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仙台地方裁判所 平成15年(行ウ)8号 判決 2007年4月27日

主文

1  被告は、補助参加人みらい仙台に対し、545万1999円を支払うよう請求せよ。

2  被告は、補助参加人民主フォーラムに対し、11万4723円を支払うよう請求せよ。

3  被告は、補助参加人自由民主党・市民会議に対し、92万0408円を支払うよう請求せよ。

4  被告は、補助参加人公明党に対し、7万5285円を支払うよう請求せよ。

5  被告は、補助参加人社会民主党仙台市議団に対し、43万6590円を支払うよう請求せよ。

6  被告は、補助参加人グローバルネット仙台に対し、71万0094円を支払うよう請求せよ。

7  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

8(1)  原告と被告間に生じた訴訟費用はこれを4分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

(2)  各補助参加によって生じた訴訟費用は、次の割合で各補助参加人の負担とし、その余を原告の負担とする。

ア  補助参加人みらい仙台と原告の間ではこれを5分し、その1を同補助参加人の負担とする。

イ  補助参加人民主フォーラムと原告の間ではこれを5分し、その1を同補助参加人の負担とする。

ウ  補助参加人自由民主党・市民会議と原告の間ではこれを5分し、その2を同補助参加人の負担とする。

エ  補助参加人公明党と原告の間ではこれを25分し、その1を同補助参加人の負担とする。

オ  補助参加人社会民主党仙台市議団と原告の間ではこれを5分し、その4を同補助参加人の負担とする。

カ  補助参加人グローバルネット仙台と原告の間ではこれを5分し、その4を同補助参加人の負担とする。

事実及び理由

第1請求

1  被告は、補助参加人みらい仙台に対し、1378万4106円を支払うよう請求せよ

2  被告は、補助参加人民主フォーラムに対し、773万0751円を支払うよう請求せよ。

3  被告は、補助参加人自由民主党・市民会議に対し、249万0368円を支払うよう請求せよ。

4  被告は、補助参加人公明党に対し、212万6565円を支払うよう請求せよ。

5  被告は、補助参加人社会民主党仙台市議団に対し、55万2195円を支払うよう請求せよ。

6  被告は、補助参加人グローバルネット仙台に対し、82万1919円を支払うよう請求せよ。

7  訴訟費用は被告の負担とする。

第2事案の概要

本件は、仙台市の住民から構成される権利能力なき社団である原告が、仙台市議会(以下「市議会」という。)内の会派である各補助参加人が仙台市から交付を受けた平成13年度及び平成14年度(1期分から3期分まで)の政務調査費(以下「本件政務調査費」という。)を違法に支出しこれによって不当利得したが(以下、原告が問題としている本件政務調査費の各支出を「本件各支出」ということがある。)、被告が各補助参加人に対する不当利得返還請求権の行使を違法に怠っているとして、地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号本文に基づき、被告に対し、各補助参加人へ不当利得の返還請求をするよう求める事案である。

1  前提事実(括弧内に証拠を示すほか、当事者間に争いがない。)

(1)  当事者等

ア 原告

原告は、地方行財政の不正を監視、是正すること等を目的として結成された権利能力なき社団で、仙台市の住民によって構成されている(弁論の全趣旨)。

イ 被告

被告は、仙台市の執行機関である。

ウ 各補助参加人

各補助参加人は、市議会議員によって構成される市議会内の会派で、権利能力なき社団である(〔証拠省略〕)

(2)  関係法令の定め(関係する部分のみ抜粋)

ア 法100条

13 普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務調査費を交付することができる。この場合において、当該政務調査費の交付の対象、額及び交付の方法は、条例で定めなければならない。

14 前項の政務調査費の交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務調査費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとする。

イ 仙台市政務調査費の交付に関する条例(平成13年仙台市条例第33号。以下「条例」という。)(〔証拠省略〕)

(趣旨)

1条 この条例は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第100条第13項及び第14項の規定に基づき、市議会議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費の一部として政務調査費を交付することに関し必要な事項を定めるものとする。

(交付対象)

2条 政務調査費は、市議会における会派(所属議員が1人の場合を含む。以下「会派」という。)に対して交付する。

(交付額及び交付の方法)

3条 政務調査費は、4月から6月まで、7月から9月まで、10月から12月まで及び1月から3月までの各区分による期間(以下「四半期」という。)ごとに交付するものとし、その額は各四半期の初日における会派の所属議員数に38万円及び各四半期に属する月数を乗じて得た額とする。ただし、四半期の中途において議員の任期が満了するときは、任期の満了する日の属する月(その日が月の初日(中略)であるときは、その日の属する月の前月)までの月数分を交付する。

(使途基準)

5条 会派は、規則で定める使途基準に従って政務調査費を支出するものとし、必要経費(注 4条3項で「市政に関する調査研究に資するため必要な経費」のことをいうと定義されている。)以外に充ててはならない。

(交付申請)

6条 政務調査費の交付を受けようとする会派の代表者は、交付申請書に所属議員の名簿を添えて、議長を経て市長に提出しなければならない。

(経理責任者)

7条 前条の規定により交付申請書を提出した会派は、経理責任者を定め、議長を経て市長に届け出なければならない。

(交付決定)

8条 市長は、第6条の規定により交付申請書の提出を受けたときは、交付する政務調査費の額を決定し、当該会派の代表者に対し通知するものとする。

(収支状況報告書の提出)

9条 前年度に政務調査費の交付を受けた会派の経理責任者は、当該政務調査費に係る収入額及び支出額を記載した報告書(以下「収支状況報告書」という。)を作成しなければならない。

2  前項の会派の代表者は、収支状況報告書を当該年度の5月15日までに議長に提出しなければならない。

5 議長は、第2項又は前項の規定により提出された収支状況報告書の写しを市長に送付するものとする。

(政務調査費に残余がある場合の返還手続)

10条 前年度に政務調査費の交付を受けた会派は、当該政務調査費の総額から前年度において必要経費として支出した額を控除して得た額に残余がある場合には、当該年度の5月15日までに当該残余の額に相当する額を市長に返還しなければならない。

(収支状況報告書の保存)

11条 議長は、第9条第2項又は第4項の規定により提出された収支状況報告書を、これを提出すべき期限の翌日から起算して5年を経過する日まで保存しなければならない。

(委任)

12条 この条例の施行に関し必要な事項は、議長又は市長が定める。

ウ 仙台市政務調査費の交付に関する条例施行規則(平成13年3月27日仙台市規則第32号。以下「規則」という。)(証拠省略)

(使途基準)

2条 条例第5条に規定する使途基準は、次の各号に定める項目ごとに当該各号に定めるところによる。

1 調査研究費 市の事務事業及び地方行財政に関する調査研究及び調査委託に要する経費

2 研修費 研修会、講演会等の実施に要する経費及び各種団体が開催する研修会、講演会等への所属議員等の参加に要する経費

3  会議費 各種会議に要する経費

4  資料作成費 議会審議に必要な資料の作成に要する経費

5  資料購入費 調査研究のために必要な図書、資料等の購入に要する経費

6  広報広聴費 議会活動及び市政に関する政策等の広報及び広聴活動に要する経費

7  人件費 調査研究を補助する者の雇用に要する経費

8  事務所費 調査研究のために必要な事務所の設置及び管理に要する経費

9  その他の経費 前各号に掲げるもののほか会派の行う調査研究に要する経費

エ 仙台市政務調査費の交付に関する要綱(平成13年3月27日議長決裁。以下「要綱」という。)(〔証拠省略〕)

(政務調査費の対象外の経費)

2条 政務調査費は、次の各号に掲げる経費に充ててはならない。

1 交際費的な経費

2 政党本来の活動に要する経費

3 会議に伴う食事以外の飲食及び遊興に要する経費

4 レクリエーション等の経費

5 選挙活動に要する経費

6 仙台市政務調査費の交付に関する条例施行規則(中略)第2条に規定する使途以外で議員個人に支給するもの

7 その他市政に関する調査研究の目的に合致しないもの

(経理責任者の担任事務等)

4条 会派の代表者は、経費の支出決定を行うとともに政務調査費の適正な執行に努めなければならない。

2 経理責任者は、政務調査費の出納事務をつかさどり、帳簿書類、領収書等を管理しなければならない。

(支出手続)

5条 経理責任者は、当該会派の代表者の決定を経て経費を支出するものとし、支出に当たっては領収書を徴収しなければならない。ただし、支出を口座振替の方法により行うときは、振替金受領書をもって領収書に代えることができる。

2 経理責任者は、前項に規定する領収書を徴収することができないときは、当該会派の代表者の支払証明書が添付されなければ支出することができない。

3 支出を受けようとする者が、必要やむを得ない場合に立替えをしたときは、当該立替えを証明する領収書を添付しなければならない。

(会派内における政務調査費の支出手続等)

6条 会派の代表者は、当該会派の所属議員が行う調査研究に関して、調査の目的、方法及び期間等を定めなければならない。

2 調査研究を行った議員(共同で調査研究を行った場合にあっては、その代表者)は、所属会派の代表者に対し調査研究期限後、速やかに、調査研究報告書により調査研究の内容及び経費の内訳を報告しなければならない。

3 会派の代表者は、当該会派の所属議員が調査研究等のため経費を必要とするときは、その経費を前渡することができる。

4 会派の代表者は、当該会派の所属議員を調査研究等のため市域外へ宿泊を伴う出張をさせる場合は、調査出張届出書(省略)を議長に提出しなければならない。

(3) 本件政務調査費の交付

仙台市は、各補助参加人に対し、次のとおり本件政務調査費を交付した。

ア 平成13年度(1期分ないし4期分の合計)

(ア) 補助参加人みらい仙台へ 7486万円

(イ) 補助参加人民主フォーラムへ 5016万円

(ウ) 補助参加人自由民主党・市民会議へ 3648万円

(エ) 補助参加人公明党へ 3648万円

(オ) 補助参加人社会民主党仙台市議団へ 2736万円

(カ) 補助参加人グローバルネット仙台へ 2736万円

イ 平成14年度(1期分ないし3期分の合計)

(ア) 補助参加人みらい仙台へ 5472万円

(イ) 補助参加人民主フォーラムへ 3762万円

(ウ) 補助参加人自由民主党・市民会議へ 2736万円

(エ) 補助参加人公明党へ 2736万円

(オ) 補助参加人社会民主党仙台市議団へ 2052万円

(カ) 補助参加人グローバルネット仙台へ 2052万円

(4) 各補助参加人による本件各支出

各補助参加人は、別紙出張目録の出張者名欄記載の各議員を、同目録の用務先欄記載の用務先へ、同目録の出張期間欄記載の期間、同目録の調査研究項目により出張させたとして、本件政務調査費から、しかるべき金員を支出した(なお、同目録の推定旅費等欄記載の金額は原告主張のものである。以下、各補助参加人がさせたという同目録記載の各出張を、会派ごとに、同目録記載の年度及び番号で略記する。)。

(5) 住民監査請求

原告は、平成15年1月14日、仙台市監査委員に対し、本件各支出を含む支出が違法、不当であるとして、各補助参加人からその返還を求めるなど必要な措置を執るよう被告へ勧告することなどを求める住民監査請求をしたが、仙台市監査委員は、同年3月11日付けで、これを棄却した。

(6) 本訴提起

原告は、平成15年4月7日、本件訴訟を提起した(本件記録上明らかな事実)。

2 争点

(1) 政務調査費の支出対象となる調査研究は会派の行うものに限られるか。

(2) 各補助参加人による本件各支出は市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものでないか。

3 当事者の主張

(1) 争点(1)(政務調査費の支出対象となる調査研究は会派の行うものに限られるか)について

(原告の主張)

ア 法100条13項は、「会派又は議員に対し」政務調査費を交付することができると規定しており、これを受けて、条例2条は政務調査費の交付先を会派としている。また、条例5条、要綱4条、6条も、政務調査費を使用する主体が議員個人ではなく会派であることを示している。

そうすると、政務調査費を使用して調査研究を行う主体は会派である。

イ そして、会派が調査研究を行ったというためには、以下の4つの要件を満たすことが必要である。

(ア) 当該調査と市政との関連性及び必要性について、会派として意思統一が図られ、調査・研究を担当する議員に対し、会派から指示が出されること

(イ) 調査を担当した議員が会派からの要請に応える内容を記載した報告書を提出すること(要綱6条2項)

(ウ) 会派内に分野別に報告書をまとめたファイルを備え置き、調査によって得られた情報を内部蓄積し、会派内の同僚議員がそれを閲覧して活用でき、会派の事前審査にも役立てられるような仕組みが作られていること

(エ) その後の会派の活動に役立てられたこと

ウ しかしながら、各補助参加人には、市政との関連性及び必要性について会派として意思統一を図って会派から調査・研究を担当する議員に指示を出すシステムはなく、どの補助参加人も、個々の議員の調査研究に関しては、関連性と必要性の判断を最初から完全に議員個人に委ねており、会派としての事前審査を一切行っていなかった。

そして、各補助参加人は、せいぜい、個々の議員に前渡しした政務調査費の精算報告時に、調査した分野の抽象的な項目を報告書に記載させる程度であって、議員に調査した内容や成果を詳細に記載した報告書を作成させた補助参加人はない。

また、各補助参加人には、調査によって得られた情報を共有できるシステムはなく、得られた調査結果がその後の会派の活動に役立てられたこともなかった。

エ 結局、各会派の役割は、共通経費を天引きし、残りを個々の議員に先渡しし、ごく簡単な精算報告を受け取り、それを条例9条2項の収支状況報告書にまとめて市議会議長に提出する程度のものであり、使途基準に適合しているか否かの判断は完全に議員個人が握っていたのが実態であって、政務調査費は第二の歳費であった。

これは、地方議会の活性化と審議能力の向上を図ろうとした平成12年の法改正及び会派全体の審議能力を向上させ、その結果議会の審議能力を向上させようとした条例の趣旨に反するものである。

各補助参加人による本件各支出に関する限り、その交付先であり、条例及び要綱で調査研究の主体とされている会派が何も関与していない以上、会派が調査研究を行ったとはいえないから、個々の議員の調査研究の内容いかんにかかわらず、その支出は使途基準違反として違法である。

(被告の主張)

ア まず、政務調査費は、法100条13項の規定上、交付を受ける会派又は議員において「議員の調査研究に資するため必要な経費の一部」として使用できるものであるから、政務調査費を用いる調査研究の「主体」は会派に限定されるものではない。

イ 次に、会派が調査研究を行ったといえるためには原告主張の4つの要件を満たす必要があるとの原告の主張も、以下の理由から失当である。政務調査費の支出手続等を定めた要綱によれば、政務調査費を用いて議員が行う調査研究は、所属会派の代表者により定められた調査の目的、方法及び期間等によるべきものとされている(6条1項ないし3項)。

ところで、最高裁判所平成17年11月10日第一小法廷決定・民集59巻9号2503頁によれば、市議会の各会派は、執行機関及び他の会派から独立性を有する団体として自主的に活動すべき性質及び役割を持つものである。また、議員と所属会派の関係についても、議員の調査研究に対する執行機関、他の会派等からの干渉を防止する観点から、当該会派の自主性及び自律性が尊重され、当該会派の定めるところに委ねられている。

したがって、政務調査費を用いて議員が行う調査研究活動について、その目的、方法及び期間等についての会派の代表者による定め方も当該会派の自主性及び自律性が尊重され、当該会派の自主的な判断に基づく決定に委ねられるべきであって、会派の代表者の定める所属議員の行う調査事項は必ずしも個別的、具体的である必要はなく、会派において包括的に所属議員に委託することなども許されているものというべきである。

そして、このように会派と所属議員の関係は当該会派の自主性及び自律性が尊重され、当該会派の自主的に定めるところに委ねられているにもかかわらず、原告主張のように会派による所属議員に対する強い統制を常に要求することは、当該会派の自主性及び自律性を否定するもので、法令上の根拠を欠き、独自の立法論というべきである。

(補助参加人みらい仙台の主張)

ア 調査研究の主体は法上も条例上も議員である。

イ 議員個人が集合して会派を結成するのであって、議員を離れて会派が存在するわけではない。このことは、会派が改選任期ごとに結成されることや、いわゆる1人会派も存在することから当然である。

ウ 議員が調査研究を行う場合、議員単独で行う場合もあれば、同一会派に属する他の議員と共同で行うこともあるが、研究活動を実際に行う主体はあくまで議員個人である。かかる議員個人の活動の総体を会派による研究活動と称することには何の矛盾もない。

エ 条例が政務調査費の交付先を会派と定めた趣旨は、市議会内の活動において会派が果たす役割の大きさに着目し、政務調査費の交付にまつわる経理事務上の便宜を図りながら、適正使用に関して会派に自律機能を持たせる点にある。

オ 以上のとおり、原告の主張には前提において重大な誤りがあるから、原告のいう「会派が調査を行ったといえるための要件」の当否を論じるまでもなく、原告の主張は理由がない。

(補助参加人民主フォーラムの主張)

ア 政務調査費の交付先が会派であるからといって、調査研究の主体も会派であるという論理的必然性はない。政務調査費の交付先を会派とするか議員とするかは手続上の問題であり、政務調査の主体とは別個の問題である。

イ 政務調査の主体は、必ずしも原告の主張するような意味での「会派の調査」に限定されるわけではない。

すなわち、政務調査には、既に設定してある会派の基本政策等に関して、会派全体で、あるいは会派からの指示を受けた所属議員が行う調査があるほか、会派所属の議員が市政との関連で関心を有しているテーマについて、これを会派全体の基本政策とすべきか否かを検討するため、まずは当該議員が先行して調査を行い、その調査結果を踏まえ、会派で討議し、会派の基本政策とするか否かを決定するような場合もある。会派の基本政策は、会派所属の議員の基礎調査に基づく発議を端緒として決定されるのが一般的である以上、そのような調査も当然認められるべきである。

したがって、政務調査の主体は、必ずしも原告の主張するような意味での「会派の調査」に限定されるわけではない。

ウ そもそも、調査の主体が「会派」か「議員」かは、一義的に定まるものではなく、重要なのは当該調査が市政との関連性を有するか否かであり、調査の主体が会派か議員かは調査研究費の支出の違法性と無関係である。

エ 以上のとおり、原告の主張の前提が誤りである以上、原告が主張する要件を論じるまでもなく、原告の主張は理由がない。

(補助参加人自由民主党・市民会議の主張)

原告は調査研究の主体は会派であるとして、会派が調査を行ったというための要件等について独自の解釈論を展開しているが、法が政務調査費の交付を認めた主な趣旨が地方議員の調査活動基盤の充実を図ることにあること、会派が議員の自由かつ自律的な調査研究活動を容認しこれに政務調査費を支出することも会派の自由裁量に属すると考えられることなどに照らすと、原告の主張は失当である。

(補助参加人公明党の主張)

ア 条例によれば政務調査費の交付対象は会派となっているが、条例の趣旨を定めた1条は「市議会議員の市政に関する調査研究に資するため」として、調査研究の主体が議員であることを認めている。

イ また、要綱も、6条1項が「当該会派の所属議員の調査研究に資するため」と規定し、調査研究主体が議員であることを明確にし、同条2項も、議員が政務調査費により費用を支弁して調査研究を行った場合の手続を定め、調査研究の主体が議員であることを認めている。

ウ そして、最高裁判所平成17年11月10日第一小法廷決定・民集59巻9号2503頁も、仙台市においては、会派が主体となって行われる調査研究活動のほかに、議員個人の政務調査活動が認められていることを前提として判断している。

エ 以上より、原告の「調査研究の主体は、議員個人ではなく、会派である。」との主張は、根拠がない。

なお、補助参加人公明党は、原則として毎週会派総会を開いて会派としての意思決定をしており、会派全体としての、あるいは個人ないしグループの調査もここで決定されている。したがって、補助参加人公明党の個人やグループの調査活動も、すべて会派としての意思であるといえる。

(補助参加人社会民主党仙台市議団の主張)

ア 調査研究の主体が議員であることは、法100条13項、条例、規則2条、要綱6条各項に照らして明白である。

イ 政務調査費の交付先と調査研究の主体を同一と解すべき論理的必然性は全くない。政務調査費の交付先を会派と定めた趣旨は、政務調査費の交付に関する経理上の便宜と政務調査費の適正使用を図るためであり、調査研究の主体を会派とするためではない。

ウ したがって、調査研究の主体は会派であるとの原告の主張は何ら根拠のない独自の見解にすぎず、これを前提とする「会派が調査を行ったといえるための要件」についての原告の主張は失当である。

(補助参加人グローバルネット仙台の主張)

ア 調査研究の主体は法上も条例上もあくまで議員個人であり、調査研究費を会派に支給しているのは、支給の便宜及び会派の監督機能を考慮したからにすぎない。

イ 実質的にも、原告は会派と議員との関係を、いわば法人とその構成員のごとく考えているが、会派のすべてがそのような統一した集合体であるわけではなく、会派と議員との関係は極めて緩やかな関係である。

また、そもそも地方議員は会派で選ばれるのではなく、議員個人の見識や人間性が考慮されて選ばれるものである。それにもかかわらず個々の議員の政治活動の源となる政務調査研究が会派に完全に縛られてしまうのであれば、市民の期待に十分に応えることはできない結果となってしまう。

ウ 以上のように、原告の主張の前提自体に誤りがあるから、原告が主張するような要件を論じるまでもなく、原告の主張は理由がない。

(2) 争点(2)(各補助参加人による本件各支出は市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものでないか)について

(原告の主張)

ア 各補助参加人による本件各支出は、いずれも市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものではない。

イ すなわち、条例5条、規則2条1号、要綱2条は、議員の個々の活動のうち、政治活動、議員そのものの活動、交際活動、選挙活動などの市政の調査とは関連性のないもの、市政において必要性のないものを政務調査費の対象から排除する趣旨である。

また、全国都道府県議会議長会作成の平成13年8月20日付けの各文書(〔証拠省略〕)も、調査と関連性のないものを例示して濫用的支出を戒めている。

これらの趣旨からすると、政務調査費の支出が適法といえるためには、次の事情がなければならないと解すべきである。

(ア) なぜ、そこに行く必要があると判断したのかの判断過程を合理的に説明できること

(イ) 要綱6条2項の調査研究報告書を速やかに作成し提出するか、そうでない場合は調査内容及び経費の内訳を説明できること

(ウ) 調査・研究の実施事実、具体的内容、個別の経費を裏付ける資料を提出できること

(エ) 調査結果を市政に活用した事実を具体的に提示できること

以下、各補助参加人ごとに、本件各支出の違法性を述べる。

ウ 補助参加人みらい仙台による本件各支出の違法性

(ア) 平成13年度番号1の出張について

補助参加人みらい仙台に所属する佐藤正昭議員の愛知県名古屋市及び岐阜県多治見市への出張の調査研究項目は「経済産業調査、観光施設調査」となっているが、土曜日と日曜日を含む日程での出張であり、官庁の対応はなかった。

また、佐藤正昭議員は、ナゴヤドーム、マリオットホテル、多治見市の情報収集については事前にインターネットで資料を取り寄せたことはあるが、官公庁に問い合わせたことはなかった。

そして、佐藤正昭議員は、ナゴヤドームでは事前予約なしで一般客に混じって見学ツアーに参加し、場当たり的に道行く人や担当職員に質問をしただけであった。同議員は、視察したオリベストリートの名前すら誤って認識していた。

