仙台地方裁判所 平成17年(ワ)46号 判決 2006年1月26日
主文
1 被告は、原告に対し、7447万8634円及びこれに対する平成16年6月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを10分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
4 この判決の第1項は仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は、原告に対し、金8199万3037円及びこれに対する平成16年6月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要等
1 事案の概要
本件は、平成14年に被告が実施した亡A(以下「A」という。)の勤務先における定期健康診断において、Aの胸部レントゲン写真上に異常な所見があったのに、被告は、コンピュータ入力時、これを別人の検査票に記入した過失により、Aは当時既に罹患していた肺癌を早期に発見する機会を逸し、平成15年度にAが受診した定期健康診断で発見されたときには、既に肺癌の末期であり、早期に外科的治療をすれば根治する高度の蓋然性があったのに、被告の上記の過失により、その機会を逸して死亡したとして、Aを相続した原告が、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
2 争いがない事実(争いがないか、明らかに争わない事実については証拠番号を付さない。)
(1) 当事者
原告はAの子でAの損害賠償請求権を相続した者であり、Aは下記の各定期健康診断を受診した者である。
被告は、各種健康診断を実施することを事業目的とする財団法人である。
(2) Aの定期健康診断の受診
Aは、勤務していたH保険会社の定期健康診断を、平成13年5月10日、平成14年5月22日、平成15年5月7日にそれぞれ受診し、胸部レントゲン撮影等をした(それぞれを「平成13年、14年、15年の検査」という。)。
(3) 健康診断の結果
平成13年及び平成14年の検査結果は、異常なしであったが、平成15年の検査結果では、左側・上肺野・石灰化疑い、両側・全肺野異常陰影疑い、粒状陰影疑いとされた(下記(5)のとおり、平成14年の検査結果は取り違えにより別人のものであった。)。
(4) Aの入院、加療
平成15年の検査結果を受けて、Aは同年5月19日にC病院を受診し、胸部レントゲン検査、胸部CT検査などを受け、同月21日には、胸部・腹部超音波検査等の検査を受け、同年6月5日、肺癌であり、手術の適応外であるとの説明を受けた。
同月6日、AはD病院を受診して同月10日に入院し、同月13日一旦退院して同月20日に再入院し、抗癌剤治療などを受けながらD病院への入退院を繰り返したが、平成16年6月10日に死亡した(死亡時37歳)(AがC病院で肺癌と診断されたこと、D病院に入院して肺癌の治療を受けたこと、平成16年6月10日に死亡したことは争いがなく、その余は弁論の全趣旨。)。
(5) 被告の入力ミス
被告は、平成14年の検査結果をコンピュータに入力する際、胸部スケッチのフィルムNo.697(A)の所見及び判定を、誤ってNo.687(B)の欄に入力した。したがって、被告にはレントゲン読影後の検査票への入力ミスという過失がある。
(6) Aの肺癌の種類
Aの肺癌は、腹部や頭部への遠隔転移がなく、種類も進行の早い小細胞癌ではなく、腺癌であった。
(7) 肺癌のステージ分類及び生存率
ア 肺癌の予後を推測するには、外科手術時の症状をステージ別に分類するが、ステージ分類は、T因子(腫瘍の大きさ)、N因子(局所リンパ節への転移状況)、M因子(遠隔臓器への転移状況)の3因子の組み合わせによる。さらに、これらの因子の検索が手術肺の病理組織や手術所見によったものはp、臨床的経過の追跡によったもの(本件)であればcを付して区分される。
イ Aの場合、T因子は、平成14年度の胸部間接レントゲン写真で腫瘍の長径は6ミリメートルであるから、直接撮影の写真では、その4倍と考えて24ミリメートルと推測される。このサイズでT因子は、T1となる。M因子は、平成14年度の検査時には転移発見されていないので、M0と見られる(N因子については争いがある。)。
