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京都地方裁判所 昭和61年(行ク)9号・昭61年(行ク)13号 決定

主文

一  被申立人京都市建築審査会が、申立人の京都市右京区嵯峨朝日町二―三の土地上の建築計画につき京都市建築主事が昭和六〇年一一月二九日付確認番号第八五右〇八七六号でした建築基準法六条の適合確認処分を取消した、昭和六一年一〇月九日付裁決は、本案判決確定(ただし、当庁昭和六一年(行ウ)第二二号事件の上訴審または差戻審で申立人の請求を棄却する判決が言渡された場合は、その言渡)に至るまで、その効力を停止する。

二  申立人のその余の申立を却下する。

三  訴訟費用は、申立人の支出した額の二分の一は被申立人京都市建築審査会の負担、被申立人京都市開発審査会の支出した額は申立人の負担、訴訟参加人らの支出した額の二分の一は申立人の負担、その余の額は支出者の負担とする。

理由

一申立人の求める決定

1  被申立人京都市開発審査会が、申立人の京都市右京区嵯峨朝日町二―三の土地上の建築計画につき都市計画法二九条の開発許可は不要である旨の京都市長の昭和六〇年一〇月一七日付証明書交付処分を取消した、昭和六一年一〇月三日付裁決は、本案判決確定に至るまで、その効力を停止する。

2  被申立人京都市建築審査会が、申立人の前項の建築計画につき京都市建築主事が昭和六〇年一一月二九日付確認番号第八五右〇八七六号でした建築基準法六条の適合確認処分を取消した、昭和六一年一〇月九日付裁決は、本案判決確定に至るまで、その効力を停止する。

3  訴訟費用は被申立人らの負担とする。

二基本的な事実関係

次の事実は、本件記録上明らかである。

1  申立人は、市街化区域内である京都市右京区嵯峨朝日町二―三の土地上に、敷地面積七六四六・九四平方メートル、鉄筋コンクリート造り地下一階地上七階建て、一六九戸(店舗二戸を含む)の共同住宅(以下、本件建物という)の建築を計画した。

2  京都市長は、昭和六〇年一〇月一七日、申立人に対し、右建築計画について土地の区画形質の変更がないとして、都市計画法二九条の許可は不要である旨の証明書(以下、本件開発許可不要証明書という。)を交付した。

3  申立人は、昭和六〇年一〇月二五日、右証明書を添付して、右建築計画につき建築確認の申請をし、京都市建築主事は同年一一月二九日、確認番号第八五右〇八七六号で、この建築計画が法規に適合している旨の建築基準法六条の確認(以下、本件建築確認という。)をした。

4  昭和六一年(行ウ)第二二号事件訴訟参加人四名は、昭和六〇年一一月六日に本件建築確認に対し、被申立人建築審査会に審査請求をした。

5  昭和六一年(行ウ)第一九号、第二二号事件訴訟参加人二一名ほかの者は、昭和六〇年一二月一二日に本件開発許可不要証明書交付に対し、被申立人開発審査会に審査請求をした。

6  訴訟参加人二一名は、本件建物建築予定地に近接して居住する者である。

7  被申立人開発審査会は、昭和六一年一〇月三日、訴訟参加人二一名の審査請求に基づき、本件建物の建築により「区画形質の変更」が生じることを理由として、本件開発許可不要証明書交付処分を取消す旨の裁決(以下、本件開発許可不要証明書取消裁決という。)をした。

8  被申立人建築審査会は、昭和六一年一〇月九日、右4の審査請求に基づき、本件開発許可不要証明書交付が右7の裁決により取消されたことを理由として、本件建築確認を取消す旨の裁決(以下、本件建築確認取消裁決という。)をした。

三本案の理由

本件開発許可不要証明書取消裁決は、被申立人開発審査会に本件開発許可不要証明書交付に対する審査請求を審査する権限がなく、訴訟参加人には審査請求適格がないとの点において違法であり、本件建築確認取消裁決は、右証明書の失効は建築確認取消の理由とはならず、そのうえ本件開発許可不要証明書取消裁決は違法であつて取消されるべきものであり、また本件建築計画により「土地の区画形質の変更」が生じないとの点において違法であるとの理由により、当裁判所は、本日、右二つの裁決を取消す判決を言渡した。

