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仙台地方裁判所 平成2年(ワ)741号 判決 1992年12月25日

原告

庄子良一

被告

日下教雄

ほか一名

主文

一  被告らは、原告に対し、各自一九七一万一九八〇円及びこれに対する昭和六三年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを一〇分し、その四を被告らの、その余を原告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一原告の請求

被告らは、原告に対し、各自五五〇九万〇一一四円及びこれに対する昭和六三年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二双方の主張

【請求原因】

一  事故の発生

原告は、昭和六三年八月三一日午後五時五〇分ころ、仙台市青葉区芋沢字大勝草上野原三五番地先の幅員三・九メートルの路上において、軽四輪乗用自動車(以下「原告車」という。)を運転中、その右側ドアミラーが対向してきた被告淳運転の普通乗用自動車(以下「被告車」という。)の右側ドアミラーに接触して破損し、原告車のドアミラーの破片が右眼に突き刺さつたため、右眼を失明する傷害を被つた(以下「本件事故」という。)。

二  責任原因

1 被告教雄

被告教雄は、被告車の所有者であり、自己のために被告車を運行の用に供していたもであるから、自賠法三条に基づき、後記損害を賠償する責任を負う。

2 被告淳

被告淳は、被告教雄とともに、被告車を運行の用に供していたのものであるから、自賠法三条に基づき、また、本件事故現場付近を走行するにあたり、道路幅員が三・九メートルと狭く、被告車の車幅が一・六八メートルでドアミラーが外部に突き出ており、左ハンドル車(ポルシエ)であつたから、対向車とすれ違う場合には衝突しないように、道路左端ぎりぎりに被告車を寄せ、停車寸前まで速度を落とし最徐行で進行すべき注意義務があるにもかかわらず、これを怠り、徐行をせずに時速四〇キロメートルないし五〇キロメートルのまま車道の中央寄りを進行した過失により本件事故を惹き起こしたのであるから、民法七〇九条に基づき、後記損害を賠償する責任がある。

三  損害

1 原告の損害額

(1) 治療費 五八万八二三〇円

(2) 眼鏡代 三万五四〇〇円

(3) 医師・看護婦謝礼 八三〇〇円

(4) 交通費 八万一九七〇円

(5) 入院諸雑費 九万三六〇〇円(入院七八日間、一日当たり一二〇〇円)

(6) 休業補償費 三九万円

原告は、本件事故当時、三丸製薬合資会社に勤務して日給五〇〇〇円を得ていたが、本件事故により入院した期間七八日間につきまつたく働くことができず、合計三九万円を取得できなかつた。

(7) 後遺障害による逸失利益 四八八〇万六七四四円

原告は、本件事故により右眼が失明し、自賠責保険後遺障害第八級一号該当の後遺障害を残し、一〇〇分の四五の労働能力を喪失した。そこで、本件事故当時満二〇歳の健康な男子であつた原告が満六七歳までの間に昭和六三年賃金センサス男子労働者平均賃金(年収四五五万一〇〇〇円)を得ることができるとしてホフマン式で逸失利益を算出すると、次の算式により四八八〇万六七四四円となる。なお、予備的に、右平均賃金を基準としてライプニツツ式で逸失利益を算出することを主張する。

(計算式)四五五万一〇〇〇円×〇・四五×二三・八三二=四八八〇万六七四四円

(8) 慰謝料 八五〇万円

原告は、昭和六三年八月三一日から同年一一月一〇日まで七八日間入院し、その後、同月一一日から平成元年一月一七日まで六八日間通院し、かつ、前記(7)の後遺障害を被つたので、入通院分と後遺障害分を合計した慰謝料は、少なくとも八五〇万円を下らない。

(9) 弁護士費用 五〇〇万八一九二円

本件事故に基づく未賠償損害額は、五〇〇八万一九二二円である(右(1)ないし(8)の合計五八五〇万四二四四円から受領済の自賠責保険金八四二万二三二二円を控除)から、その一割の五〇〇万八一九二円が本件事故と相当因果関係のある弁護士費用である。