ウ 上記N因子について、肺門部・縦隔リンパ節転移が認められない場合には、N0である。この場合、cT1N0M0となり、臨床病期は、IAとなる。他方、N因子について、肺門部・縦隔リンパ節転移が認められる場合には、cT1N1M0となり、臨床病期は、IIAとなる。
エ 臨床病期IAの場合の5年生存率は、1994年の本邦における肺癌登録合同委員会、肺癌外科切除例の全国集計に関する報告によれば、72パーセントとされている。
臨床病期IIAの5年生存率は、乙B1(米国カリフォルニア大学のC.F.マウンテン博士の報告)によれば、34パーセントであり、乙B2(肺癌登録合同委員会、肺癌外科切除例の全国集計に関する報告)によれば、47.8パーセントである。
3 争点
原告に生じた損害(特にAの生存可能性と逸失利益)
4 争点に対する当事者の主張
(1) 原告の主張
ア 入院治療費(入院合計日数222日) 302万4070円
Aは以下のとおり入院した。
(ア) C病院入院 3万1090円
平成15年 6月2日、3日(2日間)
(イ) D病院入院 299万2980円
平成15年 6月10日から13日(4日間) 3万2570円
6月20日から8月14日(56日間)
45万9410円
8月28日から9月6日(10日間)
6万4930円
12月29日から31日(3日間) 5万7840円
平成16年 1月16日から6月10日(147日間)
237万8230円
イ 入院雑費 35万5200円
1日1600円×222日間=35万5200円
ウ 通院治療費(通院日数合計43日) 36万0530円
Aは以下のとおり通院した。
(ア) C病院(7日) 2万9440円
平成15年 5月19日 1万3100円
21日 6850円
23日 3510円
26日 330円
29日 3710円
30日 930円
6月5日 1010円
(イ) D病院(14日) 23万0990円
平成15年 5月30日 6760円
6月 6日 5020円
9日 1万3470円
19日 2万5110円
24日 1万8900円
8月20日 4490円
25日 7870円
9月16日 2万7200円
29日 2万5940円
10月 2日 3150円
14日 2万7200円
31日 2000円
11月17日 3万8580円
12月15日 2万5300円
(ウ) Eクリニック(1日)4万4220円
平成15年 6月15日(1回のみ)
(エ) Fクリニック(薬代を含む。)(21日)
5万5880円
平成15年10月 2日 4070円
5日 4700円
6日 3860円
10日 2000円
17日 1580円
21日 6980円
28日 2210円
11月 4日 3620円
10日 5630円
14日 1750円
18日 1600円
21日 1710円
25日 2780円
28日 1510円
12月 2日 1520円
5日 4660円
9日 1030円
12日 380円
19日 1250円
22日 1130円
平成16年 2月 6日 1910円
エ 入通院慰謝料 300万円
上記ア、ウで主張したとおり、Aの入院日数は222日、通院実日数は43日であり、これを慰謝するためには300万円が相当である。
オ 逸失利益 3790万2432円
(ア) Aは長男と2人暮らしであり、家事に従事する傍ら保険の外交員として稼働していた。よって、逸失利益の算定は、基本的に家事労働を金銭的に評価して行うのが相当である。平成14年の賃金センサスによれば、女性労働者の学歴計平均賃金は352万2400円、生活費控除は主婦であるから30パーセントとしてライプニッツ係数(30年、15.372)を乗じて中間利息を控除する。
352万2400円×(1-0.3)×15.372
=3790万2432円
(イ) 生存可能年数の算定
a. Aは平成14年の検査当時肺癌に罹患していたが、この検査当時に肺癌を早期に発見できていれば、外科的手術が可能であり、平均余命まで生存できた可能性が高い。
肺癌の病期及び生存率は上記のとおりであり、Aについては、リンパ節転移の有無が予後に大きく影響する。
