京都地方裁判所 昭和60年(わ)1070号 判決 1986年5月23日
本籍
大津市瀬田月輪町四六七番地
住居
同市月輪二丁目一〇番一六号
農業
中村春造
大正一二年一月二四日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官福嶋成二出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一〇月及び罰金一〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となる事実)
彼告人は、自己の所有する大津市瀬田月輪町字中筋四一〇番地ほか五筆の田及び畑を昭和五八年一二月一三日鐘紡不動産株式会社に合計二億八五四四万円で売却譲渡したことに関して、右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、全日本同和会京都府・市連合会会長鈴木元動丸、同連合会副会長村井英雄、同連合会事務局長長谷部純夫、同事務局次長渡守秀治、右鐘紡不動産株式会社取締役山中隆雄、同会社から委託を受けて土地買収交渉をしていた株式会社エクダム代表取締役惣司定次郎及び司法書士松本善雄らと共謀のうえ、自己の実際の昭和五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は二億七〇一六万八〇〇〇円、総合課税の総所得(農業所得)金額は一二万一〇〇〇円で、これに対する所得税額は八七四八万七五〇〇円であるにもかかわらず、株式会社ワールドが有限会社同和産業(代表取締役鈴木元動丸)から四億円の借り入れをし、その債務について自己が連帯保証人となり、右ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同五九年一月二〇日に二億四〇〇〇万円履行したが、右ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどしたうえ、同五九年三月一五日大津市中央四丁目六番五五号所在の所轄大津税務署において、同署長に対し、自己の同五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は三〇一六万八〇〇〇円(ただし、租税特別措置法第三四条の二の適用誤りにより一五一六万八〇〇〇円と記載)、総合課税の総所得金額は一二万一〇〇〇円で、これに対する所得税額は五八六万四八〇〇円(ただし、租税特別措置法第三四条の二の適用誤りにより二八六万四〇〇〇円と記載)である旨の内容虚偽の所得税額確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額八七四八万七五〇〇円との差額八一六二万二七〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書七通(検第二八号ないし第三四号)
一 山中隆雄(五通、検第三号ないし第七号)、松本善雄(五通、検第八号ないし第一二号)、村井英雄(二通、検第一三号、第一四号)、惣司定次郎(一〇通、検第一五号ないし第二四号)、長谷部純夫(二通、第三五号、第三六号)及び鈴木元動丸の検察官に対する各供述調書謄本
一 大蔵事務官松田勝作成の脱税額計算書
一 大蔵事務官田中政則作成の証明書
一 大蔵事務官横位啓文作成の報告書謄本
(法令の適用)
一 罰条
所得税法二三八条一項、刑法六〇条、(罰金刑併科)所得税法二三八条二項
一 労役場留置
刑法一八条
一 懲役刑の執行猶予
刑法二五条一項
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 萩原昌三郎)