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京都家庭裁判所 平成17年(家)262号 2005年8月24日

主文

1  相手方は、申立人に対し、次のような方法で申立人と未成年者らが面接交渉することを許さなければならない。

(1)  面接日 <1>毎年の3月と7月を除くその余の月の第4日曜日

<2>毎年の3月と7月の第4土曜日から第4日曜日

<3>ただし、未成年者らの事情により不都合が生じた場合には、それぞれ翌週の同じ曜日とする。

(2)  面接の時間 前項<1>については、午前11時から同日午後4時の間

前項<2>については、土曜日の午後2時から日曜日の午後2時の間

(3)  なお、上記の日時に未成年者らの事情により不都合が生じた場合には、申立人と相手方は、代替の面接日又は面接時間を協議によって定めるものとする。

(4)  受渡し方法 相手方又は相手方の指定する相手方の親族(内縁の妻を含む)は、<1>については面接の日の午前11時に、<2>については同午後2時に、京都府○○市△△所在の「□□」駐車場において、申立人に未成年者らを引き渡し、申立人は、上記面接交渉終了時刻に、同所において、未成年者らを相手方又は相手方の指定する相手方の親族(内縁の妻を含む)に引き渡すものとする。

ただし、申立人と相手方との協議により、引き渡し場所を変更することができる。

2  相手方は、申立人が、未成年者らとの面接交渉の際に、誕生日やクリスマスにプレゼントを渡すのを認めなければならない。

ただし、プレゼントは1人につき1万円(1回分)以内とする。

3  申立人は、未成年者らの保育園や小学校の行事に参加したりするなど、前項以外の行動をとることは差し控えなければならない。

理由

第1  申立人は、相手方に対し、申立人と未成年者らの面接交渉する時期、方法等につき定める、との審判を求めた。

第2  本件記録によれば、次の事実が認められる。

1  申立人と相手方は、平成9年5月14日に婚姻届出をして夫婦となり、未成年者らが出生したが、平成15年10月30日に、未成年者らの親権者をいずれも相手方と定めて協議離婚した。

2  申立人と相手方との上記離婚に際し、相手方は、申立人に対し、未成年者らと面接交渉することを認めており、現実に、同年11月から、1か月に1回、相手方が申立人の実家に未成年者らを連れてきて、同所で未成年者らを申立人に引き渡し、申立人と未成年者らが同所で1泊した後、翌日の夕食後に、相手方が未成年者らを迎えにくるという方法で面接交渉が行われていたが、平成16年9月に面接交渉が行われて後、相手方は、面接交渉を拒否するようになった。

3  そこで、申立人は、本件の調停申立て(当庁平成16年(家イ)第××号、第××号事件)をしたが、第2回目の調停期日である平成17年1月24日に不成立となり、本審判に移行した。

4  相手方が、申立人と未成年者らとの面接交渉を拒否するようになった要因は、相手方によれば、申立人と未成年者らが面接交渉した際に、未成年者Dが、「帰らない。」と言っていたところ、相手方が未成年者らを連れ帰ろうとした際、申立人が、別れ際に未成年者らに対し「お母さんに会えへんようになるよ。」などと言ってしまったことがあった。相手方は、そのことをもって約束違反であるとして、申立人と未成年者らとの面接交渉を拒否したようである。

そして、本件の調停期日において、未成年者らが中学生になるか少なくとも小学校の上学年になるまで面接交渉を待ってほしいとの意見を述べていたが、その後の当庁調査官による調査の際、相手方申し出の条件を受け入れるなら面接交渉を認めるという意見に変わったが、その条件というのは、申立人は、未成年者らの小学校や幼稚園には行かないこと、小学校や幼稚園の行事には一切参加しないこと、面接交渉の際、プレゼントは一切渡さないこと、宿泊付き面接交渉は認めないこと、養育料として月額4万円以上支払うこと、離婚後の養育料として60万円(=4万円×15か月。なお、その後100万円=5万円×20か月に変更。)を支払うこと等であったところ、申立人において、宿泊付き面接交渉をしたいとの要望を固守し、同条件を受け入れることはできないといって拒否している。

なお、相手方は、申立人に対し、平成17年7月4日に未成年者らの養育料を求めて審判申立て(当庁平成17年(家)第××号、同第××号事件)をしたが、付調停(当庁平成17年(家イ)第××号、同第××号事件)となった。

なお、相手方は、現在、婚姻予定の女性と同居しており、未成年者らも一応同女性に懐いているようであるし、婚姻したときには、同女性は専業主婦になる予定とのことである。

5  申立人は、その後も、未成年者らが通園する保育園を相手方には無断で訪れ、当初は保育園側の配慮で面会ができたが、その後は、相手方からの連絡で保育園側も面会を認めなくなったことがあり、未成年者Dが小学校に入学してからは、入学式に小学校の付近まで出かけたりして、道端で同未成年者と出会ったことがある。