肺門部・縦隔リンパ節転移の診断は、CTあるいはMRIによって短径1センチメートル以上のリンパ節腫大を転移陽性とする基準が用いられている。
本件では、そもそも、平成14年にはCTもMRIも行われておらず、間接レントゲン写真によっても、明らかな短径1センチメートル以上の肺門部・縦隔リンパ節腫大は認められない。したがって、N因子は0である。
結局、平成14年の検査当時のAのTNM分類は、cT1N0M0であり、臨床病期はIAである。
肺癌非小細胞癌の臨床病期IAの5年生存率については、上記(1994年の本邦の報告)によれば、72パーセントであるから、平成14年5月の時点でAが異常所見を指摘されていれば、精密検査の上、外科的治療によって根治する高度の蓋然性があったと言うことができ、平均余命(67歳)まで生存できたことを前提として逸失利益を算定するべきである。
b. 被告は、平成14年の検査当時のAの胸部レントゲン写真によってもリンパ節腫大が伺われるし、1年後には癌が両肺に転移しているから、平成14年の検査当時にリンパ節転移があったとみるのが合理的で、臨床病期の分類はIIAであると主張する。
しかし、リンパ節腫大の有無は、レントゲン写真ではなく、CTないしMRIで診断すべきとされているから、本件では、判定できない。
そもそも、通常のレントゲン画像でリンパ節腫大かどうかの鑑別は難しく、実際にも、Aの平成15年の検査(甲A1)の読影結果でも、既に肺内に転移しており、手術不能の状態になってからの画像であるし、当然リンパ節転移も生じていたはずなのに、部位コード(2)をみると、肺門、縦隔に異常所見は認められていない。この画像は2人の医師が読影したようであるが、いずれも同じである。平成14年の検査時の読影結果(甲A2、Bのものとして記載されたものがAの結果である。)をみても、部位コード(2)には、肺門、縦隔に異常所見は認められていない。結局、胸部レントゲン写真からはリンパ節腫大は認められないというべきである。
さらに、1年後に両肺に転移しているといっても、信頼できる報告によれば、I期の非小細胞癌の無治療例(化学療法・放射線療法を受けた者を含む。)の平均生存月数は17か月から25か月、2年生存率20パーセントとされる。しかし、Aが死亡したのは平成14年5月から26か月経過した平成16年6月10日であり、I期の平均的予後以上生存しているのであって、病期II期であるという被告の主張は根拠がない。
カ 葬儀費 150万円
キ 健康補助食品、温熱療法費 35万0805円
Aは治療のために、水溶性メシマコブVを購入し、この費用として28万1505円、また、MI温熱器を購入し、6万9300円を支払った。
ク 死亡慰謝料 2800万円
Aは主婦であると同時に母子家庭を支え、一家の主柱の立場にあった。
ケ 弁護士費用 750万円
上記アないしクの損害額の1割が相当である。
(2) 被告の主張
ア 損害は不知。
イ 逸失利益については、平成14年に外科的治療を受けてもせいぜい3ないし4年程度しか延命できなかったとみるべきである。
平成14年のレントゲン写真によれば、間接写真からも肺門部リンパ節腫大が疑われる。すなわち、平成13年の検査当時のレントゲン写真に比べて、平成14年度の検査のときの写真では、明らかに両側肺門部の腫大が認められ、この時点でリンパ節移転があったことが明らかである。
また、1年後には両肺へ転移を来していることから、平成14年度の時点で、リンパ節転移があったとみた方が合理的で、N1と判断するべきである。
甲A1やA2の所見区分コードには、リンパ節腫脹や肺門部腫大にチェックがされていない。しかし、これによって肺門部腫大がなかったということはできない。定期健康診断時の読影は、多数の受診者を対象とし、読影者の疲労や経験によって影響を受け、フィルムサイズが小さいので、直接撮影に比べて読影が不利であり、正常と異常の境界の設定が困難であらゆる検査につきまとう特異性と感受性の妥協点を見いだすことが容易でないなどの制約と限界がある。そして、本件1件のみを時間をかけて読影した場合に、定期健康診断時の読影とは異なる結論に至っても不自然ではない。
