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仙台地方裁判所 平成18年(モ)30107号 決定 2007年2月26日

宮城県●●●

申立人(基本事件原告)

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訴訟代理人弁護士

千葉晃平

東京都目黒区三田一丁目6番21号

相手方(基本事件被告)

GEコンシューマー・ファイナンス株式会社

代表者代表取締役

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訴訟代理人弁護士

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主文

1  相手方は,本決定送達の日から10日以内に,別紙文書目録記載の文書のうち,平成元年5月1日から平成17年6月10日までの金銭消費貸借取引に関する同目録1ないし3の各文書を提出せよ。

2  申立人のその余の申立を却下する。

理由

第1申立の趣旨及び理由

申立人は,相手方に対し,別紙文書目録記載の文書について文書提出命令を申し立てた。

申立人は,相手方との間で,遅くとも昭和64年には金銭消費貸借契約取引を開始したのに,相手方は,平成7年8月28日以前の取引履歴を開示しないことなどを理由に,甲第5号証の推計計算書記載の借入,弁済の経過と不当利得返還請求権を有していることを証明すべき事実とし,民事訴訟法220条3号または4号,商法35条に基づいて文書提出命令を申立てた。

相手方は,平成15年1月から平成15年10月までの間,10年を経過した取引履歴を消去する方針をとっていたため,平成5年9月以前の取引履歴については所持しておらず,その開示は事実上不可能であるなどと意見を述べた。

第2当裁判所の判断

1  別紙文書目録記載の文書(以下「本件文書」という。)は,申立人と相手方間の金銭消費貸借契約に基づいて作成された文書であるから,民事訴訟法220条3号記載の文書に該当し,本件文書は,申立人の主張する事実を立証するために必要な文書であると認められるから,文書提出命令の必要性がある。

2  乙D1によれば,申立人と相手方の取引が開始されたのは,平成元年5月1日であると認めることができ,この認定を覆すに足りる証拠はない。

相手方には,このころから申立人との取引に関し,本件文書が作成されていたということができる。一旦作成されて所持していた文書を廃棄したことにつき,相手方は,当該文書を廃棄したことを立証する責任がある。

相手方は,平成15年1月から同年10月までの間10年間を経過した取引履歴を消去する方針をとっていたと主張し,乙D8ないし乙D12には,相手方保管の磁気テープの消去,データデリート処理業務を処理業者に委託し,データの廃棄が行われた事実は認めることができるが,どのようなデータを具体的に廃棄したのかを認めるに足りない。

乙D7の2によれば,相手方は,近畿財務局に平成14年12月,平成15年1月から取引履歴のテープによる保管期間を最長10年と定め,10年を経過したものは消去していくという説明を口頭でしたことは認められるが,このことから申立人にかかる取引履歴を消去したことを直ちに認定することはできない。

乙D14によれば,平成5年以前の取引履歴のデータは,東京都新宿区高田馬場所在の相手方法務サポートセンターにおける端末では閲覧できないが,検証立会人の供述によれば,国内ATMに入金の記録があれば大阪のホストコンピューターに電磁気録として残ること,すべての顧客の貸付や返済の情報の管理は大阪のホストコンピューターが管理し,支店あるいはATMで入金されると自動的にホストコンピューターが更新され,全国の端末機もリアルタイムで更新されるようになっていること,大阪にある相手方の書類保管センターには金銭消費貸借契約申込書(エントリーカード)が保管してあることを認めることができる。

顧客の返済状況等の情報は,貸金業者にとって,顧客の信用性を判断する資料として重要であり,相手方との取引を継続していた顧客については顧客ごとに情報が管理されていたと考えるのが合理的である。

顧客との取引途中で,一律に以前のデータを廃棄処理したという相手方の主張には合理性がなく,これを認めるに足りる証拠はない。

平成15年1月から平成15年10月までの間10年を経過した取引履歴を消去する方針をとっていたため,平成5年9月以前の取引履歴については所持していないとの相手方の主張を採用することができない。

3  そうすると,申立人の文書提出命令の申立には理由があるが,平成元年5月1日以前の取引履歴については相手方が取引履歴を所持していたことを認めるに足りる証拠がないのでその部分を却下することとして,主文のとおり決定する。

(裁判官 小野洋一)

別紙

文書目録

1 被告GEが作成・所持する,その業務に関する帳簿(貸金業規制法19条に定める帳簿)またはこれに代わる同法施行規則16条3項・17条2項に定める書面のうち,原告との間の昭和63年1月1日から平成17年6月10日までの間の金銭消費貸借取引に関する事項(貸付年月日,貸付金額及び返済年月日,返済金額)が記載された部分の全部(電磁的記録を含む)

2 原告と被告GEとの間の,昭和63年1月1日以降の金銭消費貸借取引に係る契約書面(貸金業規制法17条に基づく書面)(原本または控え)の全部

3 原告と被告GEとの間の,昭和63年1月1日以降の金銭消費貸借取引に係る受取証書(貸金業規制法18条に基づく書面)(原本または控え)の全部

以上

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