仙台地方裁判所 平成13年(行ウ)8号 判決 2003年9月25日
原告
甲
(以下「原告甲」という。)
原告
乙
(以下「原告乙」という。)
原告ら訴訟代理人弁護士
阿部長
原告ら訴訟復代理人弁護士
内田正之
被告
仙台南税務署長 神林恭一
同指定代理人
翠川洋
同
原田剛
同
戸澤均
同
飯塚康之
主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告が、原告らに対し、平成11年7月1日付けでした相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、原告甲に対しては、平成13年3月13日付け裁決により一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。
第2事案の概要
1 本件は、被告税務署長が、原告らの相続財産である土地の評価につき、私道の評価、不整形地の評価方法、賃貸土地の評価等に誤りがあるとして、相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしたところ、原告らがそれらの処分の取消しを求めた事案である。
2 前提事実
各項に掲記の証拠によれば、次の事実が認められる(争いのない事実を含む。)
(1) 課税処分の経緯等
ア 相続税の申告等
(ア) 丙(以下「亡丙」という。)は、平成8年10月12日、死亡した。
(イ) 原告甲は亡丙の長男、原告乙は亡丙の養子であり、亡丙の財産を共同相続した(以下「本件相続」という。)。
(ウ) 原告らが本件相続により取得した財産及び債務は、別表4のとおりである。別表4のうち、土地等(以下「本件土地」といい、各土地は、別表6及び同7のとおり、土地番号で表記する。)については、土地番号1~26を原告甲が相続し、土地番号27~30を原告乙が相続した。
(エ) 原告らは、被告に対し、平成9年8月11日、別表1~3の各<1>欄のとおり、相続税の申告をした(以下「本件申告」という。)。
(いずれも争いのない事実)
イ 本件更正処分等
(ア) 被告は、原告らに対し、平成11年7月1日付けで、別表1~3の各<8>欄のとおり、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件更正処分等」という。)をした。
(イ) 本件更正処分等に対する異議申立て、異議決定、審査請求及び裁決の経緯は、別表1~3の各<9>~<12>欄のとおりであり、平成13年3月13日付け裁決は、本件更正処分等のうち、原告甲の課税価格2億0307万1000円を超える部分、納付すべき税額3435万1900円を超える部分及び過少申告加算税額168万1000円を超える部分を取り消した。
(いずれも争いのない事実)
(2) 相続税制の概要等
ア 時価(相続税法22条)の意義
相続税法22条は、相続により取得した財産の価額は、「取得の時における時価」による旨定めている。時価とは、当該財産の取得時における客観的な交換価値のことであり、不特定多数の独立当事者間の自由な取引において通常成立すると認められる価額を意味する。
イ 財産評価基本通達の概要
(ア) 客観的な交換価値とはいっても、一義的に確定されるものでないため、課税実務上は、法に特別の定めのある場合を除き、国税庁長官が各国税局長あてに発した財産評価基本通達(本件申告に適用されるのは、平成7年6月27日付け課評2-6による改正を経たもの(乙7)である。以下「評価通達」という。)及び各国税局長が定める相続税財産評価基準により、画一的に財産を評価している。
(イ) 財産の評価は、時価による(評価通達1(2))。
(ウ) 土地は、地目別に(評価通達7)、実際の面積に基づいて評価する(評価通達8)。
(エ) 市街地的形態を形成する地域にある宅地の価額は、路線価方式によって評価する(評価通達11)。本件に関係する土地は、いずれも市街化地域内にあることから、路線価方式によって評価することになる。
(いずれも争いのない事実)
ウ 路線価方式(評価通達13)について
(ア) 路線価方式
a.路線価は、宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線ごとに設定する。
路線価は、路線に接する宅地で、次に掲げるすべての事項に該当するものについて、売買実例価額、公示価格、精通者意見価格等を基として、国税局長がその路線ごとに評定した1m2当たりの価額とする(評価通達14)。
(1) その路線のほぼ中央部にあること
(2) その一連の宅地に共通している地勢にあること
(3) その路線だけに接していること
(4) その路線に面している宅地の標準的な間口距離及び奥行距離を有するく形又は正方形のものであること
b.路線価は、平成4年分の評価からは、毎年1月1日を価格時点として、同日を価格時点とする地価公示価格(地価公示法に基づき、土地鑑定委員会が、都市計画区域内で公示地を選定し、その毎年1月1日時点の1m2当たりの正常な価格として判定、公示する価格)と同水準の価格の80%程度を目途に設定されている。
上記のように80%程度とされる理由は、土地の価額には相当の値幅があることや路線価の適用がその年1年に及ぶこと等から、評価上の安全性を考慮するためである。
(争いのない事実、乙9)
(イ) 評価単位
宅地の価額は、1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地)ごとに評価する(評価通達10)。
そのため、2筆以上の宅地からなる場合もあり、また、1筆の宅地が2画地以上の宅地として利用されている場合もある。
(争いのない事実)
(ウ) 奥行価格補正
宅地の価額は、道路からの奥行が標準的な画地の奥行より長く又は短くなるにつれて漸減する。そこで、一方のみが路線に接する宅地の価額は、路線価に、その宅地の奥行距離に応じて奥行価格補正率表(乙8の12頁)に定める補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価する(評価通達15)。
(争いのない事実)
(エ) 側方路線影響加算
正面と側方に路線がある宅地(角地)の価額は、側方路線の影響により、一方だけが路線に接する宅地よりも利用価値が高いことから、(1)正面路線の路線価に基づき計算した価格と(2)側方路線の路線価を正面路線の路線価とみなし、その路線価に基づき計算した価額に側方路線影響加算率表(乙8の13頁)に定める加算率(普通住宅地区については、角地の場合0.05、準角地(1系統の路線の屈曲部の内側に位置するもの)の場合0.02)を乗じて計算した価額の合計額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価する(評価通達16)。
(争いのない事実)
(オ) 不整形地の評価
a. 不整形地の価額は、その不整形の程度、位置及び地積の大小に応じ、イからハまでに分類して掲げる価額を基とし、その近傍の宅地との均衡を考慮して、100分の30の範囲内で相当と認められる金額を控除した価額によって評価する(評価通達20(1))。
(争いのない事実)
b. 平成4年3月に公表された資産評価企画官情報第1号「不整形地補正率について」(以下「参考情報」という。)によれば、不整形地の価額は、想定整形地(評価しようとする不整形地についてその評価対象地の画地全域を囲み、はみ出す部分が生じないような正面路線に面するく形又は正方形の土地)等の価額に不整形地補正率を乗じて算定するが、その不整形地補正率の算定方法は、次のとおりである。
(a) 評価対象地の地区(普通住宅地区、ビル街地区等)及び地積(普通住宅地区については、A500m2未満、B500m2以上750m2未満、C750m2以上)の別を地積区分表(乙8の15頁)に当てはめ、いずれの地積区分に該当するかを判定する。
(b) 評価対象地の画地全域を囲む、正面路線に面する正方形又はく形の土地(想定整形地)の地積を算出し、想定整形地の地積と評価対象地の地積の差が、想定整形地の地積に占める割合(蔭地割合)を算出し、この蔭地割合を不整形地補正率表(乙8の15頁)に当てはめ、不整形地補正率を求める。
一例として、普通住宅地区のA(500m2未満)につき、(1)蔭地割合10%未満は補正率1.00、(2)35%以上40%未満は同0.94、(3)65%以上70%未満は同0.70となる。
(c) 間口狭小補正率(評価通達20(3))の適用がある評価対象地については、不整形地補正率に間口狭小補正率を乗じて得た数値(小数点第2位未満切捨て)を評価対象地の不整形地補正率とする。
ただし、この場合の不整形地補正率の下限は70%とする。
(d) 評価対象地について、間口狭小補正率と奥行長大補正率(評価通達20(3))の適用がある場合には、間口狭小補正率表(乙8の14頁)に定める間口狭小補正率に、奥行長大補正率表(乙8の14頁)に定める奥行長大補正率を乗じて得た数値(小数点第2位未満切捨て)と上記(c)の数値とのいずれか低い方をその評価対象地の不整形地補正率とする(本件では、これを「総合補正率」と呼ぶ。)。
ただし、この場合の不整形地補正率の下限は70%とする。
(甲43、乙8、10)
(カ) 私道の評価
a. 私道(複数の者の通行の用に供される私有地である宅地)の価額は、上記(オ)までの定めにより計算した価額の100分の60に相当する価額によって評価する(評価通達24)。その代表例は、専ら特定の者のみの通行の用に供する行き止まり私道である。
b. 上記a.の私道が、不特定多数の者の通行の用に供されている場合は、その私道の価額は評価しない(評価通達24)。その代表例は、不特定多数の者が通行する通り抜け私道である。
c. 宅地の所有者のみが通行の用に供している私道は、その利用や処分に何らの制約を受けないことから、通常の宅地の価額として評価する。
(争いのない事実、乙10)
(キ) 貸宅地及び貸家建付地の評価
a. 貸宅地について
(a) 貸宅地(宅地の上に存する権利の目的となっている宅地)の価額は、権利の種類に応じ、その宅地の自用地としての価額から、設定されている権利の価額を控除して評価する(評価通達25)。
(b) 借地権の価額は、借地権の売買実例価額、精通者意見価格、地代の額等を基として国税局長の定める借地権の価額の割合によって計算した額によって評価する(評価通達27)。
(c) 使用借権が設定されている宅地は、その敷地利用に係る権利性が薄弱で経済的価値を有しないことから、原則として、自用地として評価する。
(d) 本件に適用される借地権の割合は、30%である。
(争いのない事実、乙7、8、17、弁論の全趣旨)
(e) 原告らは、土地番号2、同6、同8、同18ないし24、同26、同27及び同30(以下、併せて「本件貸宅地申告地」ともいう。)について、いずれも貸宅地の価額として評価すべきであると主張している。
b. 貸家建付地について
(a) 貸家建付地(貸家の目的に供されている宅地)の価額は、その更地価額から、更地価格に借地権割合(評価通達27)と借家権割合(評価通達94)の相乗積を乗じて計算した価額を控除した価額によって評価する(評価通達26)。
(b) その借家が、各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分)を有する場合には、その各独立部分の賃貸の状況に応じた賃貸割合を乗じて貸家建付地の価額を評価する。
ただし、アパートの各独立部分の一部が課税時期において一時的に空室になっていたにすぎないものについては、課税時期においても賃貸されていたものとして取り扱う。
(c) 土地の使用借権に基づいて当該土地に建物が建築され、その建物が賃貸された場合、建物賃借人の敷地利用権の価額は、建物所有者の敷地利用権に従属しているものとして、零として評価する。
ただし、賃貸建物の所有者に異動があり、新たな建物所有者の敷地利用権が賃借権から使用借権に変更された場合であっても、それ以前から存在した建物賃借権が存続している場合は、貸家建付地として取り扱う。
(d) 本件に適用される借家権の割合は、30%である。
(争いのない事実、乙7、11、17、弁論の全趣旨)
(e) よって、貸家建付地については、9%(30%×30%)の減価をすべきことになる。
c. 本件賃貸借契約書について
(a) 甲13の1(以下、甲13の2及び3と合わせて、「本件賃貸借契約書」という。)には、平成7年4月1日、土地番号2、同6、同8、同23~25及び同27~30につき、賃貸人亡丙、賃借人原告甲間で、賃料を月額2万9000円とする賃貸借契約を締結した旨の記載があり、貸主として亡丙の記名(ワープロ文字)及び印影、借主として原告甲の記名(同)及び印影がある。
(b) 甲13の2(本件賃貸借契約書)には、平成7年4月1日、土地番号18~21及び同26につき、賃貸人亡丙、賃借人原告乙間で、賃料を月額2万9000円とする賃貸借契約を締結した旨の記載があり、貸主として亡丙の記名(ワープロ文字)及び印影、借主として原告乙の記名(同)及び印影がある。
(c) 甲13の3 (本件賃貸借契約書)には、平成7年4月1日、土地番号31につき、賃貸人原告甲、賃借人亡丙間で、賃料を月額4000円とする賃貸借契約を締結した旨の記載があり、貸主として原告甲の記名(ワープロ文字)及び印影、借主として亡丙の記名(同)及び印影がある。
(甲13の1~3)
(ク) 仮路線価方式について
a. 路線価が設定されていない道路のみに接している土地を評価する場合、<1>当該路線価の設定されていない道路に接続する路線を基に、画地調整を行って評価する方法と、<2>税務署長が納税義務者からの申請により、路線価が設定されていない道路を路線とみなしてその道路に路線価を仮に設定し(以下「仮路線価」という。)、その仮路線価を基に評価する方法とがある。