以上より、上記出張は、一般の観光旅行と区別することができず、市政とは何の関連性も見出せない。

(イ) 平成13年度番号2の出張について

佐藤正昭議員の宮城県小野田町(現加美町。以下同じ。)への出張の調査研究項目は「まちのにぎわい、観光、集客施設等の調査」となっているが、祝日の出張であり、官庁などの対応はなかった。

佐藤正昭議員の現地での調査も、祝日に自家用車を使用して薬莱高原温泉薬師の湯に宿泊し、予約なしに地場産品の直売所の人から話を聞いただけであり、そのメモも残していない。

そして、上記出張には、佐藤正昭議員の妻が同行しており、妻は別の場所で買物をしていた。

以上より、上記出張は、夫婦での観光旅行と同視できるもので、単なる物見遊山の旅行であり、市政とは何の関連性も見出せない。

(ウ) 平成13年度番号3の出張について

補助参加人みらい仙台の会派に属する議員全員(以下、この趣旨で「会派全員」という。)が参加して行われた岐阜県飛騨市・高山市・白川郷への出張の調査研究項目は「環境と街づくり」となっているが、土曜日と日曜日を含む日程での出張であり、官庁などの対応はなかった。

補助参加人みらい仙台は、飛騨、高山、白川郷についての事前研修をインターネット等で入手できる資料に基づいてしたが、専門家によるレクチャーは受けなかった。

佐藤正昭議員は、会派全員で旅行する理由について、シティセールスのあり方は会派の政策の柱であり、全員共通の視察経験が共通の政策認識の差を補うために議員の力量をアップする貴重な機会であったとするが、多額の経費をかけて全員で参加する必要性・合理性は認められない。

また、日程の途中で帰る者が出たこと自体、この出張が会派全員で行く必要性のないものであったことを示している。

さらに、上記出張が市政にどのように役立ったのかも全く明らかでない。

以上より、上記出張は、一般の観光旅行と区別することができず、市政とは何の関連性も見出せない。

(エ) 平成13年度番号4の出張について

佐藤正昭議員の東京都及び千葉県への出張の調査研究項目は「経済活性化について」となっているが、土曜日と日曜日を含む日程での出張であり、官庁などの対応はなかった。

そして、現地での調査について、佐藤正昭議員は、予約なしに従業員、職員、アルバイトからヒヤリングをしたが、そのメモを残していない。

以上より、上記出張は、観光旅行と同視できるものであり、市政とは何の関連性も見出せない。

(オ) 平成13年度番号5の出張について

佐藤正昭議員の北海道苫小牧市及び札幌市への出張の調査研究項目は「経済状況について、全国の主要都市議員との会議」となっているが、土曜日と日曜日を含む日程での出張であり、官庁などの対応はなかった。

調査の内容については、佐藤正昭議員は、若手市議会議員の会の顧問(元会長)として、苫小牧市で開催された同会に参加するとともに、1人で調査視察をしたものであるというが、同議員は、当地における勉強会での具体的な内容はあまり説明できず、また、その後に札幌に移動しているところ、同議員の札幌での記憶はない。

以上より、上記出張は、観光旅行と同視できるものであり、市政とは何の関連性も見出せない。

(カ) 平成13年度番号6の出張について

佐藤正昭議員の台湾の台北市への出張の調査研究項目は「シティセールス、都市活性化策、経済・観光施策等」となっているが、年末年始の出張であり、官庁などの対応はなかった。

また、上記出張には佐藤正昭議員の妻が同行した。

そして、調査内容について、佐藤正昭議員は、チャーター便に乗る前の2時間で10に近い2桁の人から聴取したとのことであるが、同議員の記憶は極めて曖昧であり、本当に台湾に視察旅行に行ったのかも疑わしい。

以上より、上記出張は、妻同行の観光旅行と何ら区別することはできず、市政との関連性はない。

(キ) 平成13年度番号7の出張について

補助参加人みらい仙台の会派全員が参加したマレーシア及びシンガポールへの出張の調査研究項目は「関空施設状況、クアラルンプール行政府との交流会、シンガポール観光局訪問」などとなっているが、市政との具体的関連性が薄く、視察が市政にどのように役立ったのか明らかでない。

また、調査の内容であるクアラルンプール市役所での面談も、単なる表敬訪問の域を出ていない。

そして、出張の日程の途中で帰る者が出たこと自体、この出張が会派全員で行う必要性がないものであったことを示している。

以上より、上記出張は、観光旅行と評価せざるを得ず、市政とは何の関連性も見出せない。

(ク) 平成13年度番号8の出張について

佐藤正昭議員の福岡県及び東京都への出張の調査研究項目は「環境行政、ゴミの削減について、都市交通施策について、その他」となっているが、土曜日、日曜日及び祝日を含む日程での出張であり、官庁などの対応はなかった。

調査内容について、通常、ごみの分別などについて調査視察するのであれば、行政の担当者に事前に予約し案内してもらうはずであるが、佐藤正昭議員はそのようなことすらしていない。また、交通整備施策についても同様である。

以上より、上記出張は単なる観光旅行と何ら区別できない。

(ケ) 平成13年度番号9の出張について

佐藤正昭議員のタイへの出張の調査研究項目は「野菜等農業政策について、交通アクセス、都市環境整備視察等」となっているが、土曜日と日曜日を含む日程での出張であり、官庁などの対応はなかった。

調査の内容について、佐藤正昭議員は、事前の予約をせずに、大規模都市型農業、都市環境整備などを研究したとのことであるが、タイでどのように行動したかは思い出せず、調査内容及び経費の内訳を全く説明できなかったばかりか、市政にどのように役立っているかも全く説明していない。

以上より、上記出張は、観光旅行と区別が困難である。

(コ) 平成13年度番号10の出張について

佐藤正昭議員の高知県高知市及び愛媛県松山市への出張の調査研究項目は「都市交通調査、まちづくり、街並み調査」となっているが、土曜日と祝日を含む日程での出張であり、官庁などの対応はなかった。

佐藤正昭議員は、「坊ちゃん列車」についてインターネットで事前の情報収集をしたが、どの日に松山市に行ったか、どの日に高知市に行ったかも覚えていない。

以上より、上記出張は、観光旅行との区別が困難である。

(サ) 平成14年度番号1の出張について

佐藤正昭議員の岩手県盛岡市及び安代町(現八幡平市。以下同じ。)への出張の調査研究項目は「経済観光施策について、青少年育成について」となっているが、祝日の出張であり、官庁などの対応はなかった。

佐藤正昭議員は、前年に引き続き、ゴールデンウイーク中に妻を同伴して自家用車で出張したものである。

調査内容について、佐藤正昭議員は、りんどう農家2軒を調査し、各所20ないし30分かけて聴取した、安比高原では事前予約なしで数時間のヒヤリングをしたと述べている。しかし、後者についてその裏付けはなく、また、佐藤正昭議員は宿泊場所も思い出せなかった。

以上より、佐藤正昭議員が上記出張を政務調査というのは強弁であって、夫婦の観光旅行と区別することは困難である。

(シ) 平成14年度番号2の出張について

補助参加人みらい仙台の会派全員が参加した沖縄県への出張の調査研究項目は「自然環境保全と都市活性化について、地域振興策について」となっているが、市政との具体的関連性が薄く、視察が市政にどのように役立ったのか明らかでない。その内容も、単なる観光旅行と評価せざるを得ないものである。

補助参加人みらい仙台は、上記出張に当たり、事前のレクチャーを行っていないし、出張の日程の途中で帰る者が出たこと自体、この出張が会派全員で行く必要性がないものであったことを示している。

以上より、上記出張は、市政とは何の関連性も見出せない。

(ス) 平成14年度番号3の出張について

佐藤正昭議員の東京都、埼玉県草加市、茨城県水戸市及び神奈川県川崎市への出張の調査研究項目は「観光、経済政策等にぎわいのある街づくりについて、環境に配慮した街づくり、緑化推進事業等について」となっているが、土曜日、日曜日及び祝日を含む日程での出張であり、官庁などの対応はなかった。

調査の内容として、佐藤正昭議員は、全国若手市議会議員の会のメンバー所在地を歴訪し、メンバー及び一般市民との間で意見や情報の交換を行ったというが、それを裏付ける資料は何ら存在せず、どの程度の意見や情報の交換をしたのかも全く明らかでない。

以上より、上記出張は、単なる観光旅行である疑いが濃く、市政との関連性は認められない。

エ 補助参加人民主フォーラムによる本件各支出の違法性

(ア) 平成13年度番号1の出張について

安孫子雅浩議員(以下「安孫子議員」という。)の岩手県北上市への出張の調査研究項目は「JTU(日本トライアスロン連合)東北地区協議会研修会の参加」となっているが、安孫子議員は、宮城県トライアスロン協会の理事職にあったのであり、主として本人にとって必要な研修会への参加であった。

日本トライアスロン連合東北地区協議会研修会は、東北各県のトライアスロン協会の理事が中心となって年1回行われ、各県の開催状況等の情報交換をする場であり、安孫子議員は宮城県トライアスロン協会の理事という立場で参加した。

しかしながら、全国都道府県議会議長会は、「政務調査費を充当するのに適さない例」として「議員が他の団体の役職を兼ねていて、その団体の理事会、役員会や総会の出席」のための経費を挙げており(〔証拠省略〕)、上記支出はこれに抵触することが明白である。

この点、安孫子議員は、上記研修会への参加はトライアスロンの国際大会を仙台市で復活させることを目的とした調査であるとして、市政と関連付けようとしている。

しかし、上記研修会に参加した目的や調査事項はもとより、参加したことによる成果も報告書等の書面として全く残っておらず、安孫子議員が市議会において質問ないし提案した形跡もない。安孫子議員が研修会に参加して聴取りを実施したといっても、その実態は、ただ報告を聞いていただけにすぎず、自ら積極的に具体的な問題意識を持って研修会に参加した形跡はない。また、仙台での国際大会の開催復活を調査目的とするのであれば、上記研修会での議題として取り上げるよう提案するはずであるが、安孫子議員はそれすら行っていない。そして、会派総会での口頭での報告もわざわざ研修会に参加しなくても得られる情報にすぎなかった。

したがって、安孫子議員の上記研修会への参加は、トライアスロン競技者でもあった同議員の私的活動であり、市政とは関連しない。

以上より、上記出張についての本件政務調査費の支出は、市政との関連性・必要性が認められない。

(イ) 平成14年度番号1の出張について

補助参加人民主フォーラムの会派全員が参加したオーストラリアへの出張の調査研究項目は「シドニー市 1.高齢者福祉政策(ケアハウスの実態等)2.観光政策(フィルムコミッションの運営等)3.社会教育施設(オペラハウス、博物館の運営等)4.都市交通政策、等について、ブリスベン市 1.高齢者福祉政策(リタイアメントハウスの実態等)2.観光政策(ゴールドコースト観光等)3.都市交通政策、等について」となっているが、市政に関連する緊急性や重要性を持つものとはいえないし、旅行内容も観光旅行と評価せざるを得ないもので、会派全員で行く必要性もない。

また、出張先での行程をみると、オペラハウスや博物館といった観光旅行でも行くところも含まれており、他の施設についてもせいぜい1ないし2時間の訪問であったことから、オーストラリア滞在中毎日午後の大部分は調査とは関係のないプライベートな行動に充てられていた。

そして、シドニー市のフィルムコミッション事務局や観光協会への訪問は単なる表敬訪問にすぎず、政務調査とは評価できない。高齢者施設訪問も同様であり、高齢者政策についてどのような問題意識を持って調査に当たったのかが、会派の政策から見ても判然としない。シドニー市における公共交通機関の視察も、交通政策を専門にしているわけでもないただの現地在住ガイドから話を聞いた程度であり、およそ政務調査費を充当して実施する調査とはいえない。ブリスベン市交通局訪問についても、安孫子議員の陳述書によれば、あえて訪問しなくてもわかる事項しか述べられておらず、表敬訪問の域を出ていない。

したがって、上記出張の実態は観光旅行であり、市政との関連性を有する視察が含まれていたとしても、それは旅行の一部にすぎず、出張旅費全額を本件政務調査費から充当するだけの調査とは認められないし、会派全員で出張する必要性も緊急性もない。

また、安孫子議員は、上記出張について調査研究報告書を作成したと述べているが、その存在自体が疑わしいし、上記出張の成果が具体的にどのように市政に活かされているかについても単に会派の政策と関連付けられるのみで何ら述べられていない。

以上より、上記出張についての本件政務調査費の支出は、市政との関連性・必要性が認められない。

(ウ) 平成14年度番号2の出張について

安孫子議員の北海道旭川市への出張の調査研究項目は「(社)日本青年会議所全国会員大会への視察参加」となっているが、同議員は当時仙台青年会議所の会員であり、主として本人にとって必要な大会への参加であった。

安孫子議員は、北海道ブロック役員や旭川青年会議所役員等を中心に聴取りを行ったというが、その聴取りとは、自己の調査のために特別に面談の機会を設けて実施するというのではなく、会議に参加してその中での報告を聞いたり、立ち話をする程度のことであり、実態はほかの一般参加者と変わりがなかった。

また、安孫子議員は、具体的にだれと面談をしたか覚えておらず、名刺さえ保管していなかった。

市政との関連での調査であるならば、行政職員からの聴取りも当然必要であるが、安孫子議員はそれを行った形跡もない。仮に市の職員と話をしたとしても、たまたま青年会議所会員の市職員がいてその人と話をしたという程度にすぎない。

また、上記出張と同じ年に仙台市で開催された世界青年会議所アジア・太平洋会議の実績がある以上、安孫子議員は、本件政務調査費を充当してまで全国大会の調査に行く必要性はなかった。

したがって、上記全国大会への参加は、安孫子議員の青年会議所会員最後の年の記念にほかの青年会議所のメンバーと参加したというにすぎず、私的な活動であり、また、少なくとも私的な活動か議員としての活動かを峻別できないものである。

また、上記全国大会についても報告書の作成、提出はなされておらず、調査内容、経費の内訳を裏付ける資料も提出されていない。また、調査報告が市政に具体的に活かされたと認められる事実もない。

以上より、上記出張についての本件政務調査費の支出は、市政との関連性・必要性が認められない。

(エ) 平成14年度番号3の出張について

補助参加人民主フォーラムの会派全員が参加した東京都への出張の調査研究項目は「副都心計画について、あそび体験型公園の整備、民活を利用した社会教育施設、古い町並みの再現について、東京都庁訪問、食の安全の取組について、IT市役所の創出について」となっているが、市政に関連する緊急性や重要性を持つものではない。そして、出張の内容も観光旅行と評価せざるを得ないものであり、会派全員で行く必要性もない。

また、安孫子議員は、上記出張について調査研究報告書が作成されたと述べているが、同報告書の存在自体が疑わしく、また上記出張に関する経費の内訳も提出されていない。また、細部については次のとおりである。

a 東京都庁港湾局及び「東京みなと館」について

安孫子議員は、事前ミーティングをし、長町副都心計画や仙台港背後地整備等の参考にする目的で調査に行き、報告書も作成したと述べているが、具体的にどのような点を参考にしようとしたのかや、調査の結果が長町副都心計画等にどのように活かされているのかについて、曖昧な説明しかできていない。

b 世田谷区の「羽根木プレイパーク」について

安孫子議員は、子供達の遊び場の確保及び遊び方の工夫について調査する目的があったと述べているが、具体的にどのような点を参考にしようとしたのか、調査の結果どのように市政に反映されることになったのかを述べていない。

c 小金井市の「江戸東京たてもの園」について

安孫子議員は、歴史的建物を残して公園として開放しているという事実を確認する目的で調査に行ったと述べているが、事実の確認であればインターネットでも可能であるし、園内の見学だけでは一般の来園者と全く変わりがない。また、安孫子議員は、同所に行って市政にどのように参考になったのかについても説明できていない。

d 東京都庁訪問について

安孫子議員は、東京都庁において、東京都の様々な取組、特に「東京構想2000」の概要について説明を受けたと述べているが、その概要はインターネットでも知ることができる。しかも、都庁訪問時間はせいぜい1時間程度であったと推認され、具体的に参考になった点や市政に活かされている点についてもほとんど述べられていない。

e 地下鉄大江戸線の試乗について

安孫子議員は、リニア式地下鉄における騒音問題を調査する目的で、地下鉄大江戸線に試乗したと述べているが、具体的に東京都交通局の担当者から説明を受けたわけでなく、騒音の測定をしたわけでもない。実態は単に乗車していただけであり、一般の乗車客と何ら変わりはない。

f 築地市場の視察について

安孫子議員は、食の安全の取組を調査する目的で視察したと述べているが、食の安全の取組を調査するのになぜ築地市場でなければいけないのか、具体的に仙台中央卸売市場と比較してどこが参考になったのかといった点について説明できておらず、結局一般の見学客と変わりがない。

g 富士通霞が関ショールーム訪問について

安孫子議員は、同所において電子市役所に向けた取組について調査したと述べているが、単に現地で体験しただけであり、電子市役所の問題点とその対応策といった点について調査した形跡がなく、単なる見学であって一般の客と変わりがない。

以上より、上記出張についての本件政務調査費の支出は、市政との関連性・必要性が認められない。

オ 補助参加人自由民主党・市民会議による本件各支出の違法性

(ア) 平成13年度番号1の出張について

補助参加人自由民主党・市民会議に所属する大内久雄議員(以下「大内議員」という。)の福岡県福岡市、北九州市及び長崎県長崎市への出張の調査研究項目は「一般行政、観光行政、都市整備」となっているが、抽象的・一般的であり、市政との具体的関連性が明確でない。また、上記出張は、4泊5日の日程で行われているが、土曜日と日曜日を含む日程での出張であって、福岡市、北九州市及び長崎市で十分な調査がなされたとはいえない。原告の調査では、3市議会とも、調査の受入れを行っていない。

また、大内議員が説明を受けた市議会議員の名前も、同議員が訪問した特別養護老人ホームの名前も特定されておらず、同議員が本当に福岡市と北九州市に行ったのかさえ疑わしい。

そして、上記出張の調査先の選定過程は明らかでないが、多忙な議員が政務調査費による調査を行うに当たって、効率的な調査を念頭に置かないはずはないのであり、なぜ都市計画道路に関心を持ったか、なぜ福岡市と北九州市の都市計画道路を調査先に選定したのかを説明できないということは、実際に福岡市と北九州市に行ったとしても他目的の旅行で行ったということである。

(イ) 平成13年度番号2の出張について

補助参加人自由民主党・市民会議の会派全員による兵庫県、徳島県徳島市及び高知県高知市への出張の調査研究項目は「震災後の復興状況、行政改革・財政健全化の状況調査」などとなっているが、会派全員による調査研究が必要なほど市政との関連で緊急性や重要性を持つものとは到底いえない。

補助参加人自由民主党・市民会議が市の行政改革と財政健全化、市の施設であるエルパーク、エルソーラの運営改善に関心を持ったために徳島市に調査に行ったというのであれば、調査のポイントを事前に絞って質問書を徳島市あるいは徳島市議会に送付し、それらの点を中心に説明を受けるのでなければ、市政に役立つ情報を得ることはできず、そうでなければ、見学先で担当者から話を聞いたという、一般の見学者と何ら変わりがない。

また、震災調査も、わざわざ8人で現地に行く必要はなく、前もって資料を送ってもらえれば済むことである。

(ウ) 平成13年度番号3の出張について

大内議員は秋田県秋田市及び大曲市(現大仙市。以下同じ。)へ出張したと述べているところ、その出張の調査研究項目は「行政全般、農政及び観光行政」となっており、抽象的・一般的であって、市政との具体的関連性が明確でない。原告の調査では、秋田市議会では調査の受入れを行っていない。

そして、大内議員が現地調査を必要と判断するに至った理由、調査内容は明らかでなく、実際に調査に行ったのかすら疑わしい。

(エ) 平成13年度番号4の出張について

大内議員の福島県会津若松市及び山形県上山市への出張の調査研究項目は「行政全般(若松市)、行政全般および競馬場運営(上山市)」となっており、抽象的・一般的であって、市政との具体的関連性が明確でない。加えて、競馬場運営と市政とは全く関連性がない。原告の調査では、両市議会は調査の受入れを行っておらず、上山市の競馬事務所への訪問もされていない。

そして、大内議員が現地調査を必要と判断するに至った理由及び具体的成果は明らかではなく、上記出張は調査ではなく単なる見学ないし観光にすぎない。

(オ) 平成13年度番号5の出張について

大内議員の沖縄県糸満市、那覇市及び浦添市への出張の調査研究項目は「行政全般、観光行政」となっており、抽象的・一般的であって、市政との具体的関連性が明確でない。

また、原告の調査では、これらの3市議会とも調査の受入れを行っていない。

そして、大内議員が述べるように戦後アメリカの占領下にあって昭和47年の返還までの27年間にわたる県民としての声を聞いたところで、市政に役立つものではなく、上記出張は単なる同議員の観光旅行であったというべきである。

(カ) 平成14年度番号1の出張について

大内議員の静岡県静岡市及び熱海市への出張の調査研究項目は「行政全般、観光行政」となっており、抽象的・一般的であって、市政との具体的関連性が明確でない。原告の調査では、これら両市議会とも調査の受入れを行っていない。熱海市観光商工課でも受入れは確認されていない。

そして、大内議員の行った調査の内容は明らかでなく、同議員が調査目的に合致した情報に接することができたかどうかについても明らかではない。

(キ) 平成14年度番号2の出張について

大内議員の岩手県盛岡市、秋田県秋田市、角館町(現仙北市。以下同じ。)及び山形県米沢市への出張の調査研究項目は「行財政全般について、新幹線開業に向けた街づくりについて、農業林業行政について」となっているが、抽象的・一般的であって、市政との具体的関連性が明確でない。

加えて、「新幹線開業に向けた街づくり」と市政との関連性を認めることはできない。原告の調査では、これらの4市町議会とも調査の受入れを行っていない。そもそも、上記出張期間は5月のゴールデンウイークに当たるのであるから、上記出張は、大内議員の単なる観光旅行であったというべきである。

そして、大内議員が現地調査を必要と判断するに至った理由、調査内容及びその結果は明らかではなく、上記出張は、観光旅行であったというべきである。

(ク) 平成14年度番号3の出張について

補助参加人自由民主党・市民会議の会派全員による北海道札幌市及び函館市への出張の調査研究項目は「行政全般、都市整備」となっているところ、抽象的・一般的であって、市政との具体的関連性が明確でない。加えて、会派全員が参加すべき緊急性、重要性があったとはいえない。

上記出張は、上記平成13年度番号2の出張と同様、会派内の懇親旅行であったというべきである。調査であれば参加者は1人ないし2人で十分であり、8人も不要であった。

(ケ) 平成14年度番号4の出張について

大内議員の山形県新庄市、鶴岡市、寒河江市、福島県二本松市及びいわき市への出張の調査研究項目は「農業行政と観光行政、交通と街づくり」となっているところ、抽象的・一般的であって、市政との具体的関連性が明確でない。原告の調査では、これらの5市議会とも調査の受入れを行っておらず、大内議員が出張先に行ったのかどうかすら疑わしい。

(コ) 平成14年度番号5の出張について

大内議員の新潟県長岡市及び新潟市への出張の調査研究項目は、「行政全般、観光及び農政について」となっているところ、抽象的・一般的であって、市政との具体的関連性が明確でない。原告の調査では、これら両市議会とも調査の受入れを行っていない。また、長岡市の観光・農政関係の課も調査の受入れを行っていないのであって、大内議員が出張先に行ったかどうかすら疑わしい。