2 損害の填補

右(1)ないし(9)の合計六三五一万二四三六円から受領済の自賠責保険金八四二万二三二二円を控除すると、原告が被告らに請求できる損害額は、五五〇九万〇一一四円である。

四  よつて、原告は、被告教雄に対し自賠法三条に基づき、被告淳に対し自賠法三条又は民法七〇九条に基づき、各自五五〇九万〇一一四円及びこれに対する本件事故日の昭和六三年八月三一日から民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

【請求原因に対する被告等の答弁】

一  請求原因一の事実中、傷害の内容は否認し、その余の事実は認める。

二1  請求原因二1の事実は否認する。

訴外日下賢一は、被告車の購入時未成年であつたため、父親である被告教雄の名義を借りて購入したものであるが、右購入手続、購入代金の支払い、被告車の使用及びガソリン代の負担等は、すべて訴外賢一が行つていたから、被告教雄は、被告車の運行供用者にはあたらない。

2  同二2の事実は否認する。

三1(1) 請求原因三1(1)の事実は不知。

(2) 同(2)の事実は不知。

(3) 同(3)の事実は不知。

(4) 同(4)の事実は不知。

(5) 同(5)の事実は争う。

(6) 同(6)の事実のうち、原告が本件事故当時三丸製薬合資会社に勤務して日給五〇〇〇円を得ていたことは認め、その余の事実は争う。

(7) 同(7)の事実は争う。原告は、事故当時、三丸製薬合資会社の見習社員として勤務していたが、二か月後は正社員となる予定であり、原告も継続して勤務する意思があつたから、逸失利益の算定は、初任給一二万円を基準とすべきである。また、逸失利益の算定にあたり、平均賃金を基礎としてホフマン式で算出すると相当高額になり、損害の公平な分担の趣旨に反するので、平均賃金を基礎としてライプニツツ式で算定するか、初任給を基礎としてホフマン式で算定すべきである。

(8) 同(8)の事実は争う。原告の通院治療は月二回程度であるから、慰謝料の算定にあたつては、通院期間を全期間とするのではなく、減縮された期間とすべきである。

(9) 同(9)の事実中、原告が自賠責保険金八四二万二三二二円を受領したことは認め、その余の事実は争う。

2  同三2の事実は争う。

【抗弁】

一  自賠法三条ただし書の逸責の主張

1 原告の過失

原告は、本件事故現場において被告車とすれ違う際、付近の道路幅員が狭く、対向車である被告車と接触する危険が予想されるのであるから、被告車の進行状況、原告車が進行すべき位置を的確に判断し、被告車と接触しないように道路左端を注意して進行すべき注意義務があるのに、ドアミラーの接触の危険を感じたためあえて顔をドアミラーに寄せるという不自然の運転姿勢をとつたうえ、原告車進行方向の道路が先細りになつていたことから、路外に飛び出さないように道路中央寄りを走行させた過失がある。

2 被告の無過失

被告淳は、原告車を約八〇メートル手前で発見したところ、本件事故現場付近の道路の幅員が狭いため、原告車とすれ違う際、接触しないように道路左側に寄り、原告車のために通行可能な道路の幅を維持して運転したのであるから、被告淳に過失はない。

二  過失相殺

原告に過失があつたことは、前記抗弁一1のとおりであり、また、原告の前記ドアミラーに顔を寄せる過失により、ドアミラーのガラス片が右眼に刺さり、被害が拡大したことも斟酌すべきである。

三  仙台市職員組合からの給付金の受給

1 原告は、地方公務員等共済組合法に基づき、仙台市職員組合(以下「組合」という。)から診療費の法定給付として一三〇万九五三八円(調査嘱託に対する組合から回答された金額は原告主張のとおりであるが、書証と照らし合わせると右回答には記載漏れがある。)を受給している。