<2>の場合、仮路線価の設定を申請しようとする納税義務者は、所轄税務署長に対し、仮路線価設定申請書を提出し、当該税務署長は、当該申請を受けて、その私道と状況が類似する付近の路線に付された路線価を基として、道路の幅員、舗装の状況、道路の勾配等の物理的状況、上下水道、都市ガスの付設の有無等の経済的状況及び建築制限等の行政上の法規制の状況等を比較検討し、当該道路の仮路線価を評定する。
なお、上記の仮路線価による評価方法は、従来から実務上行われてきたものの、評価通達には明記されていなかったものであるが、平成12年6月に追加された評価通達14-3に特定路線価として明記され、現在に至っている。
(乙25ないし29、弁論の全趣旨)
b. 原告甲は、本件申告に当たり、所轄税務署長である被告に対し、土地番号3、同4、同6及び同15の各土地(以下「本件仮路線価申告地」という。)につき、仮路線価設定申請書を提出していない。
(明らかに争わない事実)
(3) 課税価額等の計算
ア 計算過程一般について
(ア) 被告が主張する課税価額等の計算過程は、別表4(課税価格及び相続税額の計算書)のとおりである。
なお、本訴における本件土地についての被告の主張額は、被告の更正処分等(裁決による取消し後)の額を上回るものである。
(イ) 別表4のうち、取得財産の価格は、<1>土地等及び<5>未収地代を除き、当事者間に争いがなく、債務等は、<8>未払地代を除き、当事者間に争いがない。
(ウ) 原告甲は、相続財産として、土地番号31の借地権があると主張している、
イ 本件土地一般について
(ア) 本件土地に関する被告の主張は、別紙5(本件土地に関する被告の主張)のとおりである。そのうち具体的な数値をまとめて記載したものが、別表6(評価額一覧表(被告))である。争いのある部分を赤字で記載した。
(イ) これに対する原告らの認否は、別表7(評価額一覧表(原告ら))のとおりである。同じく、争いのある部分を赤字で記載した。
(ウ) 本件土地は、いずれも普通住宅地区にあり、地積は500m2未満である。(乙16の1~33)
ウ 争いのある補正率等についての認定
(ア) 土地番号1
蔭地割合が17.5%であることは、当事者間に争いがなく、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.98となり(乙8の15頁)、これが総合補正率となる。
(イ) 土地番号2
蔭地割合は、原告甲の主張によっても、20.94%であり、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.97となり(乙8の15頁)、これが総合補正率となる。
(ウ) 土地番号3及び同10(私道番号3)
a. 乙16の3によれば、仮路線価の適用がないとした場合の土地番号3の路線価は、被告主張のとおり、7万2000円/m2であることが認められる。
b. 乙16の3によれば、土地番号3及び同10(私道番号3)を1画地とした場合の奥行距離は25mであることが認められ、奥行価格補正率は、被告主張のとおり、0.99となる(乙8の12頁)。
c. 乙16の3によれば、土地番号3及び同10(私道番号3)を1画地とした場合の蔭地割合は、被告主張のとおり、56.2%であることが認められ、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.81となる(乙8の15頁)。
d. 乙16の3によれば、奥行距離÷間口距離が8.3であることが認められ、奥行長大補正率は、被告主張のとおり、0.90となり(乙8の14頁)、不整形地補正率の方が原告甲に有利である。
e. 間口狭小補正率が0.90であることは当事者間に争いがないから、参考情報によった場合の総合補正率は、被告主張のとおり、0.72となる(0.81×0.90)。
f. 土地番号3につき、貸家建付地減価をすべきことは、当事者間に争いがないから、土地番号10についても、貸家建付地減価(×0.91)をすべきである。
(エ) 土地番号4
a. 乙16の4によれば、仮路線価の適用がないとした場合の路線価は、被告主張のとおり、7万2000円/m2であることが認められる。
b. 土地番号11(私道番号2)が土地番号4及び同5のための私道であることは、当事者間に争いがない。
乙16の4によれば、土地番号4と同11(私道番号2)とを1つの宅地とした場合の奥行距離は16.2mであることが認められ、奥行価格補正率は、被告主張のとおり、1.00となる(乙8の12頁)。
c. 乙16の4によれば、土地番号4と同11(私道番号2)とを1つの宅地とした場合の蔭地割合は、被告主張のとおり、54.8%であることが認められ、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.86となる(乙8の15頁)。
d. 乙16の4によれば、奥行距離÷間口距離が5.4であることが認められ、奥行長大補正率は、被告主張のとおり、0.92となり(乙8の14頁)、不整形地補正率の方が原告甲に有利である。
e. 間口狭小補正率が0.90であることは当事者間に争いがないから、参考情報によった場合の総合補正率は、被告主張のとおり、0.77となる(0.86×0.90)。
(オ) 土地番号5
蔭地割合は、原告甲の主張によっても、24.08%であり、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.97となり(乙8の15頁)、これが総合補正率となる。
(カ) 土地番号6及び同12-2(私道番号1-2)
a. 乙16の6によれば、仮路線価の適用がないとした場合の土地番号6の路線価は、被告主張のとおり、7万2000円/m2であることが認められる。
b. 乙16の6によれば、土地番号6及び同12-2(私道番号1-2)を1画地とし、さらに、土地番号12-1(私道番号1-1)が土地番号6及び同8のための私道であることは当事者間に争いがないから、土地番号6及び同12-2と土地番号12-1(私道番号1-1)を1画地と調整した場合の奥行距離は、26.2mであることが認められ、奥行価格補正率は、被告主張のとおり、0.99となる(乙8の12頁)。
c. 乙16の6によれば、土地番号6及び同12-2(私道番号1-2)を1画地とし、さらに、土地番号6らとそれの私道である土地番号12-2(私道番号1-1)とを1つの宅地とした場合の蔭地割合は、被告主張のとおり、50.1%であることが認められ、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.86となる(乙8の15頁)。
d. 乙16の6によれば、奥行距離÷間口距離が6.89であることが認められ、奥行長大補正率は、被告主張のとおり、0.90となり(乙8の14頁)、不整形地補正率の方が原告甲に有利である。
e. 間口狭小補正率が0.90であること(土地番号12-2(私道番号1-2))は、当事者間に争いがないから、参考情報によった場合の総合補正率は、被告主張のとおり、0.77となる(0.86×0.90)。
(キ) 土地番号7
蔭地割合は、原告甲の主張よっても、14.47%であり、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.99となり(乙8の15頁)、これが総合補正率となる。
(ク) 土地番号8
蔭地割合は、原告甲の主張によっても、15.97%であり、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.98となり(乙8の15頁)、これが総合補正率となる。
(ケ) 土地番号9
a. 甲5の9及び乙16の9によれば、土地番号9は、10.4m×14.2mの形状で2路線に面していること、及びいずれの路線価も7万2000円であることが認められるから、いずれを正面路線とした場合であっても、奥行価格補左率は、被告主張のとおり、1.00となり(乙8の12頁)、2路線に面する宅地の加算額は、被告主張のとおり、3600円となる(7万2000円(側方路線価)×1.00(奥行価格補正率)×0.05(側方路線加算率))。
b. 蔭地割合は、原告甲の主張よっても、18.73%であり、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.98となり(乙8の15頁)、これが総合補正率となる。
(コ) 土地番号11
a. 乙16の11の2によれば、蔭地割合は28.2%であることが認められるから、参考情報による場合の不整形補主率は、被告主張のとおり、0.96となる(乙8の15頁)。
b. 奥行長大補正率が0.98であることは、当事者間に争いがないから、不整形地補正率の方が原告甲に有利である。
c. 間口狭小補正率が0.90であることは、当事者間に争いがないから、参考情報によった場合の総合補正率は、被告主張のとおり、0.86となる(0.96×0.90)。
d. 土地番号11(私道番号2)が自用地の60%の価額として評価すべき私道であることは、当事者間に争いがないところ、土地番号11(私道番号2)を私道として使用している土地番号4及び同5が貸家建付地であることは、当事者間に争いがないから、土地番号11についても、更に貸家建付地としての減価(×0.91)をすべきである。
(サ) 土地番号12-1
a. 甲5の12及び乙16の12によれば、土地番号12-1は、3.8m×10.5mのほぼく形状であることが認められるから、蔭地割合は10%未満であり、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、1.00であることが認められる。
b. 乙16の12によれば、奥行距離÷間口距離が2.76であることが認められ、奥行長大補正率は、被告主張のとおり、0.98となる(乙8の14頁)。
c. その結果、総合補正率は、被告主張のとおり、当事者間に争いのない間口狭小補正率0.90に奥行長大補正率0.98を乗じた0.88となる。
(シ) 土地番号14
蔭地割合は、原告甲の主張よっても、20.48%であり、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.97となり(乙8の15頁)、これが総合補正率となる。
(ス) 土地番号15及び同17-3(私道番号4)
a. 乙16の15の2によれば、仮路線価の適用がないとした場合の土地番号15の路線価は、被告主張のとおり、7万1000円/m2であることが認められる。
b. 乙16の15の2によれば、土地番号15及び同17-3(私道番号4)を1画地とした場合の奥行距離は20.2mであることが認められ、奥行価格補正率は、被告主張のとおり、1.00となる(乙8の12頁)。
c. 乙16の15の2によれば、土地番号15及び同17-3(私道番号4)を1画地とした場合の蔭地割合は52.5%であることが認められ、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.86となる(乙8の15頁)。
d. 甲7の4、乙16の15の2、17及び18並びに弁論の全趣旨によれば、土地番号17の3と同17の1及び2とは、一体として土地番号15の通路として使用することができ、現実にもそのように利用されていることが認められるところ、原告甲の主張によっても、同17の1~3の間口(土地番号17-1の隅切り部分に相当する間口距離を除く。)の合計は8.4mと認められ、これを間口距離と認めるのが相当である。したがって、間口狭小補正率は、被告主張のとおり、1.00となる(乙8の14頁)。
e. 乙16の15の2によれば、奥行距離÷間口距離が2.40(20.2m÷8.4m)であることが認められ、奥行長大補正率は、被告主張のとおり、0.98となり(乙8の14頁)、不整形地補正率の方が原告甲に有利である。
f. その結果、総合補正率は、0.86となる(0.86×1.00)。
g. 土地番号15につき、貸家建付地減価をすべきことは、当事者間に争いがないから、土地番号17-3についても、貸家建付地減価(×0.91)をすべきである。
(セ) 土地番号16
蔭地割合が15.16%であることは、当事者間に争いがなく、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.98となり(乙8の15頁)、これが総合補正率となる。
(ソ) 土地番号17-1及び同17-2
a. 乙16の17の2及び16の18の2によれば、土地番号17-1及び同17-2の蔭地割合は41.6%であることが認められ、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.92となる(乙8の15頁)。
b. 乙16の17の2及び16の18の2によれば、土地番号17-1及び同17-2の間口距離は4.2mであることが認められ、間口狭小補正率は、被告主張のとおり、0.94となる(乙8の14頁)。
c. 乙16の17の2及び16の18の2によれば、奥行距離÷間口距離が3.23(13.6m÷4.2m)であることが認められ、奥行長大補正率は、被告主張のとおり、0.96となり(乙8の14頁)、不整形地補正率の方が原告甲に有利である。
d. その結果、総合補正率は、被告主張のとおり、0.86となる(0.92×0.94)。
(タ) 土地番号18
a. 蔭地割合が原告甲主張のとおり0.71%であっても、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張とおり、1.00となり(乙8の15頁)、これが総合補正率となる。
b. 仮に本件賃貸借契約が認められないとしても、建物所有者の敷地利用権が使用借権になる以前から存在した建物賃貸借が本件相続時まで存続したことは、当事者間に争いがないから、貸家建付地として、9%の減額がされるべきである。
