大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台地方裁判所 平成13年(わ)728号 判決 2003年5月28日

主文

被告人を懲役9年に処する。

未決勾留日数中500日をその刑に算入する。

理由

(罪となるべき事実)

第1  被告人は、Aと共謀の上、平成10年3月28日午前3時ころ、京都府長岡京市馬場<番地略>敷地内において、Y1所有に係るシートネット1枚積載の自動二輪車1台(時価合計約30万3000円相当)を窃取した。

第2  被告人は、暴走族「●●会」の総長であったが、Bら13名と共謀の上、平成11年2月14日午前零時50分ころから同日午前1時30分ころまでの間、同市天神<番地略>先から京都市南区吉祥院石原堂ノ後西町<番地略>先までの道路において、自ら前記Bと交代で普通自動二輪車を運転しながら、同車ほか6台の車両を連ね又は並進し、時速約30キロメートルで進行し、この間、同日午前1時12分ころ、同区吉祥院九条町<番地略>先の信号機により交通整理の行われている交差点を西から東に向かい直進するに当たり、一団となって道路一杯に広がり対面赤色信号を無視して直進進行し、折から左方道路から対面青色信号に従って進行してきたY2運転の普通乗用自動車の直前に進出するなどし、同人をして衝突の危険を感じさせて急停車の措置をとらせて停止させ、もって共同して著しく道路における交通の危険を生じさせ、かつ、他人に迷惑を及ぼす行為をした。

第3  被告人は、公安委員会の運転免許を受けないで、同日午前1時33分ころ、同区吉祥院長田町<番地略>付近道路において、前記第2記載の普通自動二輪車を運転した。

第4  被告人は、前記第2の道路交通法違反の罪を犯し、同罪が罰金以上の刑に当たる罪であることを知りながら、自己の処罰を免れようと企て、同月25日ころ、京都府長岡京市今里<番地略>所在の株式会社××堂今里店駐車場において、後輩のC(当時15歳)に対し、「2月14日の暴走で俺の名前があがっている。今度、パクられたら、俺は特少行きや。俺の身代りになってくれ。」などと言って自己の身代わりを依頼し、同人にその旨決意させ、同年3月31日午前9時ころ、同市今里<番地略>先路上において、前記第2の道路交通法違反事件の捜査に当たっていた京都府向日町警察署応援京都府警察本部交通部交通指導課司法警察員警部補Y3に対し、「私が単車を運転して暴走しました。」などと虚偽の事実を申し立てさせ、もって犯人隠避を教唆した。

第5  被告人は、D(以下「D」ともいう。)に売春させ、これに因縁をつけてその売春相手から金員を喝取しようと企て、E、F(以下「F」ともいう。)、G(以下「G」ともいう。)及びDと共謀の上、平成12年4月15日、Dがいわゆるツーショットダイヤルで知り合ったY4(当時25歳、以下「Y4」ともいう。)と共に大阪市東成区深江北<番地略>所在のホテル「△△」に入るや、同人を同ホテル付近で待ち伏せし、同日午後6時過ぎころ、同所において、被告人、F及びGが、同ホテルから出てきたY4に対し、こもごも、「あんた俺の女とやったやろ。」などと因縁をつけ、同人を同区深江北<番地略>所在のレストラン「※※庵深江橋店」まで連行し、同店内において、被告人及びFが、Y4に対し、こもごも、「あんた俺の女とやったんやろ。17歳の女とやったんやから犯罪になるのは分かってるやろ。外には俺たちの連れが待っている。お前を無茶苦茶にさせる。金を持っていないのなら、キャッシュカードを出せ。」などと言い、さらに、被告人が運転する普通乗用自動車後部座席にY4を乗車させ、同市内を走行する同車内において、被告人及びFが、Y4に対し、こもごも、「30万円を出せ。後ろの車には仲間が乗ってるんやぞ。どうなっても知らんぞ。」などと言って金品の交付を要求し、もしこの要求に応じなければ、同人の身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を畏怖させ、よって、同日午後9時40分ころ、同市東淀川区北江口<番地略>路上において、同人から、同人名義の郵便貯金キャッシュカード1枚の交付を受けてこれを喝取した。

第6  被告人は、H(以下「H」ともいう。)と肉体関係をもったY5(当時26歳)から慰謝料名目で金員を喝取しようと企て、H′ことI(以下「I」ともいう。)及びHと共謀の上、同年6月2日午後4時35分ころ、横浜市西区北幸<番地略>先路上において、上記Y5に対し、被告人が、「わしらは探偵だ。この奥さんとやったやろう。浮気調査を夫から頼まれていることで話があるんで喫茶店に行って話しませんか。」、「もし来ないなら、今から若いもんを呼ぶが、若いもんが来たら刺しかねないぞ。」などと言い、引き続き、同日午後5時ころ、同区北幸<番地略>喫茶店「□□」店内において、上記Y5に対し、被告人が、「謝っただけでは済まないよ。いくらなら出せる。」などと言い、上記Y5が「10万円くらいなら出せます。」などと言うと、「そんなはした金じゃだめだ。上の者から言われているので、このままでは帰れない。」などと強い口調で言って更に金員の交付を要求し、もしこの要求に応じなければ上記Y5の身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を畏怖させ、よって、同日午後5時43分ころ、同区南幸<番地略>○○株式会社相鉄横浜カードコーナー前踊場において、同人から現金10万円の交付を受け、さらに、同日午後6時16分ころ、同ビル前歩道において、同人から現金10万円の交付を受けて、現金合計20万円を喝取した。

第7  被告人は、キャッシングカードであるエンカードをだまし取ろうと企て、I、J′ことJ(以下「J」ともいう。)及びHと共謀の上、同年10月10日、千葉市中央区富士見<番地略>株式会社▲▲千葉支店において、Hが、行使の目的で、権限なく、同店備付けのエンカード会員入会申込書兼顧客カード(以下「申込書」という。)用紙の「氏名」欄に「Y6」、「住所」欄に「千葉県山武郡大網白里町みずほ台<番地略>」などとそれぞれ記載し、もってY6作成名義の申込書1通を偽造し、間もなく、同店において、同店従業員Y7に対し、HがY6であって、上記偽造に係る申込書が真正に成立したものであるかのように装って、これをY6名義の国民健康保険被保険者証等と共に提出して行使し、上記Y7を欺いてエンカードを交付させようとしたが、同女から、HがY6本人でないことを看破されたため、その目的を遂げなかった。

第8  被告人は、I及びJと共謀の上、同月18日、宮崎県宮崎郡清武町大字船引<番地略>清武町役場において、Iが、行使の目的で、権限なく、同町役場備付けの住民異動届用紙の「届出人」欄の「本人」と印字された文字を丸で囲んだ上、同欄に「Y8」、「異動日、届出日」の各欄に「12.10.18」、「住所(新)」欄に「宮崎県宮崎郡清武町大字木原<番地略>」、「住所(旧)」欄に「宮崎県宮崎市大字田吉<番地略>」、「氏名」欄に「Y8」などとそれぞれ記載した上、「届出人」欄のY8名下に「Y8」と刻した印鑑を押捺し、もってY8作成名義の同人に関する住民異動届1通を偽造し、同日、同町役場において、同町役場町民生活課戸籍住民係Y9に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届に記載されたY8の住民異動の事実がないので、その情を秘し、かつ、上記住民異動届が真正に成立したものであるかのように装って、先に宮崎市役所係員から不正に入手したY8が宮崎市大字田吉<番地略>から宮崎県宮崎郡清武町大字木原<番地略>に住所を変更したかのように記載された宮崎市長作成に係る内容虚偽の転出証明書と共に提出して行使し、もって同人の住民異動に関する虚偽の申立てをして、情を知らない上記Y9をして、同町役場4階電算室に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第9  被告人は、I及びJと共謀の上、同月30日、前記清武町役場において、Iが、行使の目的で、権限なく、同町役場備付けの住民異動届用紙の「届出人」欄の「代理人」と印字された文字を丸で囲んだ上、同欄に「Y8」、「異動日、届出日」の各欄に「12.10.30」、「住所(新)」欄に「宮崎県宮崎郡清武町新町<番地略>」、「住所(旧)」欄に「宮崎県宮崎市花山手西<番地略>」、「氏名」欄に「Y10、Y11」などとそれぞれ記載した上、「届出人」欄のY8名下に「Y8」と刻した印鑑を押捺し、もってY8作成名義のY10及びY11に関する住民異動届1通を偽造し、同日、同町役場において、同町役場町民生活課戸籍住民係主査Y12に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届に記載されたY10及びY11の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届が真正に成立したものであるかのように装って、先に宮崎市役所係員から不正に入手したY10及びY11が宮崎市花山手西<番地略>から宮崎県宮崎郡清武町新町<番地略>に住所を変更したかのように記載された宮崎市長作成に係る内容虚偽の転出証明書等と共に提出して行使し、もってY10及びY11の住民異動に関する虚偽の申立てをして、情を知らない上記Y12をして、同町役場4階電算室に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第10  被告人は、I及びJと共謀の上、同年11月8日、宮崎県宮崎郡佐土原町大字下田島<番地略>佐土原町役場において、Iが、行使の目的で、権限なく、同町役場備付けの住民異動届用紙の「届出人」欄の「3.代理人」と印字された文字の「3」を丸で囲んだ上、同欄に「Y8」、「届出日、異動日」の各欄に「12.11.8」、「新住所」欄に「宮崎県宮崎郡佐土原町大字下田島<番地略>」、「旧住所」欄に「宮崎県宮崎市恒久<番地略>」、「異動する人の氏名」欄に「Y13」などとそれぞれ記載した上、「届出人」欄のY8名下に「Y8」と刻した印鑑を押捺し、もってY8作成名義のY13に関する住民異動届1通を偽造し、同日、同町役場において、同町役場町民課戸籍住民係Y14に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届に記載されたY13の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届が真正に成立したものであるかのように装って、先に宮崎市役所係員から不正に入手したY13が宮崎市恒久<番地略>から宮崎県宮崎郡佐土原町大字下田島<番地略>に住所を変更したかのように記載された宮崎市長作成に係る内容虚偽の転出証明書等と共に提出して行使し、もって同人の住民異動に関する虚偽の申立てをして、情を知らない上記佐土原町役場町民課戸籍住民係職員をして、同町役場南庁舎3階企画調整課に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第11  被告人は、I及びJと共謀の上、同月14日、宮崎市橘通西<番地略>宮崎市役所において、Jが、行使の目的で、権限なく、同市役所備付けの住民異動届用紙の「窓口にきた人」欄の「本人」と印字された文字を丸で囲んだ上、同欄に「Y15」、「届出年月日、異動日」の各欄に「12.11.14」、「新しい住所」欄に「宮崎市神宮東<番地略>」、「いままでの住所」欄に「鹿児島市錦江台<番地略>」、「異動する人の氏名」欄に「Y15」などとそれぞれ記載した上、「窓口にきた人」欄のY15名下に「Y15」と刻した印鑑を押捺し、もってY15作成名義の同女に関する住民異動届1通を偽造し、同日、同市役所において、同市役所市民部市民課市民第1係主査Y16に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届に記載されたY15の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届が真正に成立したものであるかのように装って、先に鹿児島市役所係員から不正に入手したY15が鹿児島市錦江台<番地略>から宮崎市神宮東<番地略>に住所を変更したかのように記載された鹿児島市長作成に係る内容虚偽の転出証明書と共に提出して行使し、もって同女の住民異動に関する虚偽の申立てをして、人材派遣会社から同市役所に派遣され、住民記録システムの端末機を操作して住民登録に関するデータの入力業務に従事していた情を知らないY17をして、同市役所総務部情報政策課マシン室に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第12  被告人は、I及びJと共謀の上、同月16日ころ、宮崎市花山手西<番地略>Y10方車庫において、同所に駐車してあった同人所有に係る普通乗用自動車1台(時価約300万円相当)を窃取した。

