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京都地方裁判所 昭和59年(ワ)298号 判決 1987年9月25日

主文

一  原告(反訴被告)らの本訴請求及び反訴原告(被告)の反訴請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は本訴反訴を通じてこれを二分し、その一を原告(反訴被告)らの負担とし、その余を被告(反訴原告)の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

(本訴事件)

一  本訴請求の趣旨

1 被告は、原告らに対し、別紙物件目録(一)記載の土地(以下本件(一)の土地という)について、別紙請求登記目録原因欄記載の原因に基づき、同目録持分欄記載の持分について所有権移転登記手続をせよ。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

二  本訴請求の趣旨に対する答弁

1 原告らの請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告らの負担とする。

3 仮執行免脱宣言

(反訴事件)

一  反訴請求の趣旨

1 反訴被告らは、反訴原告に対し、本件(一)の土地を明渡し、かつ昭和五八年一一月一日以降右明渡済みに至るまで一か月金一〇五〇〇〇円の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は反訴被告らの負担とする。

3 仮執行宣言

二  反訴請求の趣旨に対する答弁

1 反訴原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は反訴原告の負担とする。

第二  本訴請求原因

一1  原告らはいずれも別紙物件目録(二)記載の土地建物(いわゆる分譲マンションであって、以下本件マンションという)の区分所有者である。持分は別紙請求登記目録持分欄記載のとおりである。

2  原告のうち次の者は、右区分所有権を直接被告より取得したのではなく、次のような売買の経過をたどっている。

(最下段が各原告名であり、別紙請求登記目録原因欄記載の売買年月日は、各原告が取得をした日付である。)

株式会社松美↓西川信男↓遠藤満

株式会社松美↓川村(旧姓小島)京子↓高田民義・高田千鶴

株式会社松美↓精華織物株式会社↓春名光子

株式会社松美↓辻原千樫↓八島鈴子

株式会社松美↓春名光子↓半田典子

株式会社松美↓九鬼佳孝↓横山俊一↓西川正信・さだゑ↓半田典子

株式会社松美↓杉江欣哉↓馬場浩二

株式会社松美↓渡辺謙三↓新谷新治郎

株式会社松美↓澤井弥三次↓長野和夫↓鈴木淑子

株式会社松美↓山本赳夫↓畑隆司・畑榮子

株式会社松美↓中嶌尚三↓竹原征子

株式会社松美↓岡島久江↓柳生秀樹

株式会社松美↓松原博↓木村禎雄・木村松重

株式会社松美↓宮田信治↓徳永和子

株式会社松美↓廣井信夫↓村岡義夫

株式会社松美↓藤岡安造↓松宮繁造・松宮輝則

株式会社松美↓医療法人相馬病院↓清水薫

株式会社松美↓深井(旧姓河野)晃子↓松原勧↓児玉洋子

株式会社松美↓深井(旧姓河野)晃子↓徳谷傭錫

株式会社松美↓名賀陽三・名賀一三↓佐々木和子

株式会社松美↓西谷太一郎・西谷隆男↓勝馬登↓寅野繁男

株式会社松美↓松原有公子↓佐々木栄子

株式会社松美↓谷千鶴子↓南史朗

株式会社松美↓位田好美↓川上健一郎

株式会社松美↓深澤富男↓瀬川達雄・瀬川晴子

株式会社松美↓名賀陽三・名賀一三↓佐々木和子↓田村透・田村幸子

株式会社松美↓松原勝↓安原猛

株式会社松美↓錦部保孝・錦部克弘↓西山精二↓飯田ハル子

株式会社松美↓徳山隆博↓株式会社竹藤

株式会社松美↓杉浦フミエ↓深見雄志↓多田美稔子↓南條信子

株式会社松美↓田中均・田中喜重↓紫野商事株式会社

株式会社松美↓河島一男↓舟野博之

3  被告は、別紙物件目録(二)記載の土地(以下本件(二)の土地という)及び本件(一)の土地の元所有者であると同時に本件マンションの建築主であり、かつ本件(一)の土地につき現在所有名義を有しているものである。