カ 補助参加人公明党による本件各支出の違法性

(ア) 平成13年度番号1の出張について

補助参加人公明党に所属する登坂file_2.jpg議員(以下「登坂議員」という。)の北海道白老町への出張の調査研究項目は「白老町、仙台市歴史姉妹都市記念式に出席する為」となっており、白老町の姉妹都市記念式典への参加が目的と考えられるが、市政との具体的関連性が明らかでない。また、調査の内容とされた懇談の実態も、市政に関する調査研究の名に値しない。

そもそも、記念式典への参加はもともと儀礼的なものであり、それに対する経費は「交際費的な経費」(要綱2条1号)であって、政務調査費の対象外である。

補助参加人公明党が主張するように記念式典へ参加することに意義があるからといって、また、市議会議長から上記記念式典への参加を要請されたからといって、それが直ちに市政に関する調査研究の目的に合致する行為に転化されるわけではない。

補助参加人公明党の主張は、要するに、市議会議長から参加要請されたが、それに出席するための公的資金による出所がないため、本件政務調査費を使ったというものであるが、要綱2条の項目は例示列挙であり、同条に記載のない経費がすべて政務調査費の対象内の支出になるというものではない。

また、各会派の申合せがあったからといって、適法となるものでもない。

そして、上記記念式典への参加が、要綱2条7号の「その他市政に関する調査研究の目的に合致しないもの」に該当することは明らかである。

さらに、上記出張中の登坂議員の行動をみても、市政のための調査研究に該当するものではない。

(イ) 平成13年度番号2の出張について

補助参加人公明党の会派全員が参加した愛媛県宇和島市及び徳島県徳島市への出張の調査研究項目は「姉妹都市交流のあり方及びお祭りの運営について」となっているところ、その調査研究項目からして、直接市政との関連性があるものではない。特に姉妹都市人的交流という調査研究項目は、会派全員による調査研究としての市政に関連する緊急性や重要性を持つものではない。

まず、宇和島市への出張について、お見舞いや感謝の意を伝える行為は、市政との具体的関連性はないし、また、それは市政に関する調査研究の目的とも合致しない。

また、宇和島市長との懇談は、市政に関する調査研究の名に値しない、単なる交流程度のものであった。

次に、徳島市への出張について、市政に関する調査研究に資する出張というためには、具体的に調査研究事項を特定することが必要であるところ、徳島市への出張の目的は、単に「イベントのあり方」というのみで、極めて漠然としており、具体的に何をするかということが明らかでない。

そして、登坂議員らは、事前に調査研究目的に沿った準備を全くしていない。

さらに、調査研究というためには、その目的に沿った効果的な対象の選択と調査目的を達するための相当な時間が必要であるが、そのような対象の選択も行われていないし、時間も短い。調査の成果もいい加減なものであった。

仮に、上記出張が市政に関する調査研究に該当するとしても、その調査のために会派全員8名で参加するほどの必要性や緊急性はない。

以上より、上記出張の実態は、会派の親睦を主目的とした観光旅行であり、宇和島市長らとの懇談や徳島市議会議長らとの懇談は、その旅費を本件政務調査費による支出とするための口実にすぎない。

(ウ) 平成14年番号1の出張について

補助参加人公明党の会派全員が参加した北海道札幌市への出張の調査研究項目は「札幌市交通局(バス事業)の民営化について」となっているが、その調査研究項目からして、直接市政との関連性はない。

補助参加人公明党は、市バスの民営化問題について、長い間本会議及び委員会で継続的に取り上げてきており、平成14年の段階でわざわざ登坂議員の陳述書に記載された程度の成果を得るために、会派全員で出張しなければならない緊急性や必要性は全くない。

仮に、調査の必要性があったとしても、多くとも3人も行けば目的は十分に達せられたといえる。わざわざ多額の公費を使用して会派8名全員で行く必要性はない。

以上より、上記出張の実態は、会派の親睦を主目的とした観光旅行であり、札幌市交通局幹部との懇談は、その出張旅費を本件政務調査費から支出するための口実にすぎない。

(エ) 平成14年度番号2の出張について

補助参加人公明党の会派全員が参加した岐阜県岐阜市及び高山市への出張の調査研究項目は「観光地におけるバリアフリーについて(説明30分、現地視察1時間弱)」となっているが、その調査研究項目、現地視察等の所要時間からみて、会派全員で調査研究しなければならないほどの緊急性や重要性はない。

登坂議員の調査内容及び感想は、具体的調査目的から見ると相当にかけ離れたものとなっているし、バリアフリーについての調査結果がどのようなものであったのか明らかでなく、わざわざ現地に行く必要はなかった。

また、補助参加人公明党が十分に事前の調査研究をして、現地において適切な質問や視察をした形跡はない。

仮に、上記出張が、市政に関する調査研究に該当し、必要性があったとしても、多くて3人も行けば目的は十分達成でき、わざわざ多額の公費を使用して会派全員8名で行くことの必要性や緊急性は全くない。

以上より、上記出張の実態は、会派の親睦を主目的とした観光旅行であり、高山市観光課との懇談は、その旅費等を本件政務調査費による支出とするための方便にすぎない。

キ 補助参加人社会民主党仙台市議団による本件各支出の違法性

(ア) 平成13年度番号1の出張について

補助参加人社会民主党仙台市議団の仙台市青葉区作並地区への出張の調査研究事項は「作並地区の観光対策を中心とした取組状況について」などとなっているところ、単一のテーマであり、出張先は仙台市の中心部から30分程度で到着できる作並地区であることから、日帰りによる出張調査で十分目的は達成できたといえる。

また、上記出張の主要な目的は、スケジュールなどからして、会派の議員を拘束した会派としての会議の開催にあったのであり、議会活動の方針を討議する会議は、議員としてのあるいは会派としての活動そのものであるから、議員の市政に関する調査研究活動であったとはいえない。

そして、調査報告書も提出されておらず、費用も過大であった。

(イ) 平成13年度番号2の出張について

補助参加人社会民主党仙台市議団の仙台市太白区秋保地区への出張の調査研究事項は「秋保地区の道路整備状況」などとなっているところ、単一のテーマであり、出張先は仙台市の中心部から30分程度で到着できる秋保地区であることから、日帰りによる出張調査で十分目的は達成できたといえる。

また、上記出張の主要な目的は、平成13年度番号1の出張と同様、会派要望、市政への政策提案を検討する会議の開催にあったのであり、これは議員としてのあるいは会派としての活動そのものであって、市政に関する調査研究活動とはいえない。

そして、調査報告書も提出されておらず、費用も過大であった。

(ウ) 平成13年度番号3の出張について

補助参加人社会民主党仙台市議団の秋保温泉地域への出張の調査研究事項は「温泉地域の経済状況について」となっているところ、単一のテーマであり、出張先は仙台市の中心部から30分程度で到着可能な秋保地区であることから、日帰りによる出張調査で十分目的は達成できた。

また、上記出張の主要な目的は、平成13年度番号1及び2の出張と同様、会派としての議会対策を検討する会議の開催にあったのであり、これは議員としてのあるいは会派としての活動そのものであって、市政に関する調査研究活動とはいえない。

そして、調査報告書も提出されておらず、費用も過大であった。

(エ) 平成14年度番号1の出張について

補助参加人社会民主党仙台市議団に所属する大槻正俊議員(以下「大槻議員」という。)の徳島県徳島市への出張の調査研究事項は「吉野川河口堰問題への市民の対応状況について」などとなっているところ、市政との具体的関連性が明確ではない。

また、調査内容からすると、3泊4日もの長期間の出張の必要性はない。大槻議員は、調査報告書を提出したと述べるが、この報告書は本件訴訟に証拠として提出されておらず、存在するかどうかさえ明らかでない。

ク 補助参加人グローバルネット仙台による本件各支出の違法性

(ア) 平成13年度番号1の出張について

補助参加人グローバルネット仙台に所属する加藤栄一議員(以下「加藤議員」という。)の東京都庁への出張の調査研究事項は「環境問題、商店街活性化」となっているが、土曜日と日曜日を含む日程での調査であり、かつ、調査研究項目が抽象的・一般的で、市政との具体的関連性が明確でない。

また、調査先の選定と調査方法の決定過程は明らかではなく、調査結果も主観的感想を持ち帰ったにすぎない。

また、加藤議員は、麻布十番商店街及びあきる野市へも訪問しているが、同じことがいえる。

(イ) 平成13年度番号2の出張について

加藤議員の筑波学園都市への出張の調査研究事項は「都市計画」となっているが、土曜日と日曜日を含む日程での調査であり、かつ調査研究項目が抽象的・一般的で、市政との具体的関連性が明確でない。

また、調査先の選定、調査方法の決定過程及び調査結果は明らかでない。

(ウ) 平成13年度番号3の出張について

加藤議員の広島県広島市及び倉敷市への出張の調査研究事項は「都市計画、文化財」となっているが、抽象的・一般的であり、市政との具体的関連性が明確でない。

また、調査先の選定、調査方法の決定過程及び調査結果は明らかでない。

(エ) 平成14年度番号1の出張について

補助参加人グローバルネット仙台の会派全員が参加した北海道白老町への出張の調査研究事項は「地域経済の現状、姉妹都市人的交流」となっているが、直接市政との関連性はない。特に、姉妹都市人的交流という調査研究項目は、会派全員で調査研究しなければならないほどの緊急性や重要性を持つものとはいえない。

また、事前準備の内容、具体的な調査項目、調査の成果は明らかでない。

要するに、上記出張は、姉妹都市である白老町との交流を深めるために関係者と懇談をしたというものにすぎない。

(被告の主張)

被告には各補助参加人による本件各支出が市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものか否かを判断することは困難であり、また、それを判断する権限もない。

すなわち、仙台市が条例に基づき各補助参加人に交付した政務調査費については、条例5条及び規則2条各号に規定する使途基準に従って支出することとされており、市議会においても要綱を定め、その2条各号で政務調査費の対象外の経費を明確に規定して支出の適正化を図っている。

そして、政務調査費の収支状況及び執行状況については、各補助参加人の作成に係る収支状況報告書(条例9条1項)及び執行状況報告書(要綱7条1項)が市議会議長を経て被告に送付されている。

政務調査費の支出について、これらのほかに被告において提出を受けるべき文書は制度上存在しないし、また、被告において調査研究報告書の提出を受けることが予定されていないことについては、最高裁判所平成17年11月10日第一小法廷決定・民集59巻9号2503頁において、「議会において独立性を有する団体として自主的に活動すべき会派の性質及び役割を前提として、調査研究報告書の各会派内部における活用と政務調査費の適正な使用についての各会派の自律とを促すとともに、調査研究報告書には会派及び議員の活動の根幹にかかわる調査研究の内容が記載されるものであることに照らし、議員の調査研究に対する執行機関等からの干渉を防止するというところにあるものと解される。」と判断されたとおりである。

したがって、被告には、現行制度上求められている義務の履行について欠けるところはなく、各補助参加人による本件各支出について制度上違法性の判断をすることができず、その権限もない以上、被告においてこれらの支出の違法を前提とした返還請求をなし得ないことは自明の理である。

(補助参加人みらい仙台の主張)

ア 補助参加人みらい仙台による本件各支出は、以下に述べるように、いずれも市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものである。

イ(ア) まず、行政が作成した資料からは知ることのできない生の現場を把握するには、各議員が休日を返上して用務先での調査研究に当たる必要性が高いという現状がある。特に、観光を中心とする経済状態の調査においては、人の動きの多い休日こそがふさわしいから、休日に出張して調査研究を行う必要性・合理性がある。

また、調査には市政との関連性があったし、裁量の範囲内であった。

そして、会派全員での出張も、会派として統一的に調査研究すべきテーマを設定し、会派全員の参加による出張を政務調査費を使用して行うことは、もとより会派の裁量の範囲内のことであるし、会派を単位として行われる議会活動(政策の立案、議会質問等)を通じて真に市政に資するものといえるから、必要性・合理性が認められる。

具体的には以下のとおりである。

(イ) 平成13年度番号1の出張について

上記出張は、佐藤正昭議員が中部地方の中心都市である名古屋市街の経済産業状況(マリオットホテル、ナゴヤドーム等)、岐阜県多治見市内の観光施設(多治見焼工房等)を視察し(聴取りを含む。)、休日における観光客の動向等を調査したものである。

(ウ) 平成13年度番号2の出張について

上記出張は、佐藤正昭議員が宮城県小野田町の大型集客施設(温泉施設、地場産品産直市場)の責任者や販売担当者から聴取りを行うとともに、人出の多い休日における購買行動等を調査したものである。

上記出張は、佐藤正昭議員が仙台市において地元産生鮮野菜等の直売所を設けて市民や観光客の利便に供する構想を研究していることの一環として行った調査研究であった。

(エ) 平成13年度番号3の出張について

補助参加人みらい仙台は、仙台市の特徴を対外的に知ってもらうための産業誘致や観光宣伝のあり方について、「シティセールス」という切り口で、会派として、継続的に調査研究しており、そのうちの観光セールスに関しては、自然環境、歴史的遺産、人工的施設開発等のいずれの要素を重視して観光客にアピールするかという視点で調査研究を行っている。

上記出張は、この会派の基本政策である「シティセールス」に関連し、仙台市におけるこれまでのまちづくりや再開発に対して、自然環境や歴史的遺産の保存と新たな観光資源開発との調和の中で市民生活が成り立つあり方を調査研究する目的で、会派全体で行ったものである。

上記出張は、観光協会や市民団体等の現地スタッフからレクチャーを受け、観光客の多い日時に現地視察を行うために、休日に設定された。

(オ) 平成13年度番号4の出張について

上記出張は、佐藤正昭議員が新しいまちづくりを通じた経済の活性化について調査研究する目的で、お台場地区、汐留地区、幕張メッセ等における観光客等の動向を、人出の多い休日に調査したものである。

商店主等からの聴取りや意見交換のためにも、最もにぎわいをみせる休日に合わせて出張する必要があった。

(カ) 平成13年度番号5の出張について

上記出張は、佐藤正昭議員が全国若手市議会議員の会の顧問(元会長)として苫小牧市で開催された同会に参加し、港湾工業都市である同市の駅や港周辺の開発等の経済状況について調査視察、意見交換を行ったものである。

同会の開催に合わせて地元関係者の日程も調整した結果、休日の出張となった。

(キ) 平成13年度番号6の出張について

上記出張は、佐藤正昭議員が会派の統一テーマでもある「シティセールス」の調査研究に関連して、仙台・台湾間の定期航路開設や仙台空港の国際化の必要性という観点から、実踏調査を行ったものである。

上記出張は、出張先での日本人向けの観光セールスのあり方を知ることで、仙台市のシティセールスのあり方の参考とする目的があった。

上記出張の日程は、定期便がないためチャーター便の発着日に合わせて決定した。

(ク) 平成13年度番号7の出張について

上記出張は、補助参加人みらい仙台の会派としての「シティセールス」に関する調査研究の一環として実施したものであるから、会派全員で行く必要性があった。

マレーシアのクアラルンプール市では、同市に仙台市のパンフレットを持参してPRを行ったほか、シティセールス、IT対策、都市再開発などをテーマとし、仙台市に天然ガスを供給している企業、航空会社、電脳都市サイバジャヤ等を対象とする調査研究を実施した。また、民間交流を会派として支援する方針から、航空便の乗り入れや留学生の交流などについても協議する機会をもった。

シンガポールでは、観光協会との間でシティセールスに関する意見交換を行った。

この出張研究後、市議会には、補助参加人みらい仙台の会派提案を受けてシティセールス調査特別委員会が設置され、その後市役所部局(シティセールス係)が置かれるに至ったほか、同時に補助参加人みらい仙台の会派提案でIT市役所創出調査特別委員会も設置された。これらは会派全体で調査研究に取り組んだ成果である。

(ケ) 平成13年度番号8の出張について

上記出張のうち福岡県への出張は、市議会の経済環境委員として、仙台市におけるごみの分別収集の問題を検討していた佐藤正昭議員が、九州の政令指定都市における細かい分別の実態を調査研究したものである。

休日に会社関係者やNPO関係者からの聴取りを設定し、仙台市における学生・単身赴任者へのPR方法、賃貸物件を扱う不動産会社への周知徹底システムを研究する上での契機となった。

上記出張のうち東京都への出張は、佐藤正昭議員が地下鉄東西線計画との関連で、リニア導入による騒音の実体験などを都営大江戸線で調査したほか、大江戸線が環状線であることから、仙台市における基幹交通網整備のあり方の参考例として視察したものである。

(コ) 平成13年度番号9の出張について

上記出張は、佐藤正昭議員がタイのバンコク市における都市型農業の特徴を調査し、大規模都市型農業と都市環境整備との調整のあり方について研究を行ったものである。佐藤正昭議員は、併せて、都市の交通渋滞問題(経済損失解消策)の実態を通訳付きで調査した。

上記出張の日程は、チャーター便の発着日に合わせて決定した。

この視察・交流が遠因となり、平成15年11月から仙台・バンコク間で季節定期便が就航することとなった。

(サ) 平成13年度番号10の出張について

上記出張は、佐藤正昭議員が仙台市東西交通軸についてLRT導入論があったことを受けて、松山市において路面電車の都市整備に与える功罪について視察調査したものである。佐藤正昭議員は、併せて、周辺商店街の様子、とりわけ市内の交通混雑が郊外店に客を奪われる誘因となっている実例を視察した。

高知市の市街地調査では、観光地周辺の人の流れ、まちづくりの様子を聴取りを含めて調査した。

上記出張を休日を含む日程としたのは、人の動きの大きい日時に合わせたからである。

(シ) 平成14年度番号1の出張について

上記出張は、佐藤正昭議員が岩手県安代町においてりんどう栽培農家を訪問し、りんどうを観光施策に活かしている実態や集荷状況、市場流通過程の聴取り調査を行ったものである。さらに、佐藤正昭議員は、青少年健全育成の観点から、同町内のリゾートエリアである安比高原の観光施設を訪問し、関係者から大型施設への若者の就職状況等について聴き取るとともに意見交換を行った。

上記出張の日程は、農家の手が比較的空いており、かつ観光施設への人出の多い時期を考慮して選定した。

(ス) 平成14年度番号2の出張について

上記出張は、補助参加人みらい仙台が会派としての「シティセールス」に関する調査研究の一環として会派全員で実施するべく、具体的な用務先として、石垣市役所及び那覇市役所を選定したものであるから、会派全員で行く必要性があった。

自然環境の魅力で観光客に人気の高い沖縄を視察先として選定し、環境保全と観光・経済発展との調整の必要性について調査研究を行った。

石垣市では、環境保全に係る行政機関を対象に調査を行い、那覇市役所では、観光依存体質と失業問題を中心に情報交換を行った。

仙台市は、議会論議を通じて、仙台市当局側が環境政策に関する重要な決断をしてきた経緯があるが、仙台市においても森を守りながら観光を活性化する上で参考になる調査ができた。

(セ) 平成14年度番号3の出張について

上記出張は、佐藤正昭議員が都市の規模と全国的認知度との相関という視点から、仙台の特徴を活かした「シティセールス」のあり方に参考となる事例を研修・視察し、さらには政令指定都市における環境対策への取組事例に当たる目的で、全国若手市議会議員の会のメンバー所在地を歴訪し、メンバー及び一般市民との間で、にぎわいのあるまちづくり、環境に配慮したまちづくり、緑化推進事業のあり方をテーマに、意見や情報の交換を行ったものである。

上記出張は、訪問先の日程調整の便宜から、土曜日、日曜日及び祝日を含む日程とした。

(補助参加人民主フォーラムの主張)

ア 会派が政務調査費を支出するに当たっては、市政と関連性を有する調査研究活動に支出する必要があることはいうまでもない。しかしながら、具体的にいかなる調査研究項目につき、いかなる方法で調査研究活動を行うか、また、何人で調査研究活動に当たるか等については、市政の範囲が非常に広範多岐にわたり、それに応じて調査研究の範囲も様々な分野に及ぶこと、規則2条や要綱2条において、一般的な支出基準や使途基準等が定められているほかは特段の制限規定が存在しないことなどに照らすと、原則として各会派の裁量に委ねられているというべきである。

なお、原告は報告書の不提出を問題としているが、報告書の作成・提出は要綱に定める手続に関する問題であり、その提出の有無は本件各支出の違法性の判断とは無関係である。

また、調査研究について、原告の主張するような緊急性や重要性が要求されるものではない。

補助参加人民主フォーラムによる本件各支出については、以下に述べるように、いずれも市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものであるから、適法なものである。

イ 平成13年度番号1の出張について

安孫子議員は、補助参加人民主フォーラムにおいて、国際スポーツイベントに関する調査研究の担当議員であったものであり、日本トライアスロン連合東北地区協議会研修会への参加も、将来仙台市において同種のスポーツイベントの誘致・開催のため有益な情報を収集するという調査研究目的を有するものであった。

スポーツ大会の誘致は多大なる「シティセールス」効果や経済効果等をもたらすものであり、上記出張が市政と関連性を有する調査研究であったことは明らかである。また、実際に大会が誘致可能かどうかは、研修会に参加して各関係者から生の話を聴取するなどの活動を通して初めて明らかになるのであって、出張の必要性が認められることも明らかである。

原告の主張するように、安孫子議員が宮城県トライアスロン協会の理事職にあったからといって、そのことのみから専ら本人にとって必要な研修会への参加であり、市政との関連性のない支出であると断ずるのはあまりに短絡的である。また、原告は、上記出張が「政務調査費を充当するのに適しない例」に当たると主張するが、原告が引用する書面は、全国都道府県議会議長会が「各県議会における運用に際しての一つの判断材料を提供する」趣旨で定めたものにすぎず、法的拘束力を有するものではない。

そして、上記研修会で仙台での国際大会の開催を議題として提案するか否かは、まさに上記出張のような調査活動を十分に行い実現可能性を見極めて十分な検討を行った末に判断するべきものである。

ウ 平成14年度番号1の出張について

上記出張は、補助参加人民主フォーラムの会派のほぼ全員が参加して、オーストラリアのシドニー市を訪問し、ケアハウスの実態、フィルムコミッションや博物館の運営等を視察するとともに、ブリスベン市を訪問し、リタイアメントハウスの実態、ゴールドコースト等を視察し、高齢者福祉政策、観光政策、社会教育施設、都市交通政策等について調査したものである。いずれも同補助参加人の基本政策に関連する事項についての調査であって、市政に関連性を有するものである。

上記出張は、高齢者福祉対策、観光政策、社会教育施設、都市交通政策等の研究テーマを掲げ、そのテーマに沿った各種施設等の視察がなされたもので、市政に関連性を有する調査であることは明らかであり、「観光旅行と評価せざるを得ない。」というのは原告の独断にすぎない。

さらに、会派全員による出張についても、会派全員で共通テーマに関して共通認識を有するための有益な活動であり、そのことをもって違法と断ずることはできない。

なお、上記出張に関する調査研究報告書は存在するが、それを本件訴訟に提出するか否かは補助参加人民主フォーラムの立証方針の問題であって、これを提出しないからといって違法との評価を受けるいわれはない。

エ 平成14年度番号2の出張について

上記出張は、仙台市に各種の大会を誘致することは経済効果の面でも補助参加人民主フォーラムの基本政策である「シティセールス」の面でも大きな効果をもたらすものであるところ、安孫子議員は、日本青年会議所全国大会の仙台市での開催を実現すべく、全国大会の運営状況等を調査したものである。

上記出張は、調査目的・内容が市政に関連性を有することは明白であるし、調査方法についても、関係者と直接面会し、生の話を聴くべく聴取りを行うというのは、議員の調査の基本であり、何ら違法とされるいわれはない。