2 右受給金の控除は、右受給金を含めた総損害について過失相殺を行つた後に行うべきである(過失相殺後控除説)。

四  弁済

被告淳は、原告に対し、見舞金として一万円を支払つた。

【抗弁に対する原告の答弁】

一  抗弁一1及び2の事実は否認する。

二  同二の事実は争う。

三1  同三1の事実中、原告が地方公務員等共済組合法に基づき、組合から一三〇万四八〇六円を受給していることは認め、その余の事実は否認する。

2  同2は争う。仮に、本件事故について原告にも過失があり、過失相殺をするとともに右給付を控除すべきことになるとしても、本件事故による総損害から右給付を控除した残額について過失相殺をすべきである(過失相殺前控除説)。

四  抗弁四の事実のうち、被告淳が原告に対し見舞金一万円を支払つたことは認めるが、この程度の見舞金は社交上の当然の儀礼であり、本件損害に対する弁済にはあたらない。

理由

一  請求原因一(事故の発生)については、昭和六三年八月三一日午後五時五〇分ころ、仙台市青葉区芋沢字大勝草上野原三五番地先路上において、原告車の右側ドアミラーと対向してきた被告車の右側ドアミラーが接触し、原告車のドアミラーが破損したことは当事者間に争いがなく、原告本人の供述によれば、右ドアミラーの破片で原告が右眼を失明したことが認められる。

二  請求原因二(責任原因)について

1  被告教雄の責任について

(1)  被告教雄の運行供用者性について

被告教雄が被告車の所有名義人であつたことは当事者間に争いがなく、被告淳本人の供述によれば、本件事故当時訴外賢一は未成年で父親の被告教雄方に同居しており、被告車は被告教雄の土地に保管されていたものであつて、被告教雄は、被告車の運行を事実上支配、管理することができたものと認められるから、社会通念上被告車の運行が社会に害悪をもたらさないように監視、監督すべき立場にあつたというべきである。したがつて、被告教雄は、被告車の通行供用者にあたると解される(最高裁昭和五〇年一一月二八日第三小法廷判決・民集二九巻一〇号一八一八頁参照)。

(2)  自賠法三条ただし書の免責の主張について

運転者である被告淳が被告車の運行につき過失があつたことは後記のとおりであるから、自賠法三条ただし書の免責の主張は理由がない。

2  被告淳の責任について

被告淳は、後記のとおり、本件事故に関し、過失があつたから、原告に対し、民法七〇九条に基づき、後記の損害を賠償する責任がある。

3  過失相殺について

(1)  本件事故の態様

甲二、一二、乙一、二、四、証人緑正義の証言、原告本人及び被告淳本人の各供述によれば、本件事故の態様は、以下のとおり認定判断することができる。

<1> 現場付近の道路の状況

現場付近の道路は、アスフアルト舗装がされ、平坦で、最高速度が時速三〇キロメートルに制限され、原告、被告淳双方の前方の見通しは良く、車道のアスフアルト舗装部分の幅員は、約三・九メートルであり、センターラインはなかつた。被告淳の進行方向の道路左端には側溝があり、原告の進行方向道路左端には側溝がなく、アスフアルト舗装の車道と同平面の土の部分があつたと認められる。

<2> 被告車(普通乗用車ポルシエ)の状況

a 車幅 一・六八メートル

b ハンドルの位置 左

c ドアミラーの大きさ 縦一一センチメートル、横一八センチメートル

d 地上からドアミラーの下端までの高さ 〇・八二メートル

e ドアミラーが車両右側側面から出ている部分 一一センチメートル

<3> 原告車(軽四輪)の状況

a 車幅 一・三九メートル

b ハンドルの位置 右

c ドアミラーの大きさ 縦一〇センチメートル、横一七センチメートル

d 地上からドアミラーの下端までの高さ 〇・八五メートル

e ドアミラーが車両右側側面から出ている部分 一五センチメートル

<4> 衝突時の状況

a 衝突の部位等

原告車と被告車は、いずれも右側ドアミラーが接触し、原告車のドアミラーは破損・脱落し、被告車のミラーは、右側端から五センチメートル内側の地点が凹損し、原告車ドアミラーの破片が原告の右眼に突き刺さつたが、原告は、衝突の直前、顔を右側ドアミラーの近くに寄せ、右側ドアの窓は開いていたと認められる。