二  本件マンションの敷地については、被告が原告らに売却した時の具体的説明はもとより、当時のパンフレットからも、又近隣へ配布された図面においても、さらには、建築確認申請手続をとるさい使用した敷地図面でも、いずれも本件(一)の土地を含めたものとして取り扱われていたことが明らかである。

当然のことながら購入する人達は、現状を確認し、マンションの敷地と信じて疑わなかったものである。

ところが、こともあろうに、事実上の売主(形式上は被告の不動産部というべき株式会社松美建設が売主になっている)であった被告は、分譲するにあたって、本件(一)の土地の所有権移転登記をしないまま、本件(二)の土地についてだけ所有権移転登記手続を行っていたわけである。

三  ところで本件(一)の土地は、本件マンションの唯一の出入口部分で、現在でさえ、間口は一二メートル強しかなく、二百人近くが居住するマンションとしてははなはだ狭いわけであるが、この本件(一)の土地が存在しないとなると、間口はわずか六メートルとなって、居住性に深刻な影響を与えるとともに、本件マンションの価値は極めて低くなること歴然としているといわなければならない。

従って、この部分が敷地でないとなると、現在の区分所有者の多くが本件物件を購入していなかったこともまた明白である。

この部分が敷地として利用しうればこそ、はじめて本件についての売買も成立したものである。

このようにみるならば本件(一)の土地は、本件(二)の土地と一体のものとして区分所有者らに譲渡されるべきものであったということができる。当然のことながら原告と被告間の売買契約の対象となっていたもので、被告より原告らへの売却済みの土地であるといわねばならない。

四1  よって、被告は、原告らに対し、原告らの本件(二)の土地の持分割合に応じ、同土地の売買と同じ原因において、本件(一)の土地についても所有権移転登記を為すべきであるので、本訴請求の趣旨記載のとおりの判決を求める。

2  なお本件において、原告らは、直接被告に移転登記請求を行っているが、かかる中間省略登記についても登記請求権のあることは確立した判例である。

最近の考え方としては、省略の対象となった中間者と被告のいずれについても何ら利害に影響しないときはその同意は必要がないという見解が強く打ち出されてきており(不動産登記講座Ⅰ「総論」(1)所収の中間省略登記の各論稿を参照のこと)、本件の場合、中間者も被告も全く利害関係を有しないから、そのいずれについても同意は必要要件とはならないものというべきである。

ところで、本件の場合、被告は、答弁書において、被告が直接各原告に売却したとの主張事実についてはこれを認める旨答弁している。本件で原告らが求めているのは、この売買を原因として移転登記を行え、というものであるが、右被告の答弁は、中間省略をしても全く異存がないことの意思表示と解してよい。また中間者についても中間省略をすることについて異存のないことは明白である。

第三  本訴請求原因に対する認否等

一  本訴請求原因第一項Ⅰ、3の事実は認め、同2の事実は不知。

二  同第二ないし四項は争う。

三1  被告は、原告らに対し、本件(二)の土地並びにその地上のマンションを売却したのであり、本件(一)の土地を売却した事実は全くない。

被告は、本件マンションを売却する際、原告らに物件説明書を示しているが、本件(一)の土地は記載されておらず、本件(二)の土地の番地並びに坪数を明示説明して売却したのであって、原告らも、右事情を了解の上、本件マンションを購入したのである。

2  被告は、原告らに本件マンションを売却した際、被告所有の本件(一)の土地を駐車場(七台分)として、マンション購入者に優先的に駐車させる旨説明し、現に、マンション購入者の原告有限会社銀座屋、同中川、同名倉らは、駐車料金を支払って昭和四九年より長年の間駐車している。他の原告らも、被告が本件(一)の土地を駐車場として利用し前記原告ら及び他の第三者に賃貸してきたことについても、何ら異議を述べなかったのである。

