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仙台地方裁判所 平成7年(わ)82号 判決 1995年9月29日

裁判所書記官

山崎育子

被告人

有限会社青葉産業

本店の所在地

宮城県石巻市門脇字二番谷地一三番地

代表者の氏名

佐々木良三

代表者の住所

同市南中里四丁目六番七号

被告人

佐々木良三

年齢

昭和二三年七月二七日生

本籍

宮城県石巻市南中里四丁目六番

住居

同市南中里四丁目六番七号

職業

会社役員兼不動産取引業

弁護人

小村保秀(被告人両名につき)

検察官

坂田吉郎

主文

被告人佐々木良三を懲役一〇か月に、被告人有限会社青葉産業を罰金一〇〇〇万円に処する。

被告人佐々木良三に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用のうち、国選弁護人に関する分はその二分の一ずつを各被告人の負担とし、証人佐々木正子に関する分は被告人両名の連帯負担とする。

理由

(犯罪事実)

被告人有限会社青葉産業(以下「被告会社」という)は、宮城県石巻市門脇字二番谷地一三番地に本店を置き、旅館業等を目的とする資本金一〇〇万円の有限会社である。佐々木良三(以下「被告人佐々木」という)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、被告会社の経営するホテル青葉の売上げの一部を除外する方法により所得を秘匿した上、

第一  平成二年八月一日から平成三年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三六二五万五三六二円であったのに、平成三年九月三〇日、宮城県石巻市千石二番三五号所在の石巻税務署において、同税務署長に対し、情を知らない今野会計事務所の従業員を介して、その欠損金が一三四万五三三六円であり、納付すべき法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書(平成七年押第三一号の一)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一二八三万〇五〇〇円を免れた。

第二  平成三年八月一日から平成四年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三八一五万三〇四三円であったのに、平成四年九月三〇日、前記石巻税務署において、同税務署長に対し、情を知らない今野会計事務所の従業員を介して、その所得金額が零であり、納付すべき法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の二)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一三五四万三九〇〇円を免れた。

第三  平成四年八月一日から平成五年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三〇一二万三七二六円であったのに、平成五年九月三〇日、前記石巻税務署において、同税務署長に対し、情を知らない今野会計事務所の従業員を介して、その欠損金が二四万四四六〇円であり、納付すべき法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の三)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一〇五三万四六〇〇円を免れた。

(証拠)

犯罪事実全部について

一  被告人佐々木の公判供述

一  被告人佐々木の検察官調書二通(乙二四、二五)及び大蔵事務官に対する質問てん末書八通(乙一ないし六、一一、二〇)

一  証人佐々木正子の公判供述

一  白石晶子(二通)、小山富貴子及び熊谷キヨ子(甲二五)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の領置てん末書、「脱税額計算書説明資料」と題する書面、事業税認定損調査書及び差押てん末書(甲一四)

冒頭の事実について

一  登記官作成の登記簿謄本(乙二六)

第一及び第二の各犯罪事実について

一  熊谷キヨ子(甲二六)、星節子、渡辺初江(二通)、及川スズ子及び所雄三の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  渡辺初江作成の上申書

一  大蔵事務官作成の差押てん末書(甲六六)

一  封筒入り計算書等一七袋(平成七年押第三一号の一〇ないし二一、二三ないし二六、二八)

第一の犯罪事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲六)

一  修正申告書謄本(甲三四)、領収済通知書謄本(甲三五)

一  確定申告書一綴(前同号の一)

第二及び第三の各犯罪事実について

一  被告人佐々木の大蔵事務官に対する質問てん末書(乙一〇)

一  大蔵事務官作成の雑収入調査書

第二の犯罪事実について

一  被告人佐々木の大蔵事務官に対する質問てん末書(乙一九)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲七)、欠損金控除額調査書

一  修正申告書謄本(甲三八)、領収済通知書謄本(甲三九)

一  確定申告書一綴(前同号の二)

第三の犯罪事実について

一  検察官作成の捜査報告書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書、差押てん末書(甲五〇)

一  修正申告書謄本(甲四二)、領収済通知書謄本(甲四三)

一  確定申告書一綴(前同号の三)、金銭出納帳用ルーズリーフ記載のメモ二枚(前同号の四、五)、金銭出納帳一綴(前同号の六)、総勘定元帳一綴(前同号の七)

