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京都地方裁判所 昭和59年(ワ)1867号 判決 1986年6月26日

反訴原告

大倉こと鄭龍岩

反訴被告

細見耕平

主文

一  被告は原告に対し、金一〇二万一九二五円及びこれに対する昭和五九年四月二日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを五〇分し、その四九を原告、その余を被告の各負担とする。

四  この判決は第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告は原告に対し、五三五九万五六五九円及びこれに対する昭和五九年四月二日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  被告

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

(一) 日時

昭和五九年四月一日午前九時五〇分頃

(二) 場所

京都市右京区梅津堤上町五〇番地先路上

(三) 態様

被告が普通乗用自動車(京五七す八〇四、以下「被告車」という。)を運転して西進し、原告も普通貨物自動車(京四四ち三六三六、以下「原告車」という。)を運転して被告車の右後方を西進しているうち、被告車が左折の合図をしながら減速しだしたので、原告車が被告車の右側方から追い越そうとしたところ、被告車は前方が通行止になつているのに気付き、右折の合図はもとより右後方の安全を確認しないまま、急に右方脇道にUターンに近い形で右折をしようとしたため、原告車と衝突した。

2  被告の責任原因

被告は右折に際し、右折の合図及び右後方の安全確認を怠つて本件事故を惹起させたのであるから、民法七〇九条の規定に基づき原告が被つた損害を賠償する責任がある。

3  受傷と治療経過

原告は、腰頸椎捻挫、腰部挫傷、外傷性頭頸部症候群、左上膊神経麻痺、歯牙欠損及び義歯損傷の傷害を受け、次のとおり入・通院の治療を受け、昭和六〇年三月一八日に症状が固定した。

(一) 林、樫原診療所

原告としては右受傷のため仕事の出来る状態ではなかつたけれども、依頼を受けていた仕事を途中で放棄するわけにいかなかつたこと、右診療所が徒歩通院の可能な距離にあつたため、昭和五九年四月二日から同年五月二五日まで通院治療を受けた。

(二) 野々口歯科医院

昭和五九年四月二日から同月一〇日までの間、通院して治療を受けた。

(三) シミズ病院

原告は、本件事故後の昭和五九年五月二五日、京都市右京区西京極徳大寺団子田町八九―二四付近路上において、原動機付自転車を運転して南進中、犬と散歩中の人を避けたところ、前方に駐車中の神田道夫所有の小型四輪乗用車(京五六ら九三九六)のドアが半開きになつているのを認め、右にハンドルを切つたものの、前方反対車線に駐車していた藤田晋二所有の普通貨物自動車(京四四ま二一八〇)に接触し(以下「第二事故」ともいう。)、右膝関節内出血、右膝内側副靱帯損傷の傷害を受け、シミズ病院に入院して治療を受け全快した。そして、原告は、この入院中の昭和五九年五月二八日から同年六月九日まで同病院において、本件事故による傷害についても治療を受けた。

(四) 大島病院

原告は、別件事故による傷害が全快して、昭和五九年六月一〇日シミズ病院を退院したものの、本件事故による頭痛及び頸部痛などが治まらないため、同月一一日改めて大島病院に入院した。しかし、原告は、妻子の生活困窮を見るにつけていたたまれず、同年八月一三日同病院を退院したが、頭痛、頸部痛及び腰痛に心労も加わり、同病院から安静通院加療を命ぜられて、前記症状固定日まで通院した。しかし、原告は背柱に著しい運動障害を残し(頸部側屈は右一三、左八まで、胸腰部側屈は左右とも一五までそれぞれ低下)、頸椎、腰椎の骨棘形成、握力の著しい低下(特に左手)、左上肢脱力感、頭痛、頸部痛、腰椎及び耳鳴りを伴う後遺障害を残しており、これらを併せると自賠法施行例別表(二条関係)後遺障害等級六級五号以上に少くとも該当する。