四効力停止の必要性

1  本件記録によると、次の事実が疎明される。

ア  申立人は、本件建物の敷地の購入資金として一四億五七三一万円余を、本件建物設計費として三七〇五万円を、本件建物建築費として既に五億四三二〇万円の計二〇億三七五六万円余を支出した。そして、これらの資金として株式会社日本興業銀行から、昭和六〇年九月二五日、七億五〇〇〇万円を、利息年七パーセント、弁済期昭和六二年三月二五日の約で、昭和六一年一月二五日、七億五〇〇〇万円を、利息年四・五パーセント、弁済期昭和六二年一月二四日の約で、借受けた。

イ  申立人は、昭和六〇年一一月二九日、本件建物につき建築確認を受けたが、昭和六一年二月から五月迄の間建築工事を行なつただけで、訴訟参加人らの要望及び被申立人開発審査会の勧告により、それ以上の工事はしなかつた。勿論、本件建築確認が裁決により取消された後は、その工事はしていない。本件建物は、これらの工事停止がなければ、昭和六二年二月に完成の予定であつたが、工事が再開されても完成迄になお一〇月程を要する。

ウ  申立人は、昭和四五年四月に設立され、建物の建築、土地建物の売買などを業とする株式会社であり、その資本金は一億八〇〇〇万円である。その昭和六〇年七月から昭和六一年六月迄の決算では、売上高一四三億七四九三万円余、当期損失一二七七万円余である。

2  右疎明事実によると、申立人は、既に二〇億円余を支出しているが、本件建築確認取消裁決のために、本件建物の建築をして、販売し、資金を回収することが出来ない。そして、現状では、本案判決確定までの間、本件建物の敷地を賃貸するなどして利益を挙げることもできない。

この点からすると、申立人は、既に工事が遅延して損害を受けたことのほか、本件建築確認取消裁決の効力が停止されなければ、今後、本案判決確定にいたるまで、既に支出した二〇億円余に対する借入金利相当額の損害を受け続けるものと言える。この借入金利利率は前記1アの事実によると、年五・七五パーセント程度と解されるから、申立人の受ける損害は年一億一五〇〇万円になる。当裁判所は本日本件建築確認取消裁決を取消す判決をしたが、この判決に対し上訴があれば、審理に相当の期間を要し、この間毎年この額の損害を受けることとなる。また、仮に本件建築を断念したとすると、既に支出した建築費、設計費相当額のほか、土地購入費用に対する断念迄の借入金利相当額の損害を受けることになる。

これらの損害は金銭的なものであるが、この損害は本案判決では勿論、損害賠償訴訟によつても回復することは不可能と解される。本件建築確認取消裁決が違法とされるのは、法律上の解釈によるものであるところ、法解釈は幾つかの可能性があるから、ある解釈が裁判所によつて採用されなかつたとしても、それと異なる解釈を採つた被申立人らや訴訟参加人らに、過失があつたとして損害賠償を求めることは困難である。

そうすると、申立人の右巨額の損害を防ぎ、または回復するためには、行訴法二五条の効力停止によるほかはなく、本件建築確認取消裁決を違法として取消す一審判決があつたことを考慮すると、主文一項の範囲で、この効力を停止するのが相当である。

3  本件開発許可不要証明書は、本件建築計画が都市計画法二九条の規定に適合していることを公権力をもつて確定する効力を有しないから、これを取消した本件開発許可不要証明書取消裁決の効力を停止する必要性は存しないというべきである。

五結論

以上判断のとおり、本件申立は、主文一項の限度で正当であるから、この部分を認容し、その余は失当であるから却下することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条、九二条本文、九三条一項本文、九四条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官井関正裕 裁判官田中恭介 裁判官榎戸道也)

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