第13  被告人は、Y18の住民登録を名古屋市東区から愛知県西春日井郡西春町に異動させて同町発行に係る同女名義の国民健康保険被保険者証をだまし取ろうと企て、Jと共謀の上、次の1及び2の各犯行に及んだ。

1  同年12月1日、名古屋市東区筒井<番地略>名古屋市東区役所市民課において、Jが、行使の目的で、権限なく、同課備付けの複写式3枚つづりの住民異動届用紙1組の各「届出人」欄の「本人」と印字された文字を丸で囲んだ上、同欄に「Y18」、各「届出日」欄及び各「異動日」欄に「12.12.1」、各「これからの住所」欄に「西春日井郡西春町西之保青野東<番地略>」、各「いままでの住所」欄に「名古屋市東区徳川<番地略>」、各「氏名」欄に「Y18」などとそれぞれ記載した上、「届出人」欄のY18名下に「Y18」と刻した印鑑を押捺し、もってY18作成名義の同女に関する住民異動届1組を偽造し、同日、同区役所において、同区役所市民課窓口係Y19に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届に記載されたY18の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届が真正に成立したものであるかのように装ってこれを提出して行使し、もってY18の住民異動に関する虚偽の申立てをして、情を知らない同区役所市民課窓口係Y20をして、同市中区千代田<番地略>中土木事務所ビル5階に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

2  同日、同県西春日井郡西春町大字西之保字清水田<番地略>西春町役場福祉環境部住民課において、Jが、行使の目的で、権限なく、同課備付けの複写式4枚つづりの「住民異動届1枚、国民健康保険被保険者資格(取得喪失変更)届1枚、国民年金異動届1枚、介護保険資格取得・異動・喪失届1枚」(以下「住民異動届等」という。)用紙1組の各「届出人」欄の「本人」と印字された文字を丸で囲んだ上、同欄に「Y18」、各「届出日」欄及び各「異動日」欄に「12.12.1」、各「新住所」欄に「西春日井郡西春町大字西之保字青野東<番地略>」、各「旧住所」欄に「名古屋市東区徳川<番地略>」、各「氏名」欄に「Y18」などとそれぞれ記載した上、「届出人」欄のY18名下に「Y18」と刻した印鑑を押捺し、もってY18作成名義の同女に関する住民異動届等1組を偽造し、同日、同町役場において、同町役場福祉環境部住民課戸籍住民係長Y21に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届等に記載されたY18の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届等が真正に成立したものであるかのように装って、先に名古屋市東区役所係員から不正に入手した同女が名古屋市東区徳川<番地略>から愛知県西春日井郡西春町大字西之保字青野東<番地略>に住所を変更したかのように記載された名古屋市東区長作成に係る内容虚偽の転出証明書と共に提出して行使し、もって同女の住民異動に関する虚偽の申立てをし、かつ、国民健康保険被保険者証の交付を申請し、情を知らない同町役場福祉環境部住民課課長補佐Y22をして、同町役場2階コンピューター室に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供するとともに、同課国民健康保険係主査Y23らをしてY18本人の正規の国民健康保険被保険者証の交付申請であると誤信させ、よって、同日、同町役場において、同役場係員から西春町長作成に係るY18名義の国民健康保険被保険者証1通の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。

第14  被告人は、借入金名目で金員をだまし取ろうと企て、Jと共謀の上、次の1ないし3の各犯行に及んだ。

1  同月5日、Jが、福岡市博多区店屋町<番地略>■■株式会社お客様サービスセンターに電話をかけて、同サービスセンター係員に対し、Y18と偽名を名乗り、かつ、借入金を返済する意思及び能力がないのをあるかのように装って、金員の借入を申し込み、上記係員らをしてその旨誤信させ、よって、同月6日、被告人らが不正に開設した愛知県春日井市鳥居松町<番地略>▽▽春日井支店のY18名義の普通預金口座に現金19万9328円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。

2  同月5日、Jが、名古屋市千種区内山<番地略>株式会社▼▼今池支店に電話をかけ、同店店員Y24に対し、前記1と同様に装って、金員の借入を申し込み、上記Y24らをしてその旨誤信させ、よって、同月6日、Y18名義の前記普通預金口座に現金39万9800円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。

3  同月5日、愛知県春日井市鳥居松町<番地略>株式会社▲▲春日井支店において、Jが、同店店員Y25に対し、前記1と同様に装い、前記第13の2のとおりだまし取ったY18名義の国民健康保険被保険者証を提示するなどして金員の借入を申し込み、上記Y25らをしてその旨誤信させ、よって、間もなく、同所において、同女から現金10万円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。

第15  被告人は、Y26の住民登録を名古屋市瑞穂区から愛知県愛知郡長久手町に異動させて同町発行に係る同女名義の国民健康保険被保険者証をだまし取ろうと企て、Jと共謀の上、次の1及び2の各犯行に及んだ。

1  平成13年1月15日、名古屋市瑞穂区瑞穂通<番地略>名古屋市瑞穂区役所市民課において、Jが、行使の目的で、権限なく、同課備付けの住民異動届用紙の「届出人」欄の「本人」と印字された文字を丸で囲んだ上、同欄に「Y26」、「届出日、異動日」の各欄に「13.1.15」、「これからの住所」欄に「愛知郡長久手町井堀<番地略>」、「いままでの住所」欄に「名古屋市瑞穂区十六町<番地略>」、「氏名」欄に「Y26」などとそれぞれ記載し、もってY26作成名義の同女に関する住民異動届1通を偽造した上、同日、同区役所において、同区役所市民課窓口係Y27に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届に記載されたY26の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届が真正に成立したものであるかのように装ってこれを提出して行使し、もってY26の住民異動に関する虚偽の申立てをして、情を知らない同区役所市民課Y28をして、前記中土木事務所ビル5階に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

2  同日、同県愛知郡長久手町大字岩作字城の内<番地略>長久手町役場住民課において、Jが、行使の目的で、権限なく、同課備付けの住民異動届用紙の「届出人」欄に「Y26」、「届出日、異動日」の各欄に「13.1.15」、「新住所」欄に「愛知郡長久手町井堀<番地略>」、「旧住所」欄に「名古屋市瑞穂区十六町<番地略>」などとそれぞれ記載し、もってY26作成名義の同女に関する住民異動届1通を偽造した上、同日、同町役場において、同町役場住民課住民係Y29に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届に記載されたY26の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届が真正に成立したものであるかのように装って、先に名古屋市瑞穂区役所係員から不正に入手したY26が名古屋市瑞穂区十六町<番地略>から愛知県愛知郡長久手町井堀<番地略>に住所を変更したかのように記載された名古屋市瑞穂区長作成に係る内容虚偽の転出証明書と共に提出して行使し、もって同女の住民異動に関する虚偽の申立てをし、かつ、国民健康保険被保険者証の交付を申請し、情を知らない上記Y29をして、同町役場1階電子計算機室に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせるとともに、同課国民健康保険係長Y30らをしてY26本人の正規の国民健康保険被保険者証の交付申請であると誤信させ、よって、同日、同町役場において、同役場係員から長久手町長作成に係るY26名義の国民健康保険被保険者証1通の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。

第16  被告人は、借入金名目で金員をだまし取ろうと企て、Jと共謀の上、同月23日、名古屋市千種区内山<番地略>株式会社▲▲今池支店において、同店店員Y31に対し、Jが、Y26と偽名を名乗り、かつ、借入金を返済する意思及び能力がないのをあるかのように装い、前記第15の2のとおりだまし取ったY26名義の国民健康保険被保険者証を提示するなどして金員の借入を申し込み、上記Y31らをしてその旨誤信させ、よって、間もなく、同所において、同女から現金30万円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。

