仙台地方裁判所 平成3年(行ウ)15号 判決
原告
安積富男(X)
右訴訟代理人弁護士
吉岡和弘
同
斎藤拓生
被告
仙台市長(Y1) 藤井黎
同
仙台市建築主事(Y2) 浅野政行
右被告ら指定代理人
中條隆二
同
高橋幸一
同
高橋徹
同
遠藤延安
同
小山京
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事実及び理由
第三 当裁判所の判断
一 請求の原因1項記載の事実は当事者間に争いがない。
二 〔証拠略〕によれば、次の各事実が認められる。
(1) 住友不動産は、昭和六二年五月三〇日、五一番一、五一番二及び二八番二の各土地を買い受けた。
(2) 住友不動産は、五一番一の土地上に共同住宅「北山シティハウス」を建設する計画を立て、同年八月、仙台市長に対し、仙台市開発指導要綱に基づく開発行為事前協議嘆願書を提出した。
右開発計画を知った御嶽神社は、公園用地として予定されている五一番二の土地を二十数年前から参会者の通路・駐車場等として借用していたことを理由に、異を唱え、住友不動産に計画の変更を申し入れた。
住友不動産と御嶽神社は、都市計画法三二条の規定に基づく事前協議において、仙台市に対し利害調整の要請を行った。
右要請を受けて、仙台市は対応策を検討したところ、五一番二の土地に設置が予定されている公園を新公園用地に移転するのが妥当であるとの結論に達した。
(3) 昭和六三年一月九日、仙台市と住友不動産との間で、開発行為に係る公園についての事前協議が成立した。
(4) 住友不動産は、同月二五日、仙台市に対し、開発許可申請手続きをした。
(5) 仙台市は、同月二八日、都市計画法三五条の規定により、右開発行為を許可した。その際、「公園用地を開発区域外に移す必要が生じる場合は、住友不動産において、協議内容に合致した施設・用地を確保すること」との特別許可条件を付した。
(6) 同年三月、仙台市、御嶽神社、住友不動産の三者間で、公園の設置場所を新公園用地に変更し(将来、仙台市と御嶽神社との間で、仙台市が所有すべき五一番二の土地と御獄神社が所有すべき新公園用地との所有権を交換する方法による。)、公園に至るまでの道路用地(本件指定地)を御嶽神社が仙台市に無償提供することを内容とする合意が成立した。
(7) 昭和六三年三月二四日、御嶽神社は、住友不動産から分筆前の千代田町二八番二の土地を譲り受けた。この土地は後に、新公園用地、本件指定地、本件建物敷地等に分筆された。
(8) 平成元年四月一二日、都市計画法三六条三項の規定による開発行為の工事完了公告がなされ、同月一三日、五一番二の土地は、都市計画法四〇条二項の規定に基づき、住友不動産から仙台市に帰属した。
(9) 右(6)の合意に基づき、御嶽神社は、平成二年一月二四日に新公園用地の一部となる四五六番二の土地(農道部分)の払下げを受けた。御嶽神社は、同年三月一七日、仙台市に対し、「新公園用地を、公園整備施工のため、整備後は公園として使用することを承諾する」及び「二八番五の土地を、公園整備施工のため、整備後は道路として使用することを承諾する」旨の承諾書を提出した。
その後、新公園用地につき公園整備のための工事がなされ、同年五月二九日完了した。
御嶽神社は、同年一二月一三日、仙台市青葉区千代田町二八番二の土地から、二八番五の土地を分筆し、平成三年一月二四日、仙台市に対し、二八番五の本件指定地を道路用地として寄付した。
(10) 御嶽神社から本件指定地の寄付を受けて、仙台市(青葉区建設部)は、本件指定地等を道路敷とすることにより幅員六メートルの市道六条通線を一〇メートル延長する本件延長計画を策定した。
仙台市(青葉区建設部)は、同年二月二五日、仙台市の担当部局である都市整備局指導部に対し、本件指定地を、仙台市公園課所管公園(予定)への進入路として寄付を受けたので、市道路線認定までの間、法四二条一項四号による道路として指定するように依頼した。
被告仙台市長は、同年二月二六日、本件指定地について、本件道路指定処分をした。
(11) ところで、御嶽神社は、平成二年一〇月五日、大京に対し、二八番二の土地から分筆された本件建物敷地を売却した。
大京は、同年一一月一七日、本件建築確認申請を行った。
仙台市(建築審査課)は、大京に対し、本件敷地が接道要件を満たしていないこと等を理由に、建築確認できない旨通知した。
大京は、本件指定地も本件建物の敷地となるように計画変更を行い、敷地の変更後の図面を提出するなどした。
被告仙台市長は、平成三年二月二六日、本件指定地について、本件道路指定処分をした。
これによって、被告仙台市建築主事は、本件敷地につき接道要件を満たすことになり、本件建物については他に建築確認に支障がないことから、同日、大京に対し、本件建築確認処分をした。
(12) 原告の本訴提起後、被告仙台市長は、平成四年九月二四日、本件指定地に関し、道路法一〇条三項、八条二項に規定する仙台市議会の路線変更の議決を得た上で、延長工事に着手して完成させ、平成五年四月二一日、道路法一八条一項二項に基づき道路の区域を決定し、同日から供用を開始する旨公告した。
すなわち、本件指定地は、法四二条一項一号に該当する道路となった。
(13) 仙台市と御嶽神社は、五一番二の土地と新公園用地を交換する予定でいる。
以上のとおり認められる。
三 道路指定処分取消請求の訴えの利益について
1 原告は、まず、本件指定地についての法四二条一項四号の本件道路指定処分の取消しを求めているのであるが、右認定のとおり、本件指定地は、既に法四二条一項一号に該当する道路法による道路として供用が開始されたものである。
