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仙台地方裁判所 平成10年(ワ)724号 判決 1999年7月19日

原告

株式会社商工ファンド

右代表者代表取締役

大島健伸

右代理人支配人

石川巌

梅木光孝

被告

有限会社ニューヨーク・インシュアランスセンター

右代表者代表取締役

八木猛

被告

八木猛

右両名訴訟代理人弁護士

小野寺信一

十河弘

右両名訴訟復代理人弁護士

齋藤拓生

主文

一  原告と被告らとの間の仙台地方裁判所平成一〇年(手ワ)第二五号事件について同裁判所が平成一〇年六月一五日言い渡した手形判決を次のとおり変更する。

二  被告らは、原告に対し、合同して金二〇〇万円及びこれに対する平成一〇年三月六日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

三  原告の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は五分し、その三を原告の、その余を被告らの負担とする。

事実及び理由

第一  原告の請求

被告らは、原告に対し、合同して金四九六万三〇一四円及びこれに対する平成一〇年三月六日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  争いのない事実

1  原告は、別紙手形目録記載の約束手形(以下「本件手形」という。)一通を所持している。

2  被告有限会社ニューヨーク・インシュアランスセンター(以下「被告会社」という。)及び被告八木猛(以下「被告八木」という。)は、本件手形を振り出した。

3  原告は、本件手形を平成一〇年三月六日支払場所に呈示した。

4  被告らは、本件手形を振り出す際、株式会社秀実(以下「秀実」という。)を主債務者、秀実の代表者遠藤清勝と被告らを連帯保証人とし、根保証限度額が五〇〇万円と記載された限度付根保証承諾書(甲七。以下「本件承諾書」という。)に署名押印した。本件手形は、被告らについては、根保証限度額はともかくとして、右の保証債務を原因関係とするものである。

二  争点

1  本件手形振出しの際、本件承諾書の根保証限度額の記載にかかわらず、被告の保証責任を二〇〇万円に限定する合意があったか。

(一) 被告らの主張

被告らは、原告の秀実に対する融資枠を三〇〇万円から五〇〇万円に広げるために保証人が必要であるとして協力を依頼され、本件手形とともに本件承諾書に署名押印したが、その際、原告の担当者三浦悟(以下「三浦」という。)との間で、二〇〇万円の限度でしか保証責任を負わないことを合意した。

(二) 原告の主張

根保証限度額が五〇〇万円であることは本件承諾書に明記されていることであり、これを二〇〇万円に限定する合意をすることはあり得ない。

2  根保証限度額が五〇〇万円であるとして、以前から保証人であった文屋俊二(以下「文屋」という。)と合わせて五〇〇万円とする趣旨であり、文屋が保証債務の履行として既に三〇〇万円を支払ったことで、被告らが負担すべき保証責任は二〇〇万円となったか。

3  保証責任の範囲についての詐欺又は錯誤の有無

第三  争点に対する判断

一  まず、争点1について判断すると、証拠(甲一の1、六の1、2、七、八、乙一ないし五、証人文屋、被告本人)によれば、次の事実が認められる。

1  秀実は、飲食店を経営する会社であったところ、平成九年二月二八日、原告から、秀実の代表者遠藤清勝(以下「遠藤」という。)、文屋及び文屋が代表者である有限会社オーエスビー(以下「オーエスビー」という。)を限度額三〇〇万円の根保証の連帯保証人として融資を受けたが、右の保証人だけでは一〇〇万円の融資しか受けられなかった。しかし、他に保証人がいれば五〇〇万円まで融資できるとのことであったため、遠藤は、文屋に保証人の紹介を依頼した。文屋は、高校の先輩として付き合いがあった被告八木に経緯を説明して二〇〇万円の融資の保証を依頼した。被告八木は、遠藤からも二〇〇万円の融資の保証ということで依頼を受けた。

2  被告八木は、以前に文屋の紹介で遠藤の経営する飲食店に一台一六万円のエアータオルを四台設置したことがあったことから、右の二〇〇万円の融資の保証人となることを承諾し、平成九年四月七日、遠藤とともに、被告八木個人及び被告会社の代表者として本件手形及び本件承諾書の連帯保証人欄の作成に応じた。しかし、その際、金額が五〇〇万円となっていることが気になったため、担当者の三浦に対し、二回、口頭で、保証責任は文屋が三〇〇万円、被告八木(被告会社を含む。)が二〇〇万円であることを確認した。秀実に対しては、同日三〇〇万円が融資されたが、翌日の同月八日、一〇〇万円が支払として入金されたため、同日現在の残元本は三〇〇万円となった。

二  右認定に対し、原告の担当者であった三浦は、被告八木から被告らの保証責任の範囲が本件手形及び本件承諾書の五〇〇万円の記載にかかわらず二〇〇万円であることの確認を求められたことを否定した上、被告らとの五〇〇万円の保証契約は文屋との三〇〇万円の保証契約とは別の契約であることを説明し、被告八木は納得して本件手形及び本件承諾書に署名したと証言している。しかし、三浦の証言は、甲号各証の記載内容を超えるものはなく、具体的な記憶に基づくものであるかそれ自体疑わしいものである。これに対し、被告の本人尋問における供述は、具体性があり、保証責任が二〇〇万円の範囲に限られていたことについては、原告から秀実への資金の流れや遠藤、文屋の供述とも一致し、被告八木と遠藤との関係からも合理性がある。被告八木が本件手形や本件承諾書の金額を認識しながらそのまま署名等に応じたのは慎重を欠くことではあるが、口頭では二〇〇万円に限られることを二度も確認した上でのことであれば不自然なことではない。したがって、被告本人の供述は十分信用することができ、三浦の右証言は採用することができず、他に右一の認定を覆すに足りる証拠はない。

なお、甲第一三号証(三〇〇万円の借用証書)を被告八木に示したことについても、三浦は一応そのように証言するが、具体的にはあいまいであり、被告八木が内容を確認した旨の記載もなく、これを否定する被告の本人尋問における供述に照らして採用することはできない。

三 右一に認定した事実によれば、被告らが連帯保証を承諾していたのは、本件手形及び本件承諾書の記載にかかわらず、二〇〇万円の限度にとどまるから、これを超える部分については本件手形は原因関係を欠くものというべきである。

四  よって、争点2、3について判断するまでもなく、原告の請求は、二〇〇万円及びこれに対する本件手形の呈示の日である平成一〇年三月六日から支払済みまで手形法所定の年六分の割合による利息の支払を求める限度で認容すべきであるが、その余は理由がないから棄却すべきであるから、これと異なる手形判決を右のとおり変更することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官佐藤道明)

別紙手形目録<省略>

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