京都家庭裁判所 昭和30年(家)569号 審判 1955年7月26日
申立人 大田ヨシ(仮名)
相手方 中村吉介(仮名)
未成年者 中村洋子(仮名)
主文
未成年者中村洋子の親権者を父中村吉介を毋である申立人大田ヨシに変更する。
理由
本件申立の要旨は上記未成年者中村洋子は申立人と相手方との間の嫡出子長女であるが、申立人と相手方とは昭和二七年九月○○日協議離婚するにあたり洋子の親権者を父である相手方と定め相手方の許において養育することとし爾来相手方は、その手許で昭和二九年五月頃まで洋子を監護養育していたところ、その頃同人を○○児童相談所に預け、同相談所は相手方と協議の上、同年五月末頃洋子の養育を里親に託し、現在里親の許で養育されているが、相手方は里親に対する養育費の支払を全然しないばかりか、洋子の面会にも行かず、毫もこれを顧りみないので申立人は此の際洋子を引き取り申立人の手許において監護教育したいため本件申立に及んだというのである。
当裁判所は調査するに、本件申立書添付の相手方の戸籍謄本の記載、申立人(第一、二回)及び相手方の各審問の結果並びに証人小林正、大田つね、大田ふみ、大田三郎、高田久子、山田スヱの各審問の結果を綜合すれば、未成年者中村洋子は申立人と相手方との間の嫡出子長女であるが、申立人と相手方とは、昭和二七年九月○○日協議離婚をして申立人は、その実家に復帰したが、その際に洋子の親権者を父である相手方と定め相手方の許において同人を養育することとし、爾来相手方はその手許で昭和二九年五月○○日頃まで洋子を監護養育していたところ、その頃相手方は経済上窮していたためにもはやその手許で洋子を監護教育することができなくなつたので同人を○○児童相談所へ保護預けし、同相談所は相手方と協議の上養育費は全部相手方が負担することとして同月二四日洋子を京都府○○郡○○村字○○の里親山田一郎の許え里子として養育を委託し、爾来洋子は現在にいたるまで上記里親の許において監護教育されている。しかし、その里親の家庭には里親の実子で五歳位の男子があるのでその子と洋子との関係がよく行かないために上記里親の許では洋子は素直に養育されることが困難な情況である。そうして相手方は独身で日雇労務者として経済状態もよくなく、上記里親に対する一ヶ月二、三四一円の養育料を全然支払わないばかりでなく、洋子の面会にも一回も行かず、里親に対する文通さえ絶えている状態で、上記里親に委託以後洋子の養育についてはほとんど顧りみない実情である。又一方申立人の実方の家庭には申立人のほかにその実毋と姉夫婦があり、同人等がその手許で洋子を監護教育することを熱望し、経済力も十分あるのでむしろ洋子を上記里親から申立人に引渡させて申立人及びその親族の者をして申立人の実家において洋子の一切の監護教育をさせることは同人のために幸福をもたらすゆえんであることが認められる。そうすると未成年者洋子の利益のため此の際その親権者を変更する必要があるから本件申立を相当として認容し主文のとおり審判する。
(家事審判官 窪田武丕)