(チ) 土地番号19
蔭地割合が原告甲主張のとおり0.18%であっても、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、1.00となり(乙8の15頁)、これが総合補正率となる。
(ツ) 土地番号20
a. 乙16の22によれば、土地番号20の間口距離は公道に面した9.3mと認められるから、計算上の奥行距離は、101.175m2(争いのない地積)÷9.3m=10.8mとなる。したがって、奥行価格補正率は、被告主張のとおり、1.00となる(乙8の12頁参照)。
b. 乙16の22によれば、土地番号20の蔭地割合は15.6%であることが認められ(なお、原告甲主張の蔭地割合は、これを下回っている。)、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.98となり(乙8の15頁)、これが総合補正率となる。
c. 仮に本件賃貸借契約が認められないとしても、建物所有者の敷地利用権が使用借権になる以前から存在した建物賃貸借が本件相続時まで存続したことは、当事者間に争いがないから、貸家建付地として、9%の減額がされるべきである。
(テ) 土地番号21
a. 乙16の23によれば、土地番号21の蔭地割合は47.8%であることが認められ、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.90となり(乙8の15頁)、これが総合補正率となる。
b. 仮に本件賃貸借契約が認められないとしても、建物所有者の敷地利用権が使用借権になる以前から存在した建物賃貸借が本件相続時まで存続したことは、当事者間に争いがないから、貸家建付地として、9%の減額がされるべきである。
(ト) 土地番号22
乙16の24によれば、土地番号22の蔭地割合は40.9%であることが認められ、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.92となり(乙8の15頁)、当事者間に争いがない奥行長大補正率(0.98)よりも原告甲に有利であるから、これが総合補正率となる。
(ナ) 土地番号23及び同25
a. 被告は、従来、丁宅の庭部分を戊宅の敷地及び私道番号5と併せて1画地として扱っていたが(乙16の25)、本訴において、丁宅の庭部分を丁宅と併せて1画地として扱うと主張を変更した(別紙8-4参照)。評価単位として、丁宅の庭部分を丁宅と併せて1画地として扱うことにつき、当事者間に争いがない。
b. 乙36添付の別紙3-1によれば、土地番号23及び同25を1画地とした場合の奥行距離は24.9mであることが認められ、奥行価格補正率は、被告主張のとおり、0.99となる(乙8の12頁)。
c. 乙36添付の別紙3-1によれば、土地番号23及び同25を1画地とした場合の蔭地割合は59.0%であることが認められ、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.81となる(乙8の15頁参照)。
d. 原告甲主張の奥行長大補正率は、上記不整形地補正率より大きいから、不整形地補正率の方が原告甲に有利である。
e. 間口狭小補正率が0.90であることは、当事者間に争いがないから、総合補正率は、被告主張のとおり、0.72となる(0.81×0.90)。
(ニ) 土地番号24
乙36添付の別紙4-1によれば、土地番号24の蔭地割合は35.4%であることが認められ、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.94となり(乙8の15頁)、これが総合補正率となる。
(ヌ) 土地番号26
a. 乙16の28によれば、土地番号26の間口距離は26.8mと認められるから、計算上の奥行距離は、227.275m2(争いのない地積)÷26.8m=8.4mとなる。したがって、奥行価格補正率は、被告主張のとおり、0.97となる(乙8の12頁参照)。
b. 乙16の28によれば、土地番号26の蔭地割合は43.4%であることが認められ、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、0.92となる(乙8の15頁)。
c. 乙16の28によれば、土地番号26の奥行距離÷間口距離は0.31であることが認められ、奥行長大補正率は、被告主張のとおり、1.00となり(乙8の14頁)、不整形地補正率の方が原告甲に有利である。
d. 前記a.のとおり、土地番号26の間口距離は26.8mであるから、間口狭小補正率は、被告主張のとおり、1.00となり(乙8の14頁)、総合補正率は、0.92となる(0.92×1.00)。
(ネ) 土地番号27及び同28
a. 乙16の29によれば、土地番号27及び同28(私道番号7)を1画地とした場合の間口距離は20.0mであることが認められ、間口狭小補正率は、被告主張のとおり、1.00となる(乙8の14頁)。
b. 乙16の29によれば、土地番号27及び同28(私道番号7)を1画地とした場合の奥行距離÷間口距離は1.00であることが認められ、奥行長大補正率は、被告主張のとおり、1.00となり(乙8の14頁)、総合補正率は、1.00となる。
(ノ) 土地番号29及び同30
a. 甲11の3及び4並びに乙16の32によれば、土地番号29(私道番号6)及び同30を1画地とした場合の蔭地割合は10%未満であることが認められ、参考情報による場合の不整形地補正率は、被告主張のとおり、1.00となる(乙8の15頁)。
b. 乙16の32によれば、土地番号29(私道番号6)及び同30を1画地とした場合の間口距離は18.2mであることが認められ、間口狭小補正率は、被告主張のとおり、1.00となる(乙8の14頁)。
c. 乙16の32によれば、土地番号29(私道番号6)及び30を1画地とした場合の奥行距離÷間口距離は0.90であることが認められ、奥行長大補正率は、被告主張のとおり、1.00となり(乙8の14頁)、総合補正率は、1.00となる。
3 争点
(1) 本件土地の評価につき、被告による評価通達の当てはめに誤りはあるか。具体的には、次のア~エのとおりである。
ア 画地計算の方法(私道減価の要否)(争点1)
イ 仮路線価方式適用の可否(争点2)
ウ 不整形地の評価方法(争点3)
エ 借地権減価、貸宅地減価及び貸家建付地減価の要否(争点4)
(2) 被告の評価額が、本件土地の時価を超えるか否か(争点5)。
4 争点に対する当事者の主張
(1) 画地計算の方法(私道減価の要否)(争点1)
ア 被告の主張
(ア) 私道番号1-2(土地番号12-2)
a. 私道番号1-2は、Aに賃貸している建物(以下「A宅」といい、他の建物についても同様に略称する。)の敷地の一部として、自動車置場などA宅に付随する用途に供されている(別紙8-1参照)。
b. B宅の玄関は私道番号1-1(土地番号12-1)に面し(甲20)、B宅への通常の出入りには私道番号1-1を通行していること、B宅の私道番号1-2側はトタン塀で囲われていることから、仮に、Bが私道番号1-2を利用することがあったとしても、便宜上利用しているにすぎず、私道減価の適用上、通行の用に供しているとは認められない。
c. よって、私道番号1-2は、私道減価をせず、A宅の敷地(土地番号6)と併せて1画地として評価するのが相当である。
(イ) 私道番号3(土地番号10)
a. 私道番号3は、公道からC宅への出入りや自動車置場など、C宅に付随する用途に供されている(別紙8-2参照)。
b. 原告甲は、私道番号3はD宅の通行の用にも供されている旨主張する。
しかしながら、D宅の玄関は公道側に面しており、D宅への通常の出入りには公道を利用していること、裏庭にあるプレハブ建物には台所等の生活の本拠となる設備はないこと、プレハブ建物にはD宅の縁側からも出入りができ、現実にそのように出入りしていることから、仮に、Dが自転車の出入りやプレハブ建物からの出入りのために私道番号3を利用することがあったとしても、便宜上利用しているにすぎず、私道減価の適用上、通行の用に供しているとはいえない。
c. よって、私道番号3は、私道減価をせず、C宅の敷地(土地番号3)と併せて1画地として評価するのが相当である。
(ウ) 私道番号4(土地番号17-3)
a. 私道番号4は、公道からEへの出入りやEを利用する者の駐車場用地等、Eに付随する用途に供されている(別紙8-3参照)。
b. 原告甲は、私道番号4はF宅の通行の用にも供されている旨主張する。
しかしながら、F宅の玄関は公道に面し、F宅への通常の出入りには公道を利用していること、Fが駐車しているとしても、それは便宜上駐車用地として利用しているにすぎず、私道減価の適用上、通行の用に供しているとは認められない。
c. 原告甲は、Eは老人クラブの集会所であり、公共的施設等に該当するから、私道番号4は、価額を零と評価すべき私道である旨主張する。
しかしながら、評価通達24は、評価対象地が私道であるとした場合の評価についてのものであり、私道ではなく、宅地と併せて1画地として評価するのを相当とする土地については、そもそも適用にならない。
仮に、私道番号4が私道評価を受けるとしても、一老人クラブが、会員の会合等のために利用しているのであれば、利用者は特定されているのであって、「不特定多数の者」の通行の用に供されているとはいえない。
d. よって、私道番号4は、私道減価をせず、Eの敷地(土地番号15)と併せて1画地として評価するのが相当である。
(エ) 私道番号5(土地番号25)
a. 私道番号5は、公道から戊宅への出入りなど、戊宅に付随する用途に利用されている(別紙8-4参照)。
b. 原告甲は、私道番号5は丁宅の通行の用にも供されている旨主張する。
しかしながら、私道番号5側の一部にはブロック塀があるため、丁宅から私道番号5へ出入りするためには、人1人がやっと通れる程度の広さしかない場所を通らなければならないこと、その反対側には車の出入りにも十分な広さの間口があり、丁は、その空きスペースに駐車していることからすると、丁は、通常、私道番号5と反対側の間口から出入りしていると考えられる。
仮に、丁が私道番号5を通行することがあったとしても、それは便宜上利用しているにすぎず、私道減価の適用上、通行の用に供しているとは認められない。
c. よって、私道番号5は、私道減価をせず、戊宅の敷地(土地番号23)と併せて1画地として評価するのが相当である。
(オ) 私道番号6(土地番号29)及び同7(土地番号28)
a. 私道番号6は、GアパートAへの出入りや自動車置場など、同アパートに付随する用途に供されている。同様に、私道番号7は、GアパートBへの出入りや自転車置場など、同アパートに付随する用途に供されている(別紙8-5参照)。
b. 原告乙は、私道番号6及び同7は、アパートの入居者である各6世帯の家族という特定多数の者が利用する通路であるから、私道として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、アパートの入居者の多寡によって私道か否かを判断することは相当ではない。
c. また、原告乙は、別紙8-5の通路(c)友び同(d)部分につき、アパートの住人以外の一般人も通行しており、当該部分は通り抜け道路である旨主張する。
しかしながら、当該部分は、隣接地との境界に設けられた金網フェンスとGアパートA及びBとの間のコンクリート部分であり、アパートの敷地の一部というべきであるから、到底道路と呼べる場所ではない。
しかも、私道番号6及び同7は、原告乙が第三者の通行を容認しなければならない土地ではない。
したがって、原告乙の上記主張は失当である。
d. よって、私道番号6及び同7は、いずれも私道減価をせず、土地番号27(GアパートB)と私道番号7、土地番号30(GアパートA)と私道番号6をそれぞれ1画地として評価するのが相当である。
イ 原告らの主張
(ア) 私道番号1-2
a. 被告の主張(ア)a.は認める。
b. B宅の勝手口やストーブの炊口が当該私道に面していることから、Bも、私道番号1-2を利用している(別紙8-1参照)。
c. したがって、私道番号1-2は、私道減価をして評価すべきである。
(イ) 私道番号3
a. 被告の主張(イ)a.は認める。
b. D宅の裏庭には、Dが子供部屋として利用しているプレハブ建物及び自転車置場があることから、Dも、公道に出入りするため、日常的に私道番号3を通行している(別紙8-2参照)。
c. したがって、私道番号3は、私道減価をして評価すべきである。
(ウ) 私道番号4
a. 被告の主張(ウ)a.は認める。
b. Fも、駐車するなどして、私道番号4を通行している(別紙8-3参照)。
c. 財産評価基本通達逐条解説(甲24の1及び2)によると、価額を零と評価すべき私道として、「行き止まりの私道であるが、その私道を通行して不特定多数の者が地域等の集会所、地域センター及び公園などの公共施設や商店街等に出入りしている場合などにおけるその私道」が挙げられており、私道番号4は、集会所に該当するEへ出入りする高齢者等が通行していることから、上記の価額を評価しない私道の例に該当する。
d. したがって、私道番号4の価額の評価は、零とすべきである。
(エ) 私道番号5
a. 被告の主張(エ)a.は認める。
b. 私道番号5寄りに丁宅の玄関があることから、丁も、公道に通じるために、私道番号5を通行している(別紙8-4参照)。
c. したがって、私道番号5は、私道減価をして評価すべきである。
(オ) 私道番号6及び同7
a. 被告の主張(オ)a.は認める。
b. 私道番号6はGアパートA(土地番号30)の、私道番号7はGアパートB(土地番号27)の各通路として、各6所帯の家族という特定多数の入居者やその訪問客の通行の用に供されている。