4  損害

(一) 治療費

昭和五九年六月一一日から同六〇年三月一八日までの大島病院の治療費八五万四六五九円

(二) 入院雑費

大島病院に入院中の六四日間につき、一日一〇〇〇円の割合による合計六万四〇〇〇円の雑費を要した。

(三) 通院交通費

原告が昭和五九年八月一五日から同年九月三〇日までの日曜日を除く三五日間、大島病院に通院するにつき要した交通費であるが、自宅から徒歩、阪急電車、続いて京阪電車乗り換えと交通が極めて不便なため、少なくとも往路はタクシーを利用せざるを得なかつた。そのタクシー代は往路につき二三四〇円、復路につき京阪、阪急電車賃二九〇円であつたから、一日二六三〇円であり、三五日間分として九万二〇〇〇円を下らない交通費を要した。

(四) 休業損害

原告は、本件事故当時、昭和管工業に日給で勤務するかたわら、大倉設備の商号で水道配管業を自営していた。

(1) 原告は、本件事故当時、大豊運送及び京都テニスクラブの各現場の仕事を請負つていたところ、本件事故により就労できないため、同事故の翌日である昭和五九年四月二日から同月五日まで、林三郎に代つて貰い、同人に一〇万五〇〇〇円の支払を余儀なくされた。

(2) 原告は、昭和五九年六月一一日から症状固定に達した同六〇年三月一八日まで、休業を余儀なくされた。

ところで、当時における昭和管工業の日給は一万五〇〇〇円、勤務は、昭和五八年一一月二四日で三六万円、同年一二月が二六日で三九万円、同五九年一月が二一日で三一万五〇〇〇円、同年二月が二五日で三七万五〇〇〇円のところ付加給三万円が加算されて四〇万五〇〇〇円、同年三月が二五日で三七万五〇〇〇円のところ付加給一万七〇〇〇円が加算されて三九万二〇〇〇円のそれぞれ給料収入があつた。

右のほか自営分として、同五九年二月に辻商店及び坂本工務店の仕事で五〇万五〇〇二円、同年三月にひばなや、京都テニスクラブ及び大豊運送の仕事で四八万五九八五円の各収入があつた。

したがつて、右五か月間の平均月収は五七万円を下らないから、休業期間の損害は五二八万円を下廻ることはない。

(五) 逸失利益

原告は、前記のとおり症状固定に達したものの後遺障害を残し、労働能力を六七パーセント喪失した。

しかし、本件事故がなければ、症状固定時に四五歳であつた原告は、六〇歳までは右平均月収、六一歳から六七歳まではその半額の収入を得ることができたから、新ホフマン係数一〇・九八一を用いて逸失利益の現価を算定すると、五八〇〇万円を下廻ることはない。

(六) 慰藉料

原告は、静ひつな住宅地に居住し、水道配管業によりかなりの高収入を得て、四人の子供にもそれぞれ塾及び習いごとをさせ、中程度以上の生活を維持していたところ、本件事故により被告から一方的に被害を受けて治療中に、債務不存在確認の訴を提起されたため、心労や経済的な苦労が加わつて症状が悪化したうえ一切の収入の途を断たれ、住宅を手離し、生活保護や医療扶助を受け、スラム街の様相を呈する地域での屈辱的な生活を強いられるに至つた。更に、被告は、訴訟の場でも、「被害者いじめ」と断ずべき対応をしているのである。そこで、このような「被害者いじめ」の傾向を減少させるため、慰藉料額の算定に懲罰的意味を含めるべきである。

以上の観点から慰藉料額は一五〇〇万円をもつて相当とする。

(七) 弁護士費用

原告が訴訟の提起追行を弁護士に委任しているところ、その費用二五〇万円が本件事故と相当因果関係のある損害である。

5  結論

よつて、原告は、被告に対し、填補額三〇万円を控除した損害金八一五九万五六五九円の内金五三五九万五六五九円及びこれに対する履行期到来の日の翌日である昭和五九年四月二日から支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  答弁

