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京都地方裁判所 昭和60年(わ)981号 判決 1986年7月11日

本籍

京都市山科区西野楳本町五〇番地の九四

住居

同市西京区大枝西新林町一丁目九番地の五

不動産仲介業

松本芳憲

昭和七年八月一六日

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官山田廸弘出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役六月及び罰金一〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、井上博文、宇津竹次郎、全日本同和会京都府・市連合会会長鈴木元動丸、同連合会事務局長長谷部純夫及び同連合会事務局次長渡守秀治らと共謀の上、右井上がその所有する京都市右京区西京極東側町八・九番合地ほか三筆の宅地を昭和五八年八月三一日二億〇、〇七九万二、四〇〇円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右井上の実際の昭和五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億八、四二六万四、〇三〇円、総合課税の総所得(不動産所得、給与所得)金額は六一六万九、二〇〇円、山林所得金額は二八一万七、五〇〇円で、これに対する所得税額(ただし、源泉徴収分を除く、以下同)は五、七三五万五、一〇〇円であるにもかかわらず、株式会社ワールドが有限会社同和産業(代表取締役鈴木元動丸)から二億円の借入れをし、その債務について右井上が連帯保証人となり、右ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同五八年一一月三〇日一億七、〇〇〇万円を履行したが、右ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同五九年二月一四日、京都市右京区西院上花田町一〇番地の一所在所轄右京税務署において、同署長に対し、右井上の昭和五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一、四五六万四、〇三〇円、総合課税の総所得金額は六一六万九、二〇〇円、山林所得金額は二八一万七、五〇〇円で、これに対する所得税額は三七三万四、七〇〇円(ただし、所得税額三七三万四、七四〇円と誤って記載)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額五、七三五万五、一〇〇円との差額五、三六二万〇、四〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書三通

一  第四回公判調書中の証人井上博文の供述部分

一  井上博文(一〇通)、松井婚次、桐村齢子、宇津竹次郎(二通)、渡守秀治、長谷部純夫、鈴木元動丸及び吉村松雄の検察官に対する各供述調書謄本

一  井上博文の大蔵事務官に対する質問てん末書謄本六通

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書、証明書及び報告書(いずれも謄本)

(法令の適用)

被告人の判示所為は刑法六五条一項、六〇条、所得税法二三八条一項に該当するところ、所定の懲役と罰金とを併科することとし、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役六月及び罰金一〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、刑法一八条により金五、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文により被告人に負担させることとする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 濱田武律 裁判官 安井久治 裁判官 金村敏彦)

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