c. さらに、別紙8-5の通路(c)及び同(d)部分をアパートの住民以外の一般人が通行しているため、私道番号6及び同7は、通り抜け道路ともなっている(別紙8-5参照)。
d. したがって、私道番号6及び同7は、少なくとも私道減価率を0.6として評価すべきである。
(2) 仮路線価方式適用の可否(争点2)
ア 被告の主張
(ア)a. 前提事実(2)ウ(ク)のとおり、仮路線価方式によって土地を評価しようとする納税者は、所轄税務署長に対し、仮路線価設定申請書を提出しなければならず、これを受けた所轄税務署長が仮路線価を設定するものであり、この取扱いは、本件相続時以前から行われていたところ、原告甲は、本件仮路線価申告地につき、仮路線価設定申請書を提出していない。
b. したがって、原告甲の主張する仮路線価方式の適用は、手続的要件を欠いており、認められない。
(イ) また、本件仮路線価申告地については、路線沿いの地域と評価対象地の地区区分が異なるなど、接続する路線の路線価を基に画地調整を行い、不整形地の評価方法を適用する方法による評価が実情に即さないとの事情もない。
(ウ) 原告甲の主張する仮路線価は、基礎資料の客観性、近傍箇所の位置、本件との類似性等が不明で、その合理性の検討すらできないものであるから、内容においても合理性がない。
イ 原告らの主張
(ア)a. 相続税法上の路線価は、道路沿いに1m2当たりの路線価が付されているところ、道路が分岐する場合には一般に路線価が異なることから、路線価の付設されていない道路については、評価対象地の存する路線価図における類似箇所を参考にし、仮路線価を付設して申告するのが実務上の通例であり、かつ、このような取扱いは、これまで各税務署の実務対応においても是認されてきた。
b. 被告は、評価通達14-3を根拠として、原告甲による仮路線価の付設を認めていないが、同通達は、平成12年6月13日に通達化されたものであるから、本件申告時点には通達として公表されていない。したがって、仮路線価設定申請書の提出がないことを理由として、仮路線価の付設を認めないことは、違法である。
(イ) 原告甲が付設した土地番号3、同4及び同6の仮路線価5万9000円/m2、土地番号15の仮路線価5万8000円/m2は、いずれも合理的なものである。
(3) 不整形地の評価方法(争点3)
ア 被告の主張
(ア) 参考情報の合理性
a. 評価通達20(1)は、不整形地の価額について定めるところ、その趣旨は、土地の形状等が悪いことによって、画地の全部が宅地としての機能を十分に発揮できず、整形地よりも価額が低くなる例が多いことから、それぞれの個別事情及び不整形の程度に応じ、その価値が減少していると認められる範囲で減額補正する余地を認めたものである。
したがって、宅地が不整形であっても、おおむね適正規模以上の面積であったり、不整形の程度が小さい場合など、宅地としての利用に特に支障がない場合は、減額補正の必要はない。
b. 評価通達は、不整形地補正率算定の具体的算定基準を定めていなかったため、恣意性の排除、納税者間の公平の確保、評価方法の簡素化の観点から、参考情報が公表された。参考情報は、従前の経験則を集約した上、不整形地の評価上勘案すべき不整形の程度、位置及び地積の大小の各要素を織り込み、不整形地補正率を画一的、統一的に算定するための指針として公表されたものであり、その内容は合理的である。
c.(a) H不動産鑑定士による不動産鑑定評価書(乙30。以下「H鑑定」という。)は、平成8年10月12日現在の土地番号13(275m2)の評価額を2150万円(ただし、土地番号13の地積が268.06m2であることは当事者間に争いがないから、同地積に換算した2090万円を評価額とする。)、土地番号23~25(357.45m2)の評価額を3110万円と評価している。
(b) 土地番号13について、被告は、不整形の程度が小さいため、参考情報による不整形地補正を行わなかったが、同土地の被告評価額は、貸家建付地減価前で1582万6262円であり(乙16の13)、H鑑定の評価額に対する割合は75.7%となる。
(c) 土地番号23~25について、被告は、参考情報による不整形地補正を行ったが、H鑑定に合わせて土地番号23~25を一体として画地調整を行い、参考情報を基に評価すると、その評価額は2367万7488円となり(乙31)、H鑑定の評価額に対する割合は76.1%となる。
(d) 以上のとおり、不整形地補正をしない宅地の評価額が鑑定評価額の75.7%、路線価を基準とする参考情報による不整形地補正を行った宅地の評価額が鑑定評価額の76.1%とほぼ同一水準になっていることは、参考情報による不整形地補正が、内容において合理性を有していることを示している。
(イ) 実務上の基準
そして、参考情報は、路線価とともに公開され(乙8)、実務上、評価通達20及び参考情報により、不整形地の評価が行われてきたものである。
(ウ) 原告らの主張に対する反論
a. 原告らは、本件申告において、参考情報の蔭地割合をそのまま不整形地補正率としている。
しかしながら、このような方法は、評価通達20(1)の「その不整形の程度、位置及び地積の大小に応じ、・・・その近傍の宅地との均衡を考慮し」ていないから、合理的な算定方法とはいえない。
b. 原告らは、平成11年7月19日付け評価通達の一部改正による不整形地補正率と従来の参考情報による不整形地補正率との間に相違があるために、参考情報による不整形地補正率には合理性がない旨主張する。
しかしながら、上記の通達改正に際し、その時点の経済情勢に沿うように不整形地補正率の数値基準を見直し、減額割合の上限を3割から4割に改めた上で同補正率を定めたものである。土地情勢を含めた経済情勢が異なれば、財産評価の数値基準を見直すのは当然であるから、原告ら指摘の点は、参考情報に合理性がないことを示すものではない。
(エ) まとめ
よって、参考情報に基づいて行った被告の不整形地の評価は、相当である。
イ 原告らの主張
(ア) 参考情報は、「不整形地評価の公平・簡便化の観点から、不整形地の評価上勘案すべき上記の各要素(注・不整形の程度、位置及び地積の大小)を盛り込んだ補正率を設け、これを近似整形地等の価額に乗じて不整形地の価額を算定することができる」としているから(乙10の104頁)、参考情報の不整形地補正率表は、飽くまで選択的に適用されるものであって、その適用を強制されるべきではない。
(イ)a. 参考情報の不整形地補正率表によれば、商業地区Bの蔭地割合30%未満で補正率0.99、蔭地割合70%未満でも補正率0.85にすぎず、いずれも実体価額と著しく乖離しており、補正率表作成の根拠も不明であって、参考情報は、その内容において著しく不当である。
b. この点は、また、参考情報による不整形地補正率と平成11年7月19日付け評価通達の一部改正による不整形地補正率との間に大きな相違があることからも、裏付けられる。
(ウ) したがって、蔭地割合をそのまま不整形地補正率として適用することは、何ら評価通達に違反するものではなく、合理的である。
(4) 借地権減価、貸宅地減価及び貸家建付地減価の要否(争点4)
ア 被告の主張
(ア) 貸宅地としての評価
a. 本件賃貸借契約書は、以下のとおり、平成7年4月1日には作成されておらず、後日、相続税の軽減等を目的として、亡丙の関与なしに作成されたものと推認すべきである。
仮に何らかの契約が締結されたのだとしても、当事者の合理的意思解釈としては、使用貸借契約が成立したものと認めるべきである。
したがって、本件貸宅地申告地は、いずれも自用地の価額として評価すべきであり、土地番号31(貸家建付借地権)の土地利用関係も、使用貸借と認めるべきである。
b. 本件賃貸借契約書の作成経緯等には、不自然な点がある。
(a) 本件賃貸借契約書が作成された平成7年4月1日と同日に賃借人Fとの間で交わされた建物賃貸借契約書(乙22)は、市販の契約書用紙を使用し、賃貸人亡丙及び賃借人ら署名押印があるのに対し、本件賃貸借契約書(甲13の1~3)は、前提事実(2)ウ(キ)c.のとおり、署名部分もワープロで作成されており、亡丙の署名がない。
(b) 本件貸宅地申告地のうち土地番号27~30は、亡丙外5名による共有となっているが、本件賃貸借契約書は、亡丙のみと原告甲との間で交わされている。
(c) 原告甲は、本人尋問において、本件賃貸借契約の当事者であるにもかかわらず、賃料をどのように算定したかについて答えていない。このことは、本件賃貸借契約書を自ら作成した旨の原告甲の供述の信用性に多大な疑念を抱かせるものである。
(d) 本件賃貸借契約の締結日の前後において、賃借地及び賃借地上の建物の所有関係に変動がなく、その時点で契約する必然性は認められない。
(e) 契約当事者である亡丙と原告らは、親子の関係にある。
c. 次のとおり、賃料支払の事実も認められない。
(a) 原告らは、亡丙名義の養老保険に係る保険料を、亡丙の代わりに支払うことで当該賃料を支払っていた旨主張する。
しかしながら、その裏付けとして提出する「簡易保険保険料払込証明書(団体)」(甲14)は、保険料を支払った事実を証するものではあっても、原告らが当該保険料を支払っていることを証明するものではない。
また、本件賃貸借契約書には、賃料の支払を亡丙の保険料を立替払することで支払う旨の特約はない。
仮に原告らが保険料を立替払していたとすれば、立替金と賃料との差額について精算されてしかるべきであるところ、原告甲は、本人尋問において、そうした精算はしていないと供述している。
さらに、原告乙が支払っていたとされる保険契約は、平成7年9月4日に契約されたものであるから、本件賃貸借契約書を作成したとされる同年4月1日から同年8月までは、当該賃料を上記保険料の立替払の方法で支払うことは不可能であった。
したがって、原告らによる保険料の立替払は、本件契約に基づく賃料の支払とは無関係の支払というべきである。
(b)α 本件申告の申告書(乙1)によれば、本件賃貸借契約に係る地代について、契約を締結したとされる日から相続開始日までの期間に相当する賃料全額を未収地代及び未払地代として亡丙の財産及び債務として計上しており、遺産相続協議書(甲18)においても、同様に取り扱われている。
β 仮に賃料の支払があったのであれば、原告らが上記の取扱いをすることはあり得ない。
(イ) 貸家建付地としての評価について
前提事実(2)ウ(キ)b.に従い、被告は、本件貸宅地申告地のうち、建物所有者の敷地利用権が使用借権になる以前から存在した建物賃貸借が本件相続時まで存続した土地番号18、同20及び同21については、貸家建付地として評価したが、その余については、貸家建付地減価をしなかった。
(ウ) 信義則違反の主張について
a. 各課税時期ごとに事実関係の変動があったため、異なる評価を行ったものであり、何ら信義則に反するような事情は認められない。
b. すなわち、後記(原告の主張(ウ)参照)の第1次相続時点における土地番号23、同24及び同26の土地所有者及び家屋所有者は、Mであり、当時、当該建物は賃貸されていたから、これらの土地は、評価通達26に基づき、貸家建付地の価額で評価すべきであった。
c. これに対し、本件相続時点においては、第1次相続における遺産分割により、亡丙が本件土地を相続し、土地番号26に存する家屋を原告乙が、土地番号23、24に存する各家屋を原告甲がそれぞれ相続したため、原告らの敷地利用権は使用貸借に基づくものとなり、その後、建物賃借人が、土地番号26につきIからJに、土地番号23につきKから戊に、土地番号24につきLから丁にそれぞれ異動し、本件相続時までその状況が継続した。
したがって、土地番号23、同24及び同26は、貸家建付地減価をせず、いずれも自用地の価額で評価すべきことになる。
(エ) 空家物件について
a. 土地番号19につき、本件賃貸借契約は実体がなく、原告乙の権原が使用借権であることは、前記のとおりであり、それ以前からの建物賃貸借が継続していたとの事情もないから、自用地として評価されるべきである。
b.(a) さらに、土地番号19に存する貸家は、本件相続当時、空家となっていた。
(b) ところで、評価通達26(貸家建付地の評価)の趣旨は、建物賃借人は、貸家の敷地についても、ある程度の支配権を有し、他方、土地所有者は、建物賃借人の土地利用につき受忍義務を負うところ、建物賃貸人が建物賃借人の支配権を消滅させるためには、立退料の支払を要することがあり、建物賃借人がいる状態のままでは、建物賃借人がいない場合よりも低い価額でしか譲渡できないことから、土地の減価を認めたというものである。そうすると、借家権の目的になっている家屋(貸家)とは、現実に貸し付けられている家屋をいうと解するのが相当である。
(c) なお、継続的に賃貸されていたアパートやビルの各独立部分の一部がたまたま課税時期において一時的に空室であったにすぎないものは、課税時期においても賃貸しているものと取り扱われるが(前提事実(2)ウ(キ)b.(b))、これは、アパートやビルの場合は、それらの一部に建物賃借人が存在すること自体が土地の減価要素となり得るためであり、この取扱いを本件のような一戸建ての貸家の場合に当てはめることはできないものである。
(オ) 駐車場用地(土地番号22)について
a. 後記原告らの主張(オ)a.は認める。
b. 土地の所有者が貸駐車場を経営する場合、自動車の保管場所を提供するにすぎない。
c. 仮に、これが土地賃貸借契約であるとしても、契約の更新や解約についても、建物所有目的の土地賃貸借のような制約はないから、第三者に駐車場として利用させることが土地の減価要因となるとはいえない。
d. 本件においては、土地番号22がアパート敷地と一体となっているとの事情もない。
すなわち、貸家の賃貸借契約に付随して土地番号22を駐車場として使用することを認める契約がされた形跡はない(乙22)。