第17  被告人は、金員等をだまし取ろうと企て、J及びKと共謀の上、同年3月12日、福岡県久留米市東町<番地略>株式会社▲▲久留米支店において、上記Kが、行使の目的で、権限なく、同店備付けのエンカード会員入会申込書兼顧客カード(以下「申込書」という。)用紙の「氏名」欄に「Y32」、「住所」欄に「三潴郡三潴町大字西牟田<番地略>」、「本日借入希望額・万円」欄に「50」などとそれぞれ記載し、もってY32作成名義の申込書1通を偽造し、間もなく、同店において、同店従業員Y33に対し、上記KがY32であって、上記偽造に係る申込書が真正に成立したものであるかのように装って、これをY32名義の国民健康保険被保険者証等と共に提出して行使し、上記Y33を欺いて現金50万円及びエンカードを交付させようとしたが、同人らから、上記KがY32本人でないことを看破されたため、その目的を遂げなかった。

第18  被告人は、I、J及びL(以下「L」ともいう。)と共謀の上、同年6年14日、宮城県名取市増田字柳田<番地略>名取市役所駐車場に駐車中の軽四輪乗用自動車内において、Lが、行使の目的で、権限なく、同市役所備付けの住民異動届用紙の「届出人資格」欄の「1.本人」と印字された文字の「1」を丸で囲んだ上、「届出人氏名」欄に「Y34」、「届出年月日、異動年月日」の各欄に「13.6.14」、「住所(新)」欄に「名取市増田<番地略>」、「住所(旧)」欄に「泉区上谷刈<番地略>」などとそれぞれ記載した上、「届出人氏名」欄のY34名下に「Y34」と刻した印鑑を押捺し、もってY34作成名義の同女に関する住民異動届1通を偽造し、同日、同市役所において、同市役所市民福祉部市民課市民係長Y35に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届に記載されたY34の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届が真正に成立したものであるかのように装って、先に仙台市泉区役所係員から不正に入手したY34が仙台市泉区上谷刈<番地略>から宮崎県名取市増田<番地略>に住所を変更したかのように記載された仙台市泉区長作成に係る内容虚偽の転出証明書と共に提出して行使し、もって同女の住民異動に関する虚偽の申立てをして、情を知らない上記名取市役所市民福祉部市民課住民記録係Y36をして、同市役所総務部企画課電子計算係ホストマシーンルームに設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第19

1  被告人は、I及びJと共謀の上、同月18日午後8時ころ、仙台市宮城野区福室<番地略>所在の駐車場において、同所に駐車してあったY37所有の軽四輪乗用自動車1台(時価約100万円相当)を窃取した。

2  被告人は、前記1のとおり窃取したY37所有の車両を売却して金員をだまし取ろうと企て、I、J、M(以下「M」ともいう。)及びLと共謀の上、同日午後8時45分ころ、同区鶴巻<番地略>所在の中古車等の仕入販売を営む☆☆事務所において、同店従業員Y38らに対し、真実は、同車両が窃取したものであるのに、その情を秘し、かつ、同車両の所有者がY39であるかのように記載された内容虚偽の自動車検査証及び同女を被保険者とする内容虚偽の国民健康保険被保険者証等を提示した上、MがY39であるかのように装って、同車両の売却を申し込み、上記Y38らをしてその旨誤信させ、よって、間もなく、同所において、同人から同車両売買名目で現金57万円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。

第20

1  被告人は、I及びJと共謀の上、同日午後9時30分ころ、同区福室<番地略>所在の駐車場において、同所に駐車してあったY40所有又は管理に係る革ジャンパー、預金通帳等3点積載の軽四輪乗用自動車1台(時価合計約92万円相当)を窃取した。

2  被告人は、前記1のとおり窃取したY40所有の車両を売却して金員をだまし取ろうと企て、I、J、M及びLと共謀の上、同日午後10時30分ころ、同区中野字神妻<番地略>所在の中古車等の仕入販売を営む有限会社★★事務所において、同社代表取締役Y41に対し、真実は同車両が窃取したものであるのに、その情を秘し、かつ、同車両の所有者が前記Y39であるかのように記載された内容虚偽の自動車検査証及び同女を被保険者とする内容虚偽の国民健康保険被保険者証等を提示した上、MがY39であるかのように装って、同車両の売却を申し込み、上記Y41をしてその旨誤信させ、よって、間もなく、同所において、同人から同車両売買名目で現金70万円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。

第21

1  被告人は、I及びJと共謀の上、同月19日午後7時30分ころ、同区鶴ヶ谷<番地略>北側駐車場において、同所に駐車してあったY42所有又は管理に係る運転免許証等24点積載の軽四輪乗用自動車1台(時価合計約76万円相当)を窃取した。

2  被告人は、I、J、M及びLと共謀の上、前記1のとおり窃取したY42所有の車両を売却して金員をだまし取ろうと企て、同日午後8時ころ、同市泉区市名坂字新門前<番地略>所在の中古車等の仕入販売を営む株式会社◇◇において、同店従業員Y43に対し、真実は同車両が窃取したものであるのに、その情を秘し、かつ、同車両の所有者が前記Y34である旨告げるとともに、同女を被保険者とする内容虚偽の国民健康保険被保険者証等を提示するなどして、LがY34であるかのように装って、同車両の売却を申し込み、上記Y43をしてその旨誤信させ、よって、間もなく、同所において、同人から同車両売買名目で現金30万円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。

第22  被告人は、I、J及びN(以下「N」ともいう。)と共謀の上、同年7月25日、前記名取市役所において、Nが、行使の目的で、権限なく、同市役所備付けの住民異動届用紙の「届出人資格」欄の「1.本人」と印字された文字の「1」を丸で囲んだ上、「届出人氏名」欄に「Y44」、「届出年月日、異動年月日」の各欄に「13.7.25」、「住所(新)」欄に「名取市増田<番地略>」、「住所(旧)」欄に「仙台市宮城野区岡田字寺袋浦<番地略>」などとそれぞれ記載した上、「届出人氏名」欄のY44名下に「Y44」と刻した印鑑を押捺し、もってY44作成名義の同女に関する住民異動届1通を偽造し、同日、同市役所において、同市役所市民福祉部市民課市民係Y45に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届に記載されたY44の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届が真正に成立したものであるかのように装って、先に仙台市宮城野区役所係員から不正に入手したY44が仙台市宮城野区岡田字寺袋浦<番地略>から宮城県名取市増田<番地略>に住所を変更したかのように記載された仙台市宮城野区長作成に係る内容虚偽の転出証明書と共に提出して行使し、もって同女の住民異動に関する虚偽の申立てをして、情を知らない上記名取市役所市民福祉部市民課住民記録係Y46をして、同市役所総務部企画課電子計算係ホストマシーンルームに設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第23

1  被告人は、I及びJと共謀の上、同年8月2日午後7時ころ、仙台市太白区郡山<番地略>所在の駐車場において、同所に駐車してあったY47所有の軽四輪乗用自動車1台(時価約100万円相当)を窃取した。

2  被告人は、I、J、O(以下「O」ともいう。)及びP(以下「P」ともいう。)と共謀の上、前記1のとおり窃取したY47所有の車両を売却して金員をだまし取ろうと企て、同日午後7時ころ、同区郡山字籠ノ瀬<番地略>所在の中古車等の仕入販売を営む有限会社◆◆仙台南バイパス店事務所において、同店店長Y48に対し、真実は同車両が窃取したものであるのにその情を秘し、かつ、同車両の所有者が前記Y44であるかのように記載された内容虚偽の自動車検査証及び同女を被保険者とする内容虚偽の国民健康保険被保険者証等を提示するなどして、OがY44であるかのように装って、同車両の売却を申し込み、上記Y48をしてその旨誤信させ、よって、間もなく、同所において、同人から同車両売買名目で現金65万円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。

第24  被告人は、I及びJと共謀の上、同月3日、同区郡山<番地略>南側駐車場において、同所に駐車してあったY49所有又は管理に係る運転免許証等9点積載の軽四輪乗用自動車1台(時価合計約103万5100円相当)を窃取した。

第25  被告人は、I及びJと共謀の上、同日、宮城県多賀城市明月<番地略>所在の◎◎南側駐車場において、同所に駐車してあったY50所有に係るチャイルドシート等12点積載の軽四輪乗用自動車1台(時価合計約103万3800円相当)を窃取した。

第26  被告人は、J及びQ′ことQ(以下「Q」ともいう。)と共謀の上、同月16日、同市中央<番地略>多賀城市役所において、Qが、同市役所市民経済部市民課市民係主査Y51に対し、真実はY52が仙台市宮城野区内から宮城県多賀城市内へ住民異動をした事実及びその旨の届出をした事実がないのに、その情を秘し、これらの事実があるかのように装って、先に仙台市宮城野区役所係員から不正に入手したY52が仙台市宮城野区小鶴<番地略>から宮城県多賀城市八幡<番地略>に住所を変更したかのように記載された仙台市宮城野区長作成に係る内容虚偽の転出証明書を提出し、もって同女の住民異動に関する虚偽の申立てをして、情を知らない上記Y51をして、上記多賀城市役所総務部企画課情報処理係に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第27  被告人は、Y53の住民登録を仙台市太白区内から宮城県多賀城市内に異動させようと企て、J及びR(以下「R」ともいう。)らと共謀の上、次の1及び2の各犯行に及んだ。

1  同月17日、仙台市太白区長町南<番地略>仙台市太白区役所南側路上付近に駐車中の普通乗用自動車内において、Rが、行使の目的で、権限なく、同区役所備付けの住民異動届・申出書用紙の「届出人(窓口にきた人)」欄の「3代理人」と印字された文字の「3」を丸で囲んだ上、同欄に「Y39」、「届出の日、異動の日」の各欄に「13.8.17」、「これからの住所」欄に「多賀城市八幡<番地略>」、「いままでの住所」欄に「太白区郡山<番地略>」、「異動者氏名」欄に「Y53」、「生年月日」欄に「42.1.12」などとそれぞれ記載し、もってY39作成名義のY53に関する住民異動届・申出書1通を偽造し、同日、同区役所において、Jが、同区役所総務部市民課住民記録係Y54に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届・申出書に記載されたY53の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届・申出書が真正に成立したものであるかのように装ってこれを提出して行使し、もって同人の住民異動に関する虚偽の申立てをして、同市役所が電子計算機の端末操作による住民基本台帳の入力等の業務を委託しているアール・オー・エス東北株式会社の派遣社員である情を知らないY55をして、仙台市泉区泉中央<番地略>仙台市役所企画局情報政策部システム推進課情報システムセンターに設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