3  被告の建築確認申請添付書類には本件(一)の土地が敷地として申請されてはいるが、右は当時右申請手続を受任していた建築事務所の手違いにより不必要な本件(一)の土地を記載したのであり、右事実をもって本件(一)の土地が原告らの所有地であるということにはならない。

4  なお、本件(一)の土地の固定資産税は、被告が支払っており、原告らは、右事実を知悉していたものである。

5  原告有限会社銀座屋は、本件(一)の土地が被告所有地であることを十分に了解の上、昭和五二年本件(一)の土地の一部を購入したい旨申し入れてきたので、被告は本件(一)の土地の内七一番六四を七一番七〇(一二・四三平方メートル)に分筆の上、昭和五二年二月四日右土地を原告有限会社銀座屋に金二〇六八〇〇〇円で売却したのである。

6  昭和五八年被告が本件(一)の土地の処分等を考えていたところ、原告らは右土地の売却を申し入れてきたが、金銭的に折り合わなかった。その後突然本件(一)の土地は原告らの共有物であると主張しはじめたのである。右経過からして、原告らの主張は全く首尾一貫しないその場限りの荒唐無稽な主張にすぎない。

第四  反訴請求原因

一  反訴原告は、本件(一)の土地を所有し、昭和四九年より永年の間、反訴被告ら及び反訴被告ら以外の第三者に駐車場として賃貸してきた。

二  しかるに反訴被告らは、昭和五八年一一月ごろ、突然本件(一)の土地は反訴被告らの共有土地であると称して不法に占有をしはじめ、反訴原告の再三の返還請求にも応じず、従来支払っていた普通乗用自動車一台につき一か月金一五〇〇〇円の割合の賃料相当損害金を支払わずに現在に至っている。

なお、本件(一)の土地には、普通乗用自動車七台分の駐車が可能である。

三  よって、反訴原告は、反訴被告らに対し反訴請求の趣旨記載のとおりの判決を求める。

第五  反訴請求原因に対する認否

反訴請求原因事実中、反訴原告がもと本件(一)の土地を所有していたこと及び反訴被告らが現在本件(一)の土地を占有していることは認めるが、その余の事実を否認する。

第六  反訴抗弁

一  反訴原告は、本件マンション購入者である反訴被告らに対し本件(一)の土地を本件(二)の土地とともに本件マンションの敷地として売り渡した。その詳細は本訴請求原因主張のとおりである。

二  仮に所有権に関する反訴被告らの主張が万が一認められなかったとしても、やはり反訴原告には明渡請求権は存しない。

すなわち本件(一)の土地は、もともと本件マンションの敷地の一部として、本件マンションにとって無くてはならないものであるばかりか、現に本件マンションの住民が通行その他に自由に使用してきたものである。その利用の形態は本件(一)の土地のガレージの利用の仕方も含めて渾然一体としたものである。

現に反訴原告自身、当初はものを建てるとか売却する予定はなく逆にマンションを売却するために必要な土地という認識をもっていたことをいみじくも自白しているのである。

本件マンションの利用は、本件(一)の土地が存在してはじめて使いやすくなるもので、それが存在しないとなると、その利用価値が著しく損なわれることが明らかである。いわば、本件マンションの使用にとって不可欠の土地であり、地役権が設定されているものと解する以外にないのである。

右地役権は、売買契約のさいに明示の合意があったと解しうるが、百歩譲っても黙示の合意で設定されたものと解釈できる。例えば黙示の通行地役権を認めた判例(東高判昭四九・一・二三)では「通行の事実があること」「地役権を設定し法律上の義務を負担することに客観的にみて合理性のあること」を要件としているが、本件の場合が正にその要件にあてはまること明らかである。本件(一)の土地が利用できないことが明らかであれば、本件売買契約そのものが成立をみていないこと火をみるより明らかである。