また、アパート及び貸家と駐車場は、場所的に離れており、駐車場の利用者も、アパートや貸家の賃借人に限定されていない。
イ 原告らの主張
(ア) 貸宅地としての評価
以下の理由により、本件貸宅地申告地は、すべて貸宅地の価額で評価すべきである。
a. 本件賃貸借契約
原告らは、亡丙との間で、平成7年4月1日、次の内容の賃貸借契約を結んだ(以下「本件賃貸借契約」という。)。
(a) 土地番号2、同6、同8、同23~25、同27~30
賃貸人 亡丙、
賃借人 原告甲、
賃料 月額2万9000円
(b) 土地番号18~21、同26
賃貸人 亡丙、
賃借人 原告乙、
賃料 月額2万9000円
(c) 土地番号31
賃貸人 原告甲、
賃借人 亡丙、
賃料 月額4000円
b. 賃料の支払方法
(a) 原告甲、亡丙間
亡丙が加入していた養老保険(保険料月額2万1056円と同8170円のもの)の保険料合計2万9226円を、原告甲が亡丙に代わって支払っていたものであり(甲14)、うち2万5000円分は、原告甲が亡丙に支払う賃料(2万9000円)と、原告甲が亡丙から受け取る賃料(4000円)との差額である。
(b) 原告乙、亡丙間
亡丙が加入していた養老保険(保険料月額3万9900円のもの)の保険料を、原告乙が亡丙に代わって支払っていたものであり(甲14)、うち2万9000円分は、原告乙が亡丙に支払う賃料である。
c. 本件賃貸借契約を締結した経緯
(a) 被告の主張(ア)c.(b)αは認める。
(b) 本件申告等において、原告らが平成7年4月から本件相続時までの賃料につき相互に未収として処理した理由は、原告らは上記のように亡丙の保険料を支払うことで賃料の支払としていたが、これを預金通帳等により明らかにできなかったため、決算調整事項として賃料未払としたものである。よって、これらの処理は、現実に賃料を支払っていた旨の原告らの主張と何ら矛盾するものではない。
d. 亡丙との賃貸借契約は、実際には昭和57年以降継続されていたが、市民税務相談の際、近親者の契約は特にきちんと契約書を作成していた方がよいと指導を受けたため、平成7年4月1日に本件賃貸借契約書を作成したものである。
(イ) 貸家建付地としての評価について
仮に、本件賃貸借契約が使用貸借と認められたとしても、土地番号18、同20及び同21については、被告の認めるとおり、貸家建付地減価がされるべきである。
(ウ) 信義則違反(土地番号23、同24及び同26)
(a) 本件貸宅地申告地のうち、土地番号23、同24及び同26は、昭和55年11月5日、亡丙がMから相続し(第1次相続)、平成8年10月12日、原告甲が亡丙から相続した(第2次相続)。
土地番号23、同24及び同26には、それぞれM所有の建物が存在し、これを第三者に賃貸していたことから、原告らは、第1次相続において、上記の土地をいずれも貸家建付地として申告し、被告もこれを是認していたものであり、第1次相続後は、亡丙に対し、各貸家の所有者となった原告らが地代を支払うことになったため、貸宅地として評価、申告したものである。
(b) ところで、<1>税務官庁による何らかの言動があり、<2>その言動に際し、納税者側に責められるべき事情がなく、<3>納税者がその言動を信頼したことに無理からぬ事由があり、<4>納税者がその信頼で裏切られることによって被る不利益の程度が大きいといった要件を満たす場合には、信義則上、納税者の申告は、申告内容どおりに認められるべきである。
被告は、第1次相続の申告時にも税務調査を行ったが、その際、何ら指摘をしなかったことから、原告らはこれを信頼し、本件貸宅地申告地が貸家建付地であることを前提として、その後に本件賃貸借契約があったため、土地番号23、同24及び同26につき、貸宅地として本件申告をしたものであるから、原告らの上記申告内容は認められるべきである。
(エ) 空家物件について
a. 土地番号19は、前記(ア)のとおり、原告乙が亡丙から賃借していたものである。
b. 土地番号19上にある建物が本件相続時点において空家であったことは、認める。
c. 継続的に賃貸の用に供されている物件のうち、課税時期において一時的に空家となっていたにすぎないと認められるものについては、課税時期においても賃貸されていたものとして取り扱って差し支えないものとされている(甲16)。
d. したがって、土地番号19は、貸宅地、少なくとも貸家建付地の価額で評価すべきであり、被告が自用地の価額として評価したのは誤りである。
(オ) 駐車場用地について
a. 本件相続当時、土地番号22は、駐車場用地として、亡丙が第三者に月極駐車場として賃貸していた(以下「本件駐車場契約」という。)。
b. しかも、土地番号22は、土地番号18~20上に存する4棟の貸家の用に供されている駐車場用地であり、その実態は、当該貸家の入居者が、2台目の駐車場として借りている場合がほとんどである。
c. よって、土地番号22は、土地番号18~20と一体のものとして、貸家建付地の価額で評価すべきである。
(5) 本件土地の時価(争点5)
ア 被告の主張
(ア) 前記のとおり、H鑑定(乙30)によれば、土地番号13の鑑定評価額(自用地価格)は2090万円(地積換算を経たもの)、土地番号23~25の鑑定評価額は3110万円であるところ、被告の本件処分における評価額は、それぞれ1582万6262円(貸家建付地減価前の価格)、2118万5431円(借地権減価をしていない価格)であるから(乙36)、被告の本件土地の評価額が本件土地の本件相続時点における時価を上回っていないことは明らかである。
(イ) H鑑定による上記評価額は、以下のとおり、いずれも合理性を有する。
a. H鑑定は、評価対象地の現況は建物等の敷地であるが、当該建物等がなく、かつ使用収益を制約する権利が付着していないことを評価条件とした正常価格(合理的な市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格)としての鑑定評価額を求めるものとし、近隣地域における標準的な規模として180m2程度の長方形地を想定し、標準的使用として戸建住宅地を想定し、評価対象不動産の最有効使用として同じ戸建住宅地を想定している。
b. その上で、H鑑定は、
(a) 規準価格(公示価格を基準とした価格)を標準地の公示価格を基に算定し、
(b) 取引事例比較法による比準価格を算定するに当たり、<1>本件の位置する亜炭の鉱区であった近隣地域等に所在し、<2>事例間の比準価格に大きな開差がなく、<3>規準価格とも大きな開差がないといった4つの取引事例を適切に選択し、
(c) 収益還元法による収益価格を算定するに当たり、最有効利用として標準的画地に賃貸用の木造2階建住宅の建築を想定し、そこから得られる純収益を還元して算定し、
(d) 標準価格(近隣地域の標準的使用における標準的画地の価格)を算定するに当たり、近隣地域は収益性より快適性を重視する戸建住宅を中心とした地域であり、建物の想定するタイプ等評価に当たって流動性があることなどから、比準価格(b)を中心として、収益価格(c)を参酌し、規準価格(a)との均衡に留意している。
c. 以上によれば、H鑑定による標準価格は、合理的な価額といえるのであり、これを基に算定された鑑定評価額も合理的な価額であると認めるべきである。
(ウ) N鑑定について
a. これに対し、N不動産鑑定士による不動産鑑定評価書(甲36の1、2、甲37。以下「N鑑定」という。)の評価手法には、以下のような問題点があり、その評価額には、到底合理性を認めることができない。
b. 収益還元法を採用することの問題点
(a) N鑑定が主体とする収益還元法は、不動産の価格を鑑定評価する際の一手法であるが、本件土地の近隣地域は、収益性を重視する商業地域とは異なり、快適性や利便性を重視する戸建住宅を中心としており、かつ、貸家、アパート等の賃貸を目的とする土地利用することが一般的な地域でもないから、N鑑定のように、収益還元法を主体とした鑑定評価法を採用することは問題がある。
(b) また、収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現価の総和を求め、純収益を還元利回り(不動産に帰属する純収益から当該不動産の価格を求める場合の利回り)で還元して対象不動産の収益価格を求める手法であることから、当該手法により鑑定評価を行う場合は、純収益と還元利回りを適正に算定することを要する。
しかし、収益還元法は、純収益や還元利回りを的確に把握することの困難性、経営手腕等不動産の運用いかんにより全く区々の評価額となる等、収益還元法の持つ特性や、相続税法に定める時価の意義(客観的な交換価値)からして、収益還元法を相続税法22条に定める時価の算定基準、方法として直ちに採用することは相当でない。
(c)α N鑑定は、評価対象地の純収益を算定する基礎資料として、本件相続開始時の実際賃料収入を採用しているが、このような評価手法は不合理である。
なぜなら、賃料は、賃貸人と賃借人との間の自由な取引に基づいて決定されるものであり、賃貸借契約時の環境(賃貸人の経営手腕、入居時期、賃貸人・賃借人の関係、賃借人の異動等)によって変動する可能性が高いため、相続時点における賃料が、常に評価対象地の収益価格を適切に反映しているとは限らないからである。
β 具体的には、次のような問題点がある。
(α) 本件土地上にある貸家の本件相続開始時点の賃料は、土地番号1につき月額4万8000円、土地番号3及び同6につき月額4万3000円、土地番号7につき月額7万5000円、土地番号8につき月額4万円、土地番号9につき月額7万円である。これは、同一地域で、同一時期に、同一規格で建築した貸家であっても、その賃料に2倍近い開きがあり、当該賃料を基に算定した純収益もまた異なる結果になることを意味している。
また、同一物件であっても賃料が時期及び賃借人によって変動しており、例えば、土地番号3にある貸家については、月額4万3000円、月額6万7000円、月額5万5000円、月額6万円と推移しており、土地番号7にある貸家については、月額6万円、月額7万5000円、月額6万5000円と推移している。
(β) N鑑定は、土地番号27及び同28の評価につき、同地上にあるGアパートBからの賃料収入を基に貸家建付地としての純収益及び収益価格を算定している。
しかしながら、不動産鑑定評価基準は、建付地の場合、建物及びその敷地が同一人の所有であることを前提としているところ、GアパートBの所有者は原告甲、土地番号27は亡丙外5名の共有(原告甲の持分は20分の2)であったから、そもそも建付地として評価するための前提を欠いている。
また、GアパートBの収益は、すべてその所有者である原告甲に帰属するところ、建物所有者に帰属する収益の一部について、これを他の者と共有する土地の収益に振り替え、その収益を基に土地の純収益を算定するN鑑定の手法には、合理性がないといわざるを得ない。
c. 取引事例比較法による比準価格の試算について
(a) N鑑定は、次の3件の取引事例(<1>~<3>)を基に取引事例比較法による比準価格(円/m2)を試算しているところ、以下のとおり、N鑑定が算定した比準価格には合理性がないというべきである。
α 仙台市太白区土手内(以下「取引事例<1>」という。)
β 仙台市太白区緑ヶ丘(以下「取引事例<2>」という。)
γ 仙台市太白区大塒町(以下「取引事例<3>」という。)
(b) 取引事例<1>について
α N鑑定は、取引事例<1>につき、同一近隣の公示価格に比して8%高く、亜炭廃坑の存在について考慮した形跡がないとして、10%の事情補正をしている。
β しかしながら、実際の取引において、亜炭廃坑の存在は取引価格に織り込み済みである(仙台地方裁判所平成11年(行ウ)第13号同13年6月28日判決参照)。したがって、亜炭廃坑の存在を正常価格を求める際の補正要素として考慮すべきではなく、これを補正要素として考慮しているN鑑定の比準価格には、合理性が認められない。
γ したがって、取引事例<1>の正常価格については、少なくとも亜炭廃坑の事情補正を行わない価格(8万8900円)が相当である。
(c) 取引事例<2>及び<3>について
α N鑑定は、取引事例<2>につき、取引価格5万6863円、比準価格6万1200円、取引事例<3>につき、取引価格6万0576円、比準価格7万7700円としている。
β 取引事例<1>の比準価格(8万8900円)と比較した場合、取引事例<2>のそれはマイナス31.1%、取引事例<3>のそれはマイナス12.6%となっており、各取引事例間における価格差が非常に大きい。
さらに、取引事例<2>及び<3>は、本件土地が隣接する地域の公示価格(9万0300円)を大きく下回っている。
これらの点は、取引事例<2>及び<3>が、正常価格を求める取引事例としては適切でないことを示している。
d. 規準価格の算定
N鑑定は、規準価格(地価公示価格に規準した近隣地域の標準価格)を求める際の事情補正として、この時期の公示価格はまだ亜炭廃坑の存在を価格形成要因としていないことを挙げ、10%の事情補正をしているが、そうした事情補正が適切でないことは、前記(c.(b))のとおりである。
e. 評価対象地に条件を付すことの妥当性
(a) N鑑定は、現状の貸家敷地としての利用が将来も続くものとした上、その利用状況における価格を求めている。
(b) 相続税法22条にいう時価とは、客観的な交換価値をいい、これを受けた評価通達は、自用地としての価額を評価すべき対象とした上、当該土地が、貸宅地あるいは貸家建付地として利用されている場合には、評価通達25(貸宅地の評価)、同26(貸家建付地の評価)等により、それらの価額を減額補正して当該土地の価額を評価すべきこととしているのである。
