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仙台地方裁判所 昭和30年(行)20号 判決 1962年2月16日

原告 合資会社 山久商店

被告 仙台国税局長

訴訟代理人 真鍋薫 外四名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は「被告が原告に対し昭和三〇年三月三〇日付をもつて法人税の審査請求に関し為した、(1) 更正額を過大とする請求の全部についてその理由がないから審査の請求を棄却する(2) 青色申告書提出承認の取消に対する審査の請求の全部についてその理由がないから審査の請求を棄却する旨の各審査決定はこれを取消す。訴訟費用は被告の負担とする」旨の判決を求め、その請求の原因として

「(一) 原告は青色申告書提出の承認を受けた法人であつて、昭和二六年四月一日から同二七年三月三一日までの事業年度の法人税に関し同二七年五月三一日欠損金額が二〇九万一、一九二円であつて納付すべき法人税がない旨の確定申告書を本荘税務署長に提出した。

同税務署長は同二八年七月一五日原告に対し右事業年度以降の青色申告書の提出承認を取消す旨および同事業年度の所得金額を六五万〇、三〇〇円・徴収すべき法人税額二九万四、四八〇円(過小申告加算税一万四、〇〇〇円を含む)と決定する旨を通知した。

そこで原告は同年八月五日仙台財務局長宛「法人税課税根拠再調査願の件」と題する書面を本荘税務署に提出して再調査の請求をし同年一〇月五日これを審査請求として取扱われることに同意した結果、法人税法第三五条第三項により被告に対し審査請求をしたものとみなされたわけであるが、これに対し被告は同三〇年三月三〇日各請求棄却の決定をし、同年四月五日原告にその通知をした。

(二) しかし原告会社の会計諸帳簿はいずれも法規に定められた方式に従つて正確に記帳されて居り、そのことは本件審査決定に先立つ国税局協議団の調査の際確認されたところであつて、現に前事業年度において各帳簿に基く原告の青色申告はそのまゝ妥当なものとして承認されている。本件係争事業年度の原告会社の収支は前年度からの継続である諸帳簿に記載されているとおりであつて、これに基いて為した原告の申告に何らいつわりはない。

然るに本荘税務署長は、原告会杜代表社員山田久治が原告会社の設立以前から個人として有していた羽後銀行本荘支店の定期預金三四万五、〇〇〇円を係争事業年度中原告会社に融通した事実を、原告会社が利益の処分としてこれを預金したものであるかのように曲解し、かゝる見地から、原告会社の帳簿上の商品棚卸に五、六点の遺脱があると強弁し、証憑書類を無視し、何ら根拠なく過大な利益を計上して前記のとおり不当な課税処分ならびに青色申告書の提出承認取消処分をしたものであつて、かゝる処分を是認した被告の前記審査決定は不当といわなければならない。

よつて被告に対し同決定の取消を求めるため本訴請求に及んだ。」旨陳述し、被告の答弁事実に対し、

「第一の一の1の(一)はこれを争う。尤も仕切書等の一部が欠けている点はこれを認めるけれども、本件係争事業年度においてはいわゆる闇取引に属する仕入が多く当初から仕切書のない取引もかなりあつた。又その後昭和三〇年頃までの間において一部仕切書が見当らなくなつた。しかしこれらはすべて当時元帳・買掛明細帳又は現金出納簿に明確に記載されたものであつて、各帳簿上明らかにされているから、今になつてその不存在を責めらるべき筋ではない。

同(二)は争わない。しかし後日誤記を発見し重複とならぬよう買掛明細帳および元帳仕入勘定から誤記にかゝる一万八、八五〇円の金額は差引いてあり、従つて損益計算書には全く影響を及ぼしてはいない。

同(三)についても争わない。木村彦一はもと小川利夫商店の店員であつて当時独立して営業を開始していたが、独立後間がなかつたので両口座が区別されずに記帳されたのである。たゞそれだけのことで格別問題とすべきことではない。

同(四)も争わない。さきに仕入を記帳する際あらかじめ返品分を差引いて処理していたのにあらためて返品の記帳をしたため、一旦返品を二重に記帳したことになつていたが、これも後日発見してその金額だけ仕入金額を追加計上し実質的に訂正ずみとなつている。

同(五)につきその主張の二口の現金仕入を買掛明細帳に誤つて記載し、その誤りを正すための記帳の仕方を再度誤つたことは争わないが、二口の仕入に対する現金支払の記載がないとの点は否認する。金銭出納帳にある五月九日八、四八〇円の支払および一〇月二七日一万八、三九五円の支払がこれに該当するのであつて、収支の計算上影響はない。