また、原告の主張するように、安孫子議員が青年会議所会員であったことをもって直ちに市政と関連性のない支出と断ずるのは、あまりに短絡的である。

オ 平成14年度番号3の出張について

上記出張は、補助参加人民主フォーラムの会派全員が参加して東京都庁を訪問し、食の安全の取組やIT市役所の創出、副都心計画等について調査するとともに、あそび体験型公園、民活を利用した社会教育施設、古い街並みの再現などを視察し、仙台市に活かせないかどうかを調査したものである。

上記出張は、補助参加人民主フォーラムの基本政策と関連する事項の調査であって、副都心計画等の具体的な研究テーマに基づいて他の地方自治体の取組を視察するものであり、市政との関連性も十分に認められる。

さらに、会派全員で出張したことについても、研究テーマについて会派における共通認識を形成するため必要であった。

(補助参加人自由民主党・市民会議の主張)

ア 政務調査費の支出について、どのような時期にどのような調査を行うかは原則として各会派の裁量に委ねられており、明白に市政と関連性のない支出を行った場合には裁量権の逸脱の問題が生じるにすぎないと解すべきである。

補助参加人自由民主党・市民会議が会派として行った調査あるいは所属議員が行った調査は、以下に述べるように、いずれも市政と関連性を有するものであり、その費用も合理的であるから、補助参加人自由民主党・市民会議による本件各支出は市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものである。

イ 平成13年度番号1の出張について

上記出張は、大内議員が出張先の都市において、特別養護老人ホームの現状と対策、保育所待機ゼロ対策の現状について調査するという目的で行ったものである。

大内議員は、福岡市では、ポイ捨て条例に関し、街頭で市民の声を聞いた。また、大内議員は、福岡市及び北九州市では、都市計画道路の決定から着工、完成までの期間について調査した。

大内議員は、これらの調査結果をもとに、委員会等で質問を行うなどして、市政に反映させた。

ウ 平成13年度番号2の出張について

上記出張は、補助参加人自由民主党・市民会議の会派全員が神戸市及び北淡町(現淡路市。以下同じ。)の震災の被害状況と復興事業の進捗状況を視察し、また、徳島市及び高知市において女性センターを調査視察するという目的で行ったものである。

上記出張は、仙台市の今後の施策に必要かつ重要な事項であり、会派全員で見識を一致させて取り組む必要があった。

エ 平成13年度番号3の出張について

上記出張は、大内議員が秋田市において良質米産地における減反、転作政策に対する行政のあり方を、大曲市において花火による観光客誘致の取組とその実態をそれぞれ調査する目的で行ったものである。

いずれも仙台市の農業行政や観光行政の関係で必要な調査であった。

オ 平成13年度番号4の出張について

上記出張は、大内議員が会津若松市及び上山市において、除雪、融雪対策、道路整備事業の現状、保育所待機ゼロ対策について調査する目的で行ったものである。また、会津若松市においては若松城を抱える観光行政の、上山市においては特別養護老人ホームの整備状況、場外馬券売場の調査をそれぞれ行う目的で行ったものである。

市政の施策のためいずれも必要な調査であり、場外馬券売場の問題も、仙台市で誘致が話題となることがあることから、今後の対応に必要な調査であった。

カ 平成13年度番号5の出張について

上記出張は、大内議員が今後の市政に反映させるために出張先の各都市において高齢者対策、保育所待機ゼロ対策、教育現場における児童生徒、父兄との関わり方、都市再開発事業、地盤整備等の状況を調査するという目的で行ったものである。大内議員は、各都市で1日の割合で詳細に調査した。

いずれも市政のために必要な調査であった。

キ 平成14年度番号1の出張について

上記出張は、大内議員が出張先各都市での特別養護老人ホームの現状と対策、保育所待機ゼロ対策について調査するという目的で行ったものである。

熱海市では、海岸整備事業と熱海市域の整備事業の技術と費用について調査し、今後の市政への反映を考えた。

ク 平成14年度番号2の出張について

上記出張は、大内議員が出張先各都市における特別養護老人ホームの現状と対策、保育所待機ゼロ対策の現状を調査するという目的で行ったものである。

大内議員は、角館町及び米沢市においては、武家屋敷や城周辺の整備状況について、観光客の生の声を聴くため休日に調査を行った。今後、仙台市の城をメインとする観光客誘致に関して必要な調査であった。

ケ 平成14年度番号3の出張について

上記出張は、補助参加人自由民主党・市民会議の会派全員が札幌市議会議員と意見交換し、市担当者から観光行政とコンベンションホール整備事業、キタラホール、スポーツミュージアムなど先進的な施設について調査し、現地を視察するという目的で行ったものである。また、函館市において、市の担当者から駅舎整備と再開発、ウォーターフロント整備事業などについて聴取りを行い、現地を視察するという目的で行ったものである。

いずれも仙台市の施策展開に必要な事項であり、会派全員の見識の一致が必要不可欠と判断した。

コ 平成14年度番号4の出張について

上記出張は、大内議員が出張先各都市において、特別養護老人ホームの整備状況、保育所問題について調査するという目的で行ったものである。また、鶴岡市においては湯野浜海岸海水浴場の整備状況、寒河江市においては地場産品(サクランボ)と観光のあり方、二本松市においては公園整備、いわき市においては港の背後地整備事業と教育現場での禁煙対策をそれぞれ調査し、関連する施設等を視察するという目的で行ったものである。

大内議員は、調査結果を踏まえ、委員会で質問した。いずれも市政にとって重要な問題であり、大内議員は、背後地整備、学校禁煙は仙台にとっても大きな問題と判断した。

サ 平成14年度番号5の出張について

上記出張は、大内議員が今後の市政へ反映させるため、長岡市においては河川敷と駅前の整備事業、国民健康保険運営と介護制度、農業施策に関し調査を行い、また、新潟市においては保育所待機ゼロ対策、市営卸売市場の運営と課題、農業行政の取組等を視察、調査するという目的で行ったものである。

いずれの問題も仙台市において重要な問題であった。

(補助参加人公明党の主張)

補助参加人公明党による本件各支出は、以下に述べるとおり、いずれも市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものである。

ア 平成13年度番号1の出張について

上記出張は、登坂議員が白老町で開催された記念式典に参加するとともに、同町関係者らと姉妹都市としての交流のあり方について情報交換等を行い、姉妹都市との交流を通じて、仙台市と姉妹都市との友好関係を深め、それを様々な分野で仙台市の行政課題につなげていくという目的で行ったものである。

姉妹都市との交流を深めることにより、仙台市と姉妹都市との友好関係が深まり、それが様々な分野で仙台市の発展に寄与することになる。

そして、上記出張は、白老町から市議会議長あてに出席依頼があり、市議会議長はそれを受けて議会各会派に出席の要請をし、補助参加人公明党もその要請に意義を認め参加したものである。このような経過に照らすと、何ら問題とされるケースではなく、議員としての立派な政務である。

議員がこの種の式典に参加することは、両自治体の友好を深める意味を持つのであるから、議員としての大切な仕事の1つである。この種の式典への参加は、調査項目を決めて参加するという性格のものではなく、参加し交流すること自体に大きな意味がある。

さらに、各会派間で申し合わせた政務調査費の使用禁止項目に姉妹都市との交流を否定するような項目はなく、本件政務調査費を使用して白老町に行くことは何ら規制されることではない。

イ 平成13年度番号2の出張について

上記出張の目的は、補助参加人公明党の会派全員が、宇和島市については、えひめ丸事故のお見舞いと平成13年5月に行われた仙台青葉まつりに宇和島市から「牛鬼」や「八ツ鹿踊り」の一行が参加したことに対し感謝の意を伝えるとともに、伊達(仙台)と宇和島伊達の歴史的関係から今後の姉妹都市交流の参考とするために宇和島市長や同市議会議長ら相手方との懇談を行うというものであった。

次に、徳島市については、「まつりのあり方」をテーマとして、仙台市にとって重要な七夕まつりの参考とする目的があった。

仙台市の予算書には七夕まつり等の補助金が計上され、そのあり方についても議会で活発な議論がされているから、上記出張は市政と関係ないどころか、十分調査研究の対象となり得るものである。

宇和島市では、伊達家とつながりの深い博物館を視察し、この結果は所属議員が議会で取り上げている。

徳島市では、観光課の職員よりも市民の代表である議員と意見交換をする方が有益と判断して議員と懇談した。

上記いずれの出張も補助参加人公明党の設定した統一テーマの調査研究を行うに当たり、情報の共有を通じて会派内部の議論を深めることを企図して会派全員が参加したものであるから、会派全員による出張が合理的な必要性を超えて行われたとする事情はない。なお、出張に緊急性があるかどうかは出張の適法性と関係がない。

ウ 平成14年度番号1の出張について

上記出張は、補助参加人公明党は従来から仙台市民の足の確保とバス事業の経営健全化(赤字の削減)を目指して議会で発言してきたところ、こうした取組から中期的にみてバス事業の民営化は必至として、会派として既に民営化に踏み切っている札幌市を視察したものである。

この視察は緊急性があるということで調査したものではなく、中期的な視点から会派として調査したものである。

上記出張の内容は、札幌市交通局の幹部との札幌の市営バスの民営化に関する意見交換が中心であった。特に、民営化したときの職員の身分、路線の移譲方法及び市民の足の確保について調査した。時間は約1時間半であった。

会派全員の出張の必要性や緊急性についての反論は上記各出張と同様である。

エ 平成14年度番号2の出張について

上記出張は、補助参加人公明党の会派全員が観光地におけるバリアフリーを調査するという目的で行ったものである。

高齢化社会の到来で、観光地のあり方もこれまでと違った対応が求められているところ、仙台市においても、観光客を増加させるためあるいは高齢者や障害者のためにバリアフリー化を進めてはいるが、出張先の高山市ほどに歩く人に対する適切なバリアフリーを実施しているケースはなかった。上記出張は、仙台市の今後の観光行政、高齢者や障害者の観光客に対する観光行政を考える上で極めて重要度の高い視察であった。補助参加人公明党は、市議会でも上記調査をもとに、仙台市のバリアフリーの推進を主張している。

上記出張では、高山市の観光課長らから、バリアフリー及び観光都市としての取組について約1時間にわたり説明を受けた。補助参加人公明党からの主な質問は、バリアフリーを重要視した理由、具体的なバリアフリーの方法等であった。そして、説明を受けた後、現地を約2時間にわたって調査した。

補助参加人公明党は、上記出張によって、机上では理解不可能な現地の施策を、現地を調査して理解した。

会派全員の出張の必要性や緊急性についての反論は前記のとおりである。

(補助参加人社会民主党仙台市議団の主張)

ア 政務調査費の支出が違法であるとされるのは、調査の対象が市政と関連がない場合及び調査の内容が調査目的に必要な範囲を明らかに超えている等の場合であると解されるが、以下に述べるように、補助参加人社会民主党仙台市議団の出張に関しては、違法となる事情はなく、本件各支出はいずれも市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものである。

なお、原告は、事前の調査やスケジュールの策定、調査報告書の提出の有無を問題としているが、いずれも失当である。

イ 平成13年度番号1ないし3の出張について

上記出張の主な目的は、作並・秋保地区の温泉地域において、観光産業による地域経済発展に取り組むために、現地の観光施設、商業施設、宿泊施設、道路状況等の実情を調査し、観光客・宿泊客の増加等による観光産業の振興のための方策を研究することにあった。そして、特に番号1の出張については観光客の減少等による状況の把握、番号2の出張については秋保地区の道路状況整備状況と「里センター」等の観光施設の状況の把握及び産業廃棄物処理場問題に関する事情聴取、番号3の出張については秋保温泉地域の現状や問題点について認識を深めるという目的があった。

また、補助参加人社会民主党仙台市議団は、平成13年度の会派のテーマとして「観光による街づくり」に取り組んでおり、その政策実現を目指して議員相互で情報を共有し、認識を深めるため、上記3件の出張を実施したものである。

会派全員で宿泊することにより、平成13年度番号1の出張においては平成13年度の会派としての調査研究の集中点・議会活動の方針を討議しており、平成13年度番号2の出張においては平成14年度の会派要望・市政への政策提言を検討しまとめ上げており、平成13年度番号3の出張においては平成14年度定例会議案について検討し、質問・提言の集中点を検討し、各議員の分担を決めている。このように会派の所属議員が全員で長時間議論する必要があったため宿泊を伴ったものとした。

そして、作並・秋保の温泉地域における観光客は主として宿泊客であり、宿泊客の増加を抜きにして地域の振興は図れないところ、単に宿泊施設の現状だけでなく、宿泊した場合の夕食・朝食の内容、温泉(入浴施設)等の状況、接客の取組、朝市等のイベント等をつぶさに把握しなければ、宿泊客の増加の方策を検討し得ないことは当然である。また、調査研究には旅館業従事者からの要望や意見を聴くことも含まれているが、上記の調査が日帰りでなされた場合、旅館業従事者からは宿泊施設の実態を詳しく見聞してもらったと思われず、その信用も得られない。そこで、会派としての研究テーマである「観光による街づくり」に取り組んで、実態調査をするためには、対象地の宿泊施設の現状と課題を認識する必要があったのであり、宿泊を伴うことは当然である。

さらに、補助参加人社会民主党仙台市議団は、それぞれ現地調査を実施しており、出張の主要な目的が会議の開催であり、現地調査ではないとする原告の主張は事実に反している。現地調査の実施に合わせて会議が開催されたからといって、現地調査の実施を否定する理由にはならない。

なお、市政に関する調査研究に資するための会議の費用を政務調査費から支出することは、規則2条3号によって認められている。

また、大槻議員は、市議会において、上記各出張に関連する質問を行っている。

ウ 平成14年度番号1の出張について

上記出張の目的は、補助参加人社会民主党仙台市議団の平成13年度の主要テーマである「観光によるまちづくり」及び平成14年度の主要テーマである「水(河川)を生かしたまちづくり」に関連して、吉野川河口堰の現状と市民の対応状況及び徳島市のまつりを中心とした観光行政と観光誘客の状況を調査するととともに、自治研集会に参加するというものであった。

自治研集会とは、自治体が抱える諸問題について自治体関係者が成果や問題点を発表し、講演やパネルディスカッションを行うものであり、大槻議員は、市会議員の研修に役立ち、今後の政策提言や行政運営のチェック等に活かせると考えて参加した。

大槻議員は、自治研集会に参加し、さらに徳島市観光行政、観光誘客の取組状況や吉野川第十河口堰の現状を視察し、市民運動をしている住民から話を聴いた。仙台市としても自然環境の保全、自然災害対策が課題となっており、市民運動についての調査研究も重要であった。

仙台市と徳島市との交通時間を考えると、これらの調査研究項目のため3泊4日を要することは当然である。

なお、上記出張にかかった費用は、規則2条2号の「研修費」にも当たると解される。

(補助参加人グローバルネット仙台の主張)

ア 政務調査費については、政務調査目的が市政に関連していれば、原則としてその調査方法については広く議員の裁量に委ねられており、その費用の支出に明白な裁量の逸脱がなければ、違法・不当な支出とはいえないと解すべきである。そうでなければ、議員の政務調査活動が萎縮してしまい、結果として議員の政治活動を阻害するからである。

また、政務調査の結果についても会派に報告すれば足り、調査結果が会派としてその後の活動に役立てられたことまでも要求されるべきではない。調査の結果が議員個人ないし会派の政策として具現化するとは限らないし、そのような縛りがあると政務調査活動が萎縮するからである。

市政の調査研究活動は、当該会派又は議員自らの判断により必要に応じて臨機応変に実施される性質を有するので、会派の方針、用務の目的、用務先の事情等によっては、調査研究活動が土曜日、日曜日等の休日に及ぶこともあり得るのであり、出張期間に休日等が含まれているからといって、直ちに違法となるものではない。

なお、調査研究項目の記載の具体性は、表現方法の問題にすぎない。

補助参加人グローバルネット仙台による本件各支出は、以下に述べるように、いずれも市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものである。

イ 平成13年度番号1の出張について

上記出張は、加藤議員が環境問題に関する調査として、仙台市役所の建替えないし他所への移転に関し、仙台市役所周囲の立地状況をどのようにするのか等を研究テーマに、東京都庁の周囲の状況を視察に行ったものである。

また、仙台市の河川流域の開発、保護のあり方等を研究テーマとして、あきる野市や秋川を訪問し、多摩川上流の環境保護と開発問題及び清流保全について、現地関連施設等を視察したものである。

そして、商店街活性化の調査として、仙台市内の商店街の活性化のための施策を研究テーマに、東京都港区の麻布十番商店街を視察したものである。

いずれも、市政と関連性がある調査研究活動である。

ウ 平成13年度番号2の出張について

上記出張は、加藤議員が都市計画に関する調査として、区画整理事業を行っている仙台市青葉区愛子のまちづくりを研究テーマに、筑波学園都市の街並み、歩行者専用道路であるペデストリアンデッキ等の視察を行ったものであり、市政と関連性のある調査研究活動であった。

エ 平成13年度番号3の出張について

上記出張は、加藤議員が都市計画に関する調査として、仙台市の東西線のあり方等を研究テーマに、広島市の路面電車の状況を視察してきたものであり、また、文化財に関する調査としては、都市計画のテーマとも関連するが、古い建物との共存等を研究テーマに、倉敷の古い建物の保存状況と条例で保護された街並みを視察したものである。

いずれも、市政と関連性がある調査研究活動であった。

オ 平成14年度番号1の出張について

上記出張は、補助参加人グローバルネット仙台の会派全員が、仙台市と歴史的姉妹都市にある白老町をベースに、姉妹都市の交流のあり方について調査研究するというものであって、実際に、白老町長、職員、議員及び民間人との懇談と視察を通じて、地域経済・まちづくりの実態と今後の展望等を調査した。上記出張が、市政と関連性があることは明らかである。

補助参加人グローバルネット仙台は、「姉妹都市交流について」を会派の政務調査事項に掲げ、当該調査の活用の一例として、仙台市の開府四百年記念事業「伊達サミット」を提案・実現している。

原告の主張するように、調査の緊急性や重要性がなければ視察等の調査研究活動ができないとすると、調査研究活動の領域が狭められ、将来の市政を見据えた調査研究活動を行い得ないおそれがあり、不当である。

また、上記出張は、会派全員で行ったところ、会派全員で調査を行うことにより、会派全員が認識を共有するとともに、調査結果を踏まえ、様々な視点から議論をすることは、会派における政策決定において極めて重要であった。

第3当裁判所の判断

1  争点(1)(政務調査費の支出対象となる調査研究は会派の行うものに限られるか)について

原告は、政務調査費の支出対象となる調査研究は会派の行うものに限られると主張し、その根拠として、条例2条、5条、要綱4条、6条を挙げる。

しかしながら、法100条13項は、政務調査費につき、「議員の」調査研究に資するために必要な経費の一部として交付するものと定めている。また、条例1条は、「市議会議員の」市政に関する調査研究に資するため必要な経費の一部として政務調査費を交付するものと定めている。一方、原告が指摘する条例2条、5条、要綱4条、6条は、いずれも政務調査費の支出対象となる調査研究が会派の行うものに限られることを定めたものではない。

そうだとすると、法及び条例は、政務調査費の支出対象となる調査研究の主体としては議員を想定しているものというべきである。条例が政務調査費の交付先を議員ではなく会派と定めた(2条)のは、政務調査費の交付申請(6条)からその支出(5条)や収支状況報告(9条)に至るまで、政務調査費の管理を会派に行わせることによって、会派の持つ集団としての自律性や自浄作用に期待し、もって政務調査費が適正に使用されることを確保しようとしたものと解すべきであって、政務調査費の支出対象となる調査研究を会派の行うものに限る趣旨と解することはできない。要綱が、会派の代表者及び経理責任者の担任事務等を定め(4条)、会派の所属議員が行う調査研究に関して支出手続等を定めている(6条)のも、調査研究を議員が行うことを前提に、政務調査費の支出が適正に行われるよう会派が遵守すべき細則を定めたものと解される。

以上のとおり、法及び条例は政務調査費の支出対象となる調査研究の主体としては議員を想定しているというべきであるから、調査研究は会派の行うものに限られるとの原告の主張は採用することができない。したがって、この点を根拠に各補助参加人による本件各支出が違法であるとする原告の主張は、理由がない。

2  争点(2)(各補助参加人による本件各支出は市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものでないか)について

(1)  前記のとおり、法100条13項は、政務調査費を議会の議員の「調査研究に資するため必要な」経費の一部として交付することができるものと定めている。これを受けた条例も、1条で「市議会議員の市政に関する調査研究に資するため必要な」経費の一部として政務調査費を交付するものと定め、5条で「会派は、規則で定める使途基準に従って政務調査費を支出するものとし、必要経費(4条3項により、「市政に関する調査研究に資するため必要な経費」をいうものとされている。)以外に充ててはならない。」と定めている。条例5条を受けて、規則2条は使途基準の明細を定めているが、そこでは政務調査費が調査研究に要する経費に支出されるべきことが定められている。また、条例の委任を受けた要綱2条も、市政に関する調査研究の目的に合致しない経費に政務調査費を支出することを禁止している。

そうだとすると、これらの規定上、政務調査費は、市政に関する調査研究に資するために必要な経費に支出されることが求められるというべきであって、まず、支出の対象となった活動に調査研究の実質があると認められない場合には、当該支出は市政に関する調査研究に資するために必要な経費に充てられたといえず、上記各規定に反するものとして当然に違法となると解すべきである。さらに、上記各規定が政務調査費の支出対象となる調査研究につき「市政に関する」ものであることを要求していることや、政務調査費が調査研究に「資するために必要な」経費に支出されることを要求していることに照らすと、支出の対象となった活動が市政と関連性を有することや、必要かつ合理的なものであることなどをも求められているというべきであり、したがって、支出の対象となった活動に調査研究の実質があると認められる場合であっても、当該活動が市政との関連性を欠くことが明らかであったり、必要性・合理性を欠くことが明らかである場合には、結局、当該支出は市政に関する調査研究に資するために必要な経費に充てられたといえず、違法になると解すべきである。

そして、政務調査費の支出の対象となった活動に調査研究の実質があるか否かは、議員ないし会派の主張する調査目的、調査に向けた準備の有無及びその内容、当該調査研究活動の具体的内容及び上記目的との関連、調査研究、結果の保存状況等を総合的に考慮して客観的に判断すべきである。

また、政務調査費の支出の対象となった活動に調査研究の実質があると認められる場合に、当該活動と市政との関連性や必要性・合理性の具備については、これらを欠くことが明らかである場合に違法となると解すべきであることの理由は、次のとおりである。

政務調査費の制度は、地方分権の進展により地方議会の担う役割が大きくなってきたことに鑑み、地方議会を活性化してその審議能力の強化を図るとともに、地方議員の調査活動基盤の充実を図る観点から、会派等に対する調査研究の費用等の助成を制度化したものである。そして、会派は議会において独立性を有する団体として自主的に活動すべき性質及び役割を有するものであって、その政治活動の自由を確保するため、自主性及び自律性を尊重することが、普通地方公共団体における住民自治を支える上で不可欠である。

加えて、法は、政務調査費の支出については、交付を受けた会派等に議長への収支状況報告書の提出を義務づける(100条14項)ほかは、支出の対象となる調査研究活動やその支出額等について何ら限定を加えていない。条例は、政務調査費を使途基準に従って支出するものとし、必要経費以外に充ててはならないと定め(5条)、これを受けた規則は政務調査費の使途基準を定めているが(2条)、そこでも対象となる調査研究活動やその支出額等について何ら限定を加えていない。要綱は、政務調査費の対象外となる経費を列挙しているが(2条)、そこで掲げられている行為はいずれも調査研究の実質を有しない行為の典型例であって、調査研究活動の対象や支出額については何ら限定を加えていない。