(c) しかるに、N鑑定は、当該土地の利用について、上記の条件を付しているところ、この方法は、当事者間の自由な取引において、通常成立する価額(時価)を課税標準とする相続税法の趣旨に合致しないというべきであるから、N鑑定が利用状況に関し条件を付しているのは、相当でない。
イ 原告らの主張
(ア) 本件土地の価格は、いずれもN鑑定(甲36の1、2)による土地番号1、同27及び同28の鑑定評価額、並びにその余の本件土地の意見価格(甲37)のとおりである。
(イ) なお、N鑑定による上記意見価格(甲37)は、以下の点において、原告らと見解を異にしているため、これを補正する必要がある。補正後の評価額は別表9の調整後評価額欄のとおりであり、これを鑑定評価額ないし意見価格とみるべきである。
a. N鑑定は、本件土地すべてを貸家建付地の価額として評価しているが、本件土地には、貸宅地又は私道の価額として評価すべき土地が存在するから、その旨減額補正する必要がある。
b. N鑑定は、本件土地すべてを相続の対象としているが、実際には、本件土地には持分のみ相続した物件があるから、その旨減額補正する必要がある。
c. N鑑定は、土地番号22を自用地として評価しているが、同土地は、前記(4)イ(オ)のとおり、駐車場利用地であり、利用権の価格を控除する必要があるから、その旨減額補正をする必要がある。
(ウ) したがって、被告の評価額は、相続税法22条にいう時価を超えており、本件更正処分等は、違法なものとして取り消されるべきである。
第3当裁判所の判断
1 画地計算の方法(私道減価の要否)(争点1)についての判断
(1) 私道番号1-2(土地番号12-2)
ア 各項に掲記の証拠によれば、以下の事実が認められる(別紙8-1参照)。
(ア) 私道番号1-2は、A宅の敷地の一部として、自動車置場などA宅に付随する用途に供されている。
(争いのない事実)
(イ) B宅の玄関は、私道番号1-1に面しているため、B宅への出入りには、私道番号1-1が利用されている。
(甲12、20、原告甲本人)
(ウ) B宅の私道番号1-2側(A宅との境界)はトタン塀で囲われているため、B宅から私道番号1-2側に出ることはできない。
なお、B宅の勝手口やストーブの炊口が私道1-2に面している事実を認めるに足りる証拠はない。
(甲12、20、22)
イ 以上によれば、私道番号1-2は、私道減価をせずに、A宅の敷地(土地番号6)と併せて1画地として評価するのが相当である。
(2) 私道番号3(土地番号10)
ア 各項に掲記の証拠によれは、以下の事実が認められる(別紙8-2参照)。
(ア) 私道番号3は、公道からC宅への出入りや自動車置場など、C宅に付随する用途に供されている。
(争いのない事実)
(イ) D宅(母屋)の玄関は、公道に面しているため、D宅(母屋)への出入りには、本来的に公道が利用されている。
(甲23)
(ウ) D宅の裏庭には、子供部屋として利用しているプレハブ建物がある。プレハブ建物には、台所等の生活の本拠となる設備はなく、母屋と行き来をするには、縁側を通じて行うことができ、実際にも、そのように行き来をしている。
(甲22、弁論の全趣旨)
(エ) D宅と私道番号3との間は、塀等で仕切られていない。そのため、プレハブ建物から公道へ出入りするため、私道番号3を通ることができ、実際にもそのような出入りが行われている。また、Dは、裏庭に自転車を置いているが、公道から上記自転車置き場への出入りには、私道番号3を利用している。
(甲20、22、23、弁論の全趣旨)
イ 以上によれば、Dが私道番号3を通行することがあったとしても、便宜上通行しているにすぎないと認めるのが相当である。
よって、私道番号3は、私道減価をせずに、C宅の敷地(土地番号3)と併せて1画地として評価するのが相当である。
(3) 私道番号4(土地番号17-3)
ア 各項に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる(別紙8-3参照)。
(ア) 私道番号4は、公道からEへの出入りやEを利用する者の駐車場用地等、Eに付随する用途に供されている。
(争いのない事実)
(イ) F宅の玄関は、公道に直接面している一方、私道番号4側には、勝手口等の出入口が全くないことから、F宅への出入りは、専ら公道側からされており、F宅に出入りするために私道番号4を通行する必要はない。
(甲20、23)
(ウ) ただし、Fは、私道番号4の一部を駐車場として利用しているため、その限度でFが私道番号4に立ち入ることはある。
(甲23、弁論の全趣旨)
イ 以上によれば、F宅の自動車の駐車をもって、F宅が私道番号4を通行の用に供しているものと認めることはできないから(かえって、F宅が自動車を駐車することが亡丙との賃貸借契約上認められていたのであれば、駐車している部分は、本来、F宅のある土地番号16と併せて1画地として相続税の申告をすべきものである。)、私道番号4は、Eに付随する用途にのみ利用されているものとして、私道減価をせずに、Eの敷地(土地番号15)と併せて1画地として評価するのが相当である。
ウ 原告甲は、財産評価基本通達逐条解説(甲24の1及び2)を引用して、Eが公共施設等に該当するから、土地の価額を零と評価すべきである旨主張するが、同解説が土地の評価をしない私道として掲げている公共施設等の例は、当該宅地が私道と評価されることを前提として、その私道としての減価割合を40%とするか100%とするかの問題であると認められるから、原告甲の主張は本件への適用の前提を欠き、採用することができない。
(4) 私道番号5(土地番号25)
ア 各項に掲記の証拠によれば、以下の事実が認められる(別紙8-4参照)。
(ア) 私道番号5は、公道から戊宅への出入りなど、戊宅に付随する用途に利用されている。
(争いのない事実)
(イ) 丁宅の玄関は、公道に面しているが、公道に沿ってブロック塀があるため、公道に出るためには、ブロック塀のどちらかの端を通行する必要がある。
(甲22)
(ウ) ブロック塀の両端のうち、私道番号5側は、ブロック塀と丁宅の間に人1人が通れる程度の隙間しかないし、丁宅の敷地と私道番号5との間には段差があるため、私道番号5側を通行することは極めて不便である。
(甲20、22、23)
(エ) これに対し、丁宅の庭部分(別紙8-4参照)は、自動車が出入りできるだけの間口が公道側に確保されており、その間口には、かつて門扉として機能したとみられるチェーン跡が存在しているから、丁は、通常、丁宅の庭部分を通って公道からの出入りをしているものと認められる。
(甲23、38)
イ 以上によれば、丁が私道5を通行することがあるとしても、それは便宜的なものにすぎないものであり、私道番号5は、私道減価をせずに、戊宅の敷地(土地番号23)と併せて1画地として評価するのが相当である。
(5) 私道番号6(土地番号29)及び同7(私道番号28)
ア 各項に掲記の証拠によれば、以下の事実が認められる(別紙8-5参照)。
(ア) 私道番号6は、GアパートAへの出入りや自動車置場など、同アパートに付随する用途に供されている。同様に、私道番号7は、GアパートBへの出入りや自転車置場など、同アパートに付随する用途に供されている。
(争いのない事実)
(イ) Gアパートの入居者以外のO(スーパー)の利用客らが、通路(c)及び同(d)部分(別紙8-5参照)を<1>公道甲→通路(d)→私道番号6→公道乙、<2>公道甲→通路(d)→通路(c)→私道番号7→公道乙、とそれぞれ通り抜けることがある。
しかし、通路(c)及び同(d)部分は、狭くて薄暗い上に、通路(d)と公道甲との境付近には、普段は開放されているものの、鉄製の門扉が設置されている。しかも、Oからは公道甲、乙が整備されているから、通行の頻度はさほど高くはないし、通り抜けを行う人に何らかの通行権があるわけではない。
(甲26、原告甲本人)
イ 以上によれば、私道番号6及び同7並びに通路(c)及び同(d)は、私道減価をせずに、私道番号6はGアパートAの敷地(土地番号30)と併せて、私道番号7は、GアパートBの敷地(土地番号27)と併せて、いずれも1画地として評価するのが相当である。
2 仮路線価方式適用の可否(争点2)についての判断
(1)ア 納税義務者が、仮路線価の設定を申請する場合の手続及び所轄税務署長が仮路線価を設定する際の判断要素は、前提事実(2)ウ(ク)a.のとおりであり、手続的要件として、この仮路線価設定申請書の提出を求めることは、本件申告当時、既に行われており、また、公表されていたものである。
イ また、納税義務者に仮路線価設定申請書の提出を求めることは、所轄税務署長が、その私道と状況が類似する付近の路線に付された路線価を基として、道路の幅員、舗装の状況、道路の勾配等の物理的状況、上下水道、都市ガスの付設の有無等の経済的状況及び建築制限等の行政上の法規制の状況等を比較検討し(前提事実(2)ウ(ク)a.)、適切な仮路線価を設定する目的のために必要な手続であると考えられる。そして、前記のとおり、仮路線価の方法によらずに、当該路線価の設定されていない道路に接続する路線を基に、画地調整を行って評価する方法もある。
ウ これらの点にかんがみれば、手続的要件を満たしていない納税義務者に仮路線価方式の適用を認めないことには合理的理由があり、かつ、平等原則に反するものでもないと認められる。
エ よって、仮路線価設定申請書を提出しなかった原告甲に仮路線価方式の適用を認めることはできず、土地番号3、同4、同6及び同15につき仮路線価方式の適用を求める原告甲の主張は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。
(2) しかも、前記1のとおり、土地番号3と同10(私道番号3)、土地番号15と同17-3(私道番号4)は、それぞれ1画地として計算すると、各1画地は、私道を経由することなく路線価の設定されている路線に面することになるから、そもそも仮路線価方式の適用がないものである。
3 不整形地の補正方法(争点3)について
(1)ア 前提事実(2)ウ(オ)のとおり、評価通達20(1)は、不整形地の価額について、その不整形の程度、位置及び地積の大小に応じ、イからハまでに分類して掲げる価額を基とし、その近傍の宅地との均衡を考慮して、100分の30の範囲内で相当と認められる金額を控除した価額によって評価するとしているが、評価通達20(1)が100分の30の範囲内であれば、納税者の自由な選択による減額を認めるものではないことは、当然である。
イ 証拠(乙8、10)及び弁論の全趣旨によれば、評価通達においては、不整形地補正率の算定について具体的な基準が定められておらず、課税実務上は、経験に依存していた側面があったことから、参考情報が、恣意性の排除、公平の確保、評価方法の簡素化を目的として作成されたこと、並びに、実務上、平成4年3月の参考情報の公表後の不整形地の評価は、評価通達20及び参考情報により行われてきたことが認められる。
ウ 参考情報の内容の合理性について検討する。
(ア) 各項に掲記の証拠によれば、次の事実が認められる。
a.土地番号13について
(a) 土地番号13(275m2)の鑑定評価額(平成8年10月12日現在)は、2150万円である(H鑑定)。これを当事者間に争いのない土地番号13の地積(268.06m2)に換算した価額は2090万円となる。
(b) 被告の貸家建付地減価前の評価額は、1582万6262円(乙16の13)であり、268.06m2に換算後のH鑑定の評価額(2090万円)に対する割合は75.7%となっている。
b. 土地番号23~25について
(a) 土地番号23~25(357.45m2)を1画地とみた場合の、当該宅地の鑑定評価額(平成8年10月12日現在)は、3110万円である(H鑑定)。
(b) 土地番号23~25を1画地とみた場合、当該宅地を参考情報の不整形地補正率を基に評価すると、その評価額は2367万7488円(乙31)となり、上記鑑定評価額に対する割合は76.1%となる。
(イ) 以上のとおり、不整形地補正を要しない宅地の評価額が鑑定評価額の75.7%、参考情報を基に不整形地補正率を適用した宅地の評価額が鑑定評価額の76.1%とほぼ同一水準になっていることが認められるから、参考情報による不整形地補正は、その内容においても合理性を有しており、少なくとも参考情報に基づく補正率が不十分であり、それに基づく評価額が時価を超えているとの事情はうかがわれない。
エ これに対し、原告らの主張する不整形地補正率は、ほとんどが参考情報の蔭地割合を、参考情報の地積区分表及び不整形地補正率表に当てはめることなくそのまま補正率としているものである。しかも、原告ら主張の程度の補正をしなければ、不整形地が時価を超えること等を示す的確な証拠はない(N鑑定についての判断は、後記6のとおりである。)。
(2) 以上によれば、参考情報に基づく不整形地補正率を適用する被告の評価額は、いずれも相当なものとして採用すべきであり、これに反する原告らの主張は、採用することができない。
4 借地権減価、貸宅地減価及び貸家建付地減価の要否(争点4)についての判断
(1) 本件賃貸借契約について
ア 賃料の支払について
(ア) 原告らは、亡丙名義の養老保険に係る保険料を、亡丙の代わりに支払うことで当該賃料を支払うことにしていた旨主張し、それを裏付けるものとして「簡易保険保険料払込証明書(団体)」(甲14)を提出する。
しかしながら、当該証明書は、原告らが、亡丙に代わって当該保険料を支払っていることの証明にはなり得ないし、賃料の支払について、そのような複雑な支払方法を採ること自体がそもそも不自然であるというべきである。
(イ) 原告らは、本件賃貸借契約書に係る地代について、契約を締結したとされる日から相続開始日までの期間に相当する賃料全額を未収地代及び未払地代として亡丙の財産及び債務として計上して申告し、遺産分割協議書(甲18)においても、同様に取り扱われているところ(争いのない事実)、この事実は、預金通帳から明らかにできないため決算調整事項として計上した旨の原告らの主張を考慮しても、本件賃貸借契約が存在しなかった方向に働く事実である。