2  同日、前記多賀城市役所において、Jが、同市役所市民経済部市民課記録係Y56に対し、真実はY53が仙台市太白区内から宮城県多賀城市内へ住民異動をした事実及びその旨の届出をした事実がないのに、その情を秘し、これらの事実があるかのように装って、先に仙台市太白区役所係員から不正に入手したY53が仙台市太白区郡山<番地略>から宮城県多賀城市八幡<番地略>に住所を変更したかのように記載された仙台市太白区長作成に係る内容虚偽の転出証明書を提出し、もって同人の住民異動に関する虚偽の申立てをして、情を知らない上記Y56をして、同市役所総務部企画課情報処理係に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第28  被告人は、Y57の住民登録を仙台市若林区内から宮城県塩竈市内に異動させようと企て、J及びQと共謀の上、次の1及び2の各犯行に及んだ。

1  同月20日、仙台市若林区保春院前丁<番地略>仙台市若林区役所東側駐車場に駐車した普通乗用自動車内において、Qが、行使の目的で、権限なく、同区役所備付けの住民異動届・申出書用紙の「届出人」欄の「3代理人」と印字された文字の「3」を丸で囲んだ上、同欄に「Y52」、「届出の日、異動の日」の各欄に「13.8.20」、「これからの住所」欄に「塩釜市玉川<番地略>」、「いままでの住所」欄に「仙台市若林区大和町<番地略>」、「異動者氏名」欄に「Y57」、「生年月日」欄に「47.10.7」などとそれぞれ記載し、もってY52作成名義のY57に関する住民異動届・申出書1通を偽造した上、同日、同区役所において、同区役所総務部市民課住民記録係Y58に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届・申出書に記載されたY57の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届・申出書が真正に成立したものであるかのように装ってこれを提出して行使し、もって同人の住民異動に関する虚偽の申立てをして、前記アール・オー・エス東北株式会社の派遣社員である情を知らないY59をして、前記仙台市役所企画局情報政策部システム推進課情報システムセンターに設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

2  同日、宮城県塩竈市旭町<番地略>塩竈市役所駐車場に駐車した普通乗用自動車内において、Qらが、行使の目的で、権限なく、同市役所備付けの住民異動届用紙の「届出人氏名」欄の「3.代理人」と印字された文字の「3」を丸で囲んだ上、同欄に「Y52」、「届出年月日、異動年月日」の各欄に「13.8.20」、「新しい住所」欄に「玉川<番地略>」、「今までの住所」欄に「仙台市若林区大和町<番地略>」、「氏名」欄に「Y57」、「生年月日」欄に「47.10.7」などとそれぞれ記載した上、「届出人氏名」欄のY52名下に「Y52」と刻した印鑑を押捺し、もってY52作成名義のY57に関する住民異動届1通を偽造し、同日、同市役所において、Qが、同市役所市民生活部市民課窓口係Y60に対し、真実はY57が仙台市若林区内から宮城県塩竈市内へ住民異動をした事実及びその旨の届出をした事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届が真正に成立したものであるかのように装って、先に仙台市若林区役所係員から不正に入手したY57が仙台市若林区大和町<番地略>から宮城県塩竈市玉川<番地略>に住所を変更したかのように記載された仙台市若林区長作成に係る内容虚偽の転出証明書と共に提出して行使し、もって同人の住民異動に関する虚偽の申立てをして、情を知らない上記Y60をして、同市役所都市政策部企画調整課情報管理係に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第29  被告人は、J、Q、R及びS(以下「S」ともいう。)と共謀の上、同年8月20日ころ、仙台市内において、J、Q、R及びSが、行使の目的で、権限なく、婚姻届用紙の「夫になる人」の「氏名生年月日」欄に「Y61、53.4.18」、「妻になる人」の「氏名生年月日」欄に「Y62、55.11.28」、「婚姻後の夫婦の氏・新しい本籍」欄の「夫の氏」の箇所にチェックをした上、同欄に「仙台市宮城野区福室<番地略>」、「届出人署名押印」欄の「夫」及び「妻」の各欄にそれぞれ「Y61、Y62」、「証人」欄に「Y63、Y64」などとそれぞれ記載し、上記「届出人署名押印」欄及び「証人」欄の各名下にそれぞれ「Y61」「Y62」と刻した印鑑を押捺するなどし、もってY61、Y62、Y63及びY64作成名義の婚姻届1通を偽造し、同月21日、Jが、同市泉区泉中央<番地略>仙台市泉区役所において、同区役所総務部市民課戸籍係Y65に対し、真実は上記偽造に係る婚姻届に記載されたY61とY62が婚姻した事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記婚姻届が真正に成立したものであるかのように装って、これをY61及びY62のそれぞれの戸籍謄本と共に提出して行使し、もってY61とY62が婚姻した旨の虚偽の申立てをして、人材派遣会社から同区役所に派遣されて戸籍簿への記載業務に従事していた情を知らないY66をして、権利義務に関する公正証書の原本である戸籍筆頭者をY64とするY62の戸籍簿にその旨不実の記載をさせ、さらに、同月23日ころ、同市宮城野区五輪<番地略>同市宮城野区役所総務部市民課において、人材派遣会社から同区役所に派遣されて戸籍簿への記載業務に従事していた情を知らないY67をして、上記同様の原本として戸籍筆頭者を夫Y61とし、妻をY62とする新戸籍簿を編成させて、上記同様の旨不実の記載をさせ、同月24日ころ、同市青葉区下愛子字観音堂<番地略>同市青葉区宮城総合支所において、情を知らない同支所市民課Y68をして、上記同様の原本である戸籍筆頭者をY69とするY61の戸籍簿に上記同様の旨不実の記載をさせ、いずれもそのころ、上記各区役所等において、これらを直ちに備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第30  被告人は、J及びRと共謀の上、同月21日、前記仙台市泉区役所及び同区役所南側駐車場に駐車した普通乗用自動車内において、J及びRが、行使の目的で、権限なく、複写式5枚つづり中の3枚である「住民異動届・申出書1枚、国民健康保険・国民年金異動届1枚、介護保険異動届1枚」(以下「住民異動届・申出書等」という。)用紙1組の各「届出人」欄の「1本人」と印字された文字を丸で囲んだ上、同欄に「Y′62」、各「届出の日」欄及び各「異動の日」欄に「13.8.21」、各「これからの住所」欄に「宮城野区福室<番地略>」、各「いままでの住所」欄に「泉区市名坂字本屋敷<番地略>」、各「異動者氏名」欄に「Y′62」などとそれぞれ記載し、もってY′62作成名義の同女に関する住民異動届・申出書等1組を偽造し、同日、同区役所において、Jが、同区役所総務部市民課住民記録係Y70に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届・申出書等に記載されたY′62の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届・申出書等が真正に成立したものであるかのように装って、これを提出して行使し、もって同女の住民異動に関する虚偽の申立てをして、人材派遣会社から同区役所に派遣されて住民基本台帳への入力業務を行っていた情を知らないY71をして、前記仙台市役所企画局情報政策部システム推進課情報システムセンターに設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第31  被告人は、J、R、Q、O及びSと共謀の上、同月22日若しくはその少し前ころ、仙台市内において、被告人、R、Q、O及びSが、行使の目的で、権限なく、養子縁組届用紙の「養子になる人」の「氏名生年月日」欄に「Y72、S53.8.5」、「入籍する戸籍又は新しい本籍」欄の「養親の現在の戸籍に入る」の箇所にチェックをした上、「仙台市青葉区柏木<番地略>、Y73」、「届出人署名押印」欄に「Y72」、「養親になる人」の「氏名生年月日」欄に「Y73、5.10.13、Y74、12.1.7」、「養親になる人」の「届出人署名押印」欄に「Y73、Y74」、「証人」の「署名押印生年月日」欄に「Y75、S28.1.5、Y76、S26.5.5」などとそれぞれ記載し、上記各「届出人署名押印」欄及び「署名押印生年月日」欄の各名下にそれぞれ「Y76」「Y73」「Y75」と刻した印鑑を押捺するなどし、もってY72、Y73、Y74、Y75及びY76作成名義の養子縁組届1通を偽造し、同月22日、同市青葉区上杉<番地略>仙台市青葉区役所において、Qが、同区役所総務部市民課戸籍係Y77に対し、真実は上記偽造に係る養子縁組届に記載されたY72とY73及びY74が養子縁組をした事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記養子縁組届が真正に成立したものであるかのように装って、これを提出して行使し、もってY72とY73及びY74が養子縁組した旨の虚偽の申立てをし、権利義務に関する公正証書の原本である戸籍筆頭者をY78とするY72の戸籍簿、戸籍筆頭者をY73とする同人及びY74の戸籍簿に、その旨不実の記載をさせようとしたが、上記Y77らに、虚偽の届出であることを看破されたため、その目的を遂げなかった。

第32  被告人は、J、Q、P及びOと共謀の上、同月23日若しくはその少し前ころ、仙台市内において、J、Q、P及びOが、行使の目的で、権限なく、婚姻届用紙の「夫になる人」の「氏名生年月日」欄に「Y79、53.3.3」、「妻になる人」の「氏名生年月日」欄に「Y81、54.10.4」、「婚姻後の夫婦の氏・新しい本籍」欄の「夫の氏」の箇所にチェックをした上、同欄に「仙台市宮城野区福室<番地略>」、「届出人署名押印」欄の「夫」及び「妻」の各欄にそれぞれ「Y79、Y81」、「証人」欄に「Y80、Y′62」などとそれぞれ記載し、上記「届出人署名押印」欄及び「証人」欄の各名下にそれぞれ「Y79」「Y81」「Y′62」と刻した印鑑を押捺するなどし、もってY79、Y81、Y80及びY′62作成名義の婚姻届1通を偽造し、同月23日、前記仙台市太白区役所において、Pが、同区役所総務部市民課戸籍係Y82に対し、真実は上記偽造に係る婚姻届に記載されたY79とY81が婚姻した事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記婚姻届が真正に成立したものであるかのように装って、これをY79及びY81のそれぞれの戸籍謄本と共に提出して行使し、もってY79とY81が婚姻した旨の虚偽の申立てをして、公正証書原本である戸籍筆頭者をY80とするY79の戸籍簿、戸籍筆頭者をY83とするY81の戸籍簿にその旨不実の記載をさせ、上記同様の原本として戸籍筆頭者を夫Y79とし、妻をY81とする新戸籍簿を編成させて上記同様の旨不実の記載をさせようとしたが、上記Y82らに、虚偽の届出であることを看破されたため、その目的を遂げなかった。