1  請求原因1の事故の発生及び同2の被告の責任原因の各事実は認める。

2  同3の原告の受傷と治療経過のうち、入・通院の事実、原告が昭和五九年五月二五日第二事故に遭遇したことは認めるが、後遺障害の程度を否認し、その余の事実は知らない。

原告は、第二事故直前には症状が軽快し、就労中であつたにもかかわらず、第二事故により入院治療及び長期通院を要するに至つたのであるから、本件事故による軽微なむちうち症が第二事故により極度に増悪したもので、本件事故との相当因果関係を否定すべきである。

それに、原告は、後遺障害等級六級五号以上の重い後遺障害が残存する旨主張するが、仮に後遺障害が残存するとしても、その程度は一四級相当というべきである。

3  同4の損害の事実は知らない。

三  抗弁

1  過失相殺

本件事故については、原告にも前方不注視の過失があること明らかであるから、大幅な過失相殺がなされるべきである。

2  弁済

被告は、昭和五九年五月四日、被告方において原告に対し、治療費名目で八五万円を支払つた。

四  抗弁の認否

抗弁1の原告の過失に関する事実を否認し、同2の弁済の事実は認める。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録のとおりであるから、それを引用する。

理由

一  請求原因1の事故の発生及び被告の責任原因の各事実は、当事者間に争がない。

すると、被告は原告に対し、本件事故によつて生じた損害を賠償すべき責任がある。

二  そこで、本件事故による原告の受傷と治療経過について検討するのであるが、原告がその主張のとおり入・通院をしたこと、原告が第二事故に遭遇したことは、当事者間に争がない。

1  当事者間に争のない右事故の態様、いずれも成立に争のない甲第三、第四号証、同第七号証、同第一一ないし第一五号証、同第二〇ないし第二三号証、同第二六号証、同第二九、第三〇号証、乙第三号証、同第九号証、撮影年月日と被写体に争のない検甲第一五ないし第二二号証、原告本人尋問の結果(第一回)により真正に成立したと認める甲第三一号証に、原告本人尋問の結果(第一、二回)を総合すると、原告車が徐行していた被告車を追い越す態勢に入つた段階で、被告車が原告車の進路に出てき始めたため、原告は危険を察知して急ブレーキをかけたものの及ばず、惰性で原告車の前部左角部が被告車の右側前部ドアの軸廻り付近に当り、そのまま被告車に喰い込むようにして衝突・停車したこと、ところで、本件事故は、当日原告から何らの身体的異常も訴えられることなく、所轄警察署の係官によつて物件事故として処理されたのであるが、翌四月二日原告が、まず野々口歯科医院において、病名左上五番歯の歯牙脱臼により約一週間の通院加療を要する旨の診断を受け、続いて同日身体の異常を訴えて林樫原診療所で診察を受け、頸部捻挫の病名により向後二週間の通院加療を要する旨の診断を受けて、それらの申告により人身事故に移行したこと、そして、原告は、同年五月二五日までの間に三二日、同診療所に通院して治療を受けたのであるが、カルテ上には、腰部挫傷の病名も記載され、その点の治療がなされていること、なお、原告は、右の間の四月二三日まで野々口歯科医院に通院して治療を受け、義歯を作り換えるなどしたこと、ところで、原告は、本件事故後、右の五月二五日までの間、車両の運転をし、水道配管の仕事もしていたこと、

以上の事実を認めることができ、この認定を覆すに足る証拠はない。

問題は、端的にいつて本件事故による原告の受傷の範囲にあるから、右の認定事実に基づき、この点につき検討する。

まず、原告にとつて本件事故は、予測外のことであつたことはいうまでもないが、それにしても衝突直前に察知して身構えるだけの余裕があつたこと、側面衝突であつて相対的にではあるが、慣性に対する反動が比較的ゆるやかであることや、事故直後に原告が身体的異常を全く訴えていないこと、更にその後の状況に徴し、原告の身体にそれほど強力な力が加えられたとは解し難いというべきである。したがつて、原告の受傷である頸部捻挫及び腰部挫傷も心因的傾向が極めて顕著なもので、通常の経過を辿れば、比較的早期に回復したことは疑えないというべきである。