そうだとすると、支出の対象となった活動に調査研究の実質があると認められる限りは、政務調査費をどのように使用するかについては会派の自主性及び自律性を尊重し、当該会派の裁量に委ねられるというのが法及び条例の趣旨であると解するのが相当である。

(2)  そして、上記の検討の結果、本件各支出が市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものでないとして違法とされる場合には、これを支出した会派は、法律上の原因なく仙台市の財産から利得を受け、仙台市に損失を及ぼしたという関係にあることになるから、当該会派は、仙台市に対し、当該支出した金員に相当する金員を不当利得金として返還する義務があるというべきである。

(3)  ところで、不当利得返還請求訴訟においては、法律上の原因の不存在が不当利得返還請求権の発生要件とされているのであるから、一般的には、その返還を求める者において、受益者が「法律上の原因なく」当該利益を得たとの事実を主張立証すべきである。

もっとも、不当利得の返還を求める者が「法律上の原因なく」の事実の主張立証責任を負うといっても、およそ考えられる一切の法律上の原因の不存在を主張立証しなければならないものではなく、具体的事実及び証拠との距離を考慮しつつ、当該事案において通常考えられる程度に利得の保持を正当化する原因が存在しないことを主張立証した場合には、相手方においてこれを正当化する具体的事情につき反証する必要を生ずるというべきである。

これを本件についてみると、まず、原告は被告に対し、被告が会派である各補助参加人へ不当利得の返還を請求するよう求めている以上、本件各支出が市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものとはいえないという事実は、原告において主張立証すべきものである。しかし、その使途についての証拠は、各補助参加人が保存すべきものとされていることに照らすと、原告としては、本件各支出につきその具体的使途を特定して主張立証しそれが市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられなかったことを明らかにするまでの必要はなく、本件各支出が市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものとはいえないことを推認させる一般的、外形的な事実を主張立証した場合には、被告及び各補助参加人において、その推認を妨げるべく、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものと認めるに足りる具体的な使途を明らかにする必要があるというべきである。

このような見地に立って、以下に本件各支出について検討することとする。

(4)  補助参加人みらい仙台について

ア 平成13年度番号1の出張について

(ア) 〔証処省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 佐藤正昭議員は、平成13年4月28日から同月30日までの間、愛知県名古屋市及び岐阜県多治見市に出張した。

b 佐藤正昭議員は、平成13年4月28日、名古屋市にあるナゴヤドームを訪問し、ナゴヤドームを見学する一般向けの所要時間1時間程度のツアーに参加した。その後、錦や栄地区などの名古屋市中心市街地を散策した。また、JR名古屋駅に隣接するマリオットホテルを訪問した。

同月29日、佐藤正昭議員は、多治見市の本町オリベストリート、岐阜県陶磁資料館、多治見焼窯元等を訪問した。

同月30日、佐藤正昭議員は、仙台へ戻った。

c 佐藤正昭議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程等の概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人みらい仙台は、上記出張は、経済産業及び観光施設の調査を行う目的があったと主張し、佐藤正昭議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、仙台市と同様に地方中心都市である名古屋市街の経済産業状況と、その近県である岐阜県多治見市の観光施設を視察するとともに、同議員が宮城球場のドーム施設化に関する調査研究をテーマの一つとしていたことから、ナゴヤドームを視察する目的があったと述べ、また、これに沿う証言をしている。

しかしながら、佐藤正昭議員の出張先での行動の内容は、ナゴヤドームを訪問し、一般客に混じってドームを見学するツアーに参加し、名古屋市中心市街地を散策し、多治見市の本町オリベストリート、岐阜県陶磁資料館、多治見焼窯元等を訪問したというものにすぎず、その態様は客観的に見て直ちに調査研究の実質があるとはいいがたい。

加えて、佐藤正昭議員がした上記の活動について出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

この点、佐藤正昭議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、「ナゴヤドームでは地元見学者及びタクシー乗務員等から聴取りをした。名古屋市中心市街地では商店経営者や買物客等から聴取りをした。マリオットホテルでは職員、宿泊者及び最上階レストラン利用者等から聴取りをした。」旨述べ、また同旨の証言をしている。しかしながら、同議員が上記出張中に、どのような事項について聴取りをし、聴取対象者からどのような情報を得たのかはほとんど明らかでなく、聴取りの結果が保存されたこともうかがわれないので、これらの証拠のみでは調査研究に当たると認めることは困難である。

また、佐藤正昭議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、佐藤正昭議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

イ 平成13年度番号2の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 佐藤正昭議員は、平成13年5月4日から5日までの間、宮城県小野田町に出張した。

b 佐藤正昭議員は、平成13年5月4日、自家用車を利用して、妻同伴で、小野田町へ入り、地場産品の産直市場を訪問した。同日は、薬莱高原温泉薬師の湯に宿泊した。

同月5日、佐藤正昭議員は、同地において、朝市を訪問した。

c 佐藤正昭議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程等の概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人みらい仙台は、上記出張は、大型集客施設における休日の購買行動等の調査及び地元産生鮮野菜等の直売所の調査を行う目的があったと主張し、佐藤正昭議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において同旨を述べ、また、これに沿う証言をしている。

しかしながら、佐藤正昭議員の出張先の行動の内容は、観光施設である地場産品の産直市場を見学し、温泉付きの宿泊施設に宿泊し、朝市を訪問したというものにすぎず、その態様は客観的に見て直ちに調査研究の実質があるものとはいいがたい。

加えて、佐藤正昭議員がした上記の活動について出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

この点、佐藤正昭議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、「地場産品の産直市場の責任者等から聴取りを行った。」旨述べ、また、同旨の証言をしている。しかしながら、同議員が上記出張中に、どのような事項について聴取りをし、聴取対象者からどのような情報を得たのかは全く明らかでないので、これらの証拠のみでは調査研究に当たると認めることは困難である。

また、佐藤正昭議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

かえって、佐藤正昭議員は、ゴールデンウイーク中に、自家用車を利用し妻同伴で観光地に宿泊していることなど、上記出張が市政に関する調査研究目的によるものであったのか疑わせる事情が認められる。

(ウ) 以上によれば、佐藤正昭議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

ウ 平成13年度番号3の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 補助参加人みらい仙台は、会派全員で、平成13年8月17日から同月20日までの間、岐阜県飛騨市、高山市及び白川郷へ出張した。

b 補助参加人みらい仙台は、会派として上記出張の結果について独立の報告書は作成しなかった。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人みらい仙台は、上記出張は、会派の基本政策である「シティセールス」に関連し、自然環境や歴史的遺産の保存と新たな観光資源開発との調和の中で市民生活が成り立つあり方を調査研究する目的があったのであり、会派の基本政策に関連することから、会派全員で政策に対する認識を共有するために、会派全員での出張としたと主張し、佐藤正昭議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べている。また、同議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、世界遺産への登録や観光PRのあり方、観光客の受入れ態勢、有名な高山の朝市等における地産地消の推進状況を調査する目的もあったと述べている。

しかしながら、補助参加人みらい仙台の議員らによる3泊4日の日程による上記出張の具体的な行程はほとんど不明である。

加えて、同補助参加人が出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

この点、佐藤正昭議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、「インターネット等で入手できる資料に基づいて事前研修を会派内で行った。現地では社団法人飛騨高山観光協会からのレクチャーを受けたほか、各施設職員、地元事業者からの聴取りを行った。」旨述べている。しかしながら、この事前研修の内容は具体的に明らかでないし、現地で行われたとされるレクチャーや聴取りについても、どのような内容のレクチャーが行われ、あるいは聴取りにより聴取対象者からどのような情報が得られたのかは明らかでないので、かかるレクチャーを受けたことや聴取り等をもって調査研究に当たると認めることは困難である。

また、補助参加人みらい仙台の議員らがほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、補助参加人みらい仙台の会派全員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

エ 平成13年度番号4の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 佐藤正昭議員は、平成13年9月29日から同月30日までの間、東京都及び千葉県へ出張した。

b 佐藤正昭議員は、平成13年9月29日、東京都に入り、お台場、汐留の大規模集客施設を訪問した。

同月30日、佐藤正昭議員は、幕張メッセを訪問した。

c 佐藤正昭議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程等の概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人みらい仙台は、上記出張は、新しいまちづくりを通じた経済の活性化に関して、人出の多い休日におけるお台場地区、汐留地区及び幕張メッセ等の観光客等の動向を調査する目的があったと主張し、佐藤正昭議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べている。

しかしながら、佐藤正昭議員が上記出張中に訪問した施設は、幕張メッセしか特定できないばかりか、出張先の行動の内容は、同議員の証言によったとしても、大規模集客施設を訪問したというものにすぎず、その態様は客観的に見て直ちに調査研究の実質があるとはいいがたい。

加えて、佐藤正昭議員がした上記の活動について出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

この点、佐藤正昭議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、上記施設では従業員、アルバイト及び観光客等から聴取りをしたと述べ、また、幕張メッセでは聴取りは数時間に及んだと証言している。しかしながら、同議員が上記出張中に、どのような事項について聴取りをし、聴取対象者からどのような情報を得たのかは全く明らかでないので、これらの証拠のみでは調査研究に当たると認めることは困難である。

また、佐藤正昭議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、佐藤正昭議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

オ 平成13年度番号5の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 佐藤正昭議員は、平成13年10月20日から同月22日までの間、北海道苫小牧市及び札幌市へ出張した。

b 佐藤正昭議員は、平成13年10月20日、苫小牧市に入り、同月21日の午前中まで、全国若手市議会議員の会の北海道ブロック総会及び勉強会に参加した。この会合では、市政についての情報交換や討論が行われるとともに、苫小牧市役所の職員から苫小牧の町の再開発等の説明がなされた。

その後、佐藤正昭議員は、同日午後から同月22日まで、札幌市に滞在した。

c 佐藤正昭議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程等の概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人みらい仙台は、上記出張は、全国若手市議会議員の会の顧問ないし元会長として、苫小牧市で開催された同会に参加するとともに、港湾工業都市である苫小牧市の駅や港周辺の開発等の経済状況について調査視察、意見交換を行う目的があったと主張し、佐藤正昭議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べ、また、これに沿う証言をしている。また、同議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、上記出張の目的については、地方都市の行政運営実態を調査する目的があったとも述べている。

佐藤正昭議員が、上記認定のとおり全国若手市議会議員の会の北海道ブロック総会及び勉強会に参加したことは、直接他の市町村に関する多くの情報に接することができる点で客観的に見て有用な調査活動ということができる。また、同議員は、小樽市の観光客の誘致の施策や旭川市所在の旭山動物園に関する情報を得たと証言しており、同議員の苫小牧市における行動は、客観的に見て調査研究の実質があったものと評価できる。

なお、佐藤正昭議員は、上記出張に関し詳細な報告書を作成することはしていないが、この点は、調査研究の実質があるとの上記認定を妨げるものではない。

次に、市政との関連性、必要性・合理性について検討するに、上記調査研究活動は、他の市町村の政策に関する情報の収集や意見交換を含んでおり、市政と一定の関連性を有するものといえるし、その費用や出張期間等についても、その必要性・合理性が明らかに欠けるということもできない。

なお、佐藤正昭議員は、苫小牧市から札幌市に移動して、同地で宿泊しているところ、同議員が札幌市において調査研究活動を行ったと認めるに足りる証拠はない。しかしながら、上記出張を全体としてみると、その主要な目的は、苫小牧市での上記会合等へ出席し市政に関する調査研究を行うことにあったものと評価すべきである。

(ウ) 以上によれば、佐藤正昭議員の上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものと認められる。

カ 平成13年度番号6の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 佐藤正昭議員は、平成13年12月31日から平成14年1月3日までの間、台湾の台北市へ出張した。

b 佐藤正昭議員は、平成13年12月31日、妻同伴で、仙台空港発のチャーター便を利用して、台北市へ入った。

c 佐藤正昭議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程等の概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人みらい仙台は、上記出張は、仙台・台湾間の定期航路開設や仙台空港の国際化の必要性という観点から実踏調査を行うこと及び台北市における日本人向けの観光セールスのあり方を知ることにより、同補助参加人の会派としての基本政策の一つである仙台市の「シティセールス」のあり方の参考とするという目的があったと主張し、佐藤正昭議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において同旨を述べ、また、これに沿う証言をしている。

しかしながら、単に台北市行きの航空機に搭乗し、台北市に滞在すること自体が客観的に見て調査研究の実質を有するとはいえないし、佐藤正昭議員が上記出張中どのような調査研究活動を行ったのかはほとんど明らかではない。

加えて、佐藤正昭議員がした上記の活動について出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したことを認めるべき証拠はない。

この点、佐藤正昭議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、「仙台空港において、チャーター便の利用者から、チャーター便のあり方、仙台空港発着の海外便への要望等について聴取りをした。台北市において、旅行代理店、現地通訳等から、経済観光施策に関する聴取りをした。訪問先では持参した仙台市のパンフレットを配布してシティセールスに努めた。」旨述べ、また、これに沿う証言をしている。しかしながら、同議員が上記出張中に、具体的にどのような事項について聴取りをし、聴取対象者からどのような情報を得たのかは明らかでないので、これらの証拠のみでは調査研究に当たると認めることは困難である。また、持参した仙台市のパンフレットを配布する行為が客観的に見て調査研究の実質を有するものでないことは明らかである。

そして、佐藤正昭議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

かえって、佐藤正昭議員が年末年始にかけて、妻同伴で台北市に出張していることなど、上記出張が市政に関する調査研究目的によるものであったのかを疑わせる事情が認められる。

(ウ) 以上によれば、佐藤正昭議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

キ 平成13年度番号7の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 補助参加人みらい仙台は、会派全員で、平成14年1月28日から同年2月2日までの間、マレーシア及びシンガポールへ出張した。

b 補助参加入みらい仙台は、会派全員で、まず、マレーシアのクアラルンプール市役所を訪問し、副市長や幹部らと面談した。ここでは「シティセールス」の状況、IT対策及び都市再開発などをテーマとする聴取りをした。その後、マレーシアLNG会社を訪問し、事業実態や仙台市との契約履行状況等に関し聴取りをした。また、マレーシア航空、電脳都市サイバージャヤ、マラッカ市都市観光コンベンション施設等を訪問し、航空便の乗り入れや留学生の交流などについて意見交換等をした。

そして、マレー鉄道で移動したシンガポールでは観光局・観光協会で当地の観光政策についてレクチャーを受けるとともに、会派の基本政策である「シティセールス」に関する意見交換をした。また、貿易港、MRT鉄道、現地日本人学校を訪問した。

c 補助参加人みらい仙台は、会派内で上記出張に関し事前研修として、仙台市ガス局からガス事業や需給の現状についてのレクチャーを受けた。

d 補助参加人みらい仙台は、会派として上記出張の結果について独立の報告書は作成しなかった。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

佐藤正昭議員は、上記出張の目的は、補助参加人みらい仙台の基本政策である「シティセールス」に関する調査研究を行うとともに、仙台市のガス事業における原材料確保の問題、姉妹都市の希望に対する対応、仙台市・クアラルンプール間の直行便の就航可能性の検討及び都市再開発問題等について調査するというものであり、会派内で協議した結果、これらのことが同時に調査視察できる視察先として上記出張先を選定したと述べている(〔証拠省略〕)。上記認定事実によれば、上記出張はこのような目的で行われたものと認めることができる。

また、上記出張に先立ち、補助参加人みらい仙台は、仙台市ガス局からガス事業や需給の現状についてのレクチャーを受けており、調査研究の準備を行っていたものと認められる。

さらに、上記出張の行程を見ると、補助参加人みらい仙台が訪問した対象は、市役所や航空会社、観光局など、仙台市の産業振興や観光宣伝に密接に関連する施設等であるから、市政に関する調査研究の対象とするに適当なものであると認められる。そして、同補助参加人は、上記訪問先において「シティセールス」の状況や航空便の乗り入れ、留学生の交流、観光政策に関する聴取りや意見交換を行ったものである。

これらの事情を総合すると、補助参加人みらい仙台の上記出張は、客観的に見て調査研究の実質があったものと評価できる。

なお、補助参加人みらい仙台は、上記出張に関し詳細な報告書を作成することはしていないが、この点は、調査研究の実質があるとの上記認定を妨げるものではない。

次に、市政との関連性、必要性・合理性について検討するに、補助参加人みらい仙台は、会派として継続的に取り組んできた「シティセールス」に関する調査研究の一環として上記出張を実施したものであると主張しているところ、上記出張は仙台市の産業振興や観光宣伝の有効化・活性化等に関連性を有しないとはいえないし、会派全員で海外に出張し高額な費用を要したことを考慮しても、認識を共有するという意義を有することなどに照らし、その必要性・合理性が明らかに欠けるとまではいえない。

(ウ) 以上によれば、補助参加人みらい仙台の会派全員による上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものと認められる。

ク 平成13年度番号8の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 佐藤正昭議員は、平成14年2月8日から同月11日までの間、福岡県及び東京都へ出張した。

b 佐藤正昭議員は、平成14年2月8日、仙台から飛行機で福岡県福岡市へ入った。その後、同議員は、北九州市に入り、北九州エコタウンを訪問した。

そして、佐藤正昭議員は、北九州市から新幹線で東京都に入り、地下鉄大江戸線に乗車し、数か所の駅で乗降した。

c 佐藤正昭議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程等の概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人みらい仙台は、上記出張の目的は、福岡県については、佐藤正昭議員が市議会の経済環境委員会委員として仙台市におけるごみの分別収集の問題を検討していたことから、先例として参考になりそうな九州の政令指定都市における細かいごみ分別の実態を調査研究するというものであり、東京都については、仙台市における基幹交通網整備のあり方の参考例として環状線である地下鉄大江戸線を視察するというものであったと主張し、佐藤正昭議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べている。

確かに、佐藤正昭議員が北九州市において訪問した北九州エコタウン自体は、仙台市の環境問題について調査研究するに適当な対象であるということができる。

しかしながら、佐藤正昭議員が福岡市においてどのような施設や場所を訪問したのかは具体的に明らかではなく、同議員が北九州エコタウンにおいてどのような調査研究を行ったのかも明らかではない。さらに、東京都において同議員は、地下鉄大江戸線に乗車し、数か所の駅で乗降したというにすぎない。

加えて、佐藤正昭議員が出張に先立って調査研究項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したことを認めるべき証拠はない。

この点、佐藤正昭議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、「福岡市では、議会関係者からの聴取りをした。北九州エコタウンでは、会社関係者やNPO関係者から聴取りをした。東京都では、地下鉄大江戸線利用者及び駅職員から聴取りをした。」旨述べている。しかしながら、同議員が上記出張中に、どのような事項について聴取りをし、聴取対象者からどのような情報を得たのかはほとんど明らかでないので、これらの証拠のみでは調査研究に当たると認めることは困難である。

また、佐藤正昭議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、佐藤正昭議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

ケ 平成13年度番号9の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 佐藤正昭議員は、平成14年2月16日から同月19日までの間、タイのバンコク市へ出張した。

b 佐藤正昭議員は、現地の青果市場、農場及び都市部の飲食店等を訪問した。

c 佐藤正昭議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程等の概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人みらい仙台は、上記出張の目的は、タイのバンコク市における都市型農業の特徴を調査することにより、大規模都市型農業と都市環境整備との調整のあり方について研究するというものであり、佐藤正昭議員は空港から市街地までの交通アクセスのあり方に関して、都市の交通渋滞問題(経済損失解消策)の実態を通訳付きで調べたなどと主張し、同議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べている。

しかしながら、バンコク市に滞在して現地の青果市場、農場及び都市部の飲食店等を訪問したということのみでは、その態様において、客観的に見て調査研究の実質を有するものとは認められない。また、上記に認定した事実のほか、佐藤正昭議員が出張先で、いつ、どこで具体的にどのような活動を行ったかについては全く明らかでない。

加えて、佐藤正昭議員がした上記の活動について出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

この点、佐藤正昭議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、出張先では「残留農薬問題や日本産野菜の流通システム等について聴取りや意見交換を行った。」旨述べている。しかしながら、同議員が上記出張中に、どのような聴取りや意見交換をし、どのような情報を得たのかは全く明らかではないので、これらの証拠のみでは調査研究に当たると認めることは困難である。

また、佐藤正昭議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、佐藤正昭議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

コ 平成13年度番号10の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 佐藤正昭議員は、平成14年3月21日から同月23日までの間、高知県高知市及び愛媛県松山市へ出張した。

b 佐藤正昭議員は、松山市においては、同市内を走る「坊ちゃん列車」に乗車した。また、同議員は、周辺の商店街を訪問した。その後、同議員は、高知市を訪問した。

c 佐藤正昭議員は、上記出張に関し、事前に「坊ちゃん列車」の運賃やその歴史等に関する情報をインターネットで収集した。

d 佐藤正昭議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程等の概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人みらい仙台は、上記出張の目的は、松山市に関しては、仙台市東西交通軸についてLRT(軽量軌道交通)導入論があったことを受けて、路面電車の都市整備における功罪について視察調査するというものであった、高知市に関しては、観光地周辺の人の流れやまちづくりの様子を調査するというものであったと主張し、佐藤正昭議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において同旨を述べている。

しかしながら、佐藤正昭議員が出張先において行った具体的な行動は、「坊ちゃん列車」に乗車したというものであるところ、その態様は客観的に見て調査研究の実質を有するとはいいがたいし、佐藤正昭議員の上記出張中におけるその他の行動は全く明らかでない。

加えて、佐藤正昭議員は、上記出張に先立って「坊ちゃん列車」の運賃や歴史等の調査を行ったことがあるものの、調査研究項目等を準備したとか、上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したことはうかがわれない。

この点、佐藤正昭議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、「松山市では、『坊ちゃん列車』の乗務員や観光客から聴取りをした。高知市では、市街地で聴取り調査を行った。」旨述べている。しかしながら、同議員が上記出張中に、どのような事項について聴取りをし、聴取対象者からどのような情報を得たのかは全く明らかでないので、これらの証拠のみでは調査研究に当たると認めることは困難である。

また、佐藤正昭議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、佐藤正昭議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

サ 平成14年度番号1の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 佐藤正昭議員は、平成14年5月4日から同月6日までの間、岩手県安代町及び盛岡市へ出張した。

b 佐藤正昭議員は、平成14年5月4日、自家用車を利用して、夫人同伴で、岩手県安代町に入った。その後、同議員は、安比高原の大型リゾート施設ないしスキー施設などの観光施設を訪問した。

そして、佐藤正昭議員は、安代町から仙台市への帰路、盛岡市を訪問した。

c 佐藤正昭議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程等の概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人みらい仙台は、上記出張の目的は、岩手県安代町において、特産品であるりんどうを観光施策に活かしている実態等を調査すること及び青少年健全育成の観点から大規模施設への若者の就職状況等を調査するというものであったと主張し、佐藤正昭議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べている。

しかしながら、佐藤正昭議員の安代町での具体的な行動は、観光施設を訪問したというものにすぎず、その態様は客観的に見て直ちに調査研究の実質があるとはいいがたい。また、同議員は盛岡市に立ち寄って視察をしたと述べているが、その内容は全く明らかでない。