b 衝突時の被告車の時速

被告淳は自賠責保険関係の交通事故発生状況報告書にも制限時速三〇キロメートルのところを時速三〇キロメートルで進行したと自ら記載しているほか、原告本人が五〇メートル先に被告車を発見したとき被告車は時速五〇キロメートルないし六〇キロメートル位は出ていたと思うと供述しているのと照らし合わせると、被告淳は衝突時少なくとも時速四〇キロメートルで走行していたものと認められる。

c 衝突時の原告車の時速

衝突時の原告車の時速は、原告が本件事故直前時速約三〇キロメートルで走行していたところ、本件事故現場付近で被告車を約五〇メートル先に認め、減速をしていることから、衝突直前は時速三〇キロメートルからある程度減速していたものと認められる。

(2)  被告淳の過失について

前記(1)認定の本件事故の態様によれば、被告淳は、本件事故現場付近の、道路の幅員が三・九メートルと狭く、センターラインはなく、被告車の車幅は一・六八メートルで、ドアミラーが被告車右側側面から一一センチメートル出ていたのであるから、対向車である原告車を発見した場合は、道路左端により、停止直前まで最徐行して原告車との衝突を避けるべき注意義務があつたにもかかわらず、これに違反し、漫然と制限時速を超える時速約四〇キロメートルで、道路左端によらずに走行したため、本件事故現場付近を徐行して進行しようとしていた原告車の右側ドアミラーに自車の右側ドアミラーを接触衝突させた過失がある。

(3)  原告の過失について

原告は、前記認定の状況の本件事故現場付近で対向車の被告車を発見したのであるから、道路左端に寄り、停止直前まで最徐行して被告車との衝突を避けるとともに、衝突した場合の損害を拡大させないように注意すべき義務があつたにもかかわらず、減速したのみで、右側ドアの窓を開けたままドアミラーに顔を近づけて進行した過失があり、そのため、被告車の右側ドアミラーに原告車の右側ドアミラーを接触衝突させ、その衝突で破損した原告車の右側ドアミラーの破片が右眼に突き刺さつたものと認められる。

(4)  過失割合

前記の被告淳と原告の過失内容によれば、過失割合は被告淳六対原告四と認めるのが相当である。

三  請求原因三(損害)について

1  治療費 一六三万九六一〇円

原告は、本件事故による傷害の治療のため、東北大学医学部付属病院において治療を受け、治療費として、一六三万九六一〇円を支出した(甲七1ないし13、一六、原告本人)。

2  眼鏡代 三万五四〇〇円

原告は、本件事故により右眼が失明し、左眼の視力も落ちて眼鏡をかけなければならなくなり、眼鏡代として三万五四〇〇円を支出した(甲八、原告本人)。

3  医師、看護婦謝礼 八三〇〇円

原告は、医師と看護婦に対する謝礼として、少なくとも八三〇〇円を支出した(原告本人)。右支出は、本件事故と相当因果関係が認められる。

4  交通費 八万一九七〇円

原告は、本件事故による傷害の治療のための交通費として、少なくとも八万一九七〇円を支出した(原告本人、弁論の全趣旨)。

5  入院諸雑費 九万三六〇〇円

原告は、本件事故による傷害の治療のため七八日間入院し(甲五、六)、一日当たりの入院諸雑費は一二〇〇円が相当と認められるから、入院雑費の合計額は、九万三六〇〇円となる。

(計算式) 一二〇〇円×七八日=九万三六〇〇円

6  休業補償費 三九万円

原告は、本件事故当時、三丸製薬合資会社に勤務し、日給五〇〇〇円を得ていたが、入院期間七八日につき働くことができず、合計三九万円を取得できなかつた(乙五、原告本人)。