第33

1  被告人は、Jと共謀の上、同月23日午後8時30分ころ、同市太白区郡山<番地略>付近駐車場において、同所に駐車してあったY84所有の現金約4万8000円及び預金通帳等3点積載のY53所有に係る普通乗用自動車1台(時価合計約250万3000円相当)を窃取した。

2  被告人は、前記1のとおり窃取したY53所有の車両を売却して金員をだまし取ろうと企て、J、O及びPと共謀の上、同日午後9時ころ、同区長町<番地略>CASA仙台長野店駐車場において、中古車等の仕入販売を営む有限会社イトーカーサロンの従業員Y86に対し、真実は、同車両が窃取したものであるのに、その情を秘し、かつ、同車両の所有者がY52であるかのように記載された内容虚偽の自動車検査証等を提示した上、OがY52であるかのように装って、同車両の売却を申し込み、上記Y86をしてその旨誤信させ、よって、間もなく、同所において、同人から同車両売買名目で現金165万円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。

第34

1  被告人は、Jと共謀の上、同月24日午前2時30分ころ、同市若林区大和町<番地略>高次パーキングにおいて、同所に駐車してあったY57所有又は管理に係るカーナビ等6点積載の普通乗用自動車1台(時価約282万8000円相当)を窃取した。

2  被告人は、J、O及びPと共謀の上、前記1のとおり窃取したY57所有の車両を売却して金員をだまし取ろうと企て、同日午前3時ころ、同区大和町<番地略>びっくりドンキー大和町店駐車場において、中古車等の仕入販売を営むビーセンスことY85の従業員Y87に対し、真実は、同車両が窃取したものであるのに、その情を秘し、かつ、同車両の所有者がY52であるかのように記載された内容虚偽の自動車検査証等を提示した上、OがY52であるかのように装って、同車両の売却を申し込み、上記Y87をしてその旨誤信させ、よって、同日午前9時ころ、前記多賀城市役所南側駐車場において、同人から同車両売買名目で現金160万円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。

第35  被告人は、J及びOと共謀の上、同年9月20日、福島県内において、Oが、行使の目的で、権限なく、複写式3枚つづりの住民異動届用紙1組の各「届出人氏名」欄の「本人」と印字された文字を丸で囲んだ上、同欄に「Y88」、各「異動日」欄及び各「届出日」欄に「13.9.20」、各「これからの住所」欄に「郡山市亀田<番地略>」、各「いままでの住所」欄に「福島市仲間町<番地略>」、各異動者の「氏名」欄に「Y88」などとそれぞれ記載し、もってY88作成名義の同女に関する住民異動届1組を偽造し、同日、同県郡山市富田町字前田<番地略>郡山市富田行政センターにおいて、同センター係員Y89に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届に記載されたY88の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届が真正に成立したものであるかのように装って、先に福島市役所係員から不正に入手した同女が福島市仲間町<番地略>から福島県郡山市亀田<番地略>に住所を変更したかのように記載された福島市長作成に係る内容虚偽の転出証明書と共に提出して行使し、もって同女の住民異動に関する虚偽の申立てをして、同日、同県郡山市朝日<番地略>郡山市役所において、人材派遣会社から同市役所に派遣されて住民基本台帳への入力業務を行っていた情を知らないY90をして、同市役所企画部情報管理課電子計算室に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第36  被告人は、J及びPと共謀の上、同日、前記郡山市役所において、Pらが、行使の目的で、権限なく、複写式3枚つづりの住民異動届用紙1組の各「届出人氏名」欄の「その他」と印字された文字を丸で囲んだ上、同欄に「Y94」、各「異動日」欄及び各「届出日」欄に「13.9.20」、各「これからの住所」欄に「福島県郡山市亀田<番地略>」、各「いままでの住所」欄に「福島県福島市黒岩字弥生<番地略>」、各異動者の「氏名」欄に「Y91」などとそれぞれ記載した上、「届出人氏名」欄のY94名下に「Y94」と刻した印鑑を押捺し、もってY94作成名義のY91に関する住民異動届1組を偽造し、同日、同市役所において、Pが、同市役所市民部市民課窓口係員Y92に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届に記載されたY91の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届が真正に成立したものであるかのように装って、先に福島市役所係員から不正に入手した同人が福島市黒岩字弥生<番地略>から福島県郡山市亀田<番地略>に住所を変更したかのように記載された福島市長作成に係る内容虚偽の転出証明書と共に提出して行使し、もって同人の住民異動に関する虚偽の申立てをして、同日、上記郡山市役所において、人材派遣会社から同市役所に派遣されて住民基本台帳への入力業務を行っていた情を知らないY93をして、同市役所企画部情報管理課電子計算室に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第37  被告人は、J及びPと共謀の上、同日、前記郡山市役所において、Pらが、行使の目的で、権限なく、複写式3枚つづりの住民異動届用紙1組の各「届出人氏名」欄の「本人」と印字された文字を丸で囲んだ上、同欄に「Y94」、各「異動日」欄及び各「届出日」欄に「13.9.20」、各「これからの住所」欄に「福島県郡山市亀田<番地略>」、各「いままでの住所」欄に「福島県福島市松川町字木曽内裡<番地略>」、各異動者の「氏名」欄に「Y94」などとそれぞれ記載した上、「届出人氏名」欄のY94名下に「Y94」と刻した印鑑を押捺するなどし、もってY94作成名義の同女に関する住民異動届1組を偽造し、同日、同市役所において、Pが、前記Y92に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届に記載されたY94の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届が真正に成立したものであるかのように装って、先に福島市役所係員から不正に入手した同女が福島市松川町木曽内裡<番地略>から福島県郡山市亀田<番地略>に住所を変更したかのように記載された福島市長作成に係る内容虚偽の転出証明書と共に提出して行使し、もって同女の住民異動に関する虚偽の申立てをして、同日、上記郡山市役所において、人材派遣会社から同市役所に派遣されて住民基本台帳への入力業務を行っていた情を知らない前記Y93をして、同市役所企画部情報管理課電子計算室に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第38  被告人は、J、P及びOと共謀の上、同日、福島市吉倉字吉田<番地略>東北運輸局福島運輸支局等において、J、P及びOが、行使の目的で、権限なく、婚姻届用紙の「夫になる人」の「氏名生年月日」欄に「Y91、昭和55.10.30」、「妻になる人」の「氏名生年月日」欄に「Y94、昭和54.4.4」、「婚姻後の夫婦の氏・新しい本籍」欄の「夫の氏」の箇所にチェックをした上、同欄に「福島県郡山市亀田<番地略>」、「届出人署名押印」欄の「夫」及び「妻」の各欄にそれぞれ「Y91、Y94」、「証人」欄に「Y96、Y95」などとそれぞれ記載し、上記「届出人署名押印」欄及び「証人」欄の各名下にそれぞれ「Y91」「Y94」と刻した印鑑を押捺するなどし、もってY91、Y94、Y96及びY95作成名義の婚姻届1通を偽造し、同日、前記郡山市役所において、Pが、前記Y92に対し、真実は上記偽造に係る婚姻届に記載されたY91とY94が婚姻した事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記婚姻届が真正に成立したものであるかのように装って、これをY91及びY94のそれぞれの戸籍謄本と共に提出して行使し、もってY91とY94が婚姻した旨の虚偽の申立てをして、同日ころ、前記郡山市役所において、情を知らない同市役所市民課戸籍係Y97をして、権利義務に関する公正証書の原本として戸籍筆頭者を夫Y91とし、妻をY94とする新戸籍簿を編成させてその旨不実の記載をさせ、同月26日ころ、福島市伏拝字台田<番地略>福島市役所杉妻支所において、情を知らない同支所係員をして、上記同様の原本である戸籍筆頭者をY98とするY91の戸籍簿に上記同様の旨不実の記載をさせ、さらに、同日ころ、福島県安達郡安達町油井字道田<番地略>安達町役場において、情を知らない同役場係員をして、上記同様の原本である戸籍筆頭者をY99とするY94の戸籍簿に上記同様の旨不実の記載をさせ、いずれもそのころ、上記各市役所において、これを直ちに備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第39  被告人は、J、P及びOと共謀の上、同月20日から同月21日にかけて、前記東北運輸局福島運輸支局等において、J、P及びOが、行使の目的で、権限なく、婚姻届用紙の「夫になる人」の「氏名生年月日」欄に「Y100、昭和56.5.1」、「妻になる人」の「氏名生年月日」欄に「Y88、昭和54.11.20」、「婚姻後の夫婦の氏・新しい本籍」欄の「夫の氏」の箇所にチェックをした上、同欄に「福島県郡山市亀田<番地略>」、「届出人署名押印」欄の「夫」及び「妻」の各欄にそれぞれ「Y100、Y88」、「証人」欄に「Y101、Y102」などとそれぞれ記載し、上記「届出人署名押印」欄及び「証人」欄の各名下にそれぞれ「Y100」「Y88」と刻した印鑑を押捺するなどし、もってY100、Y88、Y101及びY102作成名義の婚姻届1通を偽造し、同月21日、同県郡山市安積<番地略>郡山市安積行政センターにおいて、Pが、同センター住民担当係員Y103に対し、真実は上記偽造に係る婚姻届に記載されたY100とY88が婚姻した事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記婚姻届が真正に成立したものであるかのように装って、これをY88の戸籍謄本と共に提出して行使し、もってY100とY88が婚姻した旨の虚偽の申立てをして、同日ころ、前記郡山市役所において、情を知らない同市役所係員をして、権利義務に関する公正証書の原本として戸籍筆頭者を夫Y100とし、妻をY88とする新戸籍簿を編成させてその旨不実の記載をさせた上、同月28日ころ、上記郡山市役所において、情を知らない同市役所係員をして、上記同様の原本である戸籍筆頭者をY104とするY100の戸籍簿に上記同様の旨不実の記載をさせ、さらに、同日ころ、福島市五老内町<番地略>福島市役所において、情を知らない同市役所係員をして、上記同様の原本である戸籍筆頭者をY105とするY88の戸籍簿に上記同様の旨不実の記載をさせ、いずれもそのころ、上記各市役所等において、これらを直ちに備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第40  被告人は、J及びPと共謀の上、同年9月28日ころから同年10月1日にかけて、福島県内において、Pらが、行使の目的で、権限なく、複写式3枚つづりの住民異動届用紙1組の各「届出人氏名」欄の「その他」と印字された文字を丸で囲んだ上、同欄に「Y′94」、各「異動日」欄に「13.9.28」、各「届出日」欄に「13.10.1」、各「これからの住所」欄に「白河市会津町<番地略>」、各「いままでの住所」欄に「郡山市菜根<番地略>」、各異動する人の「氏名」欄に「Y106」などとそれぞれ記載した上、「届出人氏名」欄のY′94名下に「Y′94」と刻した印鑑を押捺するなどし、もってY′94作成名義のY106に関する住民異動届1組を偽造し、同年10月1日、福島県郡山市田村町上行合字宮耕地<番地略>郡山市田村行政センター高瀬連絡所において、Pが、同連絡所係員Y107に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届に記載されたY106の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届が真正に成立したものであるかのように装って、これを提出して行使し、もって同人の住民異動に関する虚偽の申立てをして、同日、前記郡山市役所において、人材派遣会社から同市役所に派遣されて住民基本台帳への入力業務を行っていた情を知らないY108をして、同市役所企画部情報管理課電子計算室に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第41  被告人は、J、P及びOと共謀の上、同年10月2日ころ、同県郡山市内において、J、P、Oが、行使の目的で、権限なく、離婚届用紙の「氏名生年月日」欄の「夫」及び「妻」の各欄にそれぞれ「Y91、昭和55.10.30、Y′94、昭和54.4.4」、「婚姻前の氏にもどる者の本籍」欄の「妻」の箇所にチェックをした上、「福島県安達郡安達町小沢字原<番地略>・Y99」、「届出人署名押印」欄の「夫」及び「妻」の各欄にそれぞれ「Y91、Y′94」、「証人」欄に「Y96、Y95」などとそれぞれ記載し、上記「届出人署名押印」欄及び「証人」欄の各名下にそれぞれ「Y91」「Y94」と刻した印鑑を押捺するなどし、もってY91、Y′94、Y96及びY95作成名義の離婚届1通を偽造し、同月3日、同県郡山市富久山町福原字泉崎<番地略>郡山市富久山行政センターにおいて、Pが、同センター住民担当主査Y109に対し、真実は上記偽造に係る離婚届に記載されたY91とY′94が離婚した事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記離婚届が真正に成立したものであるかのように装って、これを提出して行使し、もってY91とY′94が離婚した旨の虚偽の申立てをして、同日ころ、情を知らない上記郡山市役所市民課戸籍係Y110をして、権利義務に関する公正証書の原本である戸籍筆頭者をY91とする同人及びY′94の各戸籍簿にその旨不実の記載をさせ、さらに、同月9日ころ、前記安達町役場において、情を知らない同役場住民生活課住民係長Y111をして、上記同様の原本として戸籍筆頭者をY99とする戸籍簿に長女Y94の戸籍簿を新たに編成させ、いずれもそのころ、上記各市役所等において、これらを直ちに備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第42  被告人は、J及びPと共謀の上、同月2日ころ、同県郡山市内において、Pらが、行使の目的で、権限なく、複写式3枚つづりの住民異動届用紙1組の各「届出人氏名」欄の「その他」と印字された文字を丸で囲んだ上、同欄に「Y94」、各「異動日」欄及び各「届出日」欄に「13.10.3」、各「これからの住所」欄に「福島市黒岩字弥生<番地略>」、各「いままでの住所」欄に「福島市亀田<番地略>」、各異動者の「氏名」欄に「Y91」などとそれぞれ記載した上、「届出人氏名」欄のY94名下に「Y94」と刻した印鑑を押捺するなどし、もってY94作成名義のY91に関する住民異動届1組を偽造し、同月3日、前記郡山市富久山行政センターにおいて、Pが、前記Y109に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届に記載されたY91の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届が真正に成立したものであるかのように装って、これを提出して行使し、もって同人の住民異動に関する虚偽の申立てをして、同日、前記郡山市役所において、人材派遣会社から同市役所に派遣されて住民基本台帳への入力業務を行っていた情を知らない前記Y93をして、同市役所企画部情報管理課電子計算室に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第43  被告人は、J及びPと共謀の上、同月2日ころ、同県郡山市内において、Pが、行使の目的で、権限なく、複写式3枚つづりの住民異動届用紙の各「届出人氏名」欄の「本人」と印字された文字を丸で囲んだ上、同欄に「Y94」、各「異動日」欄及び各「届出日」欄に「13.10.3」、各「これからの住所」欄に「福島市松川木曽内裡<番地略>」、各「いままでの住所」欄に「郡山市亀田<番地略>」、各異動者の「氏名」欄に「Y94」などとそれぞれ記載するなどし、もってY94作成名義の同女に関する住民異動届1組を偽造し、同月3日、前記郡山市富久山行政センターにおいて、前記Y109に対し、真実は上記偽造に係る住民異動届に記載されたY94の住民異動の事実がないのに、その情を秘し、かつ、上記住民異動届が真正に成立したものであるかのように装って、これを提出して行使し、もって同女の住民異動に関する虚偽の申立てをして、同日、前記郡山市役所において、人材派遣会社から同市役所に派遣されて住民基本台帳への入力業務を行っていた情を知らない前記Y93をして、同市役所企画部情報管理課電子計算室に設置された公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを直ちに同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した。