なお、括弧内の甲乙の数は本件記録中の証拠等関係カードの検察官請求証拠番号であり、以下も同じである。

(事実認定の補足説明)

前掲の各証拠によれば、被告会社の平成三年七月期ないし平成五年七月期の各事業年度の所得金額を算出する損益計算書における勘定科目とその金額は、売上高、欠損金の当期控除額、事業税認定損及び雑収入を除き、各事業年度の確定申告書綴り(平成七年押第三一号の一ないし三)記載のとおりであること、平成四年七月期の確定申告において欠損金の当期控除額とした金額のうち、平成三年七月期に欠損金があったとして控除した四五万二四一九円については、同期が利益が生じており、そのことを被告人佐々木が認識していたので、これを差し引いた四一〇万一八九〇円のみを欠損金の当期控除額とすべきこと、事業税認定損については、被告会社がすでになした修正申告により税務上確定しているから、各事業年度の修正申告書(それらの謄本は甲三四、三八、四二)記載のとおりとすべきこと、平成五年七月期の雑収入については、大蔵事務官作成の雑収入調査書(甲一一)記載のとおりであるが、平成四年七月期の雑収入については、カラオケ装置やスロットルマシンの設置日が不明であるため、設置月の売上げは不明であるから、設置月の売上げは零として計算すべきことが認められる。

被告会社の売上高については、その経営するホテル青葉の売上げのみであるが、検察官は、同ホテルの平成三年四月二二日分の利用客ごとの料金が記載された一覧表一枚(前同号の二七)、平成五年一一月二五日から平成六年一月一四日までの真実の売上高、売上除外額及び公表帳簿記載額が記載された金銭出納帳用ルーズリーフ二枚(前同号の四、五)並びに平成六年一月一五日から同月三一日までの利用客ごとの料金明細が記載された計算書及び料金が記載された一覧表(前同号の一〇ないし二一、二三ないし二六、二八)により推計計算して確定しうると主張する。これに対して、弁護人は、検察官の主張する推計計算では合理的疑いを残さない程度に証明されたとはいえないと主張し、被告人佐々木は、平成三年七月期及び平成四年七月期について、公訴事実記載の程度の所得があったかどうかわからないとし、平成五年七月期については公訴事実記載ほどの所得はなかったと供述している。そこで、各事業年度ごとの売上高の認定について説明する。

一  平成四年七月期の売上高(第二の犯罪事実)について

この点について、検察官は「シーツ洗濯枚数から算出した利用客組数に、当該事業年度期間外の平成六年一月一五日から同月三一日までの一七日間の平均客単価七〇二四円を乗じて真実の売上高を推計した」とする。

そこでまず、ホテル青葉の利用客組数について検討すると、前掲の関係各証拠によれば、同ホテルでは、客が実際にシーツを利用したかどうかにかかわらず、客室利用後必ずシーツ二枚を交換しており、客一組ごとにシーツ二枚が使用されていること、被告会社は綿久リネン株式会社との間で昭和六三年三月一日からホテル青葉で使用するシーツ等のリース契約をし、同社はそのシーツ等のクリーニングを有限会社クリーニングふらんせに月極め料金で依頼していたが、有限会社クリーニングふらんせでは、クリーニング後にホテル青葉に納めるシーツ等の枚数に過不足が生じないようにするためと月極め料金で採算が取れているかを把握するために、同ホテルからシーツ等を回収する際にその枚数を数えて洗濯引渡伝票に記載していたことが認められる。これらの事実からすれば、洗濯引受伝票には真実のシーツ洗濯枚数が記載されており、これを二で割った数がホテル青葉の利用客組数であると認められる。そして、熊谷キヨ子の大蔵事務官に対する質問てん末書(甲二六)によれば、シーツ等の回収は午前六時前の早朝であったことが認められるので、平成四年七月期に帰属する売上げの対象となるホテル青葉の利用客組数は、平成三年八月二日から平成四年八月一日までの洗濯引渡伝票記載のシーツ洗濯枚数から算出すべきことになる。そこで、渡辺初江作成の「有限会社青葉産業のクリーニングの取扱数量について」と題する書面により、右期間のシーツ洗濯枚数から利用客組数を算出すると一万二七三六組となる。なお、同書面によれば、ホテル青葉から回収したシーツの枚数は平成三年八月三日が七三枚、同年一二月九日が一四九枚、平成四年四月一日が五九枚と奇数になっており、客室利用後必ずシーツ二枚を交換していたとの前記認定事実あるいは洗濯引渡伝票には真実のシーツ洗濯枚数が記載されたとの前記認定事実と一見符合しないようにも思われる。しかし、右書面記載の全期間の数値を見ると、枚数が奇数であってもそのまま記載していることなどからすれば、数えたままに記載したと認められるし、ほとんどが偶数であることからすれば、ほぼ正確に数えられているものと認められる。これらのことからすると、シーツの枚数が奇数になったのは、一枚程度の数え間違い、あるいは一枚程度の紛失、破損等と考えるのが合理的である。そこで、被告人らに利益に考え、右の三日間の利用客組数については、それぞれ三六組、七四組、二九組とした。

