京都地方裁判所 昭和60年(わ)924号 判決 1986年11月28日
本籍・住居
京都市伏見区醍醐辰己町二一番地の一四
衣料品等販売業
村井信秀
昭和五年七月一四日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官福嶋成二出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金四〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となる事実)
被告人は、全日本同和会京都府・市連合会辰己支部事務局長であるが、
第一 小西英次、同連合会会長鈴木元動丸、同連合会事務局長長谷部純夫及び同連合会事務局次長渡守秀治らと共謀のうえ、右小西がその所有する京都府長岡京市今里三丁目一一番一ほか五筆の田及び山林を昭和五九年三月二二日から同年一一月一五日までの間に三億〇三一七万五〇〇〇円で売却譲渡したことに関して、右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右小西の実際の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は二億七〇四五万六二五〇円、総合課税の総所得(配当所得、給与所得)金類は五三万六〇〇〇円で、これに対する所得税額は八三七〇万三〇〇〇円であるにもかかわらず、株式会社ワールドが有限会社同和産業(代表取締役鈴木元動丸)から三億円の借り入れをし、その債務について右小西が連帯保証人となり、右ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同年一一月二〇日二億四〇〇〇万円履行したが、右ワールドに対する求償不能により同額の損書を被った旨仮装するなどして、同六〇年一月二二日京都市右京区西院上花田町一〇番地一所轄右京税務署において、同署長に対し、右小西の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は三八〇一万六二五〇円、総合課税の総所得金額は五三万六〇〇〇円で、これに対する所得税額は源泉徴収税額八万八〇〇〇円を除いて七五七万一五〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右正規の所得税額八三七〇万三〇〇〇円との差額七六一三万一五〇〇円を免れ
第二 村井幸男、右鈴木元動丸、右長谷部純夫、右渡守秀治らと共謀のうえ、右村井幸男がその所有する同市伏見区醍醐合場町二八番ほか一筆の田につき同五七年一月一一日代金一億八二四九万円で売却する契約を締結して同月一六日右代金を受け取り、同五九年七月二七日及び同年八月二日所有権移転登記をしたことから、右売却による譲渡益を五九年分の譲渡所得として申告するに際し、その所得税を免れようと企て、右村井幸男の実際の五九年分分離課税の長期譲度所得金額は一億七一〇七万四三五〇円、総合課税の総所得(事業所得)金額は揖失四九五万一七二八円で、これに対する所得税額は四六六八万五六〇〇円であるにもかかわらず、右ワールドが右同和産業から二億円の借り入れをし、その債務について右村井幸男が連帯保証人となり、右ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同五七年四月三〇日一億七五〇〇万円履行したが、右ワールドニ対する求償不能により同額の損書を被った旨仮装するなどして、同六〇年三月一八日、同市伏見区鑓屋町所轄伏見税務署において、同署長に対し、右村井幸男の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は五八万二三五〇円で、これに対する所得税額はない旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為てより右正規の所得税額四六六八万五六〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する各供述調書(検第五〇号、第五一号の二通)
一 長谷部純夫の各証人尋問調書謄本(検第五三号、第五四号の二通)
判示第一事実につき
一 被告人の検祭官に対する各供述調書(検第一五号ないし第一九号の五通)
一 松山元、松山忠國、沢井利之、小西英次(検第六号ないし第一〇号の五通)鈴木元動丸(検第二〇号)、長谷部純夫(検第一一号)及び岩井喜代美の検察官に対する各洪述調書(岩井を除いて全部謄本)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(検第一号)、証明書(検第二号)各謄本及び報告書(検第五二号)
判示第二事実につき
一 被告人の検察官に対する各供述調書(検第四五号ないし第四九号の五通)
一 証人勝本勇及び同長谷部純夫の当公判廷における各共述
一 安東謙(二通)、村井英雄、村井秀明、鈴木元動丸(検第四四号)、長谷部純夫(検第四三号)及び勝本勇(抄本)の検察官に対する各供述調書
一 須田良蔵、村井正美、村井ひさみ、村井幸男(七通)、内藤光義及び長谷部純夫(検第四〇号、第四二号の二通)の検察官に対する各供述調書謄本
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(検第二一号)及び証明書(検第二二号)各謄本
(法令の適用)
一 罰条 判示第一、第二
各所得税法二三八条一項、刑法六〇条(罰金刑併科)
一 併合罪の処理
刑法四五条前段、(イ)懲役刑につき刑法四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第一の罪の刑に加重)(ロ)罰金刑につき刑法四八条二項
一 労役場留置
刑法一八条
一 懲役刑の執行猶予
刑法二五条一項
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 萩原昌三郎)