第44  被告人は、架空名義人名で原動機付自転車の運転免許証を不正に取得しようと企て、J、O及びPと共謀の上、次の1及び2の各犯行に及んだ。

1  同月4日、福島市町庭坂字大原<番地略>福島県警察本部交通部運転免許課福島県警察福島運転免許センターにおいて、Oが、行使の目的で、権限なく、同センター備付けの運転免許申請書用紙の「氏名」欄に「Y′88」、「生年月日」欄に「54.11.20」、「本(国)籍」欄に「福島県郡山市亀田<番地略>」、「住所」欄に「郡山市亀田<番地略>」とそれぞれ記載し、「受けようとする免許の種類」欄の「原付」と印字された文字を丸で囲むなどし、もってY′88作成名義の原動機付自転車の運転免許申請書1通を偽造した上、同日、同センターにおいて、同課技能試験係員Y112を介し同課長Y113に対し、真実は、上記運転免許申請書に記載されたY′88が架空名義人で、同記載の本籍等が内容虚偽のものであるのに、その情を秘し、同申請書が真正に成立したものであるかのように装って、郡山市長作成に係る内容虚偽のY′88の住民票写し等と共にこれを提出して行使し、もって同女が上記試験を受験する旨の虚偽の申立てを行い、OがY′88本人であるかのように装って、同日実施された上記運転免許試験を受験して合格し、同日、同センターにおいて、情を知らない同課免許第2係長Y114らをして、免状である福島県公安委員会の記名押印のある原動機付自転車免許証(第************号)にY′88の氏名、本籍、住所等の不実の記載をさせた上、Y′88名義の運転免許証を作成交付させ、もって公務員に対し虚偽の申立てをして免状の不実の記載をさせるとともに、不正の手段により免許証の交付を受けた。

2  同月9日、福島県郡山市大槻町字美女池上<番地略>前記運転免許課福島県警察郡山運転免許センターにおいて、Pが、行使の目的で、権限なく、同センター備付けの運転免許申請書用紙の「氏名」欄に「Y′94」、「生年月日」欄に「54.04.04」、「本(国)籍」欄に「福島県郡山市亀田<番地略>」、「住所」欄に「郡山市亀田<番地略>」とそれぞれ記載し、「受けようとする免許の種類」欄の「原付」と印字された文字を丸で囲むなどし、もってY′94作成名義の原動機付自転車の運転免許申請書1通を偽造した上、同日、同センターにおいて、同課係員Y115を介し前記Y113に対し、真実は、上記運転免許申請書に記載されたY′94が架空名義人で、同記載の本籍等が内容虚偽のものであるのに、その情を秘し、同申請書が真正に成立したものであるかのように装って、郡山市長作成に係る内容虚偽のY′94の住民票写し等と共にこれを提出して行使し、もって同人が上記試験を受験する旨の虚偽の申立てを行い、PがY′94本人であるかのように装って、同日実施された上記運転免許試験を受験して合格し、同日、同センターにおいて、情を知らない同課免許第4係長Y116らをして、免状である同公安委員会の記名押印のある原動機付自転車免許証(第************号)にY′94の氏名、本籍、住所等の不実の記載をさせた上、Y′94名義の運転免許証を作成交付させ、もって公務員に対し虚偽の申立てをして免状に不実の記載をさせるとともに、不正の手段により免許証の交付を受けた。

(証拠の標目)<省略>

(法令の適用)

罰条

第1、第12、第19の1、第20の1、第21の1、第23の1、第24、第25、第33の1、第34の1の各行為いずれも刑法60条、235条

第2の行為 刑法65条1項、60条、平成13年法律第51号(道路交通法の一部を改正する法律)附則9条により同法による改正前の道路交通法118条1項3号の2、68条