2  ところで、原告が右治療中の昭和五九年五月二五日、京都市右京区西京極徳大寺団子田町八九―二四付近路上において、原動機付自転車を運転して南進中、犬と散歩中の人を避けたところ、前方に駐車中の神田道夫所有の小型四輪乗用車(京五六ら九三九六)のドアが半開きになつているのを認め、右にハンドルを切つたものの、前方反対車線に駐車していた藤田晋二所有の普通貨物自動車(京四四ま二一八〇)に接触したこと、以上の事実は当事者間に争がなく、いずれも成立に争のない甲第二七、第二八号証、同第三五ないし第三七号証、乙第一〇号証、同第一一号証の一、二、四ないし六、同第一二号証、同第一三号証の一、二、同第二〇号証、同第二三号証、同第二六、第二七号証の各一、二、同第四二号証の一、二、証人大島嘉正の証言及び原告本人尋問の結果(第一、二回)を総合すると、次の事実を認めることができ、この認定に反する証拠はない。

(一)  第二事故は、本件事故による治療期間中に発生したもので、午後一一時頃、原告は時速三〇ないし三五キロメートルで走行していて回避しきれず、すくなくとも藤田の車両前部右角に右足膝と右肘を当てたものであつた。原告は、当夜シミズ病院において右膝関節痛を訴えて診察を受け、右下肢打撲、内側半月板損傷(疑)、同内側々副靱帯損傷(疑)、右上肢打撲及び肘部擦過創の傷病名により、安静、精査のため車椅子で入院し、同年六月一〇日退院したのであるが、その間の五月二六日右下肢のギブス固定(六月七日除去)を受けたほか、本件事故により加療中であつたことも話し、頸部及び腰部の手当を受け、諸検査を経たものの、顕著な他覚的所見は認められなかつた。原告は、右の入院中、愁訴多く、西友ストアーまで無断外出することがあつたし、六月八日には「退院してよその病院へ行く」旨表白したこともあつたが、退院時の医師の所見は通院で良いということであつた。

(二)  ところが、原告は、シミズ病院を退院した翌日の昭和五九年六月一一日、大島病院において頸痛、腰痛及び右上肢の痺れや痛みを訴えて受診し、担当の医師は、頸椎及び腰椎の運動制限や頸痛及び腰痛がいずれも強いうえ、左上肢の麻痺がみられるところから入院の必要性があると診断し、外傷性頭頸部症候群(左上膊神経不全麻痺を伴う)及び腰椎捻挫の病名で、即日原告を入院させた。そして、原告は、同年八月一三日に退院したのであるが、その後も通院し続け、翌六〇年三月一八日に症状固定と診断された。なお、担当医師は、原告の後遺障害の程度について、筋電図による裏付けのある左上下肢の運動麻痺により軽労働しかできないとし、「神経系統の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限される。」場合に該当すると判断する。もつとも、原告は、自賠法施行令別表の後遺障害としては一四級一〇号と査定された。

3  そこで、本件事故と第二事故並びにそれらの治療経過に鑑みると、原告は、本件事故による受傷の治療継続中に、第二事故に遭遇し、本件事故による受傷が著しく増悪したと解するのが相当であるから、その後の治療についても本件事故との相当因果関係を否定することができないというべきである。

三  よつて、前項の説示を前提として、原告の損害につき検討する。

1  治療費

成立に争のない乙第三七号証の一ないし三によると、昭和五九年六月一一日から同六〇年三月一八日までの大島病院の治療費として、八五万四六五九円を要したことが認められる。