次に、ホテル青葉の平均客単価について検討すると、前掲の関係各証拠によれば、利用客ごとの料金が判明している平成六年一月一五日から同月三一日までの期間のホテル青葉の利用料金制度は平成四年七月期と同じであること、休憩料金より宿泊料金が高く、宿泊客の割合が多い日の平均客単価は高くなること、当日の売上げとして計算される前日や当日の早朝からの繰越客も含めた宿泊客の割合は、平日に比べて土曜日、日曜日などの休日やその前日に高くなることが多いこと、したがって、年末年始の休暇時期、五月の連休時期、八月の夏期休暇や盆休み時期も宿泊客の割合が高い日が他の時期に比べ平日でも多くなること、年末年始の休暇時期等を除いた平日は午前九時から午後四時までは延長料金を取らないため、利用客ごとの料金が低くなることが多いこと、平成六年一月一五日は祝日であり、同月三〇日は他の日に比べて宿泊客の割合が突出していることが認められる。これらの事実からすれば、平成六年一月一五日及び三〇日を除き、また宿泊客の割合の高くなることが多い土曜日、日曜日の数が平日と同数になる同月一六日から同月二九日までの二週間の平均客単価六九一四円は、これを引き上げる要因が排除され、日ごとの変動も緩和されているから、年末年始の休暇期間等の宿泊客の割合が高い日や平日でも延長料金を取る日をも含めた年間の真実の平均客単価に比べて低い数値になり、したがって、ホテル青葉の利用料金制度が同じ平成四年七月期の一年間の真実の平均客単価よりも低い数値であると考えられる。なお、前掲の関係各証拠によれば、平成六年一月一五日から同月三一日までのホテル青葉の利用客組数は、平成五年一二月二四日にホテルキッスが営業を始めた影響で、平成四年の同じ時期より一割近く少なくなっており、それに応じて売上げも減少していることが認められるが、このことは平均客単価を引き上げる要因とは考えられない。他方、大蔵事務官作成の調査着手日以降の客単価調査書によれば、平成六年二月から同年七月までの期間のホテル青葉の平均客単価は七一一六円であるとされているが、その期間の月ごとの利用客組数は平成四年の同じ月より二割ないし三割も少なくなっており、その直前である平成六年一月一五日から同月三一日までの減少割合と相当の差があり、その要因が明らかでないから、この平均客単価が平成四年七月期の一年間のホテル青葉の平均客単価よりも低い数値であると言うことはできない。

以上のとおり、利用客組数一万二七三六組と平均客単価六九一四円はいずれも真実の数値を超えないと言え、これらを乗じて算出された売上高八八〇五万六七〇四円も真実の数値を超えないから、平成四年七月の被告会社の売上高は少なくともこれだけあったと認定できる。

二  平成五年七月期の売上高(第三の犯罪事実)について

この点について、検察官は「当該事業年度期間外の平成五年一一月二五日から平成六年一月一四日までの間の売上除外率を用いて、当該事業年度の申告売上高から算出した」とする。