第3の行為 平成13年法律第51号(道路交通法の一部を改正する法律)附則9条により同法による改正前の道路交通法118条1項1号、64条

第4の行為 刑法61条1項、103条

第5、第6の各行為 いずれも刑法60条、249条1項

第7、第17の各行為中

各有印私文書偽造の点 いずれも刑法60条、159条1項

各偽造有印私文書行使の点 いずれも刑法60条、161条1項、159条1項

各詐欺未遂の点 いずれも刑法60条、250条、246条1項

第8ないし第11、第13の1、第15の1、第18、第22、第27の1、28の1、2、第30、第35ないし第37、第40、第42、第43の各行為中

各有印私文書偽造の点 いずれも刑法60条、159条1項

各偽造有印私文書行使の点 いずれも刑法60条、161条1項、159条1項

各電磁的公正証書原本不実記録の点 いずれも刑法60条、157条1項

各不実記録電磁的公正証書原本供用の点 いずれも刑法60条、158条1項、157条1項

第14の1ないし3、第16、第19の2、第20の2、第21の2、第23の2、第33の2、第34の2の各行為 いずれも刑法60条、246条1項

第13の2、第15の2の各行為中

各有印私文書偽造の点 いずれも刑法60条、159条1項

各偽造有印私文書行為の点 いずれも刑法60条、161条1項、159条1項

各電磁的公正証書原本不実記録の点 いずれも刑法60条、157条1項

各不実記録電磁的公正証書原本供用の点 いずれも刑法60条、158条1項、157条1項

各詐欺の点 いずれも刑法60条、246条1項

第26、第27の2の各行為中

各電磁的公正証書原本不実記録の点 いずれも刑法60条、157条1項

各不実記録電磁的公正証書原本供用の点 いずれも刑法60条、158条1項、157条1項

第29、第38、第39、第41の各行為中

各有印私文書偽造の点 いずれも刑法60条、159条1項

各偽造有印私文書行使の点 いずれも刑法60条、161条1項、159条1項

各公正証書原本不実記載の点 いずれも刑法60条、157条1項

各不実記載公正証書原本行使の点 いずれも刑法60条、158条1項、157条1項

第31、第32の各行為中

各有印私文書偽造の点 いずれも刑法60条、159条1項

各偽造有印私文書行使の点 いずれも刑法60条、161条1項、159条1項

各公正証書原本不実記載未遂の点 いずれも刑法60条、157条3項、1項

第44の1、2の各行為中

各有印私文書偽造の点 いずれも刑法60条、159条1項

各偽造有印私文書行使の点 いずれも刑法60条、161条1項、159条1項

各免状不実記載の点 いずれも刑法60条、157条2項

各不正手段による免許証取得の点 いずれも刑法60条、平成13年法律第51号(道路交通法の一部を改正する法律)附則9条により同法による改正前の道路交通法117条の3第2号

科刑上一罪の処理

第7、第17の各罪 各有印私文書偽造とその各行使と各詐欺未遂につきいずれも刑法54条1項後段、10条(1罪として最も重い詐欺未遂罪の刑(ただし、短期は偽造有印私文書行使罪の刑のそれによる。)で処断)

第8ないし第11、第13の1、第15の1、第18、第22、第27の1、28の1、2、第30、第35ないし第37、第40、第42、第43の各罪 各有印私文書偽造とその各行使と各電磁的公正証書原本不実記録とその各供用につきいずれも刑法54条1項後段、10条(1罪として刑及び犯情の最も重い偽造有印私文書行使罪の刑で処断)

第13の2、第15の2の各罪 各有印私文書偽造とその各行使と各電磁的公正証書原本不実記録とその各供用と各詐欺につきいずれも刑法54条1項後段、10条(1罪として最も重い詐欺罪の刑(ただし、短期は偽造有印私文書行使罪の刑のそれによる。)で処断)

第26、第27の2の各罪 各電磁的公正証書原本不実記録とその各供用につきいずれも刑法54条1項後段、10条(1罪として犯情の重い不実記録電磁的公正証書原本供用の刑で処断)

第29、第38、第39、第41の各罪 各有印私文書偽造とその各行使と各公正証書原本不実記載とその各行使につきいずれも刑法54条1項後段、10条(1罪として刑及び犯情の最も重い偽造有印私文書行使罪の刑で処断)

第31、第32の各罪 各有印私文書偽造とその各行使と各公正証書原本不実記載未遂につきいずれも刑法54条1項後段、10条(1罪として刑及び犯情の最も重い偽造有印私文書行使罪の刑で処断)

第44の1、2の各罪 各免状不実記載と各不正手段による免許証取得につきいずれも刑法54条1項前段、各有印私文書偽造とその各行使と各免状不実記載につきいずれも刑法54条1項後段、10条(1罪として刑及び犯情の最も重い偽造有印私文書行使罪の刑で処断)

刑種の選択

第2ないし第4、第26、第27の2の各罪 いずれも懲役刑

併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い第13の2の罪の刑に法定の加重)

未決勾留日数の算入 刑法21条

(量刑事情)

第1 本件は、被告人が、判示記載の各共犯者と共謀の上(ただし、判示第3及び第4を除く。)、① 自動二輪車を窃取した事案(判示第1)、② 暴走族の総長として集団暴走を計画し、自らも無免許で自動二輪車を運転して一般車両の通行を妨害した上、その処罰を免れるために、後輩を自己の身代わりとして警察に出頭させた事案(判示第2ないし第4)、③ 2度にわたって、いわゆる美人局を行い金品を喝取した事案(判示第5及び第6)、④ 無断で合計22件、17名分の住民異動を行い、2通の国民健康保険被保険者証(以下「保険証」という。)をだまし取った事案(判示第8ないし第11、第13の1、2、第15の1、2、第18、第22、第26、第27の1、2、第28の1、2、第30、第35ないし第37、第40、第42及び第43)、⑤ 不正に入手した保険証等を利用して消費者金融業者2店から現金をだまし取ろうとしたが、未遂に終わった事案(判示第7及び第17)及び同様の方法で消費者金融業者4店から現金をだまし取った事案(判示第14の1ないし3及び第16)、⑥ 合計9台の車両を窃取し、そのうち6台を中古車買取業者に売却して現金をだまし取った事案(判示第12、第19ないし第21の各1、2、第23の1、2、第24、第25、第33の1、2及び第34の1、2)、⑦ 無断で他人の婚姻届4通及び養子縁組届1通を偽造して市役所等に提出し、うち婚姻届3通を受理させた事案(判示第29、第31、第32、第38及び第39)、⑧ 共犯者の女性を、上記⑦の婚姻届の提出によって作り出した架空の人物(以下「架空人」という。)に成りすまさせ、不正に架空人名義の原動機付自転車の運転免許証2通を取得した事案(判示第44の1、2)、⑨ 無断で婚姻させた男女1組の離婚届を偽造し、役所に提出してこれを受理させた事案(判示第41)である。

第2 次の1ないし5の各事情によれば、被告人の刑事責任は極めて重大である。

1 前記①の犯行について

被告人は、平成9年6月に少年院送致の処分を受け、仮退院後、保護観察中であったにもかかわらず、自己が乗り回したり、後輩に貸したりするために、以前から目をつけていた自動二輪車を窃取することを決意し、友人を誘って本件犯行に及んでいるのであって、その動機や犯情に酌むべき点はない。

2 前記②の各犯行について

被告人は、前記①の犯行により、試験観察となったが、反省することなく、平成11年1月ころ、暴走族グループを結成してその総長になり、結成暴走と称して多数の自動二輪車を率いて自らも無免許で自動二輪車を運転し、低速走行や信号無視などをしながら暴走行為をし、一般通行車両に衝突の危険を感じさせるなどしてその通行を妨害しているのであって、誠に危険で悪質な犯行である。

そして、被告人は、警察の捜査が自己に及んでいると感じるや、再度の少年院送致処分を免れるため、被告人の頼みを断ることができない立場にある後輩に自己の身代わりとして警察へ出頭することを持ちかけ、同人が出頭するまで何度も出頭を促しているのであって、極めて卑劣な犯行である。

3 前記③の各犯行について

被告人は、前記のとおり、後輩を自己の身代わりとして警察に出頭させたものの、同人が、警察に真実を話したということが分かり、いずれは逮捕されると考え、大阪方面に逃げることを思い立ち、以後、逃亡生活を送るようになった。

そして、大阪市内では、いわゆるホストクラブにおいてホストとして稼働した時期があったものの、その後は、定職にも就かず、逃亡資金や生活費、遊興費を得るために、共犯者と共に、いわゆる美人局を行うこととし、大阪市内及び横浜市内において、本件各犯行に及んだものであって、いずれも、自己中心的で私利私欲に基づく犯行である。

犯行態様についてみても、綿密な計画と役割分担の下に、共犯者の女性を通じて被害者を呼び出し、ホテルから出てきた被害者に対し、被告人らに粗暴な仲間がいる風などを装って脅しつけ、執ように金銭の要求をした上、判示第5の犯行においてはキャッシュカードを、判示第6の犯行においては消費者金融業者から借入れをさせて現金20万円を喝取したものであって、計画的で卑劣な犯行である。

各被害者は、恐怖心からキャッシュカードを交付したり、消費者金融業者から借入れを行って被告人らに現金を渡したものであるが、とりわけ判示第6の被害者は喝取金額と利息の負担を強いられたのであって、被害結果は重大である。