上記のとおり、cT1N1M0で臨床病期がIIAとなる。IIAの場合の5年生存率は34パーセントや47.8パーセントという報告があるから、平成14年に左肺上葉の原発巣の外科的切除を受けていたとしても、根治した可能性は極めて低く、せいぜい3ないし4年しか延命できなかったと推測される。
第3当裁判所の判断
1 平成14年の検査の当時、肺癌がリンパ節に転移していたかどうか本件の最大の争点は、Aの逸失利益の算定に当たり、何年間生存できたかどうかであるところ、これは、平成14年の検査のときのAの肺癌の病状(ステージ分類)にかかわる。なお、Aの肺癌の病状については、上記のTNM分類によるところのT及びM因子については争いがないので、N因子(リンパ節転移の有無)について以下検討する。
(1) 平成14年の検査当時のレントゲン写真の検討
ア 平成14年の検査当時のレントゲン写真による検討
甲B1によれば、肺門部リンパ節転移があったかどうかについての診断は、CTにおいてもMRIにおいても、短径が1センチメートル以上のリンパ節腫大を転移陽性と診断する基準が用いられていることが認められる。また、甲B4によれば、肺門部陰影は、左右肺動静脈、左右気管支の壁、リンパ節よりなり、X線像の主体をなすものは、肺動静脈で一部のみに気管支壁が関与していると考えて差し支えないこと、たとえ、正常リンパ節がその陰影の一部をなしているとしても、石灰沈着がない限りそれと同定することはできないことが認められる。また、証人Gによれば、レントゲンの間接撮影では、リンパ節は通常のレントゲン像には写らないことと、平成14年と平成15年のAの胸部レントゲン写真には、リンパ節そのものは写っておらず、これらによってはリンパ節そのものが大きくなっていることの判定はできないことが認められる。
加えて、平成14年、15年のAのレントゲン写真を医師が読影した結果(甲A1、2)によっても、所見区分にリンパ節腫脹、肺門部腫大という項目があるにもかかわらず、異常は指摘されていない。
なお、被告は、定期健康診断時の読影は、多数の受診者を対象とし、読影者の疲労や経験によって影響を受け、フィルムサイズが小さいので、直接撮影に比べて読影が不利であり、正常と異常の境界の設定が困難であらゆる検査につきまとう特異性と感受性の妥協点を見いだすことが容易でないなどの制約と限界があると主張するが、かかる状況があるとしても、読影結果を記している胸部X線検査チェック表にリンパ節腫脹、肺門部腫大という項目がある以上、この点も読影の対象となっており、読影時の医師はリンパ節腫大や肺門部腫大の所見は無かったと読影したことは認められる。
イ 平成13年、14年、15年の各検査当時のレントゲン写真の比較による検討
さらに、被告は、平成14年、15年の検査時のレントゲン写真と、平成13年の検査時のレントゲン写真を比較すれば(乙A2)、明らかに肺門部のリンパ節が腫大していると主張し、証人Gもその旨述べる。
しかし、同証人が指摘した部分を精査しても、明らかに肥大しているとは認められない。Aに実施された検査は、レントゲンの間接撮影であるから、撮影条件による写り方の違いも考慮に入れる必要があり、肺門部の見え方に変化が見られたからといって直ちに肥大していると判断することはできない。
結局、平成13年、14年、15年の各検査時のレントゲン写真を比較しても、平成14年の検査当時に、Aの肺癌がリンパ節に転移していたと認めることはできない。
(2) Aの病状の経過からの検討
Aが平成15年の検査結果を受け、C病院で肺癌と診断されて、D病院で治療を開始したのは平成15年6月からであるが、この当時の病状から遡って1年前である平成14年の検査時に既に肺癌のリンパ節転移があったことが認められるのであれば、ステージ分類のN因子に影響するので検討する。
Aの平成15年の胸部レントゲン写真によれば、左側上肺野の異常陰影、石灰化、両側全肺野の粒状陰影が認められ、両肺に癌が転移していることが認められる。このような状況になるまでには、原発巣からリンパ節に転移があって拡大し、血管壁を破って左右平等に血行を通して分布されたという経過を辿ったものと推測される(証人G)。しかし、リンパ節に転移してからかかる状況になるまでどの程度の時間がかかるかについては、何ら立証がなく、被告に所属するIセンターの所長である証人Gも分からないと述べるにとどまる。