同(六)は否認する。被告は昭和二四・二五年度から繰越された買掛金の存在を無視し、ほゞこれに相当する金額を過大ないし架空計上と主張するが、二五年度の決算において本件係争事業年度に繰越された一二六万六、八五四円の買掛金は二五年度の所得の申告の際申告書に明記して承認せられていたものであり、原告は債務は債務として当然支払義務を負担する意思のもとにこれを計上しているのである。前年度において認めた買掛金を本年度において理由なく否定するという恣意は許さるべきではない。

原告の諸帳簿は相互の記載自体にも矛盾はなく、買掛明細帳に掲げたとおりの買掛金が係争事業年度末の正しい残高である。

第一の一の2は全部これを争う。

本件係争事業年度の支払手形は、当該年度において発生し未払のまゝ次の年度に繰越された分が別表九記載のとおり八九万四、五二五円五〇銭であり、また係争事業年度以前に発生し係争事業年度に繰越されたが結局支払うことができずに更に次の年度に繰越された分が一四五万四、七四六円九八銭であつて、元帳支払手形勘定残高に掲げられ決算書類にも挙げられているとおり合計二三四万九、二七二円四八銭が正しい。

即ち元帳支払手形勘定貸方欄の合計は前期からの繰越を含めて四六〇万六、二三一円九八銭であり、これに対し借方欄の合計は

(1)  係争事業年度内に現実に決済された分が、別表八の合計一五八万八、一〇九円五〇銭から誤記を正すために形式上決済の扱とした(イ)四月二六日処理の塚本商店分五万円・(ロ)同月二七日処理の厳部商店分一万九、五五〇円・(ハ)一一月六日処理の横山商店分一万一、六〇〇円合計八万一、一五〇円を差引いた一五〇万六、九五九円五〇銭

(2)  借入金又は買掛金勘定に振替えた分が(イ)八月七日処理の竹村太一に対する一万円・(ロ)九月二六日処理の羽後銀行に対する二〇万円および五〇万円・(ハ)一月一九日処理の寿物産に対する一万五、〇〇〇円・(ニ)同月二二日処理の横山商会に対する一万円・(ホ)二月五日処理の丸二商会に対する一万五、〇〇〇円合計七五万円都合総額二二五万六、九五九円五〇銭であつて、前記貸方欄の総計との差額が貸方残として係争事業年度末における支払手形二三四万九、二七二円四八銭と一致し、この間何ら違算はない。

被告は抽象的に架空過大と主張するのみであつて、原告の帳簿について具体的にどの項目が架空というのかこれを明らかにしていないが、それは買掛に関する分と同様前年度からの繰越を計算に入れていないためと思われ、その失当であることはさきに買掛に関して述べたところによつて明らかといわなければならない。

第一の一の3は否認する。金銭出納帳は毎日の売上伝票から正確に記帳したものであつて内容に誤りはない。

同4に関し、その主張のとおりの経費を請算していることは認めるがこれが架空のものであるとの点は争う。すべて正当に支出され帳簿に記載されているのである。

第一の二はすべて争う。原告の係争事業年度における仕入額は合計一、二一四万二、〇九二円五〇銭であつて、内買掛が一、一一二万五、〇六〇円五〇銭・現金仕入分が一〇一万七、〇三二円四〇銭であり、別に諸掛一九万八、一九六円を支出している。右のうち買掛は帳簿上一旦は一、二二七万六、八〇九円五〇銭と計上されていたが、そのうち別表一〇記載の合計二五万〇、二五九円は商品の仕入分でなく消耗品を購入した分を誤つて記入していたこと、別に被告主張第一の一の(1) の(二)に指摘されているように一万八、八五〇円の仕入を過誤により重復記載していたこと、および被告主張第一の一の(1) の(四)において指摘された入原本店関係返品の重複記帳を補正するために計上すべき一万七、三一〇円の計上もれのあることが後日判明したので、夫々これを補正した上、前記の正確な金額を決算書類に掲げているわけである。

被告は原告の係争事業年度の収支を比較して利益率が低すぎるというけれども、当時は取扱衣料品類の品質が粗悪で利潤の少い時期であり、特に原告は毎年の納税に追われ納税資金を作るため三割引、四割引の大売出によるダンピングをしきりに繰返さざるを得ない状態にあつて真実売買利益率は低かつた。