そして右地役権が、前期のとおり本件マンションの住民の通行その他自由な使用を内容とするものであるが故に、反訴原告の反訴被告らに対する本件(一)の土地の明渡請求権は存しない。

第七  反訴抗弁に対する認否

一  反訴抗弁第一項の事実は否認する。その詳細は本訴請求原因に対する認否等で主張のとおりである。

二  本件マンションのうち、七本松通りに接する入口部分の幅員は、反訴被告らの所有する本件(二)の土地だけでも約六メートルあり、本件マンションの規模の通路として充分なものである。

しかも、本件(一)の土地は長年の間、「駐車場」として利用され「通路」としては利用されてきたことがないし、また、反訴原告は反訴被告らが右土地を通路として利用することに合意したことがなく、本件(一)の土地は本件マンションの使用にとって不可欠な土地ではない。

従って、これまで反訴原告と反訴被告らとの間において明示黙示の通行地役権の設定がされていないことは明白である。本件(一)の土地は、あくまでも反訴原告と反訴被告らとの間においては「駐車場」として利用する認識しかなかったのである。

よって、反訴被告らの地役権の主張も失当である。

第八  証拠(省略)

理由

一  反訴請求原因中反訴原告(以下被告という)がもと本件(一)の土地を所有していたこと、及び反訴被告ら(以下原告らという)が現在本件(一)の土地を占有していることは当事者間に争いがない。

二1  そこで反訴抗弁第一項及び本訴請求原因についてみるに、被告は本件マンションの建築主かつその敷地である本件(二)の土地の元所有者で、本件マンションを分譲した売主であること、及び原告らが現在本件マンションにつき別紙請求登記目録持分欄記載の持分を有する区分所有者であること、並びに被告が本件(一)の土地につき以前所有権者でありかつ現在も登記簿上所有名義人になっていることは当事者間に争いがない。

2(一)  そこで、被告が本件(一)の土地を本件(二)の土地とともに本件マンションの敷地としてその購入者に売却したか検討すべきところ、被告が右売却の意思表示をした旨の原告らの主張に添う証拠として、原告芳村信二の本人尋問の結果(以下供述という、他の原告についても同じ)及びこれによって真正に成立したと認むべき甲第一〇、一二号証、第一八号証の一ないし四、第二二、三三、三五、三八、五六、六四号証、成立に争いない甲第七二号証、原告徳谷傭錫の供述及びこれによって真正に成立したと認むべき甲第七四号証、並びに原告辻原千樫の供述があるうえ、

(二)  右各証拠、成立に争いない甲第六号証の一、二、第七号証の二、三、第八号証、第九号証の一、二、原告芳村の供述によって真正な成立を認むべき甲第七号証の一、第一一、一三ないし一七、一九ないし二一、二三ないし三二、三四、三六、三七、三九ないし五五、五七ないし六三、六五ないし七一号証、原告徳谷の供述によって真正な成立を認むべき甲第七四号証、原告ら主張どおりの写真であることに争いのない検甲第一、二号証、被告主張どおりの写真であることに争いのない検乙第一ないし三号証、並びに弁論の全趣旨によれば、

(1) 被告作成の本件マンションの建築確認申請書では、敷地面積が一二六六平方メートル余と記載されていること(右面積に照らすと本件(一)の土地を含むと考えられる)、及び本件(一)の土地をも本件マンションの敷地とする添付図面が付されていること

(2) 被告が本件マンション建築工事に先立ち近隣町内会へ説明用に交付した図面では、本件(一)の土地も本件マンションの敷地とされていること

(3) 取引物件説明書を兼ねるパンフレット(甲第八号証)の表紙のイラスト(本件マンションの予想完成図)では、本件(一)の土地も本件マンションの敷地の一部と理解される図になっていること、しかも右イラストでは、駐車場部分が南側に位置し、その北側の本件(一)の土地は本件マンションへ出入りの為の通路部分とされていること

