仙台地方裁判所 平成元年(わ)428号 判決 1990年3月23日
本籍
仙台市泉区南光台南二丁目一〇番
住居
同泉区松陵二丁目二二番地の三
飲食店経営
山本明夫
昭和一六年二月三日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官五十嵐義治出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金二八〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、「仙台遊機」の名称で中古パチンコ機械の整備販売業を営んでいたものであるが、昭和六〇年分、昭和六一年分及び昭和六二年分の各所得につき、それぞれ、自己の所得税を免れようと企てて、売上金の多くを記帳せずに仮名定期預金や有価証券等に換えるとともに、事情を知らない担当税理士に対し、所得をことさら過少に報告するなどしたうえ、いずれも、仙台市青葉区上杉一丁目の仙台北税務署において、仙台北税務署長に対し
第一 昭和六一年三月一五日、昭和六〇年分の実際の所得金額が七二八九万七〇七八円で、右につき正規に申告すべき所得税の額が三七六七万二三〇〇円であるのに、その所得金額が六〇〇万円で、これに対する所得税の申告納税額が八〇万六〇〇〇円にすぎない旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により、同年分の正規に申告すべき所得税の額と右申告納税額との差額三六八六万六三〇〇円につき所得税を免れ
第二 昭和六二年三月一六日、昭和六一年分の実際の所得金額が九五〇二万二〇三一円で、右につき正規に申告すべき所得税の額が五一一九万一九〇〇円であるのに、その所得金額が七〇〇万円で、これに対する所得税の申告納税額が一〇一万七〇〇〇円にすぎない旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により、同年分の正規に申告すべき所得税の額と右申告納税額との差額五〇一七万四九〇〇円につき所得税を免れ
第三 昭和六三年三月一五日、昭和六二年分の実際の所得金額が六〇六六万三五五一円で、右につき正規に申告すべき所得税の額が二五七五万三〇〇〇円であるのに、その所得金額が六〇〇万円で、これに対する所得税の申告納税額が六六万〇九〇〇円にすぎない旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により、同年分の正規に申告すべき所得税の額と右申告納税額との差額二五〇九万二一〇〇円につき所得税を免れ
たものである。
(証拠の標目)
一 押収してある所得税の確定申告書三枚(平成二年押第二号の一ないし三)
一 検察官作成の脱税額計算書三通及び脱税額計算書説明資料
一 検察官作成の売上、棚卸資産、仕入及び経費に関する各調査書
一 大蔵事務官作成の減価償却費、事業税、不動産所得、利子所得、雑所得、譲渡所得、銀行、預金及び有価証券に関する各調査書
一 検察官作成の実況見分調書
一 検察事務官作成の写真撮影報告書
一 木村一雄、山崎正博、伊藤広司、山本捷子及び下永正典の検察官に対する各供述調書
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一 被告人の検察官に対する供述調書九通
一 被告人の当公判廷における供述
(法令の適用)
被告人の判示所為は各年分ごとに所得税法二三八条一項に該当するところ、いずれについても、所定刑中懲役と罰金の併科を選択する。そして、右は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については、各罪につき、それぞれ所得税法二三八条二項を適用して免れた所得税の額に相当する金額以下で処断することとしたうえ、刑法四八条二項により右の各金額を合算した金額の範囲内で、被告人を懲役一年六月及び罰金二八〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとして、主文のとおり判決する。
(裁判官 本郷元)