第一の三もすべて争う。原告の諸帳簿はいずれも正確真実なものであつて青色申告承認は取消さるべきでない。

第二の所得計算はその根拠とするところを全部争う。

さきに述べたところによつて明らかなとおり帳簿の記載に基く原告の計算が正当なものであつて被告の計算は不当である。

抑々効率表により所得を推計することが許されるのは納税者が帳簿を全く整えていないか又は少くとも課税の根拠とすることが全くできない程度に不備な場合に限られるというべきである。原告の帳簿類は仕入は仕切書により、支払は小切手控又は手形控帳により、経費は領収書等により、明白確実に記載されているのであるから、標準率による推計課税は許されないものといわなければならない。

仮に然らずとしても、被告は秋田市内有数の業者三名について売買利益率を調査した結果をもつて原告の係争事業年度における利益率を推定する根拠としているが、秋田市と原告の店舗所在地である本荘市との地域差・人口差および商店数の差ないし前記のような原告の特殊事情を考慮しない点において全く不当であつて、到底承服し得ないところである。」旨反論した。

立証<省略>

被告指定代理人は主文と同旨の判決を求め、答弁として

「原告の主張事実中(一)は認める(但し原告の得た青色申告書提出の承認は法人税法第二五条第六項による承認又は却下の処分が為されなかつた結果としてのみなし承認であつて、係争事業年度の直前の事業年度即ち昭和二五年四月一日から同二六年三月三一日までの期問にはじまるものである。)が(二)は否認する。

被告の為した本件審査決定は次の理由によりいずれも適法である。

第一青色申告書提出承認の取消関係

一  原告の諸帳簿記載事項の真実でないことについて

1 元帳の仕入金額および買掛明細帳について

(一)原告が保管している仕切書綴(表紙は、「自昭和二六年四月・至同二七年三月仕切書類その壱(五十音順)自ア行・至カ行」裏表紙は「自昭和二六年四月・至同二七年三月仕切書類その弐(五十音順)自サ行・至ハ行」と表示されているが、その内容は、株式会社石井から株式会社山修呉服店分まで綴込まれている)に綴込まれてある仕切書等の仕入関係証ひよう書類について調査するに、係争事業年度の仕入先元帳たる昭和二六年度買掛明細帳(乙第六九号証・以下「買掛明細帳」という。)による仕入先六九件、元帳の仕入勘定から抽出した現金仕入と認められる仕入先三七件、合計一〇六件中、(別表四「仕入金額欄」参照)仕切書等の証ひよう書類の保存あるものは四四件の仕入先に関するもののみであり、しかも、その仕切書等と買掛明細帳の当該仕入先の口座の記帳と対照するに、完全に符合するのは、わずかに一二件の仕入先のみである。

なお、この仕切書綴により仕入金額を計算するに仕入総額八四七万六、〇九〇円で、その内運賃等の仕入諸掛一二万五、六一三円差引純仕入金額八三五万〇、四七七円であり元帳の仕入勘定による仕入金額および買掛明細帳のいずれにも符合しない。

(二) 買掛明細帳の「加藤孝商店」の口座の仕入金額(原告は、仕入金額を支払金額欄に、仕入代金の支払金額等を仕入金額欄に記載している。)に、昭和二六年九月一八日、六、三五〇円、同月三〇日二万二、五〇〇円、同年一〇月一二日一万八、八五〇円の記帳があるが、仕切書綴の加藤孝の仕切書には同年九月八日付の樹脂加工サージ、六〇ヤール、単位二〇五円、その金額一万二、三〇〇円、荷具送料二〇〇円合計一万二、五〇〇円から返品三〇ヤール、六、一五〇円を差引いた六、三五〇円の納品書(乙第四六号証)および同年同月二四日付のエンヂアセテート、三〇ヤール、単価二〇五円、その金額六、一五〇円、茶アセテート、三〇ヤール、単価二〇五円、その金額六、一五〇円、荷具送料二〇〇円、合計一万二、五〇〇円の納品書(乙第四七号証)ならびに同年一〇月八日付の樹脂サージ、三〇ヤール単価二〇五円その金額六、一五〇円荷具送料二〇〇円、エンヂアセテート、三〇ヤール、単価二〇五円、その金額六、一五〇円および茶アセテート、三〇ヤール、単価二〇五円、その金額六、一五〇円、荷具送料二〇〇円、合計一万八、八五〇円の金額を記載した伝票(乙第四八号証)(同年九月八日および同年同月二四日付の納品書に対する請求書と思われる。)が綴込まれていることからみると前記の原告記帳の同年一〇月一二日付の一万八、八五〇円の仕入は、同年九月一八日記帳の仕入六、三五〇円および同月三〇日記帳の仕入一万二、五〇〇円合計一万八、八五〇円と重複していることが明らかである。