イ 本件賃貸借契約書を作成する必要性について
亡丙と原告甲は親子関係、亡丙と原告乙は養親子関係にあり(争いのない事実)、そのような関係にある者が原告ら主張のような賃貸借契約を締結すること自体、通常はあり得ないことである。
しかも、本件賃貸借契約書を作成したとされる平成7年4月に、賃貸借契約書が作成されることが当然であることをうかがわせる土地又は建物の所有権の異動の事実があったことは、認められない。
ウ 契約書の形態について
(ア) 本件賃貸借契約書の亡丙名義の各印影は亡丙の印章によって顕出されている。
(弁論の全趣旨)
(イ) しかしながら、前提事実(2)ウ(キ)c.のとおり、本件賃貸借契約書において、亡丙を含む契約当事者の氏名はいずれもワープロで印字されている。
これに対し、本件賃貸借契約書と同日付けで作成された建物賃貸借契約書(土地番号16のFに対する契約書。乙22)の亡丙の署名部分は、ワープロ文字ではなく、亡丙が自署している。
(争いのない事実、乙22、弁論の全趣旨)
エ まとめ
(ア) 以上の事実によれば、本件賃貸借契約書を減らす目的で、亡丙が関与しないまま作成された疑いが残り、文書の真正の推認を妨げるべき特段の事情があるというべきである。
したがって、亡丙と原告らの間の土地利用関係は、使用貸借であったと認めるのが相当である。
(イ)a. そうすると、土地番号2、同6、同8、同18~21及び同23~30につき、借地権減価を主張する原告らの主張は、理由がない。
ただし、前提事実(3)ウ(タ)、(ツ)、(テ)のとおり、土地番号18、同20及び同21につき、貸家建付地減価がされるべきである。
b. また、別表4のうち、未収地代及び未払地代は、被告主張のとおり、零とすべきである。
c. さらに、土地番号31につき、借地権として評価する必要はない。
(2) 空家となっている貸家の敷地(土地番号19)の評価について
ア 土地番号19につき、本件賃貸借契約が認められないため、亡丙と原告乙の間の土地利用関係は使用貸借であったと認めるべきことは、前記のとおりであるから、その上の建物に建物賃借人がいない場合はもちろん、使用貸借発生後の建物賃借人がいる場合も、貸家建付地減価をすることはできない(前提事実(2)ウ(キ)b.(c))。
イ 仮に土地利用関係が使用貸借であっても、貸家建付地減価をすべきであるとの見解を採用したとしても、
(ア) 土地番号19にある建物は、相続開始時点において空家であったことは、当事者間に争いがない。
(イ) したがって、土地番号19は、課税時期において貸家が現実に貸し付けられていなかったものであるから、貸家建付地減価を行わず、自用地の価額として評価すべきである。
(ウ) 原告甲は、課税実務上、課税時期において一時的に空家となっていたにすぎないと認められるものについては、課税時期においても賃貸されていたものとして取り扱って差し支えないとされている旨主張し、その裏付けとして評価通達の解説(甲16)を挙げるが、上記解説自体、数室あるアパートのうち1室が空室であっても全体として貸家建付地減価をすることができるが、一戸建ての貸家が空室である場合やアパート全体が空室である場合は貸家建付地減価をすることができない旨説明しているものであるから、原告甲の主張する主張するような課税実務があったことを何ら認定させるものではなく、この点の原告甲の主張は、採用することができない。
(3) 駐車場用地(土地番号22)の評価について
ア 本件相続当時、亡丙が、第三者に対し、土地番号22を月極駐車場として賃貸していたこと(本件駐車場契約)は、当事者間に争いがない。
イ 本件駐車場契約の法的性質は、民法上の土地賃貸借契約であると認められる。
被告は、本件駐車場契約の法的性質として、土地の賃貸借ではなく、自動車の保管場所の提供を目的とする契約である旨主張する。
確かに、タワー型の駐車建屋内に自動車を保管する場合や、土地であっても、駐車場所が固定しておらず、駐車の都度駐車場所が変わるような場合には、被告主張のように解する余地もあるが、本件では被告主張のように解すべき特段の事情の立証はない。
ウ ところで、貸宅地について借地権減価をする趣旨は、当該土地に借地権が付着しているため、土地の利用、処分が相当程度制約されることにあると解されるところ、本件駐車場契約は、借地借家法の適用の対象外であり、同種の駐車場契約と同様に、短期間の予告期間を定めた貸主の一方的意思表示により解約することができるものと認められるから、貸宅地減価の適用はないものといわなければならない。
他に、本件駐車場契約と同様な契約につき、課税実務上、貸宅地減価がされていることを認めるに足りる証拠はない。
エ 原告甲は、土地番号22は、土地番号18~20上に存する4棟の貸家の用に供されている駐車場用地であり、その実態は、当該貸家の入居者が、2台目の駐車場として借りている場合がほとんどであるから、土地番号18~20と一体のものとして、貸家建付地の価額で評価すべきである旨主張する。
しかしながら、上記貸家の賃貸借契約に付随して土地番号22を駐車場として使用することを認めた契約が取り交わされたことを認めるに足りる証拠はないし、駐車場の利用者も、アパートや貸家の賃借人には限定されていないから(原告甲本人)、原告甲の上記主張は理由がない。
オ 以上のとおり、土地番号22につき、貸宅地減価をすることはできず、自用地の価額として評価すべきである。
(4) 信義則違反の有無(土地番号23、同24及び同26)について
原告らは、納税者が税務官庁の言動を信頼してした申告内容は仮に税法に反していても信義則上認められるべきである旨主張するが、原告らの主張によっても、第1次相続により、各土地とその上の建物の所有関係に変動が生じており、しかも、本件賃貸借契約の存在を認定することができないことは、前記のとおりであるから、この点の原告らの主張は、信義則の適用を主張する前提となる事実を欠き、理由がない。
5 評価通達の当てはめについてのまとめ
以上によれば、評価通達を当てはめた場合の本件土地の評価額は、別表6評価額一覧表(被告)のとおりである。
6 本件土地の時価(争点5)についての判断
(1) H鑑定について
ア H鑑定(乙30)は、土地番号13の更地価格を2150万円(当事者間に争いのない地積に換算すると2090万円)、土地番号23~25の更地価格を3110万円と評価している。その評価の概要は、次のとおりである。
イ(ア) H鑑定は、近隣の公示地(土手内)の公示価格9万0300円/m2に時点修定を加えて1m2当たり8万9700円の規準価格を求めた。
(イ) 取引事例比較法を採用して、近隣地域及び類似地域(いずれも元亜炭の鉱区が存在した地域)から、価格時点である平成8年10月12日に近い時点での取引事例を収集、選択し、平成8年1月から平成9年9月までの間に取引された仙台市太白区内(土手内、芦の口)の具体的な4件の取引事例の土地価格について、時点修正及び個別的要因に基づく標準化補正(道路の幅員・系統・連続性・接面状況、画地条件、住環境が考慮されている。かつて亜炭鉱地域であったことは、補正の対象としていない。)を行い、本件土地との地域要因の比較を行って8万9300円/m2から9万0300円/m2の価格を求めた。
(ウ) 収益還元法を採用して、同一需給圏内の類似地域に所在する賃貸事例等を参考にして、標準的画地において賃貸用の木造2階建住宅の建築を想定し、これから求めた未収入期間を考慮した価格時点の土地に帰属する純収益を還元して、1m2当たり8万2100円の価格を求めた。
(エ) そして、近隣地域は収益性より快適性を重視する戸建住宅を中心とした地域であることなどから、収益還元法を採用して求めた価格よりも、取引事例比較法を採用して求めた価格に重きを置くこととして、上記(イ)(取引事例比較法)の価格を中心に、上記(ウ)(収益還元法)の価格を参酌して、上記(ア)の規準価格との均衡に留意して、近隣地域における標準的画地の更地価格を1m2あたり8万9700円と査定し、これに当該土地の地積を乗じて、土地番号13(275m2)につき2150万円(地積調整後は2090万円)、土地番号23~25(357.45m2)につき3110万円とそれぞれ評価した。
ウ 乙30及び弁論の全趣旨によれば、本件土地の評価上注意すべき点として、かつて亜炭鉱が存在した地域であること、土地番号13については、道路の幅員・系統が劣ること、住環境が劣ること、道路の接面状況が劣ること、土地番号23~25については、規模が大きいことがあることが認められるが、H鑑定は、これらの個別的要因、特殊性を十分考慮しているものである。
さらに、収益還元法を採用して求めた価格よりも、取引事例比較法を採用して求めた価格に重きを置くこととして、取引事例比較法の価格を中心に、収益還元法の価格を参酌して、規準価格との均衡に留意して、更地価格を決定している点も、格別問題はないと考えられる。
(2) 被告評価額と時価との関係
ア 土地番号13
土地番号13の貸家建付地減価後の被告の評価額は、1440万円余(乙16の13)と上記更地価格の7割未満であるから、上記更地価格2090万円から正当な貸家建付地減価をした額、すなわち時価を超えるものではないと認められる。
イ 土地番号23~25
土地番号23~25の被告の評価額の合計は、2118万円余(乙36)と上記更地価格の約7割であるから、上記更地価格3110万円から正当な使用借権の減価及び建物賃借人が存在することによる事実上の減価をした額、すなわち時価を超えものではないと認められる(原告甲主張の本件賃貸借契約が認められないことについては、前記のとおりである。)。
ウ その他の土地
前記のとおり、路線価が地価公示価格の80%程度を目途に設定されていることを考慮すると、本件土地のうちその他の土地についても、被告の各評価額は、時価を超えるものではないものと認められる。
(3) N鑑定について
ア(ア) N鑑定は、土地番号1の貸家建付地価格を718万5000円(甲36の1)、土地番号27及び同28の貸家建付地価格を2524万0008円(甲36の2)とそれぞれ評価している。その評価の概要は次のとおりである。
(イ) N鑑定は、鑑定評価に当たり、評価対象地が現状の貸家建付地(又は共同住宅建付地)の現状を変更することが困難なため、その状態が持続するとの想定で、適正価格を求めるものとした。
(ウ) 土地番号1
a. 土地番号1につき、N鑑定は、収益方式(収益還元法)を採用し、価格時点である平成8年10月12日の実際の月額賃料(4万8000円)を基礎資料として土地に帰属する純収益(年間33万9733円)を求め、これに還元利回り5%(還元期間は無期)を乗じて、貸家建付地収益価格を1m2当たり5万4500円と算定した。
b. 次に、比較方式(取引事例比較法)を採用して、近隣地域から、価格時点である平成8年10月12日に近い時点での取引事例を収集、選択し、平成8年5月から平成8年11月までの間に取引された仙台市太白区内(<1>土手内、<2>緑ケ丘、<3>大塒町)の具体的な3件の取引事例の土地価格について、事情補正(土手内の土地につき、近隣の公示価格に比して8%高いこと、亜炭廃坑の存在を考慮した形跡がないことを理由に10%を減額)、時点修正及び標準化補正を行い、当該土地との地域格差の比較を行って6万1200円/m2から8万1500円/m2の価格を求め、比準価格を8万1000円/m2と算定し、これをそのまま標準価格として採用した。さらに、個別要因(不整形、小規模、接道方位、建付減価)を判定し、対象地の比準価格を6万3800円/m2とした。
c. そして、対象地が「貸家および敷地」の敷地部分であることから、貸家鑑定評価基準に従い、収益方式による価格を重視すべきであるとして、収益方式を採用して得た価格に2倍の比重を与え、比較方式を採用して得た価格と加重平均して求めた価格である1m2当たり5万7600円を貸家建付地としての鑑定評価額と査定し、これに地積(127.74m2)を乗じて718万5000円と評価した。
(エ) 土地番号27及び同28
a. N鑑定は、収益方式を採用し、価格時点である平成8年10月12日の実際の月額賃料(4万5000円×6戸=27万円)を基礎資料として土地に帰属する純収益(年間117万7084円)を求め、これに還元利回り5%(還元期間は無期)を乗じて、貸家建付地収益価格を1m2当たり5万8900円と算定した。
b. 次に、比較方式を採用して、上記(ウ)b.のとおり、対象地の比準価格を1m2当たり7万1600円と算定した。
c. そして、収益方式を採用して得た価格に2倍の比重を与え、比較方式を採用して得た価格と加重平均して求めた価格である1m2当たり6万3100円を貸家建付地としての鑑定評価額と査定し、これに地積(400m2)を乗じて2524万0008円と評価した。
イ N鑑定の収益方式について
(ア) 乙34、35及び弁論の全趣旨によれば、収益方式による試算に当たっては、次の点に注意を要することが認められる。
a. 低層のアパートや一戸建貸家に収益還元法を適用する場合、現実の賃料を基礎とすると、経過した賃貸借期間によって家賃等にかなりのバラツキが生じやすく、同一条件の土地でも価格不均衡が生じることになるから、このような場合は、近隣地域の類似の貸家における正常と認められる賃貸条件を基にして試算した収益価格も検討して、試算価格の調整を行う必要がある。
b. 経過年数が24年以上の貸家やアパートの場合は、物理的、機能的、経済的にも市場性の減退が著しく、最有効利用の状態にないことが多いが、そのような場合は、土地と建物の積算価格(建物価格を零と評価すべき場合は、土地価格)から立退料を含む借家権価格相当額を控除した価額を収益価格以上に重視して鑑定価格を決定すべきである。