加えて、佐藤正昭議員が出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

この点、佐藤正昭議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、「安代町では、りんどう栽培農家から、りんどうという特産物を観光施策や経済活動に活かしている実態や集荷状況、市場流通過程の聴取り調査を行った。安比高原の観光施設では、関係者から大規模施設への若者の就職状況等について聴き取るとともに意見交換を行った。」旨述べており、また、これに沿う証言をしている。しかしながら、同議員が上記出張中に、具体的にどのような事項について聴取りをし、聴取対象者からどのような情報を得たのかは明らかでないので、これらの証拠のみでは調査研究に当たると認めることは困難である。

また、佐藤正昭議員がほかに上記出張に調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

かえって、佐藤正昭議員がゴールデンウイーク中に観光施設を訪問していること、妻同伴での出張であること、同議員の証言によっても調査に費やした時間はたかだか数時間であり、調査の内容自体が2泊3日を要するものではないことなど、上記出張が市政に関する調査研究目的によるものであったのかを疑わせる事情が認められる。

(ウ) 以上によれば、佐藤正昭議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

シ 平成14年度番号2の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 補助参加人みらい仙台は、会派全員で、平成14年6月10日から同月13日までの間、沖縄県へ出張した。

b 補助参加人みらい仙台は、会派全員で、平成14年6月10日、石垣市へ入り、石垣市役所を訪問した。同月12日、石垣市から那覇市へ移動し、那覇市役所及び那覇市議会を訪問した。同月13日、万国津梁館や平和記念公園等を訪問した。

c 補助参加人みらい仙台は、会派として、上記出張に関し特段事前の準備をすることはなかった。

d 補助参加人みらい仙台は、会派として上記出張の結果について独立の報告書は作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人みらい仙台は、上記出張の目的は、会派の基本政策である「シティセールス」に関連するもので、自然環境の魅力で観光客に人気の高い沖縄において、環境保全と観光・経済発展との調整の必要性、観光行政と「シティセールス」における行政組織及びマンパワーの活用について調査研究するというものであったと主張し、佐藤正昭議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において同旨を述べている。そして、同議員は、両市役所において聴取りとレクチャーを中心とする調査研究を行ったと述べている。

確かに、補助参加人みらい仙台が訪問した市役所や市議会は市政に関連する施設であることは明らかであるから、市政について調査研究するに適当な対象であるということができる。また、その他の訪問先についても、万国津梁館については仙台市の観光行政に関連するものとして調査研究の対象とするに不適当とはいえない。

しかしながら、上記出張は3泊4日で沖縄県へ出張したというものであるところ、2回目の平成14年6月12日の補助参加人みらい仙台の議員らの石垣島における活動は全く明らかでないことをはじめとして、上記出張の具体的な行程はほとんど明らかではない。また、同補助参加人が出張先の各施設において、上記調査目的との関係で具体的にどのような内容のレクチャーを受け、どのような事項について聴取りをし、聴取対象者からどのような情報を得たのかは明らかではない。また、補助参加人みらい仙台の議員らは、平和祈念公園を訪問しているが、かかる行為自体は、その態様において客観的に見て調査研究の実質を有するものでない。

加えて、補助参加人みらい仙台は、上記出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

そして、補助参加人みらい仙台の議員らが、ほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、補助参加人みらい仙台の会派全員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、同補助参加人の上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

ス 平成14年度番号3の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 佐藤正昭議員は、平成14年11月1日から同月4日までの間、東京都、埼玉県草加市、茨城県水戸市及び神奈川県川崎市へ出張した。

b 佐藤正昭議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程等の概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人みらい仙台は、上記出張は、都市の規模と全国的認知度との相関という視点から仙台の特徴を生かした「シティセールス」のあり方に参考となる事例を研修・視察するとともに、政令指定都市における環境対策への取組事例に当たるという目的で全国若手市議会議員の会のメンバーの所在地を選定したと主張し、佐藤正昭議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において同旨を述べている。

しかしながら、佐藤正昭議員が出張中にどのような活動を行ったのかは全く明らかではない。

加えて、佐藤正昭議員が上記出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

この点、佐藤正昭議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、「全国若手市議会議員の会のメンバー及び一般市民との間で、にぎわいのあるまちづくり、環境に配慮したまちづくり、緑化推進事業のあり方をテーマに意見や情報の交換を行った。」旨述べている。しかしながら、同議員が上記出張中に、どのような聴取りや意見交換をし、どのような情報を得たのかは全く明らかでないので、かかる聴取り等をもって調査研究に当たると認めることは困難である。

また、佐藤正昭議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、佐藤正昭議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

(5)  補助参加人民主フォーラムについて

ア 平成13年度番号1の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 安孫子議員は、平成13年12月8日、岩手県北上市へ出張した。

b 安孫子議員は、平成13年12月8日午後1時ころ、北上市に入り、同地で開催された日本トライアスロン連合東北地区協議会研修会へ参加した。

日本トライアスロン連合は、東北6県の中に各県の協会があり、その県の協会を構成する理事者が中心となって年1回集まっており、上記東北地区協議会はその会合であった。

そして、安孫子議員は、同日午後5時すぎまで同協議会に出席した後、宿泊せずに仙台へ戻った。

c 安孫子議員は、上記出張当時、宮城県トライアスロン協会の理事の地位にあった。

d 上記出張に係る旅費については、調査研究費及び研修費として政務調査費から支出された。

e 安孫子議員は、上記出張の結果について会派総会の際に口頭で報告したほかは、上記出張について独立の報告書は作成しなかった。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人民主フォーラムは、安孫子議員は上記出張当時、同補助参加人の国際的スポーツイベントに関する調査研究の担当議員であったところ、上記出張の目的は、同議員が上記研修会の参加により将来仙台市において同種のスポーツイベントを誘致・開催するために有益な情報を収集するというものであったと主張し、同議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において同旨を述べ、また、これに沿う証言をしている。

しかしながら、安孫子議員は、上記出張当時、宮城県トライアスロン協会の理事の地位にあったのであるから、上記出張の主たる目的は、同協会の理事として日本トライアスロン連合東北地区協議会研修会に出席するという、私的活動に従事するという点にあったものと推認される。また、同議員が単に上記研修会に出席したというにとどまらず、積極的に国際大会の仙台招致のために有益な情報を聴き取り、あるいは私的に上記研修会に出席するだけでは得難い情報や知見を議員の立場を利用し入手したと認めるに足りる証拠はない。

加えて、安孫子議員が出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

そして、ほかに、同議員が、私的に研修会に出席したというにとどまらず、市政に関する調査研究を行ったと評価すべき事情は見当たらない。

そうだとすると、上記出張は安孫子議員の私的活動であるというべきであって、仮にそれによって結果的に同議員が市政と関連する何らかの情報や知見を入手し得たとしても、それをもって上記出張が調査研究の実質を帯びることになるとは認めがたい。

(ウ) 以上によれば、安孫子議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

イ 平成14年度番号1の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 補助参加人民主フォーラムは、会派のほぼ全員が参加して、平成14年4月11日から同月17日までの間、オーストラリアへ出張した。

b 補助参加人民主フォーラムは、平成14年4月11日、成田空港を出発し、同月12日、オーストラリアのシドニー市に到着した。同日午前、同地でオペラハウスを訪問し、担当者から建設に至る概要や対外宣伝活動等に関して説明を受けた。同日午後、フィルムコミッション事務局を訪問し、担当者から運営状況についての説明を受けた。

同月13日午前、補助参加人民主フォーラムは、シドニー市役所、州議事堂、サザーランド行政区議会を訪問し、同区議会では副市長兼副議長から議会の仕組み及び運営等について聴取りをした。また、同日午後には、ケアハウス「ジョン・ポール・ビレッジ」を訪問した。

同月14日午前、補助参加人民主フォーラムは、現地在住の邦人ガイドの説明を受けながらシドニー市内の公共交通機関を、同日午後には、オーストラリア博物館及びシドニー博物館をそれぞれ訪問した。

同月15日午前、補助参加人民主フォーラムは、ブリスベン市に移動し、同日午後には、ブリスベン市交通局を訪問した。

同月16日午前、補助参加人民主フォーラムは、ゴールドコースト観光局を訪問し日本担当マネージャーから説明を受けた。また、同日午後には、クイーンズランド州のリタイアメントハウス「セント・アンドリュース・エイジドケア」を訪問し、施設長から説明を受けた。

同月17日午前、補助参加人民主フォーラムは、ブリスベン市を出発し、帰国した。

c 補助参加人民主フォーラムは、上記出張に先立ち、各議員が視察の内容や目的等について十分に理解するために、5回程度にわたり会派全員でのミーティングを行った。また、各議員がそれぞれ事前に資料収集及び情報集約等をした。

d 補助参加人民主フォーラムは、上記出張に関し調査研究報告書を作成した。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人民主フォーラムは、上記出張の目的は、高齢者福祉政策、観光政策、社会教育施設、都市交通政策等の研究テーマに沿った調査を行うという目的があり、会派全員で共通のテーマに関して共通認識を有するために有益と考えて会派全員による出張としたと主張している。また、安孫子議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同補助参加人の基本政策には観光政策、特に「フィルムコミッションの創設」、高齢者対策、環境政策及び都市交通政策などがあったところ、上記出張の目的は、観光政策、フィルムコミッションへの取組、高齢者福祉政策、環境政策及び都市交通政策等について調査するというものであったと述べている。上記認定事実によれば、上記出張はこのような目的で行われたものと認めるのが相当である。

また、補助参加人民主フォーラムは、上記出張に先立ち、各議員が視察の内容や目的等について十分に理解するために、5回程度にわたり会派全員でのミーティングを行うなどしており、十分な調査研究の準備をしていたと認められる。

さらに、上記出張の行程を見ると、補助参加人民主フォーラムが訪問した対象は、市役所、議会、フィルムコミッション事務局、観光局など、仙台市の産業振興や観光宣伝に密接に関連する施設であるから、市政に関する調査研究の対象とするに適当なものであると認められる。そして、同補助参加人は、上記訪問先において、上記出張目的に合致した聴取りを行っている。また、上記出張後は、調査研究報告書が作成されている。

これらの事情を総合すると、補助参加人民主フォーラムの上記出張は、客観的に見て調査研究の実質があったものと評価できる。

次に、市政との関連性、必要性・合理性について検討するに、上記調査研究活動は、仙台市の産業振興や観光宣伝の有効化・活性化等に関連性を有しないとはいえないし、会派全員で海外に出張し高額な費用を要したことを考慮しても、認識を共有するという意義を有することなどに照らし、その必要性・合理性が明らかに欠けるとまではいえない。

(ウ) 以上によれば、補助参加人民主フォーラムによる上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものと認められる。

ウ 平成14年度番号2の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 安孫子議員は、平成14年9月28日から同月29日までの間、北海道旭川市へ出張した。

b 安孫子議員は、平成14年9月28日夕方、札幌市へ入り、同地に宿泊し、同月29日午前、旭川市に入り、同日午後まで日本青年会議所全国大会の会議に出席した。

安孫子議員は、上記出張当時、40歳であり、日本青年会議所の会員であった。

c 上記出張に関しては交通費や宿泊費の他に大会参加費を本件政務調査費から支出した。

d 安孫子議員は、上記出張の結果について会派総会の際に口頭で報告したほかは、上記出張について独立の報告書は作成しなかった。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人民主フォーラムは、上記出張の目的は、旭川市で開催された日本青年会議所全国大会の仙台市での開催を実現すべく全国大会の運営状況等を調査するというものであったと主張し、安孫子議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べている。

しかしながら、安孫子議員は、上記出張当時日本青年会議所の会員であったのであるから、上記出張の主たる目的は、同会議所の会員としてその会議に出席するという、私的活動に従事するという点にあったものと推認される。また、同議員が単に上記会議に出席したというにとどまらず、積極的に日本青年会議所全国大会の仙台開催を実現するために有益な情報を聴き取り、あるいは私的に上記会議に出席するだけでは得難い情報や知見を議員の立場を利用し入手したと認めるに足りる証拠はない。

加えて、安孫子議員が出張に先だって調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

そして、ほかに、同議員が、私的に会議に出席したというにとどまらず、市政に関する調査研究を行ったと評価すべき事情は見当たらない。

そうだとすると、上記出張は安孫子議員の私的活動であるというべきであって、仮にそれによって結果的に同議員が市政と関連する何らかの情報や知見を入手し得たとしても、それをもって上記出張が調査研究の実質を帯びることになるとは認めがたい。

(ウ) 以上によれば、安孫子議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

エ 平成14年度番号3の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 補助参加人民主フォーラムは、会派全員で、平成14年10月15日から同月17日までの間、東京都へ出張した。

b 補助参加人民主フォーラムは、会派全員で、平成14年10月15日夕方、仙台を出発して東京に入った。

同月16日午前、補助参加人民主フォーラムは、お台場臨海副都心及び「東京みなと館」を訪問し、それぞれ東京都臨海開発部副参事及び「東京みなと館」館長から説明を受けた。また、同日午後、世田谷区にある「羽根木プレイパーク」及び小金井市にある「江戸東京たてもの園」をそれぞれ訪問し、それぞれの場所において担当者の説明を受けた。

同月17日午前、補助参加人民主フォーラムは、東京都庁及び築地市場を訪問し、仙台市で導入予定のリニア地下鉄と同タイプの地下鉄である地下鉄大江戸線にも乗車した。東京都庁では、知事本部企画調整部調整担当課長から話を聴いた。また、同日午後、富士通ショールーム「IT市役所」を訪問し、同所では株式会社富士通東北支社第二公共部長から説明を受けた。

c 補助参加人民主フォーラムは、上記出張の前に、事前研修として、会派全員で5回程度にわたり訪問の目的及び内容等についてミーティングを行った。また、各議員がそれぞれ事前に資料収集及び情報集約等をした。

d 補助参加人民主フォーラムは、上記出張に関し調査研究報告書を作成した。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人民主フォーラムは、上記出張の目的は、東京都庁を訪問して食の安全の取組やIT市役所の創出、副都心計画等について調査するとともに、あそび体験型公園、民活を利用した社会教育施設、古い街並みの再現等を視察し、仙台市に活かせないかを調査するというものであったと主張し、安孫子議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べている。上記認定事実によれば、上記出張はこのような目的で行われたものと認めるのが相当である。

また、補助参加人民主フォーラムは、上記出張に先立ち、各議員が視察の内容や目的等について十分に理解するために、5回程度にわたり会派全員でのミーティングを行うなどしており、十分な調査研究の準備をしていたと認められる。

さらに、上記出張の行程を見ると、補助参加人民主フォーラムが訪問した対象は、東京都庁や築地卸売市場、上記出張目的に沿う公園等の施設や企業であって、仙台市の行政や財務政策、福祉政策と密接に関連する施設であるから、市政に関する調査研究の対象とするに適当なものであると認められる。そして、補助参加人民主フォーラムは、上記訪問先において、上記出張目的に合致した聴取りを行っている。また、上記出張後は、調査研究報告書が作成されている。

これらの事情を総合すると、補助参加人民主フォーラムの上記出張は、客観的に見て調査研究の実質があったものと評価できる。

次に、市政との関連性、必要性・合理性について検討するに、上記調査研究活動は、補助参加人民主フォーラムの会派としての基本政策や仙台市の観光政策と関連性を有しないとはいえないし、会派全員で出張したことを考慮しても、その必要性・合理性が明らかに欠けるとまではいえない。

(ウ) 以上によれば、補助参加人民主フォーラムの会派全員による上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものと認められる。

(6)  補助参加人自由民主党・市民会議について

ア 平成13年度番号1の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 大内議員は、平成13年10月25日から同月29日までの間、福岡県福岡市、北九州市、長崎県長崎市及び宮崎県へ出張した。

b 大内議員は、平成13年10月25日、福岡市に入った

同月26日、大内議員は、北九州市に入った。

同月27日、大内議員は、長崎市を訪問した。

同月28日、大内議員は、宮崎県を訪問した。

同月29日午後、大内議員は、宮崎県から仙台へ戻った。

c 大内議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程などの概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人自由民主党・市民会議は、上記出張の目的は、出張先において、特別養護老人ホーム、保育所待機ゼロ対策及び都市計画道路の整備を調査するというものであったと主張し、大内議員も陳述書(〔証拠省略〕)において同旨を述べている。

そして、大内議員は、「福岡市では、市議会議員から説明を受けるとともに、福岡市役所を訪問して、同市当局者から都市計画道路、特別養護老人ホーム及び保育所待機ゼロ対策について説明を受けた。その後実際に都市計画道路の事業現場及び特別養護老人ホーム2か所を訪問した。北九州市では、同市当局の担当者から保育所待機ゼロ対策について説明を受け、特別養護老人ホーム1か所を訪問した。宮崎県では、日南公園(サボテン公園)を訪問した。」旨証言している。

しかしながら、原告は、福岡市、北九州市及び長崎市のいずれも大内議員の調査を受け入れた事実はないと主張し、上記出張中に同議員が上記証言のとおりの活動をしたことに疑問を呈している。

そこで上記証言の内容を検討するに、大内議員は、福岡市において説明を受けたという市議会議員の氏名を失念したとして明らかにしていないし、その議員から受領したという名刺も紛失したとして提出していない。また、同議員は、福岡市及び北九州市において訪問したという老人ホームの名称も失念したとしてその名称を明らかにしていない。加えて、同議員は、福岡市において訪問したという2つの老人ホームについてもその差異を具体的に説明することができなかった。また、同議員は、福岡市と北九州市で説明を受けたという担当者の氏名も失念したとして明らかにしていない。

そうだとすると、大内議員の上記証言はにわかに信用することができないところ、ほかに同議員が上記施設等を訪問したと認めるに足りる証拠はない。

また、大内議員は、長崎市及び宮崎県においてどのような調査研究活動を行ったのかについて一切明らかにしていない。なお、同議員が日南公園を訪問したとしても、かかる行為が直ちに調査研究の実質を有するものとはいえないことは明らかである。

加えて、大内議員が上記出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

また、大内議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、大内議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

イ 平成13年度番号2の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。

a 補助参加人自由民主党・市民会議は、会派全員で、平成13年11月6日から同月8日までの間、兵庫県北淡町、徳島県徳島市及び高知県高知市へ出張した。

b 補助参加人自由民主党・市民会議は、会派全員で、同月6日から7日まで、兵庫県北淡町の北淡町震災記念公園を約2時間にわたり訪問し、野鳥断層保存館の館長から話を聞いた。

同月7日、補助参加人自由民主党・市民会議は、徳島県徳島市に入り、徳島市議会を訪問して説明を受けた後、女性センター、ガラス工房をそれぞれ約1時間をかけて訪問し、担当職員から話を聞いた。その後、高知県高知市に入り、高知市議会及び高知女性センターを訪問し、それぞれ約1時間説明を聞いた。

同月8日、補助参加人自由民主党・市民会議は、高知市から仙台へ戻った。

c 上記出張の調査先は、出張先の地方自治体の議会に依頼した上で決定された。

d 補助参加人自由民主党・市民会議は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程などの概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人自由民主党・市民会議は、上記出張の目的は、北淡町については、震災の被害状況と復興事業の進捗状況等を調査するというものであり、徳島市と高知市については、女性センターを視察する目的であったと主張し、大内議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において同旨を述べている。上記認定事実によれば、上記出張はこのような目的で行われたものと認めることができる。

また、補助参加人自由民主党・市民会議は、出張先の地方自治体の議会事務局に依頼した上で、震災に関連する施設、市議会、女性センター等を訪問し、担当者から説明を受けている。これらの施設等は、仙台市の防災や男女共同参画等の施策に関連する施設等であるから、市政に関する調査研究の対象とするに適当なものであると認められる。

これらの事情を総合すると、補助参加人自由民主党・市民会議の上記出張は、客観的に見て調査研究の実質があったものと評価できる。

なお、補助参加人自由民主党・市民会議は、上記出張に関し詳細な報告書を作成することはしていないが、この点は、調査研究の実質があるとの上記認定を妨げるものではない。

次に、市政との関連性、必要性・合理性について検討するに、上記調査研究活動は、仙台市の防災や男女共同参画等の施策に関連性を有するものといえるし、会派全員で出張し高額の費用を要した点を考慮しても、認識を共有するという意義を有することなどに照らし、その必要性・合理性が明らかに欠けるとまではいえない。

(ウ) 以上によれば、補助参加人自由民主党・市民会議の会派全員による上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものと認められる。

ウ 平成13年度番号3の出張について

(ア) 補助参加人自由民主党・市民会議は、「大内議員は、平成13年12月19日から同月20日までの間、秋田県秋田市及び大曲市へ出張した。上記出張の目的は、良質米の産地における減反及び転作政策に対する行政のあり方並びに大曲市の花火による観光客誘致の取組やその実態を調査するというものであった。」と主張し、同議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べている。

そして、大内議員は、「秋田市では、事前に調査せずぶっつけ本番で現地の農家を訪問して、減反や転作制度等について調査した。大曲市では、雄物川堤防を調査するとともに、花火大会の施設を訪問し、施設がどのように整備され、観光客誘致に努力されているのか、現地において生の声を聴いた。その際どのような人に会ったのか、どういう組織のどんな肩書の人に会ったかも覚えていない。」旨証言している。

しかしながら、原告は、大内議員が実際に上記出張をしたかどうか疑わしいと主張している。

そこで上記証言の内容を検討するに、ぶっつけ本番でいきなり農家を訪問したというのは調査研究活動としてあまりにも不自然であるし、冬季に花火大会の施設で属性も記憶に残らない人から生の声を聴くというのも不自然である。加えて、同議員は、上記出張の際の現地の天候につき、当初は天気は良かったと証言しながら、原告から、両日は大雪が降っていたのではないかと尋問されると、とたんに曖昧な証言をするに至っている。

上記事実によれば、上記証言は信用性に乏しく、同議員が上記出張をしたとか、これが調査研究目的であったと認めることは困難であるところ、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

(イ) 以上によれば、大内議員の上記出張を理由とする本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

エ 平成13年度番号4の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 大内議員は、平成14年1月22日から同月24日までの間、福島県会津若松市及び山形県上山市へ出張した。

b 大内議員は、平成14年1月22日、自家用車を利用して会津若松市へ入り、同市議会を訪問し、その後市議会議員の案内で現地を歩いた。大内議員は、同日、会津若松市に宿泊した。

同月23日午後、大内議員は、上山市へ入り、同市議会を訪問した。その後、同議員は、上山市競馬事務所を訪問した。

c 大内議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程などの概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人自由民主党・市民会議は、上記出張の目的は、会津若松市及び上山市における除融雪対策や保育所待機ゼロ対策、会津若松市における観光行政、上山市における特別養護老人ホームの整備状況と競馬場運営を調査するというものであったと主張し、大内議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べている。また、同補助参加人は、競馬場運営を調査したのは、仙台市でも場外馬券売場の誘致が話題となることがあるからであったとも主張している。

しかしながら、大内議員が、会津若松市の観光行政に対する調査として何をしたか、競馬事務所を訪問して何をしたのかは、具体的に明らかではなく、そのほか上記出張中にどのような行動をしたかは一切明らかではない。また、同議員が、保育所待機ゼロ対策に関連する何らかの活動を出張先においてしたことの証拠もない。

加えて、大内議員がした上記の活動について出張に先立って調査項目を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

この点、大内議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、「会津若松市議会を訪問して、除雪対策について説明を受けた。上山市議会を訪問して、議会事務局長から除融雪対策について説明を受けた。」旨述べている。しかしながら、同議員がどのような情報を得たのかは全く明らかでないから、かかる聴取りをもって調査研究に当たると認めることは困難である。

また、大内議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、大内議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

