒削りをした後に加工することだというのであるから、原告とこれらの同業者とは、製造工程において、概ね一致するということができる。

そして、本件の同業者は、右のとおり、取扱製品の製造工程が原告とほぼ一致するうえ、その個々の特殊性は、平均値を求める過程で捨象されるというべきであるから、同業者の取扱製品が原告のそれと同一であることが明らかでないとの一事をもって、直ちに推計の合理性が否定されるものではないのである。

さらに、原告本人尋問の結果によると、原告の事業は、技術を要し、手軽にはできないうえ、原告の取り扱う扇骨材料も高級なものであって、竹製品の中でも扇骨材料を製造する業者は極めて少ないことが認められるのであり、このような高級で競争業者の少ない事業を営む原告の所得率は、被告のいう平均的な竹製品加工製造卸売業者の所得率に劣るものではないことは、経験則上明らかである(原告の本人尋問における、原告の所得率は原告の取扱製品より手軽にできる製品を扱う同業者よりも低い旨の供述は措信できない)から、これら三件の同業者の所得率に基づいて、原告の事業所得金額を推計しても、原告の所得を過大に認定するおそれはないというべきである。

よって、原告の前記主張は採用しない。

(3) 原告は、さらに、原告とこれら三件の同業者とは、雇人数において事業規模が異なると主張する。

しかし、原告とこれらの同業者とは、売上金額において近接しているのであるから、このことによって、原告とこれらの同業者とは、事業規模の類似性があるとするのが相当である。

原告は本人尋問において、その従業者は被告主張の三業者よりも多いと供述している。しかし、必要な従業者が多いということは、加工度が高いこと、つまり原価率が低く、雇人費を除いて計算した利益率が高いことになるのが通常であるから、従業者数が他よりも多いことが必ずしも、雇人費を経費に含めて計算した所得率が低くなることに通ずるものではない。

よって、原告のこの主張も採用しない。

(4) 原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によると、原告はその営業に関する売上げ、仕入れその他の経費について、帳簿、伝票を作成、保存しているが、本件処分前の調査、異議、審査請求手続でもそれらを提示(出)していないことが認められ、それらが本件訴訟に提出されていないことは、当裁判所に顕著である。原告は、その営業による所得は確定申告書に記載のとおりであると主張するのであるから、それが真実であるとすれば、右帳簿、伝票類を提出することにより、最も適切にその主張を立証できる筈である。ところが、それらが現在に至るまで提出されないということは、これら帳簿、伝票に記載されたところにより算出された営業所得の金額が、本件処分におけるそれを上回るのではないかと、強く疑われるところである。

(二)  原告の本件係争年分の事業所得金額

(1) 前記三件の同業者の本件係争年分の平均所得率を算出すると、次の数値になる。但し、同業者Aの昭和五五年分の事業専従者は二名であり、原告の同年分の事業専従者は一名であるから、この点の条件の差異を調整するため、右同業者について、同年分の事業専従者一名に対する支給額九九万円(個々の支払額が明らかでないので、支給合計額一九八万円の二分の一とした)を給料賃金に加算して計算した。

昭和五三年分 三七・五六パーセント

昭和五四年分 三九・五六パーセント

昭和五五年分 三六・一六パーセント

(2) 原告の本件係争年分の事業所得金額は、売上金額に右同業者の平均所得率を乗じて算出したが、その金額は、次のとおりである。

昭和五三年分 三八七万七、一六五円

昭和五四年分 六〇〇万五、一二二円

昭和五五年分 七七一万三、三七〇円

3  特別経費

原告の本件係争年分の京都信用金庫東山支店に対する支払利息が次のとおりであることは、当事者間に争いがない。

昭和五三年分 三五万七、五四二円

昭和五四年分 二二万六、四九六円

昭和五五年分 六万五、六六七円

原告は、これ以外に、国民金融公庫への支払利息があると主張するが、このことが認められる証拠はないから、原告の右主張は採用しない。

4  事業専従者控除額

原告の本件係争年分の事業専従者控除額が各年とも四〇万円であることは、当事者間に争いがない。

5  事業所得金額

原告の本件係争年分の事業所得金額は、算出所得金額から支払利息及び事業専従者控除額を控除したものであり、その金額は、次のとおりである。

昭和五三年分 三一一万九、六二三円

昭和五四年分 五三七万八、六二六円

昭和五五年分 七二四万七、七〇三円

6  当裁判所が認定した原告の本件係争年分の事業所得金額は、前項記載のとおりであり、本件処分の額は、いずれもこれを下回る。

したがって、本件処分には、原告の事業所得金額を過大に認定した違法はない。

三  以上の次第で、原告の本件請求には理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井関正裕 裁判官 武田多喜子 裁判官 長久保尚善)

別紙1~6 省略

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