申立人は、宿泊付きの面接交渉を希望するほか、通常の面接交渉とは別途、冠婚葬祭の際には未成年者らを同道させたいこと、電話、手紙は1か月に2回したいこと、毎年12月21日にも面接交渉したいこと、未成年者らの誕生日とクリスマスにはプレゼントを渡したいこと等述べている。

6  その後、平成17年4月25日に審判期日が開かれたが、相手方は、ルール作りさえ出来れば、申立人と未成年者らとの面接交渉を認めるが、宿泊付きの面接交渉は、現段階では認めることはできず、申立人と未成年者らとの面接交渉の経緯を見て判断したいと述べるなど柔軟に対応しようとの意見となり、当職の斡旋もあって、平成17年5月22日と同年6月26日に、試行的に申立人と未成年者らとの面接交渉が行われることになった。その際の待ち合わせ場所が、主文掲記の「□□」駐車場であった。

相手方は、上記面接交渉後の審判期日では、申立人が未成年者らの引き渡し時間を守らず、第1回目は5分、第2回目は10分ないし15分遅刻したこと、申立人は未成年者Dにプレゼントを2つか3つ買ったのに、1つしか持って帰らせず、かつ、同未成年者には複数買ったことを内緒にしておくように言ったとして、そのことに不満が残ったこと等を主張し、本審判期日後に、申立人と未成年者らとの面接交渉に消極的な内容の意見書を提出しているところ、他方、申立人は、引き渡しが遅れたのは、道が混んでいたこと、プレゼントは1万円の範囲内で2つ買ったが、1つを渡すのを忘れてしまった、2つ買ったことを相手方に内緒にするようにと未成年者らに述べたことはないこと等を述べ、些細なことで対立が見られた。

第3  判断

1  以上の事実によれば、申立人と相手方との協議離婚後、約10か月間は、相手方においても1泊付きでの面接交渉を認めていたのであるが、面接交渉の際に、未成年者らが申立人のもとから相手方のもとへ帰りたがらなかったことに端を発し、その場でのやりとりを捉えて相手方が申立人との面接交渉を拒否するに至ったものである。しかし、その後、相手方は、当庁調査官による調査の際や審判の席上では、やや消極的ではあるものの、申立人との面接交渉を条件付きながら認めるようになってきたこと、申立人と未成年者らとの面接交渉において、殊更未成年者らの福祉を害するようなことは全く見られないこと等に照らせば、原則的には、申立人と未成年者らとの面接交渉は認められるべきである。

相手方は、当初は、申立人の言葉を捉えて、約束違反であると述べていたが、相手方においても、未成年者らの気持ちを察してやれば、とりつくろう方法があったと思料されるのに、そのような言動をとっていないこと、また、審判の途中で行なわれた試行的面接の際に、申立人が約束の時間より遅れたことや、プレゼントでの言動を問題にしているところ、確かに、面接交渉の時間がそれほど短時間ではなかったのであるから、この点は申立人においても十分注意すべきであるし、プレゼントの点もすべて明らかにしていれば何ら問題がないようなことであることからすれば、申立人において、不信感を抱かせた点は反省すべきであるが、今後は、本審判で決定するような内容で、ルールが確立されれば、そのようなことは防げるであろうと期待できるから、これらによって本審判の結論を左右しないというべきである。

2  次に、その方法について判断するに、相手方において、婚姻予定の女性がおり(内縁の妻)、婚姻すれば、相手方と同女性と未成年者らにおいて、新たな家庭が築かれることになるから、申立人との面接交渉によって、未成年者らの心理に不安を抱かせないようにする必要性があるが、申立人と未成年者らの面接交渉がスムーズにいき、未成年者らにおいて、申立人と会うことが負担にならないように、また、のびのびした気持ちで面接することができるようになれば、そのような危惧はなくなるのであり、そのためにも、ある程度の頻度と、時には宿泊付きでゆったりした気持ちで面接交渉させることとするのが相当である。

そこで、面接交渉の回数を毎月1回とし、うち、未成年者らの休暇時期にあたる3月と7月には宿泊付きでの面接交渉を認めるのが、未成年者らの福祉に合致すると思料される。

そして、具体的な方法としては、審判途中においてなされた試行的面接交渉での場所である「□□」での待ち合わせとするなど、主文掲記の方法で行うことを決めておくこととする。

3  なお、これまでの間における面接交渉でのトラブルやその他双方の気持ちを考慮し、主文2項及び3項のとおり、申立人から未成年者らへのプレゼントの件や申立人の小学校等の行事への参加につき、ルール化しておく。

第4  よって、主文のとおり審判する。

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