京都地方裁判所 昭和60年(わ)1072号 判決 1986年3月10日
本籍
京都府宇治市宇治善法二番地の一
住居
同市伊勢田町砂田六七番地の二七
会社役員
岩崎義彦
昭和八年一二月二八日生
右の者に対する相続税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官關本論敬出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金八〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、奥村典子、奥村文浩、上田幸弘、戸山孝、青山健造、全日本同和会京都府・市連合会会長鈴木元動丸、同連合会事務局長長谷部純夫及び同連合会事務局次長渡守秀治らと共謀のうえ、右典子の実父で右文治の養父である奥村博司が昭和五九年四月二八日死亡したことにより右典子及び右文浩が椙続した財産にかかる相続税を免れようと企て、相続税の課税価格の総額が三億六九七二万四〇〇〇円でこれに対する相続税の総額が三億三九九九万六九〇〇円であり、そのうち右典子の相続財産にかかる実際の課税価格が一億九五六二万九〇〇〇円でこれに対する相続税は七四一九万八四〇〇円であり、右文浩の相続財産にかかる実際の課税価格が一億六六八七万二〇〇〇円でこれに対する相続税は六二九九万八六〇〇円であるにもかかわらず、同年一〇月二九日、京都府宇治市大久保町井ノ尻六〇番地の三所在所轄宇治税務署において、同署長に対し、そのような事実はないのに、被相続人の右奥村博司が有限会社同和産業に二億九六五〇万円の債務を負担しており、そのうち右典子において一億五九〇〇万円を、右文浩において一億三七五〇万円をそれぞれ承継したと仮装するなどしたうえ、相続税の課税価格の総額が七四一三万円でこれに対する相続税の総額が八一三万二一〇〇円であり、そのうち右典子の相続財産にかかる課税価格が三六六二万九〇〇〇円でこれに対する相続税額は三九八万四七〇〇円であり、右文浩の相続財産にかかる課税価格が三〇二七万八〇〇〇円でこれて対する相続税額は三三三万四二〇〇円である旨の内容虚偽の相続税の申告書を共同して提出し、右典子の正規の相続税額七四一九万八四〇〇円と同人の右申告税額との差額七〇二一万三七〇〇円及び右文浩の正規の相続税額六二九九万八六〇〇円と同人の右申告税額との差額五九六六万四四〇〇円を納期限までに納付せず、もって不正の行為により、それぞれ右同額の税を免れたものである。
(証拠の標目)
被告人の当公判における供述のほか、記録中の証拠等関係カード(検察官請求分)に記載の番号1ないし26、28、32、33、38ないし44の各証拠
(法令の適用)
罰条
それぞれ刑法六五条一項、六〇条、相続税法六八条一項
観念的競合の処理
刑法五四条一項前段、一〇条(一罪として犯情の重い奥村典子の相続税のほ脱の罪の刑で処断)
刑種の選択
懲役と罰金の併科刑、なお罰金につき情状により相続税法六八条二項
宣告刑
懲役一年及び罰金八〇〇万円
労役場留置
罰金刑につき刑法一八条(金二万円を一日に換算した期間)
刑の執行猶予
懲役刑につき刑法二五条一項(三年間)
よって、主文のとおり判決する
昭和六一年三月一八日
(裁判官 森岡安廣)