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京都家庭裁判所 平成11年(少)1332号 1999年8月23日

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、A、B、C、D、E、F、G及びH(いずれも未成年)と地元の中学校に侵入し、同校の窓ガラスを割ることを企て、その旨共謀の上

第1  平成11年6月29日午前1時20分ころ、正当な理由がないのに、京都市○○区○○町×丁目×番地所在の京都市立○○中学校校長Iが看取する同校の西側ブロック塀を乗り越えて、同校敷地内に侵入し

第2  前同日午前1時30分ころ、同校敷地内において、右学校長管理の同校の南校舎北側窓ガラス90枚(時価合計113万1,000円相当)をグランド整備に使用する鉄製の通称「トンボ」等を使用して割り、もって数人共同して器物を損壊し

たものである。

(法令の適用)

第1の事実につき 刑法60条、130条前段

第2の事実につき 暴力行為等処罰に関する法律1条(刑法261条)

(処遇の理由)

本件は、非行仲間9人がたむろするうち、かつてやったことがあるという者の提唱にしたがって、市立中学校へ夜間不法侵入して校舎の窓ガラス90枚を損壊したという事案である。前記Eが言い出したことであるが、誰一人やめようと言ったものはなく、本件は、保護処分の前歴を有する不良連中のしでかした、学校という公共建築に対する大胆不敵な非行であって、犯情はまことに芳しくない。

少年も、平成10年8月原動機付自転車の窃盗及び占有離脱物横領等で保護観察(短期)となり、更に本年5月窃盗、占有離脱物横領、無免許運転の事犯で保護観察処分を受けたものであるが、特に後者の審判で在宅処遇とした課題である不良仲間のいる保護者の元に帰らないこと、監督を誓ったJ方でまじめに働き短期間で仕事をやめないこと、不良交遊を慎むこと等の遵守事項をわずか一ヶ月で反故にし、本件不良仲間らと交遊するうち本件非行に至ったものである。

少年の知的能力の低さから社会的適応が困難であることに加えて、保護者の監護意識及び能力の乏しさに鑑みると、今後も同種非行を繰り返すおそれが強い。したがって、直ちに施設に収容し矯正教育を施すのが相当である。少年の前記資質面、不良交友への親和性、母の監護能力の乏しさ等に鑑みると、少年の健全育成を図るためには、施設でじっくりと規範意識の覚醒及び社会適応力の向上を目指して矯正教育を施す必要性が高い。

なお、本件共犯者らの処遇のバランスについて付言する。前記D及びHは保護観察、Gは児童自立支援施設送致、その余の者らは全て中等少年院(短期)送致となり、本少年だけが中等少年院送致で短期処遇勧告がないことになる。このことが一見保護処分のバランスを欠くようであるが、少年の健全育成を図るためには、本件非行のみを見るべきではなく、少年の保護処分歴、少年及び保護者のその受け止め方及び少年の資質、保護環境等の違いを考慮すべきであって、他の少年との本件差異が生じることはやむを得ないところである。本少年に対する短期処遇では施設収容の効果も中途半端に終わるおそれが高い。周囲の者は、少年が抱くであろうこの点に関する不満感をあおるのではなく、これを昇華させるように務めるのが肝要である。

よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して、主文のとおり決定する。

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