(イ) これに対し、N鑑定は、上記(ア)の2点につき、十分な調整が行われていないものである。
ウ N鑑定の比較方式について
(ア) 取引事例<1>につき、10%の減額補正をした点については、弁論の全趣旨によれば、当該取引事例の価格は、亜炭廃坑が存在することを織り込み済みであると認められるから(取引事例<1>のような底地を借地人が買い取った取引において、その点が考慮されていないとは到底認められない。)、N鑑定が、10%の減額補正をしたことに合理的な理由は認められない。
(イ) 取引事例<2>の取引価格5万6863円及び比準価格6万1200円、取引事例<3>の取引価格6万0576円及び比準価格7万7700円は、本件土地が隣接する地域の公示価格(9万0300円)を大きく下回っており、その理由について十分説明されていないことからすると、取引事例<2>及び<3>を取引事例として選択したことが適切であったか否かについて疑問が残る。証人Nは、地価下落傾向時における公示価格の下落の遅れを指摘するが、H鑑定(乙30)で採用された取引事例を考慮すると、公示価格の下落の遅れにより、上記の程度の取引事例と公示価格との価格の相違を十分説明することはできないものと考えられる。
エ まとめ
以上によれば、土地番号1並びに土地番号27及び同28についてのN鑑定(甲36の1及び2)は、採用することができず、これに基づくその他の土地についての意見書(甲37)も採用することができず、他に、前記(2)の認定を覆すに足りる証拠はない。
7 結論
(1) 以上のとおり、裁決後の本件更正処分等と比較して、土地番号11については、1万5689円の減額、土地番号17-1については、2046円の減額、土地番号17-2については、8060円の減額となるが、土地番号23~25については、総額で124万0451円の増額となり、その余の本件土地の評価額は、裁決後の本件更正処分等のとおりであり、本件土地の総額は、原告甲、原告乙いずれについても、裁決後の本件更正処分等の額を上回るから、裁決後の本件更正処分等は適法である。
(2) よって、原告らの請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、65条1項本文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 市川正巳 裁判官 髙木勝己 裁判官 工藤哲郎)
別表1 「課税処分等経緯一覧表」 (合計)
<省略>
別表2 「課税処分等経緯一覧表」 (甲)
<省略>
別表3 「課税処分等経緯一覧表」 (乙)
<省略>
別表4
課税価格及び相続税額の計算書
<省略>
別紙5 本件土地に関する被告の主張
1 土地番号1
(1) 参考情報の地積区分表及び不整形地補正率表(乙8の15頁)を適用して評価した(以下「参考情報理由」という。)。
(2) 貸家建付地として、9%減価した(借地権減価0.3×借家権減価0.3)(以下「貸家建付地減価理由」という。)。
2 土地番号2
(1) 側方路線影響加算(別表6では、「2路線に面する場合の加算額」と表示した。)として、路線価に5%加算した(以下「2路線加算理由」という。)。
(2) 参考情報理由と同じ。
(3) 当該土地の利用権原は、賃貸借ではなく使用貸借と認められるから、自用地の価額として評価した(以下「賃貸借不存在理由」という。)。
3 土地番号3及び同10(私道番号3)
(1) 土地番号10(私道番号3)は、私道ではないから、土地番号3及び同10(私道番号3)は併せて1画地として評価した(以下「私道否認理由」という。)。
そうすると、当該画地は、路線価の設定されている路線に面することとなるので、当該路線価(7万2000円)を基に評価した。
(2) 当該1画地の土地について、奥行価格補正率を適用した(以下「奥行価格補正率理由」という。)。
(3) 参考情報理由と同じ。
(4) さらに、不整形地補正率に間口狭小補正率を乗じた数値は、間口狭小補正率に奥行長大補正率を乗じた数値よりも原告らに有利な数値であるから、前者を採用した。以下「有利選択理由」という。)。
(5) 貸家建付地減価理由と同じ。
通路部分である土地番号10(私道番号3)についても、貸家建付地減価をする。
4 土地番号4
(1) 仮路線価設定申請書が所轄税務署長に提出されていないため、路線に面している土地番号11(私道番号2)と併せて1画地とみなして評価した。(以下「仮路線価申請不提出理由」という。)。
(2) 参考情報理由及び有利選択理由と同じ。
(3) 貸家建付地減価理由と同じ。
5 土地番号5
(1) 奥行価格補正率理由と同じ。
(2) 参考情報理由と同じ。
(3) 貸家建付地減価理由と同じ。
6 土地番号6及び同12-2(私道番号1-2)
(1) 土地番号12-2(私道番号1-2)は、私道ではないから、土地番号6及び同12(私道番号1-2)は併せて1画地として評価すべきである(私道否認理由)。
(2) 奥行価格補正率理由と同じ。
(3) 参考情報理由と同じ。
(4) 有利選択理由と同じ。
(5) 仮路線価設定申請書が所轄税務署長に提出されていないため、路線に面している土地番号12-1(私道番号1-1)と1つの宅地として評価した(仮路線価申請不提出理由)。
(6) 賃貸借不存在理由と同じ。
7 土地番号7
(1) 参考情報理由と同じ。
(2) 貸家建付地減価理由と同じ。
(3) 租税特別措置法69条の3(小規模宅地等についての課税価額の計算の特例)を適用した(以下「小規模宅地理由」という。)。
8 土地番号8
(1) 奥行価格補正率理由と同じ。
(2) 参考情報理由と同じ。
(3) 賃貸借不存在理由と同じ。
9 土地番号9
(1) 2路線加算理由と同じ。
(2) 参考情報理由と同じ。
(3) 貸家建付地減価理由と同じ。
(4) 小規模宅地理由と同じ。
11 土地番号11(私道番号2)
(1) 奥行価格補正率理由と同じ。
(2) 参考情報理由と同じ。
(3) 有利選択理由と同じ。
(4) 私道減価として、0.6を乗じた(以下「私道減価理由」という。)。
(5) 貸家建付地減価と同じ。
通路部分である土地番号11(私道番号2)についても、貸家建付地減価をする。
12-1 土地番号12-1(私道番号1-1)
(1) 参考情報理由と同じ。
(2) 有利選択理由と同じ。
(3) 私道減価理由と同じ。
13 土地番号13
(1) 参考情報理由と同じ。
(2) 有利選択理由と同じ。
(3) 貸家建付地減価と同じ。
14 土地番号14
(1) 参考情報理由と同じ。
(2) 貸家建付地減価理由と同じ。
15 土地番号15及び同17-3(私道番号4)
(1) 土地番号17-3(私道番号4)は、私道ではないから。土地番号15及び同17-3(私道番号4)は併せて1画地として評価すべきである(私道否認理由)。
(2) 参考情報理由と同じ。
(3) 土地番号17の3は、土地番号17-1及び同17-2と一体として土地番号15の通路として使用することができ、現実にもそのように利用されているから、土地番号17の1~3の間口の合計(土地番号17-1の隅切り部分に相当する間口を除く。)である8.4mを間口と認めるべきである。
(4) 有利選択理由と同じ。
(5) 貸家建付地減価理由と同じ。
通路部分である土地番号17-3(私道番号4)についても、貸家建付地減価をする。
16 土地番号16
(1) 参考情報理由と同じ。
(2) 貸家建付地減価理由と同じ。
17 土地番号17-1及び同17-2
(1) これらの土地は、一体として私道の用に供されているから、1画地として評すべきである。 なお、それぞれの土地の所有持分が異なるため、それぞれの土地の評価額を別個に算出した。
(2) 参考情報理由と同じ。
(3) 有利選択理由と同じ。
(4) 私道減価理由と同じ。
(5) 間口距離については、隅切り部分をの間口距離を除外すべきであるから、土地番号17-1及び同17-2の隅切り部分を除外した4.2mを間口と認めるべきである。
18 土地番号18
(1) 2路線加算理由と同じ。
(2) 参考情報理由と同じ。
(3) 賃貸借不存在理由と同じ。
(4) 貸家建付地減価理由と同じ。
土地番号18上の建物は、原告乙が平成5年2月8日に亡丙からの贈与により取得したものであり、贈与を受けたときから相続開始時まで建物賃借人に異動がないから、貸家建付地の限度で減価する。
19 土地番号19
(1) 参考情報理由と同じ。
(2) 賃貸借不存在理由と同じ。
(3) さらに、土地番号19上の建物は、原告乙が平成5年2月8日に亡丙からの贈与により取得したものであり、贈与を受けたときから相続開始時まで空家になっていた。
20 土地番号20
(1) 奥行価格補正率は1.00である。
(2) 参考情報理由と同じ。
(3) 賃貸借不存在理由と同じ。
(4) 貸家建付地減価理由と同じ。
土地番号20上の建物は、原告乙が平成5年2月8日に亡丙からの贈与により取得したものであり、贈与を受けたときから相続開始時まで建物賃借人に異動がないから、貸家建付地の限度で減価する。
21 土地番号21
(1) 参考情報理由と同じ。
(2) 賃貸借不存在理由と同じ。
(3) 貸家建付地減価理由と同じ。
土地番号21上の建物は、原告乙が平成5年2月8日に亡丙からの贈与により取得したものであり、贈与を受けたときから相続開始時まで建物賃借人に異動がないから、貸家建付地の限度で減価する。
22 土地番号22
(1) 参考情報理由と同じ。
(2) 有利選択理由と同じ。
(3) 貸駐車場用地として利用している土地であるから、自用地として評価するのが相当である。
23 土地番号23及び同25(私道番号5)
(1) 土地番号25(私道番号5)は、私道ではないから、土地番号23及び同25(私道番号5)は併せて1画地として評価すべきである(私道否認理由)。
(2) 参考情報理由と同じ。
(3) 有利選択理由と同じ。
(4) 賃貸借不存在理由と同じ。
24 土地番号24
(1) 参考情報理由と同じ。
(2) 賃貸借不存在理由と同じ。
(3) 第1次相続により、土地番号24は亡丙が相続し、その上の建物は、原告甲が相続したが、その後に、建物の賃借人がLから丁に異動したから、自用地として評価するのが相当である。
26 土地番号26
(1) 奥行価格補正率理由と同じ。
(2) 参考情報理由と同じ。
(3) 賃貸借不存在理由と同じ。
(4) 第1次相続により、土地番号26は亡丙が相続し、その上の建物は、原告乙が相続したが、その後に、建物の賃借人がIからJに異動したから、自用地として評価するのが相当である。
27 土地番号27及び同28(私道番号7)
(1) 土地番号27と同28(私道番号7)とは、アパートの敷地として利用されている宅地とそのアパートへの出入りのみに利用されている通路部分であるから、併せて1画地として評価すべきである。
(2) 賃貸借不存在理由と同じ。
30 土地番号30及び同29(私道番号6)
(1) 2路線加算理由と同じ。
(2) 土地番号30と同29(私道番号6)とは、アパートの敷地として利用されている宅地とそのアパートへの出入りのみに利用されている通路部分であるから、併せて1画地として評価すべきである。
(3) 参考情報理由と同じ。土地番号29及び同30を併せて1画地として評価した結果、蔭地割合は10%未満となることから、当該宅地についての不整形地補正は適用がない。
(4) 賃貸借不存在理由と同じ。
31 土地番号31
(1) 賃貸借不存在理由と同じ。
以上
(別表6)
平成13年(行ウ)第8号
評価額一覧表
(被告)
<省略>
<省略>
(別表6)
平成13年(行ウ)第8号
評価額一覧表
(被告)
5 (1)総合補正率は、奥行長大補正率×間口狭小補正率と、不整形地補正率×間口狭小補正率のうち、納税者に有利な方の数値を採用する(小数点第3位以下切捨て)。
(2)ア 奥行長大補正率欄の下段の×は、上記(1)の有利選択の結果、総合補正率に影響する数値として採用されなかったことを示す。
イ 空欄部分は、有利不利の選択の問題が生じないことを示す。ただし、(○)は、有利選択の結果としてではないが、総合補正率の関係で奥行長大補正率が採用されたことを示す。
6 土地番号7、9については、租税特別措置法(昭和63年12月法律109号)69条の3(小規模宅地等についての相続税の課税価額の計算の特例)を適用し、特例の対象部分につき、100分の50を乗じて計算したものである。
7 土地番号23~25は、被告が主張を変更した後の数値である。
8 土地番号31の土地所有者は原告甲である。
(別表7)
平成13年(行ウ)第8号
評価額一覧表
(原告ら)
<省略>
<省略>
別紙8-1(私道状況)
私道番号1-2(土地番号12-2)
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別紙8-2(私道状況)
私道番号3(土地番号10)
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別紙8-3(私道状況)
私道番号4(土地番号17-3)
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別紙8-4(私道状況)
私道番号5(土地番号25)
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別紙8-5(私道状況)
私道番号6(土地番号29)、私道番号7(土地番号28)
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(別表9)
平成13年(行ウ)第8号
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