オ 平成13年度番号5の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 大内議員は、平成14年3月25日から同月29日までの間、沖縄県糸満市、那覇市及び浦添市へ出張した。

b 大内議員は、平成14年3月25日午前、飛行機で沖縄県に入り、同日午後、糸満市役所を訪問した。

同月26日、大内議員は、那覇市議会を訪問し、その後市内を訪れた。

同月27日、大内議員は、「宮城英霊塔」及び「ひめゆりの塔」を訪問した。

同月28日、大内議員は、浦添市を訪問した。

同月29日、大内議員は、仙台へ戻った。

c 大内議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程などの概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人自由民主党・市民会議は、上記出張の目的は、高齢者対策、保育所待機ゼロ対策、教育現場における児童生徒父兄との関わり方、都市再開発事業、地盤整備等の状況を調査するというものであったと主張している。

しかしながら、大内議員は、当裁判所における証人尋問において、上記出張の目的は、アメリカの占領から本土復帰までの戦後27年の間苦労した沖縄県民の声を聴くとともに、「宮城英霊塔」に拝礼するというものであったと証言し、陳述書(〔証拠省略〕)においても、これと同旨を述べている。

そうだとすると、上記出張に補助参加人自由民主党・市民会議が主張するような目的があったとは認めがたく、上記出張が市政に関する調査研究を目的とするものであったかどうか疑問がある。

さらに、大内議員の訪問先は、糸満市役所及び那覇市議会を除けば、直ちに市政に関する調査研究を行うに適当な対象とはいいがたい。また、那覇市議会については、そこでどのような調査研究を行ったのか全く明らかでないし、糸満市役所についても、大内議員は陳述書(〔証拠省略〕)において、「担当者から行政全般について説明を受けた。」などと述べているが、同議員がどのような説明を受けたのかは具体的に明らかではない。

加えて、大内議員がした上記の活動について出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

また、大内議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、大内議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

カ 平成14年度番号1の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 大内議員は、平成14年4月10日から同月11日までの間、静岡県静岡市及び熱海市へ出張した。

b 大内議員は、平成14年4月10日午後、静岡市へ入り、静岡市議会を訪問した。

同月11日、大内議員は、熱海市を訪問した。

c 大内議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程などの概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人自由民主党・市民会議は、上記出張の目的は、静岡市における特別養護老人ホームの現状と対策及び保育所待機ゼロ対策並びに熱海市における海岸整備事業と熱海市域の整備事業の技術と費用を調査するというものであったと主張し、大内議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べている。

しかしながら、大内議員の訪問先は、静岡市議会を除けばほとんど明らかではない。また、静岡市議会の訪問についても、同議員は陳述書(〔証拠省略〕)において、「静岡市議会を訪問して、担当者から特別養護老人ホームの設置状況と今後の対策について説明を受けた。」旨述べているが、同議員がどのような情報を得たのかは具体的に明らかではない。

加えて、大内議員がした上記の活動について出張に先立って調査項目等を事前に準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

また、大内議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、大内議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

キ 平成14年度番号2の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 大内議員は、平成14年4月30日から同年5月6日までの間、岩手県盛岡市、秋田県秋田市、角館町及び山形県米沢市へ出張した。

b 大内議員は、平成14年4月30日午後、自家用車を利用して盛岡市に入った。

同年5月1日午前、大内議員は、秋田市を訪問した。

同月2日、大内議員は、角館町の武家屋敷を訪問した。

同月3日から4日にかけて、大内議員は、米沢市にある旧米沢城及びその周辺施設を訪問した。

c 大内議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程などの概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人自由民主党・市民会議は、上記出張の目的は、出張先の都市において特別養護老人ホームの現状と対策、保育所待機ゼロ対策の現状を調査するとともに、角館町及び米沢市では、武家屋敷や城周辺の整備状況について観光客の生の声を聴くために休日に調査を行うというものであったと主張し、大内議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、上記出張には、旧盛岡競馬場用地に建設計画がある大規模な特別養護老人ホーム、盛岡市における保育所入所待機ゼロ対策、角館町と米沢市の観光地整備と観光客誘致を調査するとともに秋田駅前での新幹線開業に向けた秋田市の取組について街頭の声を聴くという目的があったと述べている。

そして、大内議員は、その陳述書(〔証拠省略〕)において、「盛岡市では、大規模な特別養護老人ホームの建設について説明を受け、工事着工前の建設現場を訪問した。秋田市では、秋田駅前で、秋田新幹線開業の効果について通行人から話を聞いた。角館町及び米沢市では、観光客から話を聞いた。」などと述べている。

しかしながら、大内議員は、盛岡市においてだれから説明を受けたのか失念したとし、どのような説明を受けたのかについても具体的に明らかにしていない。また、秋田市における行動についても、同議員の証言によれば、同議員が駅前で通行人を呼び止め、自分は仙台の市議会議員であって新幹線開業の効果について調査に来た旨述べて、3時間半ほどかけて通行人から話を聞いたがメモは取っていないというのであるが、このような行動自体いささか不自然で、その信用性に疑問を生じさせる。また、秋田市、角館町及び米沢市での聴取りで、同議員が聴取対象者からどのような情報を得たのかは全く明らかではない。

加えて、大内議員がした上記の活動について出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

また、大内議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

かえって、大内議員は、ゴールデンウイーク中に自家用車を利用し観光地を訪問していること、平成14年5月5日及び同月6日の行動については一切明らかにしていないことなど、上記出張が市政に関する調査研究目的によるものであったのか疑わせる事情が認められる。

(ウ) 以上によれば、大内議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

ク 平成14年度番号3の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。

a 補助参加人自由民主党・市民会議は、会派全員で、平成14年5月9日から同月11日までの間、北海道札幌市及び函館市へ出張した。

b 補助参加人自由民主党・市民会議は、会派全員で、平成14年5月9日、札幌市へ入り、札幌市議会を訪問して同市議会事務局長から説明を受けた。また、同所において、札幌市経済局観光コンベンション部コンベンション推進課長から、コンベンションホール整備事業の説明を受けた。その後、札幌ウインタースポーツミュージアムを訪問し、館長から説明を受けた。さらに、キタラホールを訪問し、財団法人札幌市芸術文化財団コンサートホール事業部管理課長から説明を受けた。

同月10日、補助参加人自由民主党・市民会議は、会派全員で、札幌市から函館市へ入り、函館市議会を訪問した。同市議会では、議会事務局次長の説明を受けた後、担当者から函館駅舎整備と北海道新幹線乗り入れに対する駅周辺の再開発やウォーターフロント整備事業についての聴取りを行った。その後、函館駅及びその周辺並びに十字街倉庫跡を訪問した。

同月11日、補助参加人自由民主党・市民会議は、函館市から仙台へ戻った。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人自由民主党・市民会議は、上記出張の目的は、札幌市については、札幌市議会議員と意見交換をするとともに、観光行政とコンベンションホール整備事業について調査するというもので、函館市については、駅舎整備と再開発、ウォーターフロント整備事業について調査するというものであったと主張し、大内議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べている。また、補助参加人自由民主党・市民会議は、会派全員で見識の一致が必要不可欠であったため会派全員で出張したとも主張している。上記認定事実によれば、上記出張はこのような目的で行われたものと認めることができる。

また、補助参加人自由民主党・市民会議は、札幌市及び函館市において市議会を訪問し、担当者から説明を受けている。市議会は、市政に関連するものであることは明らかであるから、市政に関する調査研究の対象とするに適当なものであると認められる。また、その余の訪問先についても、博物館については仙台市の観光行政に関連するものとして調査研究の対象とするに不適当とはいえないし、函館駅周辺の訪問についても、同駅周辺の再開発等について調査するという目的に合致したものということができる。そして、補助参加人自由民主党・市民会議は、上記訪問先において、責任者や担当者から説明を受け、情報を収集したものである。

これらの事情を総合すると、補助参加人自由民主党・市民会議の上記出張は、客観的に見て調査研究の実質があったものと評価できる。

なお、補助参加人自由民主党・市民会議は、上記出張に関し詳細な報告書を作成することはしていないが、この点は、調査研究の実質があるとの上記認定を妨げるものではない。

次に、市政との関連性、必要性・合理性について検討するに、上記調査研究活動は、仙台市の観光行政や再開発事業等の施策に関連性を有しないとはいえないし、会派全員で出張し高額な費用を要したことを考慮しても、認識を共有するという意義を有することなどに照らし、その必要性・合理性が明らかに欠けるとまではいえない。

(ウ) 以上によれば、補助参加人自由民主党・市民会議の会派全員による上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものと認められる。

ケ 平成14年度番号4の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 大内議員は、平成14年7月22日から同月27日までの間、山形県新庄市、鶴岡市、寒河江市、福島県二本松市及びいわき市へ出張した。

b 大内議員は、平成14年7月22日午後、自家用車を利用して新庄市に入った。

同月23日午前、大内議員は、鶴岡市を訪問し、同市内にある湯野浜海水浴場を訪れた。

同月24日、大内議員は、寒河江市を訪問した。

同月25日、大内議員は、二本松市を訪問した。

同月26日、大内議員は、いわき市を訪問した。

c 大内議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程などの概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人自由民主党・市民会議は、上記出張の目的は、出張先の都市において、特別養護老人ホームの整備状況、保育所問題を調査するとともに、鶴岡市では湯野浜海水浴場の整備状況を、寒河江市では同市内の地場産品(サクランボ)と観光のあり方を、二本松市では公園整備を、いわき市ではいわき港背後地整備事業と教育現場での禁煙対策などをそれぞれ調査するというものであったと主張し、大内議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、おおむね同旨を述べている。

そして、大内議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、「鶴岡市では、同市議会を訪問し、議会事務局長の説明の後、湯野浜海水浴場を紹介してもらい調査をした。寒河江市では、サクランボ生産農家を訪問し、生産者の声を聴き、観光との関わりを調査した。二本松市では、公園整備と菊人形まつり等について聴取りをした。いわき市では、港背後地整備の状況を調査した。」旨述べている。

しかしながら、鶴岡市については、原告は、同市議会が大内議員の調査を受け入れた事実はないと主張し、これに沿う証拠を提出しているところ(〔証拠省略〕)、同議員は同市議会事務局長から受けたという説明の内容について何ら明らかにしていないので(上記証言、〔証拠省略〕)、同議員の上記陳述書及び証言をにわかに信用することができず、ほかに同議員が鶴岡市議会を訪問し、説明を受けたと認めるに足りる証拠はない。また、湯野浜海水浴場の訪問は、それ自体では、客観的に見て調査研究の実質があるとはいいがたい。

また、大内議員は、「寒河江市では、ぶっつけ本番で名前もわからないサクランボ農家から生の声を聴いた、二本松市では、菊の形取りをしている技術者から菊の生産の参考にするため説明を受けた。」旨証言しているが、大内議員が具体的にどのような事項について聴取りをし、聴取対象者からどのような情報を得たのかは具体的に明らかではない。

さらに、いわき市については、大内議員がどのような活動をしたのか全く明らかではない。

加えて、大内議員がした上記の活動について出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

また、大内議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、大内議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

コ 平成14年度番号5の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 大内議員は、平成14年8月28日から同月30日までの間、新潟県長岡市及び新潟市へ出張した。

b 大内議員は、平成14年8月28日午後、自家用車を利用して長岡市に入った。

同月29日午前、大内議員は、新潟市を訪問した。

同月30日午前、大内議員は、新潟市卸売市場を訪問した。

c 大内議員は、上記出張に関し、半期(6か月)に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程などの概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人自由民主党・市民会議は、上記出張の目的は、長岡市については河川敷と駅前の整備事業、国民健康保険運営と介護制度及び農業施策を、新潟市については保育所待機ゼロ対策、市営卸売市場の運営と課題、農業行政の取組などを調査するというものであったと主張している。

しかしながら、大内議員が長岡市及び新潟市においてどのような活動を行ったのか具体的に明らかではない。

加えて、大内議員が出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

この点、大内議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、「長岡市では、農家から、農政に対する意見を聴いた。また、観光スポットである河川敷や諸施設を見学した。新潟市では、新潟市卸売市場を現地調査した。」旨述べている。しかしながら、同議員が農家から具体的にどのような事項について聴取りをし、聴取対象者からどのような情報を得たのか、あるいは新潟市卸売市場についてどのような調査をしたのか全く明らかでないので、これらの証拠のみでは調査研究に当たると認めることは困難である。また、観光スポットである河川敷や諸施設の訪問、それ自体では、客観的に見て調査研究の実質を有するものとは認めがたい。

また、大内議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、大内議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

(7)  補助参加人公明党について

ア 平成13年度番号1の出張について

(ア) 証拠省略及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 登坂議員は、平成13年8月25日から同月26日までの間、北海道白老町へ出張した。

b 登坂議員は、平成13年8月25日、白老町を訪問し、同町で開催された白老町・仙台市歴史姉妹都市提携20周年記念式典に参加した。

そして、登坂議員は、同式典終了後の祝賀会に参加した。

同祝賀会には、仙台市側からは仙台市長、同市教育長、同市議会副議長、同市議会議員並びに商工会議所及びスポーツ少年団の構成員が、白老町側からは町長をはじめとする行政関係者、白老町議会議長、同町議会議員及び商工会議所、青年会議所等の民間団体の構成員が参加した。

c 登坂議員は、上記出張に関して、項目を埋める程度の簡単な内容を記載した調査報告書を作成したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人公明党は、上記出張の目的は、白老町・仙台市歴史姉妹都市提携20周年記念式典に出席するとともに、同町関係者との意見交換等により姉妹都市との交流を深めるというものであったと主張し、登坂議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べている。

しかしながら、姉妹都市に関する記念式典に参加すること自体は、客観的に見て調査研究の実質があるということはできず、むしろ、式典参加の費用は、要綱で支出が禁じられた「交際費的な経費」(2条1号)に該当するものと解される。

加えて、登坂議員がした上記の活動について出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

この点、登坂議員は、陳述書(〔証拠省略〕)や証人尋問において、「記念式典終了後の祝賀会で白老町の関係者と懇談をした。」旨を述べている。しかしながら、その意味するところは、祝賀会の懇談の場で姉妹都市のあり方について話が及んだというものにすぎず、(証人登坂file_3.jpg)この懇談によってどのような情報を得たのかについても具体的に明らかでないので、これをもって調査研究に当たると認めることは困難である。

また、登坂議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、登坂議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

イ 平成13年度番号2の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 補助参加人公明党は、会派全員で、平成13年8月10日から同月12日までの間、愛媛県宇和島市及び徳島県徳島市へ出張した。

b 補助参加人公明党は、会派全員で、平成13年8月10日、宇和島市を訪問し、同市長及び同市議会議長との間で、同市との姉妹都市交流のあり方について意見交換をした。また、宇和島市立博物館を訪問し、係員から説明を受けた。

同月11日、補助参加人公明党は、会派全員で、徳島市を訪問し、同市議会議長及び議会事務局関係者との間で、約1時間にわたり、同市の阿波踊りや仙台市の七夕まつり等のイベントのあり方について意見交換をした。また、同市内において、阿波踊りを観光視察した。

同月12日、補助参加人公明党は、会派全員で、徳島市から仙台へ戻った。

c 補助参加人公明党は、上記出張に関して、項目を埋める程度の簡単な内容の調査報告書を作成したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人公明党は、上記出張の目的は、宇和島市では、「えひめ丸」事故のお見舞いの意を伝えるとともに、仙台青葉まつりに宇和島市から「牛鬼」や「八ツ鹿踊り」の一行が参加したことに対する感謝の意を伝えること、さらには伊達(仙台)と宇和島伊達との歴史的関係から今後の姉妹都市交流推進の参考とするために宇和島市長や同市議会議長らと懇談を行うことにあった、徳島市では七夕まつりの参考とするために議会関係者と意見交換するというものであったと主張し、登坂議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べている。上記認定事実並びに同議員の陳述書及び証言によれば、上記出張はこのような目的で行われたものと認めることができる。

ところで、上記認定の出張目的のうち、お見舞いや感謝の意を伝えること自体は調査研究活動ということはできず、このような費用は要綱で支出が禁じられた「交際費的な経費」(2条1号)に該当すると解する余地がある。

他方、補助参加人公明党は、宇和島市では同市長と同市議会議長を、徳島市では同市議会議長と議会事務局関係者をそれぞれ訪問し、意見交換をしているところ、これらの訪問先等は市政に関連するものであることは明らかであるから、市政に関する調査研究の対象とするに適当なものであると認められる。また、その余の訪問先についても、博物館については、仙台市の観光行政に関連するものとして調査研究の対象とするに適当といえなくない。

そして、登坂議員の陳述書(〔証拠省略〕)及び証人登坂file_4.jpgの証言によれば、補助参加人公明党は、上記訪問先において、伊達家と宇和島伊達家との関係や徳島市における阿波踊りの様子などに関して、一定程度、上記目的に沿う具体的な情報を収集したものと認めることができる。

これらの事情を総合すると、補助参加人公明党の上記出張は、客観的に見て調査研究の実質があったものと評価できる。

なお、補助参加人公明党は、上記出張に関し詳細な報告書を作成することはしていないが、この点は、調査研究の実質があるとの上記認定を妨げるものではない。

次に、市政との関連性、必要性・合理性について検討するに、上記調査研究活動は、仙台市の観光行政等の施策に関連性を有しないとはいえないし、会派全員で出張し高額な費用を要したことについても、認識を共有するという意義を有することなどに照らすとその必要性・合理性が明らかに欠けるとまではいえない。

(ウ) 以上によれば、補助参加人公明党の会派全員による上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものと認められる。

ウ 平成14年度番号1の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 補助参加人公明党は、会派全員で、平成14年6月28日から同月29日までの間、札幌市へ出張した。

b 補助参加人公明党は、会派全員で、札幌市交通局を訪問し、同局幹部から、バス事業を民営化したときの職員の身分、路線の移譲方法及び市民の足の確保について説明を受けた。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人公明党は、上記出張の目的は、会派として、仙台市のバス事業は赤字であって早晩民営化は避けられないと考えたことから、既に民営化に踏み切った札幌市において、特に民営化したときの職員の身分、路線の移譲方法及び市民の足の確保を調査するというものであったと主張し、登坂議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べ、またこれに沿う証言をしている。上記認定事実によれば、上記出張はこのような目的で行われたものと認めることができる。

そして、上記認定のとおり、補助参加人公明党は札幌市交通局を訪問しているところ、札幌市交通局が市政に関連する施設であることは明らかであるから、市政に関する調査研究の対象とするに適当なものであると認められるし、登坂議員の陳述書(〔証拠省略〕)及び証人登坂file_5.jpgの証言によれば、同補助参加人は、札幌市交通局の幹部から、民営化後の職員の身分保障等に関する具体的な説明を受けたものと認めることができる。

これらの事情を総合すると、補助参加人公明党の上記出張は、客観的に見て調査研究の実質があったものと評価できる。

なお、補助参加人公明党は、上記出張に関し詳細な報告書を作成したものと認めるに足りる証拠はないが、この点は、調査研究の実質があるとの上記認定を妨げるものではない。

次に、市政との関連性、必要性・合理性について検討するに、上記調査研究活動は、仙台市の交通事業の施策や財政に関連性を有しないとはいえないし、会派全員で出張したことについても、認識を共有するという意義を有することなどに照らし、その必要性・合理性が明らかに欠けるとまではいえない。

(ウ) 以上によれば、補助参加人公明党の会派全員による上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものと認められる。

エ 平成14年度番号2の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 補助参加人公明党は、会派全員で、平成14年11月18日から同月19日までの間、岐阜県高山市へ出張した。

b 補助参加人公明党は、高山市役所を訪問し、高山市の観光課長等から、バリアフリー及び観光都市としての取組について説明を受けた後、同市内を訪れた。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人公明党は、上記出張の目的は、観光地におけるバリアフリーを調査するものであったと主張し、登坂議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べている。上記認定事実によれば、上記出張はこのような目的で行われたものと認めることができる。

また、補助参加人公明党が訪問した高山市の観光課長は、仙台市の観光事業等に関する調査研究の対象とするに適当なものであると認められる。そして、登坂議員の陳述書(〔証拠省略〕)や同議員の証言によれば、同補助参加人の議員らは、上記出張によりある程度具体的な情報を得たことがうかがわれる。加えて、同補助参加人の所属議員は、上記出張後、市議会において高山市の取組について具体的に取り上げている(〔証拠省略〕)。

これらの事情を総合すると、補助参加人公明党の上記出張は、客観的に見て調査研究の実質があったものと評価できる。

なお、補助参加人公明党が、上記出張に関し詳細な報告書を作成したものと認めるに足りる証拠はないが、この点は、調査研究の実質があるとの上記認定を妨げるものではない。

次に、市政との関連性、必要性・合理性について検討するに、上記調査研究活動は、仙台市の観光政策に関連性を有しないとはいえないし、会派全員で出張し高額の費用を要した点を考慮しても、認識を共有するという意義を有することなどに照らし、その必要性・合理性が明らかに欠けるとまではいえない。

(ウ) 以上によれば、補助参加人公明党の会派全員による上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものと認められる。

(8)  補助参加人社会民主党仙台市議団について

ア 平成13年度番号1ないし3の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 平成13年度番号1の出張

(a) 補助参加人社会民主党仙台市議団は、会派全員で、平成13年4月4日から同月5日までの間、仙台市青葉区の作並温泉へ出張した。

(b) 補助参加人社会民主党仙台市議団の会派全員は、平成13年4月4日午後1時、JR作並駅へ集合し、観光案内所、つつみ屋、作並御番所跡などの旧街道、回文の記念碑、作並橋等を訪れた。

同日午後3時から6時30分まで、補助参加人社会民主党仙台市議団は、会派全員で、「岩松旅館」において、平成13年度の会派としての調査研究の集中点、議会活動の方針を討議した。その後、同補助参加人は、同旅館に宿泊して酒食を伴う宴会を開催し、温泉に入浴するなどした。

同月5日、補助参加人社会民主党仙台市議団は、会派全員で、朝市を訪れ、午前9時ころ、簡単な打合せをして解散した。

b 平成13年度番号2の出張

(a) 補助参加人社会民主党仙台市議団は、会派全員で、平成13年9月30日から同年10月1日までの間、仙台市太白区の秋保温泉へ出張した。

(b) 補助参加人社会民主党仙台市議団の会派全員は、平成13年9月30日午前10時から午後2時までの間、里センター、工芸の里、大滝レストハウス、石神ゆめの森、磊々峡及び木の家を見学した。そして、温泉組合役員から、同組合の要望である名取川水源地の産業廃棄物処分場建設反対の取組について事情聴取した。

同日午後3時から6時30分までの間、補助参加人社会民主党仙台市議団の会派全員は、「ホテルきよ水」において、平成14年度の予算に係る会派の要望及び市政への政策提言を検討した。その後、同補助参加人は、同ホテルに宿泊して酒食を伴う宴会を開催し、温泉に入浴するなどした。

同年10月1日午前8時から9時までの間、補助参加人社会民主党仙台市議団は、会派全員で、会議を行い、その後解散した。

c 平成13年度番号3の出張

(a) 補助参加人社会民主党仙台市議団の会派全員は、平成14年2月6日から同月7日までの間、仙台市太白区の秋保温泉へ出張した。

(b) 補助参加人社会民主党仙台市議団の会派全員は、平成14年2月6日午後1時から、温泉街を訪れ、里センター、佐竹商店、さいち商店、伊藤肉店、遠藤豆腐店、秋保観光案内所及びタクシー待機所を訪問した。