法四二条一項四号の道路指定処分は、道路法等による道路が新設され又は変更されるまでの間、その指定地に法四四条の規定する道路内の建築制限を課するとともに、指定地に沿接する敷地における建築計画について法四三条の接道要件を充足させる効果をもたせて、暫定的に指定地を完成後の道路と同様に扱おうとするものであるから、当該計画道路が完成して指定地が道路法上の道路として供用が開始された場合には、道路指定処分の存在意義が消失し、当然にその効力を失うものと解するのが相当である。
そうすると、本件指定地については、計画道路が完成し、道路法上の道路となったことにより、本件道路指定処分は効力を失ない、原告は、本件道路指定処分の取消しを求めるにつき、行政事件訴訟法九条の訴えの私益を失ったというべきである。
2 原告は、本件には、行政事件訴訟法九条かっこ書の適用がある旨主張する。
すなわち、原告は、本件建築確認申請は、本件道路指分定処分が存在することによって、初めて法四三条の接道要件を具備するから、本件道路指定処分の効力消滅後において、なお同処分を取り消すことによって回復すべき法律上の利益が存在すると主張する。
しかしながら、仮に、本件道路指定処分が取り消されたとしても、右のとおり、本件指定地は、平成五年四月二一日から法四二条一項号の道路として供用を開始されたのであるから、本件敷地は現在、法四三条一項の接道要件に適合することは明らかである。
本件道路指定処分が取り消されたとしても、本件建築確認処分が法四三条一項の接道要件に不適合の理由により取り消されないことは明らかといわなければならない。
原告には、行政事件訴訟法九条かっこ書にいう、本件道路指定処分を取り消すことによって回復すべき法律上の利益があるとはいえない。
原告の右主張は理由がない。
3 また、原告は、違法な本件道路指定処分を行った被告仙台市長が、道路の完成を理由に訴えの利益の消滅を主張することは信義則上許されない旨主張する。
原告が、請求の原因4項で、本件道路指定処分の違法を主張する点につき検討する。
原告が、(一)で、公園用地移転の都市計画法違反をいう点、(二)で、本件土地交換の仙台市公有財産規則等違反をいう点は、いずれも、被告が反論するように、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由とする主張であり、本訴においては、行政事件訴訟法一〇条により許されない主張であるといわなければならない。
原告が、(三)で、法四二条一項四号違反をいう点は、前記認定のとおり、本件道路指定処分の前提としての事業計画としての本件延長計画が存在したのであるから、理由がない。
また、原告が、(四)で、裁量権の濫用をいう点は、前記認定の事実によれば、確かに本件道路指定処分は、住友不動産の開発行為と御嶽神社の参会者のための駐車場の確保という私人間の利害の調整のために企図されたものではあるが、だからといって、それが特定私人の便宜を図ることを唯一の目的としてなされた、被告仙台市長の裁量権の濫用行為であるとまではいうことができない。
なお、前記認定の事実によれば、本件道路指定処分は、大京による本件建物建築計画が動機付けとなったものではなく、本件道路指定処分がなされた結果として大京に対し本件建築確認処分がなされたにすぎないというべきである。
右のとおりであって、被告仙台市長が、道路の完成を理由に訴えの利益の消滅を主張することが信義則上許されないという事情は認めることができない。
原告の右主張は理由がない。
4 以上によれば、原告は本件道路指定処分取消請求について訴えの利益を欠くことになるので、同取消請求の訴えは不適法であり、却下を免れない。
四 建築確認処分取消請求について
1 原告適格について
(一) 〔証拠略〕によれば、次の各事実が認められる。
本件建物は、高さ地上九・九メートル、地上三階建ての集合住宅であり、建築面積は六六六・四七平方メートル、延面積は一九三九・一五平方メートルである。
本件敷地は、第二種住居専用地域にあり、周辺の建物は主として個人住宅である。
原告住居の敷地は本件敷地の北西方向に位置し、両者の間には幅員二メートル弱の土地がある。本件敷地は高台の上にあり、原告住居敷地との間には約四ないし八メートルの高低差がある。
原告の住居は、本件建物の建築によって、冬至の真太陽時において、午前八時頃から午前一一時過ぎまでは全部、その後午後二時頃までは一部日影となる。
(二) 右認定の事実によれば、原告が本件建物によって被るおそれのある日照被害は、原告が日常生活上甘受すべき軽微なものとは断定できない。
そうすると、原告は、本件建築確認処分取消請求について、原告適格を有するということができる。
2 建築確認処分の取消請求について
(一) 法四三条二項に基づき、宮城県建築基準条例二条は、「都市計画区域内にある延べ面積の合計が千平方メートルを超える建築物の敷地は道路に六メートル以上接しなければならない。ただし、建築物の周囲に広い空地があり、その他これと同様の状況にある場合で安全上支障がないときは、この限りでない。」と定めている。
〔証拠略〕によれば、本件敷地は都市計画地域内にあることが認められ、前認定のとおり本件建物の延べ面積が一九三九・一五平方メートルである。そうすると、本件敷地は道路に六メートル以上接しなければならないことになる。
しかして、前認定のとおり、本件道路指定処分にかかる本件指定地の幅員は六メートルである。そうすると、本件敷地は接道要件を充たしているというべきである。
(二) 原告は、本件敷地の接道要件不適合の他に本件建築確認処分の取消事由を主張していない。
(三) 以上によれば、原告の本件建築確認処分取消請求は理由がない。
三 よって、原告の道路指定処分取消請求は不適法なのでこれを却下し、建築確認処分取消請求は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 坂本慶一 裁判官 長沢幸男 倉澤守春)