2  入院雑費

原告は、右認定のように六四日間入院しているところ、入院中の雑費として一日一〇〇〇円の割合により六万四〇〇〇円を要したことが認められる。

3  通院交通費

原告本人尋問の結果(第一、二回)及び同結果(第一回)により真正に成立したと認められる乙第一四号証の一、二によると、原告は、昭和五九年八月一五日から同年九月三〇日までの三五日間、自宅から大島病院に通院しているところ、通院にタクシーを利用すると片道二三四〇円、電車だと片道二九〇円をそれぞれ要すること、しかし、実際には自家用車でかなりの回数通院していることが認められ、この認定に反する証拠はない。

ところで、往路につきタクシーの利用を必要とした事実を認めるに十分な証拠はなく、また、自家用車で通院した際の費用も明らかでないから、電車利用による費用を基礎として通院交通費を算定するのが相当であり、それによると合計二万〇三〇〇円が損害として是認されるべきである。

4  休業損害

原告本人尋問の結果(第一回)及び同結果により真正に成立したと認められる乙第一五、第一六号証の各一、二、同第一七号証の一ないし九を総合すると、原告は、本件事故当時、京都市伏見区所在の昭和管工業に日給で勤務するかたわら、大倉設備の商号で水道配管業を営んでいたこと、

(一)  原告は、本件事故当時、大豊運送及び京都テニスクラブの各現場の仕事を請負つていたのであるが、本件事故のため、昭和五九年四月二日から同月五日まで、林三郎に依頼してその仕事を施工して貰い、同人に一〇万五〇〇〇円を支払つたこと、

(二)  原告は、昭和五九年六月一一日から翌六〇年三月一八日の前叙症状固定に達するまでの九・二七か月休業したこと、原告の事故前五か月の平均月収は、五七万円であること、したがつて、同期間の休業損害は、五二八万三九〇〇円であること、

以上の事実を認めることができ、この認定に反する証拠はない。

そうだとすれば、休業損害は、五三八万八九〇〇円である。

5  逸失利益

さきに認定したように、原告は、自賠法施行令別表の後遺障害として一四級一〇号と査定されているところ、担当医師において「神経系統の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限される。」場合に該当すると判断しているので、この点を斟酌して、原告の労働能力の減退率を一〇パーセント、減退期間を五年間と認めるのが相当である。

すると、五年の新ホフマン係数は四・三六四であるから、さきに認定の平均月収を基礎数値として逸失利益の現価を算定すると、二九八万四九七六円となる。

6  慰藉料

さきに説示の入・通院状況及び後遺症状に鑑み、慰藉料額は二五〇万円をもつて相当と認める。

7  まとめ

以上損害合計額は、一一八一万二八三五円となる。

8  過失相殺

さきに認定した本件事故の態様に徴すると、原告の損害につき過失相殺をなすべき事由を認め難く、被告のこの点の主張は失当であり、採用できない。

9  減額事由

前叙のとおり第二事故の衝撃が本件事故による損害を著しく増大させる要素になつていることは明らかであるから、この点を過失相殺法理の類推適用により斟酌することとし、本件事故の発症起因性を考慮して減額割合を八五パーセントとするのが相当というべきである。すると、被告の負担に帰すべき原告の損害額は一七七万一九二五円(円未満切捨)となる。

10  損害の填補

原告が被告より、昭和五九年五月四日に八五万円の弁済を受けたことは、当事者間に争がない。

すると、損害残額は九二万一九二五円となる。

11  弁護士費用

原告が本件につき弁護士を依頼したことは明らかであるところ、本件事案の内容、審理経過、認容額等に照らすと、一〇万円の限度で本件事故と相当因果関係のある損害とするのが相当である。

四  結論

以上の次第であるから、被告は原告に対し、一〇二万一九二五円及び同金員につき本件不法行為の翌日である昭和五九年四月二日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払義務があるというべく、この限度で原告の本訴請求は理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却する。

よつて、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文、仮執行宣言につき同法一九六条を、各適用のうえ主文のとおり判決する。

(裁判官 石田眞)

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