その後、補助参加人社会民主党仙台市議団の会派全員は、同日午後3時から6時30分までの間、「秋保グランドホテル」の会議室で、先に提出していた平成14年度予算に係る会派要望、市政への政策提言に対する仙台市当局の回答書を検証し、これに基づいて、第1回定例市議会での質問及び提言の内容を討議、検討し、各議員の分担を決定した。その後、同補助参加人は、同ホテルに宿泊して酒食を伴う宴会を開催し、温泉に入浴するなどした。

d 上記番号1ないし3の出張に前後した政策提言等

(a) 補助参加人社会民主党仙台市議団が、平成13年10月5日付けで作成した「2002(平成14)年度予算に係る要望」においては、「中小企業の育成強化に向けて、地場産品の振興のための支援体制、販路拡大策を講じること。またそのために『物産館』を整備すること」、「除雪に当たっては、幹線道路以外で交通量の多い道路など対象枠を拡大すること」、「観光行政の充実を図ること。とくに、街並みに配慮したサイン整備を促進し、観光バス等の駐車場、休憩所等の具体策を検討すること」等の政策が提言され、また、同日付けで作成した「市政の運営に関する要望書」においては、「(仮称)水源保全条例」を制定することが提言されている。

(b) 大槻議員は、平成14年2月25日の市議会において、地域経済の支援活動と観光産業を活かした地域経済活性化の取組について質問した。この中で大槻議員は、宮城県は地元からの旅行客が半分を占めており他県からの旅行客が少ないこと、その原因の一つとして地域観光地が十分には活性化されていないことが挙げられること、補助参加人社会民主党仙台市議団が作並温泉、秋保温泉、他地域の温泉地を調査した結果によれば、宮城県の温泉地では国内の観光客にも満足してもらえる対応ができていない実態にあることなどを指摘した。

(イ)a 以上の認定事実に照らして、まず、上記番号1ないし3の出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

(a) 補助参加人社会民主党仙台市議団は、上記平成13年度番号1の出張の目的は、作並地区の温泉地域において、観光産業による地域経済発展に取り組むために、現地の観光施設、商業施設、宿泊施設、道路状況等の実情を調査し、観光客・宿泊客の増加等による観光産業の振興のための方策を研究するというものであり、また、会派の平成13年度の主要テーマである「観光によるまちづくり」の認識を深めるとともに実情を把握して情報を共有するため、会派の全員が参加することとし、全員を拘束するため、宿泊を含む日程としたと主張し、大槻議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において同旨を述べ、また、これに沿う証言をしている。

上記出張の行程を検討すると、出張先でのほとんどの時間が会派の会議に充てられていることから、上記出張は会派全員で会議を行うことを主たる目的として行われたものと認めるのが相当である。そして、上記会議の内容を見ると、前記認定のとおり、会派としての調査研究の集中点、議会活動の方針を確認するというものである。

これらを総合すると、補助参加人社会民主党仙台市議団による上記会議の開催は、客観的に見て調査研究の実質があったものと評価できる。

(b) そして、補助参加人社会民主党仙台市議団は、上記平成13年度番号2の出張の目的は、上記平成13年度番号1と同様の目的のほか、とりわけ秋保地区の道路整備状況及び観光施設について調査するとともに、産業廃棄物処分場問題に関する事情を聴取するというものであったと主張し、大槻議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において同旨を述べている。

上記出張の行程を検討すると、出張先での多くの時間が会派の会議に充てられていることから、上記出張は会派全員で会議を行うことを一つの重要な目的として行われたものと認めるのが相当である。そして、上記会議の内容を見ると、前記認定のとおり、平成14年度の予算に係る会派の要望及び市政への政策提言を検討するというものである。また、補助参加人社会民主党仙台市議団は、上記出張後、「市政の運営に関する要望書」や「2002(平成14)年度予算に係る要望」を取りまとめ、仙台市の観光事業について政策提言をしており、大槻議員は市議会において作並温泉等の現状について問題点を指摘している。

これらを総合すると、補助参加人社会民主党仙台市議団による上記会議の開催は、客観的に見て調査研究の実質があったものと評価できる。

(c) また、補助参加人社会民主党仙台市議団は、上記平成13年度番号3の出張の目的は、上記平成13年度番号1と同様の目的のほか、とりわけ秋保温泉地域の現状や問題点について認識を深めるというものであったと主張し、大槻議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において同旨を述べている。

上記出張の行程を検討すると、出張先での時間の多くが会派の会議に充てられていることから、上記出張は会派全員で会議を行うことを一つの重要な目的として行われたものと認めるのが相当である。そして、上記会議の内容を見ると、前記認定のとおり、平成14年度予算に係る会派要望、市政への政策提言に対する仙台市当局の回答書を検証し、これに基づいて、第1回定例市議会での質問及び提言の内容を討議、検討し、各議員の分担を決定するというものである。また、上記出張後、大槻議員は市議会において秋保温泉等の現状について問題点を指摘している。

これらを総合すると、補助参加人社会民主党仙台市議団による上記会議の開催は、客観的に見て調査研究の実質があったものと評価できる。

(d) 一方、上記の3つの出張は単に会議を開催するというにとどまらず、旅館やホテルへの宿泊を伴っているが、単に旅館やホテルに宿泊して酒食を伴う宴会を開催したり、温泉に入浴したり、朝食をとったりすること自体は、その態様において客観的に見て調査研究の実質があるとはいいがたい。

また、上記の3つの出張中のその余の活動を見ても、観光施設や商店等を訪れたというものにすぎず、それらは客観的に見て直ちに調査研究の実質があるとはいいがたい。

この点、補助参加人社会民主党仙台市議団は、宿泊や観光施設等の訪問は現地の実情をつぶさに把握するための現地調査であり、大槻議員は市議会において上記各出張に関連する質問をしたなどと主張する。そして、確かに大槻議員は前記のとおり市議会で前記各温泉地の状況について指摘し、また、同補助参加人は前記の提言等をしているところである。しかしながら、それらは一般的な印象に基づいた指摘や提言の域を出るとはいいがたく、また、同補助参加人が上記の各出張に先立って調査項目等を準備したとか上記各出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

なお、補助参加人社会民主党仙台市議団は、平成13年度番号2の出張において、温泉組合役員から、同組合の要望である名取川水源地の産業廃棄物処分場建設反対の取組について事情聴取しているが、かかる聴取はいわば副次的に生じた結果であって、それ自体は出張の主たる目的ではなかったと解される。

(e) そうすると、上記各出張は、上記各会議を開催した限度においてのみ調査研究の実質があったと認めるのが相当である。

b 次に、市政との関連性、必要性・合理性について検討するに、上記各会議は仙台市の観光事業等の施策に関連するものであるから、それらの開催が市政との関連性を欠くことが明らかであるとはいえない。

しかしながら、上記各会議は旅館やホテルへの宿泊を伴っているところ、宿泊先が仙台市中心部から自動車で数十分の場所に位置することからすると、上記各出張のために支出された本件政務調査費のほとんどは旅館やホテルの宿泊代であると推認できる。そして、一般に、会議の開催に当たって参加者が旅館やホテルへ宿泊することが必要であるとはいえないし、本件においても、参加者が宿泊を要しない仙台市中心部などで会議を開催することは十分可能であったと考えられる。そうだとすると、補助参加人社会民主党仙台市議団が上記各会議の開催のために旅館やホテルに宿泊したことは、会議の開催という調査研究活動を行う上で必要性・合理性を欠くことが明らかというべきである。

これに対し、補助参加人社会民主党仙台市議団は、宿泊先の旅館やホテルの温泉や朝食等の宿泊施設の状況について調査するため宿泊を伴う出張としたものである旨主張し、大槻議員もその旨陳述書(〔証拠省略〕)で述べている。しかしながら、単に旅館やホテルへ宿泊して温泉に入浴する等の行為自体には調査研究の実質が認められないことは前述のとおりであって、このような調査研究活動といえない行為をもって宿泊したことの必要性・合理性を基礎付けることはできないというべきである。

(ウ) 以上によれば、補助参加人社会民主党仙台市議団の会派全員による上記各出張は必要性・合理性に欠けることが明らかであり、あるいは調査研究の実質があると認めることはできないから、これに対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

イ 平成14年度番号1の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 大槻議員は、平成14年10月28日から同月31日までの間、徳島県徳島市へ出張した。

b 大槻議員は、平成14年10月28日、徳島市に入り、観光案内所、新町川水際公園及び新町ボードウォークを訪問した。

同月29日、大槻議員は、自治研全体集会に参加した。そこで、「自治体自立システムづくり―責任ある自治体へ」と題する講演を聴き、その後、「新しい地域公共サービスの創造」をテーマとしたシンポジウムに参加した。加えて同議員は、吉野川第十可動堰問題に取り組んできた住民の報告を聴いた。

同日、大槻議員は、とくしま体験館、徳島工芸村、眉山展望休憩所及び阿波おどり会館を訪問した。

同月30日、大槻議員は、自治研集会の「地域再生とまちづくり」と題するパネルディスカッションと、「地域再生型しごと(雇用・労働)と産業」と題する分科会に参加した。同議員は、この会合で、各地の地域再生のための雇用の確保・拡大に関する取組の報告を聴いた。

同月31日、大槻議員は、吉野川第十可動堰と徳島城博物館を訪問し、その後、仙台へ戻った。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人社会民主党仙台市議団は、上記出張の目的は、吉野川河口堰の現状と市民の対応状況及び徳島市のまつりを中心とした観光行政と観光誘客の状況を調査するとともに徳島市で開催された自治研集会に参加するというものであったと主張し、大槻議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べている。上記出張の日程に照らすと、同議員の上記出張は、おおむねこれらの目的で行われたものと認めることができる。

そして、自治研集会の内容は、地方自治に関する具体的な政策を扱っているものと認められ、同集会に参加することにより他の自治体の行政に関する情報を収集することができるなどの点からすると、同集会に参加することは、その態様において客観的に見て調査研究の実質があったものと評価できる。

なお、大槻議員は、上記出張に関し詳細な報告書を作成することはしていないが、この点は、調査研究の実質があるとの上記認定を妨げるものではない。

次に、市政との関連性、必要性・合理性について検討するに、上記調査研究活動は、地方自治のあり方や公共工事が地域に与える影響等についての情報や知見を得ることができることからすると、市政と関連性を有しないとはいえないし、その費用や出張期間等に照らして必要性・合理性が明らかに欠けるということもできない。

(ウ) 以上によれば、大槻議員による上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものと認められる。

(9)  補助参加人グローバルネット仙台について

ア 平成13年度番号1の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 加藤議員は、平成13年4月14日から同月16日までの間、東京都へ出張した。

b 加藤議員は、平成13年4月14日、東京都庁周辺を訪問した(なお、東京都庁は訪問しなかった。)。その後、麻布十番商店街を訪問した。

同月15日、加藤議員は、あきる野市にある秋川の河川敷やキャンプ場等を訪問した。

c 加藤議員は、四半期に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程等の概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人グローバルネット仙台は、上記出張は、環境問題に関する調査、仙台市の河川流域の開発、保護のあり方に関する調査及び商店街活性化の調査をするという目的があったと主張し、加藤議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、上記出張の目的は、環境問題に関する調査として、仙台市役所庁舎を都心から離れた場所に新設する場合のまちづくりをどうするかということをテーマとして東京都庁を視察すること、仙台市において上記出張当時広瀬川創世プランを推進していたところ、その研究のためにあきる野市の秋川を視察すること及び会派の研究テーマである商店街を活性化して地域経済の振興を図ることと関連して、実際に商店街が活性化している麻布十番商店街を視察することにあったと述べている。

しかしながら、東京都庁周辺や麻布十番商店街、河川敷等を単に訪問する行為は、その態様において客観的に見て直ちに調査研究の実質を有するととはいいがたい。

そして、上記施設を訪問するほかに、加藤議員が出張中にどのような活動を行ったのかはほとんど明らかではない。

加えて、加藤議員がした上記の活動について出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

この点、加藤議員は、「秋川ではキャンプ施設を見学し、また、森林組合が経営しているという河川敷の施設を訪問して、説明を受けた。」旨証言している。しかしながら、同議員が上記出張中に、どのような事項について聴取りをし、聴取対象者からどのような情報を得たのかはほとんど明らかでないので、これらの証拠のみでは調査研究に当たると認めることは困難である。

また、加藤議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、加藤議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

イ 平成13年度番号2の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 加藤議員は、平成13年8月25日から同月26日までの間、茨城県つくば市の筑波学園都市へ出張した。

b 加藤議員は、平成13年8月25日、同議員の地元のグループ10人前後とともに、筑波学園都市を訪問した。同議員は、同地において、ペデストリアンデッキと呼ばれる歩行者専用道路を歩いたり、宇宙センターや植物園を訪問した。

c 加藤議員は、四半期に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程等の概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人グローバルネット仙台は、上記出張は、都市計画に関する調査を行う目的であったと主張し、加藤議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、上記出張は、仙台市西部地域(旧宮城町)の開発について、筑波学園都市のまちづくりを参考とすべく調査するというものであったと述べている。また、同議員は、出張先は、同議員の地元で活動し、同議員の関わっている、まちづくりを考えるグループの中で、筑波学園都市が、住民のあまり活用しないところを開発したという点に関心が集まったため、筑波学園都市を選定したと証言している。

しかしながら、加藤議員の出張先での行動の内容は、ペデストリアンデッキと呼ばれる歩行者専用道路を歩いたり、植物園や宇宙センターといった観光施設を訪問したというものにすぎず、その態様は客観的に見て直ちに調査研究の実質があるとはいいがたい。

加えて、加藤議員がした上記の活動について出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

また、加藤議員がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、加藤議員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

ウ 平成13年度番号3の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。

a 加藤議員は、平成13年8月30日から9月1日までの間、広島市及び倉敷市へ出張した。

b 加藤議員は、平成13年8月30日、広島市を訪問し、路面電車に乗車した。その後、広島市から倉敷市へ移動した。

同年9月1日、加藤議員は、倉敷市で、町並み保存のための補助金を受けている人物5、6名と会い、話を聞いた。

c 加藤議員は、四半期に1回会派代表者に提出する調査報告書に出張先や日程等の概略を記載したほかは、出張の具体的な内容を記載した報告書等を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人グローバルネット仙台は、上記出張は、都市計画及び文化財に関する調査を行うという目的があったと主張し、加藤議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、上記出張の目的は、市の地下鉄東西線問題に関連して、広島市の路面電車の運行状況を視察すること及び倉敷市町並み保存地区整備事業、歴史的な伝統美観に関して建造物、建築物等の保存、修理等を行う者に対する補助金の交付状況を視察するというものであったと述べている。

そこでまず、広島市への出張について検討すると、路面電車に乗車したことのみでは、その態様は客観的に見て調査研究の実質があるとはいいがたい。

この点、加藤議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、「路面電車に乗車して、何人かの乗客に地下鉄と路面電車のどちらを乗りたいかとの質問をした。」旨述べており、当裁判所における証人尋問においても同旨を証言している。しかしながら、路面電車に乗車している乗客に突然このような質問を行うというのはいささか不自然である。しかも、加藤議員が聴取対象者からどのような情報を得たのかはほとんど明らかではないのであるから、加藤議員が広島市において調査研究をしたといえるだけの聴取りを行ったと認めることはできない。

加えて、加藤議員がした上記の活動について出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

しかしながら、倉敷市への出張について検討するに、これについては、上記認定のとおり加藤議員が町並み保存のための補助金を受けている人物5、6名と会って話を聴いたことは、市政について調査研究するに適当な対象からの聴取りであると解されるし、同議員が当裁判所の証人尋問において、聴取対象者から聴き取った倉敷市の補助金の交付状況をある程度具体的に証言していることも併せ考えると、倉敷市への出張は客観的に見て調査研究の実質があると評価できる。

また、上記出張の日程等を全体としてみると、同出張は倉敷市への出張に重点が置かれていたと解することもできる。

次に、市政との関連性、必要性・合理性について検討すると、上記倉敷市への出張は、仙台市の文化財事業等と関連性を有するものといえるし、その費用や出張期間等に照らし必要性・合理性が明らかに欠けるとまではいえない。

(ウ) 以上によれば、加藤議員の上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものと認められる。

エ 平成14年度番号1の出張について

(ア) 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

a 補助参加人グローバルネット仙台は、会派全員で、平成14年8月28日から同月30日までの間、北海道白老町へ出張した。

b 補助参加人グローバルネット仙台は、会派として上記出張に関し独自に報告書を作成していない。また、同補助参加人に所属していた各議員も調査研究費の内訳を記載した個別の調査研究報告書を作成していない。

(イ) 以上の認定事実に照らして、まず、上記出張に調査研究の実質があるか否かを検討する。

補助参加人グローバルネット仙台は、上記出張の目的は、白老町をベースに姉妹都市のあり方について調査するとともに、白老町関係者との懇談と視察を通じて地域経済・まちづくりの実態と今後の展望等を調査するというものであったと主張し、加藤議員も、陳述書(〔証拠省略〕)において、同旨を述べている。

しかしながら、補助参加人グローバルネット仙台の会派全員が出張中にどのような活動を行ったのかはほとんど明らかではない。

加えて、補助参加人グローバルネットが出張に先立って調査項目等を準備したとか上記出張によって得られた結果をその後の利用に供するため保存したこともうかがわれない。

この点、加藤議員は、陳述書(〔証拠省略〕)において、「補助参加人グローバルネット仙台の会派全員は、白老町と同じ経済圏にある札幌市、苫小牧市及び登別市への広域の行政合併の協議に関する新たな施策と対応について、行政、議会、商工及び漁業関係者と懇談した。また、港湾の管理、管轄と港及びまちづくりについて関心があったため、行政、議会関係者と懇談した。そして、仙台市と白老町との交流を深めるために、白老町長との間で、相互の地場産業を紹介しつつ、観光事業等の拡充などについて意見交換、情報交換をした。」などと述べ、その証人尋問においても同様の証言をしている。しかしながら、同補助参加人がどのような懇談及び意見交換等をし、どのような情報を得たのか具体的に明らかでないので、これらの証拠のみでは調査研究に当たると認めることは困難である。

また、補助参加人グローバルネット仙台がほかに上記出張において調査研究の実質があると認めるに足りる活動をしたことの証拠はない。

(ウ) 以上によれば、補助参加人グローバルネット仙台の会派全員による上記出張に調査研究の実質があると認めることはできないから、上記出張に対する本件政務調査費の支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものということはできない。

3  返還すべき政務調査費の範囲

(1)  上記2に認定したとおり、本件各支出のうち次の各支出は、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたものといえず違法であるから、これを支出した当該各補助参加人は、これらの支出に相当する金員を、不当利得金として、仙台市へ返還すべき義務がある。

ア 補助参加人みらい仙台の平成13年度番号1ないし4、6、8ないし10及び平成14年度番号1ないし3の各出張に係る各支出

イ 補助参加人民主フォーラムの平成13年度番号1及び平成14年度番号2の各出張に係る各支出

ウ 補助参加人自由民主党・市民会議の平成13年度番号1、3ないし5及び平成14年度番号1、2、4、5の各出張に係る各支出

エ 補助参加人公明党の平成13年度番号1の出張に係る支出

オ 補助参加人社会民主党仙台市議団の平成13年度番号1ないし3の各出張に係る各支出

カ 補助参加人グローバルネット仙台の平成13年度番号1及び2並びに平成14年度番号1の各出張に係る各支出

(2)  そこで、上記各支出の額を検討する。

原告は上記各支出の額が別紙出張目録のこれに対応する各出張の推定旅費等欄記載の額であると主張するところ、被告及び各補助参加人はこれを争うのみで、支出した金額を進んで明らかにすることをしていない。

しかしながら、会派である各補助参加人は、自らが支出した上記の各支出額を明らかにできる立場にあるといえる。

すなわち、前記の前提事実に認定したとおり、政務調査費の交付に関する事項を定めた要綱では、会派の代表者は政務調査費の適正な執行に努めなければならず、その経理責任者は政務調査費の出納事務をつかさどり、帳簿書類、領収書等を管理しなければならず(4条)、当該会派の代表者の決定を経て経費を支出するものとし、支出に当たっては領収書を徴収しなければならず、領収書を徴収することができないときは当該会派の代表者の支払証明書を添付しなければならず(5条)、調査研究を行った議員は、所属会派の代表者に対し調査研究期限後、速やかに、調査研究報告書により調査研究の内容及び経費の内訳を報告しなければならないと定めている(6条2項)。また、条例では、会派の経理責任者に政務調査費の収支状況報告書の作成を義務付け(9条1項)、また、会派の代表者に同報告書の市議会議長への提出を義務付け(9条2項)、議長にこれらの報告書を、これを提出すべき期限の翌日から5年間保存することを義務付けている(11条)。また、要綱は、議長は提出された収支状況報告書の内容を検査し必要があると認めるときは会派の代表者に対して証拠書類等の資料の提示を求めることができる(8条1項)と定めている。以上によれば、政務調査費の支出に係る証拠資料等は、これを支出した各補助参加人の下で、収支状況報告書の提出期限(条例9条1項、2項によれば当該支出に係る政務調査費の交付があった年度の翌年度の5月15日まで)から5年間は保管されているものと推認できるところ、本件政務調査費は平成13年度及び平成14年度に交付されたものであって、未だ保管期間内にある。

他方、原告としては、補助参加人らが調査研究報告書ないし領収書等を開示しない限りは、実際に各補助参加人が支出した政務調査費の額を明らかにすることは困難である。

以上のような証拠との距離、双方の本件訴訟追行の態度、立証の経緯、なおまた、弁論の全趣旨によれば、原告が推定旅費等として主張する金額は仙台市の特別職の職員の給与、旅費、費用弁償の額並びにその支給方法に関する条例等を念頭に置いた控え目な金額であると推認できること、などを総合すると、上記(1)の各支出の額は原告が主張する各推定旅費額を下回るものでないと認めるのが相当である。

以上によれば、各補助参加人の上記(1)の各出張に対する支出額は、それぞれ次の金額を下回らないと認められる。

ア 補助参加人みらい仙台は、11件合計545万1999円

イ 補助参加人民主フォーラムは、2件合計11万4723円

ウ 補助参加人自由民主党・市民会議は、8件合計92万0408円

エ 補助参加人公明党は、1件7万5285円

オ 補助参加人社会民主党仙台市議団は、3件合計43万6590円

カ 補助参加人グローバルネット仙台は、3件合計71万0094円

4  不当利得返還請求権を行使しないことの違法性

以上によれば、仙台市は補助参加人らに対して不当利得返還請求権を有するところ、政務調査費は、法に基づき、市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てるという使途を定めて交付されたもので、その支出の適正を期すため条例及び要綱において各種の定めがされ、残余があれば返還すべきことが条例上も明記されているのであって、その財源は当然ながら税金であり、補助参加人らは市議会内の会派で、実際にこれを使用したのは議員であることなどを考慮すると、被告が補助参加人らに対して上記の不当利得返還請求権を行使しないことは、その金額の多寡にかかわりなく、違法というべきである。

なお、被告は、被告には現行制度上求められている義務の履行に欠けるところはないとして、不当利得返還請求をしないことに違法はない旨主張する。しかし、仙台市が各補助参加人に対して不当利得返還請求権を有することは前記認定のとおりであり、また、この請求権を行使しないことは裁量権を逸脱し違法というべきことは上記のとおりであるから、この主張は採用することはできない。

第4結論

以上によれば、原告の請求は主文の限度で理由があるからこれを認容し、その余はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 畑中芳子 裁判官 武藤貴明 松本英男)

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