そうすると、平成15年のAの肺癌の状態から、平成14年の検査のときに、Aの肺癌がリンパ節に転移していたと認めることはできず、他に平成14年の検査時点でAの肺癌がリンパ節に転移していたことを認めるに足りる証拠はない。
(3) 上記によれば、Aの平成14年度の肺癌の臨床病期はcT1N0M0であり、ステージIAであると認められる。そうすると、IAの5年生存率は72パーセントであり、Aに外科的治療を妨げるような既往症は存しなかったのであるから、平均余命まで生存することができた高度の蓋然性があったと認めることができる。
2 損害額
(1)入院治療費 302万4070円
甲C1の1ないし18、6の8及び9より、原告主張金額の全部が認められる。
(2)入院雑費 33万3000円
甲C1の1ないし18、6の8及び9より、入院日数合計222日であり、1日あたり1500円の雑費を要したと認めることができる。
(3)通院治療費 36万0530円
甲C6の1ないし7、10より、AはC病院に原告主張のとおり通院し、治療費として合計2万9440円を支払ったことが認められる(通院日数7日)。
甲C1の19ないし37より、AはD病院に原告主張のとおり通院し、治療費として23万0990円を支払ったことが認められる(通院日数14日)。
甲C5の1ないし3より、AはEクリニックに平成15年6月15日に通院し、治療費及びレントゲン費用として4万4220円を支払ったことが認められる(通院日数1日)。
甲C3の1ないし21、4の1ないし10より、AはFクリニックに原告主張のとおり通院し、治療費及び薬代として5万5880円を支払ったことが認められる(通院日数21日)。 (4)入通院慰謝料 300万円
上記(2)及び(3)で認定したとおり、Aの入院日数は222日、通院日数は43日であり、これを慰謝するためには300万円が相当である。
(5)逸失利益3219万1734円
上記で検討したとおりAは平均余命まで生存できた高度の蓋然性がある。平成16年賃金センサス第1巻第1表女性労働者学歴計、企業規模計における平均年収は349万0300円で、甲A3によれば、Aは母子家庭で一家の支柱というべき存在であったから、生活費控除を40パーセントとして、Aの死亡時である37歳から67歳まで30年の逸失利益をライプニッツ方式(ライプニッツ係数15.372)で計算すると、下記のとおりである。
349万0300円×(1-0.4)×15.372
=3219万1734円
(6)葬儀費 150万円
葬儀費用として150万円が相当である。
(7)健康補助食品、温熱療法費 6万9300円
健康補助食品については、甲C2の1ないし4により28万1505円を支払った事実が認められるが、これについては、肺癌の治療に必要であったことを認めるに足りる証拠がない。温熱療法については、甲C2の5から、6万9300円の支出があったことと、医師であるFクリニックの紹介によって機器を購入したことが認められるので、相当因果関係が認められる。
(8)死亡慰謝料 2800万円
Aが母子家庭を支えていたことを考慮すると、死亡慰謝料としては2800万円が相当である。
(9)弁護士費用 600万円
本件の審理経過、上記(1)ないし(8)の損害合計額が6847万8634円であること等の諸般の事情を考慮し、弁護士費用として600万円を相当と認める。
(10) 損害額合計 7447万8634円
上記(1)ないし(9)の損害額の合計は7447万8634円で、原告は、Aの子としてこれを相続した。
3 結論
以上検討したところによれば、原告の主張は、7447万8634円及びこれに対する平成16年6月10日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払の限度で理由があり、被告の仮執行免脱宣言の申立は相当でないからこれを却下することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小野洋一 裁判官 高木勝己 裁判官 伊藤康博)