そこで、ホテル青葉の平成五年一一月二五日か平成六年一月一四日までの間の売上除外率と平成五年七月期の一年間の真実の売上除外率との関係について検討すると、前掲の関係各証拠によれば、平成五年ころから徐々にホテル青葉の売上を除外する割合を減らそうとしていたこと、ホテル青葉において日ごとに集計される売上高は、土曜日、日曜日などの休日やその前日及び年末年始の休暇期間、五月の連休時期、八月の夏期休暇や盆休み時期に多い日が多く、売上高の多い日は少ない日に比べて売上げを除外する割合が高くなることが多いこと、平成五年一二月二四日にホテルキッスが営業を始めた影響で、その日から半年くらいのホテル青葉の売上高は前年同期に比べて減少しており、その日以降における売上げを除外する割合は前年同期に比べ減少した可能性があることが認められる。これらの事実からすれば、売上除外率の高い日の多い年末年始の休暇期間である平成五年一二月二七日から平成六年一月五日までや平成五年一二月二三日の祝日及びその前日を除き、逆にホテルキッスの営業開始により前年同期に比べ売上除外率が低くなった可能性のある平成五年一二月二四日以降も除いた平成五年一一月二五日から同年一二月二一日までの期間のうちから、売上除外率の高い日の多い土曜日、日曜日の数が平日と同数になり、かつ被告人らに利益になる売上除外率の最も低い三週間を選べば、売上除外率を引き上げる要因が排除され、日ごとの変動も緩和されているから、年末年始の休暇期間等の売上除外率の高い日をも含めた平成五年七月期の一年間のホテル青葉の真実の売上除外率よりも低い数値になると考えられる。そこで、金銭出納帳用ルーズリーフ記載のメモ二枚(前同号の四、五)によりその期間を選ぶと、平成五年一一月三〇日から同年一二月二〇日までの三週間となり、その期間の売上除外率は四一・五パーセントである。

そこで、右売上除外率に基づきホテル青葉の平成五年七月期の公表売上高四九〇七万九九三〇円から算出した同期の売上高八三八九万七三一六円は、同期の真実の売上高を超えることはないから、同期の被告会社の売上高は少なくともこれだけあったと認定できる。

三  平成三年七月期の売上高(第一の犯罪事実)について

この点について、検察官は「ホテル青葉の利用料金が平成三年七月二五日から値上げされたので、シーツ洗濯枚数から算出した同月二四日までの利用客組数に、当該事業年度期間中の同年四月二二日の平均客単価を乗じ、また同様に算出した同年七月二五日以後の利用客組数に、当該事業年度期間外の平成六年一月一五日から同月三一日までの一七日間の平均客単価七〇二四円を乗じ、これらを合算して真実の売上高を推計した」とする。

平均客単価を用いてホテル青葉の売上高を算出する方法について検討すると、前掲の関係各証拠によれば、利用客ごとの料金が判明している平成三年四月二二日におけるホテル青葉の利用料金制度は平成三年七月二四日までの平成三年七月期において同じであること、平成三年四月二二日は月曜日であり、通常は宿泊客の割合や客単価が高い時期や曜日ではないことが認められるが、他方で、平成三年四月二二日の売上げとなる宿泊客は一一組もおり、平成六年一月一五日から同月三一日までの日ごとの宿泊客組数やその割合と比べると宿泊客組数の多い日であること、平均客単価については日ごとの変動も相当あることが認められる。これらの事実からすれば、平成三年四月二二日という一日だけの利用客ごとの料金から平成三年七月期の真実の平均客単価を超えない数値を算出することはできない。しかし、前記認定のとおり、平成六年一月一六日から同月二九日までの二週間の平均客単価は、これを引き上げる要因が排除され、日ごとの変動も緩和されているから、年末年始の休暇期間等の宿泊客の割合が高い日や平日でも延長料金を取る日をも含めた年間の真実の平均客単価に比べて低い数値になると考えられるところ、前掲の関係各証拠によれば、平成三年七月二五日からホテル青葉の宿泊料金が一〇〇〇円、休憩料金が五〇〇円値上げされたが、この点以外に利用料金制度は変更されておらず、これ以降平成六年一月までの間にホテル青葉の平均客単価を引き上げる要因はないことが認められるから、平成六年一月一六日から同月二九日までの宿泊客の平均単価九五八二円から宿泊料金の値上げ金額一〇〇〇円を差し引いた八五八二円とその期間の休憩客の平均単価六一三七円から休憩料金の値上げ金額五〇〇円を差し引いた五六三七円に基づき、その期間の宿泊客と休憩客の割合二二・五対七七・五により算出した平均客単価六二九九円は、平均客単価が高くなったと考えられる右値上げ後の七日間をも含む平成三年七月期のホテル青葉の真実の平均客単価を超えない数値であると考えられる。なお、平成三年七月二五日から同月三一日までの七日間の平均客単価は、同じ利用料金であった平成六年一月一六日から同月二九日までの二週間の平均客単価六九一四円とほぼ同じくらいであったと考えられるが、他方、前記のとおり、日ごとの変動もあるから、六九一四円が右七日間の真実の平均客単価を超えないとは言い切れないので、右期間についてもこれを用いることはできない。