(4) 被告は右パンフレットとほぼ同じ内容のイラスト等で新聞広告を出したこと

(5) 被告が本件マンション購入者に対し配布した「防災設備と災害時の心得」と題するパンフレットの添付図面でも、本件(一)の土地が本件マンションの敷地であるような図になっていること

(6) 本件(一)の土地は、七本松通りに面する部分で南北の幅員が約六メートルあり、現在白線が引かれて車七台分の駐車場となっており、その南側の、七本松通りに面する南北の幅員約六メートルの部分(本件(二)の土地の一部)が本件マンションへ出入りの為の通路部分となっているけれども、両者は同一の高さの平面であって、右駐車場に駐車する車は右通路部分を通って出入りするし、マンションの住人や子供らは車が駐車していない限り右通路部分及び駐車場部分の区別なく自由に通行しかつ遊んでいること、そのほかにも、原告らは、昭和四九年の本件マンション分譲の当初から、被告との間に本件紛争を生じた昭和五八年までの約九年間、本件駐車場を、車の駐車と共存する形で、盆踊り、火災予防及び消火器詰替訓練、区民運動会の練習などに、本件(二)の土地上の通路部分と一体として自由に使用してきたこと、なお、右通路部分入口の南端辺りには、本件マンション分譲のころから、「当駐車場はマンション居住者の専用駐車場です。一般の方の駐車は堅くお断り致します。松美コーポラス北野」と書かれた立札が設置されていたこと

(7) 右駐車場の使用料は本件マンションの共益費等と一括して徴収されており、領収書は「コーポラス北野」の名義になっていること

が認められるのであるが、

(三)(1)  他方前顕甲第六号証の一、二によれば、建築確認申請書の地名地番欄には本件(二)の土地が記載されていて、本件(一)の土地は記載されていないことが認められ、

(2)  また、前記(二)の(1)及び(2)のいずれもが本件マンション購入者に対する意思表示でもその誘引でもないし、

(3)  前顕甲第八号証(取引物件説明書を兼ねるパンフレット)によれば、敷地面積欄に「一一一二・九二平方メートル」と記載されており、この面積は本件(二)の土地だけのそれであり、本件(一)の土地を含まないこと、右パンフレット中には本件マンションに駐車場が設けられる旨の記載がないばかりか、「駐車場はご希望により当社特約ガレージを斡旋させていただきます」と記載されていることが認められ、

(4)  前記(二)の(4)の新聞広告は契約の誘引であって申込の意思表示そのものではなく、なお建物の予想完成図はあくまでも予定上のものにすぎず、売主はそのイラストどおりの建築をしこれを売却する法的拘束を厳格に受けるものとはいいがたい。

(5)  また証人松原勝の証言によれば、本件マンションは当初本件(一)の土地も敷地としたもっと大規模なものを予定していたが、近隣との交渉の過程で縮小を余儀なくされ、その結果建ぺい率、容積率等の関係上本件(一)の土地を本件マンションの敷地にする必要がなくなったので、これを敷地から除外したという経緯が認められ、

(6)  成立に争いない乙第三ないし一三号証によれば、本件マンション分譲の際の売買契約書の中には、売却する敷地として本件(二)の土地を記載し、敷地面積として「一一〇九・三七平方メートル」と記載していて、本件(一)の土地を含まないことが明白なものもあるが、多くは「乙(購入者のこと)は物件説明書(パンフレット)……を確認した」と記載されていることが認められる。なお、右物件説明書(パンフレット)の内容は、前記(二)の(3)、(三)の(3)判示のとおりである。

(7)  成立に争いない乙第二二ないし二六号証によれば、本件マンション購入に際し、原告辻原千樫、同平野耕一、同芳村信二、同有限会社銀座屋(代表者代表取締役岡本賢三)、同簑田ふみえ各本人の意思に基づき「申請人欄」に右各原告(或いはその代表者の署名捺印のなされた各階平面図建物図面中には、建物の所在地が本件(二)の土地であることが明記され、また図面によって本件(一)の土地の部分(場所)が本件(二)の土地に含まれていないことが明らかであることが認められる。