4 前記④ないし⑨の各犯行について

(1)  前記④ないし⑨の各犯行(以下、本項では「本件各犯行」ともいう。)が順次計画された経過の概要は以下のとおりである。

まず、被告人らは、判示第5及び第6のような恐喝行為は警察に捕まる危険性が高いと考え、市役所等で住民異動登録をする際、従前の保険証を持参しなくともその場で新たな保険証が交付されることを利用して他人名義の保険証を手に入れ、消費者金融業者から借入れを行おうと企て、被告人や共犯者と同年代で世帯主が国民健康保険に加入している男女及び異動先とするアパート等の空き室を探し出し、共犯者が市役所等の窓口に赴いて虚偽の住民異動を行って保険証の交付を受け、それと並行して、消費者金融業者から就業事実の確認をされた場合でも犯罪が発覚しないように、保険証の名義人を装った共犯者がアルバイトの申込みをして一事的な就業事実を作り出すなどの準備行為を行った上、共犯者が保険証の名義人に成りすまして消費者金融業者に借入れの申込みをして、現金をだまし取る計画を立てた。

また、被告人らは、消費者金融業者から現金をだまし取る方法では、名義人の個人情報等を詳細に記憶しなくてはならず、犯行が発覚しやすいことから、上記の手口と並行して、他人の住民異動を無断で行い、それによって手に入れた印鑑登録証明書等を利用して他人名義の普通乗用自動車の名義変更を行い、中古車買取業者に売却して現金をだまし取ることを企てた。そこで、被告人らは、前記の方法で、車両の新名義人となる人物の住民異動を行い、保険証、住民票及び印鑑登録証明書の交付を受け、窃取する普通乗用自動車の名義人についても、同様に住民異動を行って住民票及び印鑑登録証明書の交付を受け、陸運支局において、上記の方法で手に入れた新、旧名義人の住民票、印鑑登録証明書及び再交付を受けた自動車検査証等を提出して当該車両の名義変更を行った上、同車両の販売代理店に注文しておいた合いかぎを利用して同車両を窃取し、共犯者が、上記の方法で手に入れた保険証を身分証明書として示すなどして同車両の新名義人に成りすまし、同車両を中古車買取業者に売却して現金をだまし取る計画を立てた。

さらに、被告人らは、犯行を重ねるうちに、窓口で住民異動手続を行ったり、消費者金融業者や中古車買取業者へ行って手続を行う実行犯役が最も逮捕されやすいことを知ると、街で声をかけた女子高校生など20歳前後の男女を実行犯役とすることとし、また、販売代理店に合いかぎの製作を依頼するよりも、自分たちで合いかぎを製作した方が警察に捕まりにくいと考え、仲間を合いかぎ製作講座に通わせ、合いかぎ複製機等を購入し、さらに、被告人らも技術を修得した仲間から合いかぎ製作技術を学んだ。

そして、軽自動車の名義変更は、新所有者の住民票、自動車検査証等を提出するだけで、簡単に手続を行うことができることから、軽自動車の名義変更をすることにして犯行を繰り返していたが、軽自動車では、中古車買取業者に転売する際、普通乗用自動車に比べて転売価格が低くなることから、次第に、同じ犯罪行為を行うならば利益の大きい方が割がいいと考えるようになり、平成13年8月ころからは、再び、普通乗用自動車を窃取して転売することとした。

被告人は、上記のような犯行を繰り返すうちに、消費者金融業者においては、名義人の顔写真が貼付されている運転免許証の方が保険証よりも身分証明書としての信用性が高く、貸付金額も高額となることを知り、また、実在する人物の名義をかたって申し込みをした場合、その人物が多重債務者としていわゆるブラックリストに登録されている場合には借入れができなくなることから、架空人の運転免許証を手に入れることを思いついた。

そこで、見ず知らずの人物同士の婚姻届や養子縁組届を無断で市役所等に提出すると同時に、あらかじめ被告人らが探し出していたアパートの空き室に住民登録を異動させ、実在の人物とは本籍、住所、名字の異なる女性を作り出した上、街で声を掛けて共犯者にした女子高校生を架空人に成りすまさせて、原動機付自転車の運転免許証を不正に取得させることを計画し、実行した。

(2)  被告人は、前記のとおり、犯罪行為を繰り返しながら逃亡生活を続け、逃走資金や生活費等を得る手っ取り早い方法として、雑誌の記事等を参考にしながら、前記のような犯行計画を次々と考え出し、その計画を共犯者に持ちかけて実行に移し、途中、何人もの共犯者が逮捕されたという事実や自らも検挙されそうになった事実を経てもなお、社会や関係者多数への影響等を一切顧みることもせず、約1年間にわたって、各地を転々としながら常習的に本件各犯行を敢行していったのであって、誠に身勝手極まりないというほかはない。

犯行態様についてみても、前記のとおり、本件各犯行はいずれも極めて計画的であり、被告人とその共犯者間においては、それぞれの役割分担が明確にされ、入念な準備行為を経た上で、非常に手際よく実行されている。そして、前記のとおり、犯行を重ねるうちにますます巧妙化し、最終的には虚偽の婚姻届の提出にまで及んでいる上、無断で婚姻させた男女のうち1組については、犯行の発覚を遅らせるために、婚姻届提出後10日間ほどで再び離婚届を出すなどしているのであって、極めて悪質である。

被告人は、本件各犯行のすべてについて詳細で具体的な犯行計画を立て、窃盗においては、共犯者と共に、窃取する自動車を探し出し、工具を使用して自動車のドアロックを開け、合いかぎを製作するなどの実行行為を担っている。また、住民異動手続等や中古車買取業者への売却、消費者金融業者への申し込み等においては、共犯者に対して具体的な指示を出して実行させ、利益分配の点でも、共犯者I及びJとの犯行においては、Jの分も含めて6割の分け前を、Iが関与していない犯行においては、Jの分も含めてほぼ全額を取得していたのであり、被告人が、終始、本件各犯行の中心的存在であったことは明らかである。のみならず、被告人は、各犯行につき対人接触が必要な場合には一切かかわらないことで、自らは極力安全なところに身を置き続け、特に、福岡県内及び宮城県内においては、これまた自らの指示により、上記の対人接触役として、多数の年少者を言葉巧みに犯罪行為に巻き込んでいるのであって、甚だ悪質であり、この点も、共犯者中でも一際厳しい処罰を考えざるを得ない重要な要素である。

さらに、本件各犯行による財産的被害についてみると、消費者金融業者からだまし取った金額は合計100万円に上り、窃取した自動車は9台、窃盗の被害総額は合計約1400万円にもなり、うち6台については中古車買取業者への売却を通じて、合計500万円余りの詐欺の被害を生じさせているのであって、各被害者が受けた財産的被害は多大である。

また、被告人らは、無断で5組の婚姻届及び養子縁組届を偽造して市役所等に提出し、うち3組の婚姻届を受理させ、さらに、そのうち1組については、その後離婚届まで偽造して提出している。また、無断で22件、17人分の住民異動を行い、その結果手に入れた保険証、住民票及び印鑑登録証明書等を消費者金融業者からの借入れや中古車の売却に悪用していたのであって、無断で婚姻届を偽造し提出されたり、住民登録を異動させ、知らぬ間に車両の名義人などにされた被害者らが受けた事実上の不都合及び困惑や不安等の精神的苦痛は大きい。とりわけ、戸籍に婚姻や離婚をした旨の記載をされてしまった被害者が受けた精神的苦痛は甚大である。

加えて、被告人らの犯行は、各地で婚姻届等の受理手続、住民異動手続及びそれに付随する保険証等の発行事務手続、運転免許証の取得手続等を甚だしく混乱させ、ひいては、円滑、迅速な行政執行や行政サービスの在り方に制約、支障を来すとともに、戸籍をはじめとするこれらの制度自体の信頼を害し、さらには、社会生活の中で公文書として高度の信用性をもつべきはずの保険証や印鑑登録証明書、運転免許証等の信用をも害したのである。そして、従前の戸籍法上は、無断で婚姻届等を提出された被害者は、婚姻が無効になった場合であっても戸籍上は抹消という形を取らざるを得ず、その痕跡を完全に払拭することができなかったことから、そのような不都合を是正するために、被告人らの犯行をきっかけとして、一定の場合には戸籍上から婚姻の記載自体を抹消することができるという内容で戸籍法が改正されるにまで至っているのであるが、それほど、被告人らの犯行が社会に与えた影響は計り知れないものがあったというべきである。

しかも、本件各犯行は、各種公証制度の悪用を目的とした同種ないし類似事犯を誘発させる模倣性をも帯びているというべく、一般予防の見地からも、一段と厳しい科刑を念頭に置かなければならない。

5 各犯行を通じての事情

被告人は、前記のとおり、少年時代から、定職にも就かずに犯罪行為を犯しては逃走するということを繰り返し、その間、逃走資金や遊興費等を得るために言わば職業的に犯罪行為を続けていたのであって、少なくとも従前は、被告人の犯罪行為に対する規範意識は極めて低く、それだけ一般的な犯罪傾向も深まっていたといわざるを得ない。

第3 もっとも、各犯行中には判示のとおり未遂に終わっているものや被害品の一部が還付されているものがあるほか、経済的な損害を被った被害者のうち、被害品の還付等による損害の回復がされなかった13名の被害者に対しては、被告人の父が合計780万円余りを支払って被害弁償をし、示談が成立しており、そのうち5名の被害者は被告人に対する宥恕の意思を示している。

そして、被告人は、逮捕直後から本件各犯行を素直に認め、長期間の身柄拘束を通じて、本件各犯行やこれまでの自身の生活を振り返り、反省・悔悟の情を深めている。また、被告人は若年で前科がなく、社会復帰後は法律関係の資格を取ってまじめに稼働したいとの希望を持ち、勾留中もそのための書物を読むなどしており、更生の意欲もうかがわれる。さらに、被告人の父が、公判廷において、被告人の社会復帰後、自身が経営する会社で被告人を稼働させるなどしてその指導監督に当たることを誓っていることなど、被告人にとって酌むべき事情も認められ、科刑上相応の考慮が求められる。

第4 しかしながら、これらの被告人にとって有利に解すべき事情を十分考慮しても、被告人の本来の刑事責任が前記のとおり甚だ深刻、重大であることからすると、結局、被告人に対し、主文掲記の刑を科すことは、誠にやむを得ないというべきである。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官・畑中英明、裁判官・佐々木直人、裁判官・大塚さや子)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例