ホテル青葉の利用客組数については、前記認定のとおり、洗濯引渡伝票には真実のシーツ洗濯枚数が記載されており、これを二で割った数が利用客組数であり、平成三年七月期に帰属する売上げの対象となる利用客組数は、平成二年八月二日から平成三年八月一日までの洗濯引渡伝票記載のシーツ洗濯枚数から算出すべきことになる。そして、渡辺初江作成の「有限会社青葉産業のクリーニングの取扱数量について」と題する書面により、右期間のシーツ洗濯枚数から利用客組数を算出すると一万三九一五組となる。なお、同書面によれば、ホテル青葉から回収したシーツの枚数は平成三年七月二五日が七九枚と奇数になっているが、この点についても前記と同様に考え、その日の利用客組数については、三九組とした。

以上のとおり、利用客組数一万三九一五組と平均客単価六二九九円はいずれも真実の数値を超えないと言え、これらを乗じて算出された売上高八七六五万〇五八五円も真実の数値を超えないから、平成三年七月期の被告会社の売上高は少なくともこれだけあったと認定できる。

ところで、前掲の関係各証拠によれば、平成三年七月期において売上げを除外した割合は平成四年七月期と同じくらいであったことが認められるところ、前記認定の平成四年七月期の売上高に基づいて算出した同期の売上除外率は約四七・一パーセントであり、他方右認定の平成三年七月期の売上高に基づいて算出した同期の売上除外率は約四七・三パーセントであり、両者は極めて近似していることからも、平成三年七月期の売上高についての右認定が適正であることを裏付けている。

(法令の適用)

被告人佐々木の前記各行為はいずれも法人税法一五九条一項に該当する。定められている刑の中からいずれも懲役刑を選択する。これらの罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い第二の罪の刑に法定の加重をして処断する。その刑期の範囲内で被告人佐々木を懲役一〇か月に処する(求刑同)。

被告佐々木に対し、刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

被告会社の前記各行為はいずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当する。これらの罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪につき定められた罰金額を合算して処断する。その金額の範囲内で被告会社を罰金一〇〇〇万円に処する(求刑罰金一二〇〇万円)。

訴訟費用のうち、国選弁護人に関する分は刑事訴訟法一八一条一項本文によりその二分の一ずつを各被告人の負担とし、証人佐々木正子に関する分は同法一八一条一項本文、一八二条により被告人両名の連帯負担とする。

なお、刑法については、平成七年法律第九一号附則二条一項本文前段により同法による改正前の刑法を適用した。

(量刑の理由)

本件は、被告人佐々木が自己の経営する会社の資金繰りに備えるために、三事業年度にわたり被告会社の売上げを除外するなどして法人税合計三六九〇万円余りを脱税したという事案である。その脱税額は多額であり、その期間は全く納税しておらず、脱税方法も巧みであり、被告人佐々木は所得のある会社が果たすべき社会的責任を軽視していると言わざるを得ず、被告人両名は厳しく非難されなければならない。

しかし、被告会社は、本件犯行の発覚により多額の納税を余儀なくされ、すでに修正申告をして納税を済ませていること、被告人佐々木はこのような事態に至って反省し、会社を経営する者としての社会的責任を自覚するようになってきたこと、被告人佐々木には罰金刑以外の前科がないことなどの事情も認められる。したがって、被告人両名を主文のとおりの刑に処した上、被告人佐々木についてはその刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。

(裁判官 秋葉康弘)

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