(8)  成立に争いない乙第一五号証の一ないし八、第一六号証の一ないし八、第一七号証の一ないし一〇、第一八号証の一ないし八、第一九号証の一ないし八、第二〇号証の一ないし八、証人松原勝の証言、並びに弁論の全趣旨によれば、原告ら本件マンションの購入者は、右購入に際し本件マンションの敷地として本件(二)の土地につき共有持分権の移転登記手続を了したけれども、本件(一)の土地については右手続をすることなく本件紛争の発生に至るまで長い人では約九年間を経過していること、この間本件(一)の土地の固定資産税は一貫して被告が支払ってきたことが認められ、

(9)  成立に争いない乙第一、二号証、被告主張どおりの写真であることに争いのない検乙第五号証、証人松原勝の証言及び原告有限会社銀座屋代表者本人尋問の結果によれば、右原告会社は、昭和五二年二月、本件(一)の土地のうち「七一番六四」から昭和五一年七月二四日分筆の「七一番七〇、宅地一二・四三平方メートル」を被告から買い受け、間もなくその旨の所有権移転登記手続を了したことが認められ、

(10)  右証人松原勝の証言及びこれによって成立の認められる乙第一四、二七、二八号証によれば、昭和五〇年から昭和五八年の間、本件(一)土地上の駐車場の使用料は被告が取得していたから、この間の本件マンションの決算報告書の収入の部には駐車場使用料収入が計上されていないことが認められる。

(四)  そうしてみると、右(三)判示の事実がある以上、前記(二)判示の事実を参酌しても、なお前記(一)の各証拠は未だ措信することができず、他に被告が本件(一)の土地を本件(二)の土地とともに本件マンションの敷地として売却する旨の意思表示をした事実を確と認めるに足る証拠はない。

3  従って、原告らが本件(一)の土地の所有権を取得した事実は認められず、反訴抗弁第一項及び本訴請求原因はいずれも理由がない。

三  そこで反訴抗弁第二項についてみるに、前記二の(二)の(1)ないし(6)判示の事実に照らすと、本件(一)の土地については、本件マンションの敷地である本件(二)の土地の使用の便益を図る目的で、本件(一)の土地につき駐車場使用契約を結んだ者がこれを駐車場として使用することと共存する形で、本件(一)の土地を占有し子供の遊び場や通路等として使用することを内容とする地役権が、被告と原告ら本件マンション購入者との間において黙示の合意でもって設定されているものと認めるのが相当である。

そうしてみると、原告らの本件(一)の土地の占有は適法なものということができるから、原告らに対し本件(一)土地の明渡及びこれが明渡に至るまで賃料相当損害金の支払を求める被告の反訴請求は理由がない(なお、被告は、駐車場使用契約を締結した者に対して使用料の給付を請求すればよく、もし原告らが被告の右債権を侵害しているのであればそのことを理由として不法行為に基づく損害賠償を請求すればよいのである。要するに、前記のとおり原告らの本件(一)の土地の占有は違法ではなく、不法行為にならないから、原告らの本件(一)の土地の占有を不法行為に該るとし賃料相当損害金の支払を請求するのは理由がないのである)。

四  よって、原告らの本訴請求及び被告の反訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(別紙)

物件目録(一)

京都市上京区七本松一条下る三軒町七壱番六四

一 宅地   六九・八弐平方メートル

右同所七壱番六五

一 宅地   六八・四七平方メートル

別紙図面赤線で囲んだ部分

その詳細図面は別紙測量図面の通り

物件目録(二)

京都市上京区七本松一条下る三軒町七壱番壱参

一 宅地   壱壱〇九・参七平方メートル

別紙図面青線で囲んだ部分

<省略>

<省略>

請求登記目録

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

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