(計算式) 五〇〇〇円×七八日=三九万円

7  後遺障害による逸失利益 三六八二万四一八八円

原告は、本件事故により、右眼が失明し、左目も裸眼で〇・六となり、自賠責保険後遺障害八級一号が認定された(甲一三1、2、原告本人)。右事実によれば、原告は、本件事故により、一〇〇分の四五の労働能力を喪失した。

原告は、本件事故当時満二〇歳の健康な男子で三丸製薬合資会社に入社して勤務していたが、試用期間中であつて、右期間経過後は転職の可能性もあつたところ、実際に本件事故を契機に同社を退職し、いつたん中退していた大学工学部に再入学したこと(原告本人)を考慮すると、原告の逸失利益は、本件事故当時満二〇歳の健康な男子であつた原告が満六七歳までに昭和六三年賃金センサス男子労働者平均賃金(年収四五五万一〇〇〇円)を得ることができるとしてライプニツツ式で中間利息を控除して算出するのが相当であり、次の算式により三六八二万四一八八円となる。

(計算式) 四五五万一〇〇〇円×〇・四五×一七・九八一=三六八二万四一八八円

8  慰謝料

(1)  入通院慰謝料 一〇〇万円

原告は、昭和六三年八月三一日から同年一一月一〇日まで七八日間入院し、翌一一日から平成元年一月一七日まで六八日間通院した(通院実日数五日)(甲五、六、七1ないし13、原告本人)ので、入通院慰謝料は一〇〇万円が相当である。

(2)  後遺症慰謝料 六〇〇万円

原告は、前記の後遺傷害を被つたので、後遺症慰謝料は、六〇〇万円が相当である。

四  結論

1  過失相殺前の損害

原告の過失相殺前の損害は、前記三1ないし8を合計すると、四六〇七万三〇六八円となる。

2  過失相殺後の損害

右1の金額から過失相殺の対象となる四〇パーセントの額を減額すると、二七六四万三八四〇円となる。

(計算式) 四六〇七万三〇六八円×(一-〇・四)=二七六四万三八四〇円

3  填補額の控除後の損害

右2の金額から控除の対象となる後記(1)及び(2)の合計額九七三万一八六〇円を控除した損害額は一七九一万一九八〇円となる。

(1)  自賠責保険 八四二万二三二二円

原告は、自賠責保険から八四二万二三二二円を受領した(当事者間に争いがない)。

(2)  組合 一三〇万九五三八円

原告は、組合から、診療費の法定給付として一三〇万九五三八円を受領した(甲七1ないし13、一六(なお、組合からの調査嘱託回答には、昭和六三年一二分〔甲七11、12〕の記載漏れがあると認める。)、原告本人)。

(計算式) 二七六四万三八四〇円-九七三万一八六〇円=一七九一万一九八〇円

原告は、組合からの受領した診療費については過失相殺前に控除すべきであると主張するが、地方公務員等共済組合法に基づく受給者である原告は、被告らに対し、過失を斟酌して定められた額の損害賠償請求権を有するに過ぎないから、原告の主張は採用できない(最高裁平成元年四月一一日第三小法廷判決・民集四三巻四号二〇九頁参照)。

(3)  被告らは、見舞金として一万円を支払い、原告がこれを受領したことは当事者間に争いがないが、この程度の見舞金は社会通念上、本件事故に対する損害の賠償と評価することはできないから、この点に関する被告らの主張は採用できない。

4  弁護士費用の加算

本件事案の内容、認容額に照らし、原告の弁護士費用は一八〇万円が相当であるから、弁護士費用を加算した損害額は、一九七一万一九八〇円となる。

(計算式) 一七九一万一九八〇円+一八〇万円=一九七一万一九八〇円

5  認容額

よつて、原告の本訴請求は、一九七一万一九八〇円及びこれに対する本件事故の日である昭和六三年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度において理由があるから認容し、その余は失当であるからこれを棄却する。

(裁判官 六車明)

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