(三) 買掛明細帳の「小川利夫商店」の口座の仕入金額に、昭和二六年四月一六日一万五、七〇五円の記帳があるが、仕切書綴には、小川利夫商店の昭和二六年四月五日付の九A乗馬ズボン、一〇本、単価六五〇円その金額六、五〇〇円、荷具送料二〇五円、合計六、七〇五円の仕切書(乙第四九号証)の後に、同日付のギヤバ学生服、五着、単価一、八〇〇円、その金額九、〇〇〇円の木村彦一商店名義の納品書(乙第五〇号証)が綴込まれており、前記の一万五、七〇五円は、この両者の合計と符合し、しかも元帳の仕入勘定および買掛明細帳の「木村彦一」の口座にはこの納品書に対応する記帳がない。(元帳の仕入勘定には、昭和二六年四月一六日に小川利夫として六、五〇〇円および九、〇〇〇円の二口の仕入記帳があるが、この両者の合計に前記小川利夫商店の仕切書の荷具送料二〇五円を加算した金額が、前記一万五、七〇五円と符合する。)

また、別口座の仕入金額に同年四月一七日四、五六〇円の記帳があるが、仕切書綴には、昭和二六年四月一七日付の黒ズロース二四枚、単価八〇円、その金額一、九二〇円、大人パンツ、二四枚単価一一〇円、その金額二、六四〇円合計四、五六〇円の木村彦一商店名義の納品書(乙第五一号証)が綴込まれており、買掛明細帳の「木村彦一」の口座および元帳の仕入勘定には、この納品書に対応する記帳がないのみならず、この記帳に相当する小川利夫商店名義の仕切書等は綴込まれていない。

したがつて、買掛明細帳の「小川利夫商店」の口座の仕入金額に、昭和二六年四月一六日記帳した一万五、七〇五円のうち九、〇〇〇円および同年同月一七日記帳した四、五六〇円は、「木村彦一」の口座に記帳すべきものを誤つて「小川利夫商店」の口座に記帳したことが明らかであり、さらに原告の調査した原告と小川利夫商店との取引状況調(乙第三六号証の一および六乃至九)によつても一層明らかである。

(四) 買掛明細帳の「株式会社入原本店」の口座の仕入金額に、昭和二七年一月一〇日(一二月三〇日分)九、三〇〇円、(一二月三一日分)二、〇〇〇円の記帳があるが、仕切書綴に綴込んでいる昭和二六年一二月三〇日および三一日付の株式会社入原本店の出荷御案内(乙第五二号証および乙第五三号証)によれば、前者は別珍色2号(女)、数量一〇〇、単価一七三円、その金額一万七、三〇〇円および別珍色一-天石(女)、数量二〇、単価二一八円、一ての金額四、三六〇円、運賃二〇〇円、合計二万一、八六〇円から返品した別珍色2号(女)、数量六〇、単価一七三円、その金額一万〇、三八〇円および別珍色一-天石(女)、数量一〇、単価二一八円、その金額二、一八〇円、計一万二、五六〇円を差引いた金額であり、後者は、別珍黒二-天(豆)、数量七〇、単価九五円、その金額六、六五〇円、運賃一〇〇円、合計六、七五〇円から返品した別珍黒二-天(豆)、数量五〇、単価九五円、その金額四、七五〇円を差引いた金額である。しかして、当該口座に昭和二七年一月一〇日返品として一万七、三一〇円の記帳があるが、これは、前記の返品一万二、五六〇円と四、七五〇円の合計金額であり、仕入記帳の際に既に返品分を差引いて記帳しているので、この返品一万七、三一〇円の記帳は、実質的には返品の重複記帳であることが明らかである。

このことは、株式会社入原本店の原告との取引記録(乙第四〇号証の四(下から六行目以下)および乙第四〇号証の五(上から七行目乃至九行目))によつても明らかである。

(五) 買掛明細帳の「前田商店」の口座によれば仕入金額に記した昭和二六年五月一四日の八、四八〇円および同年一一月一二日の一万八、三九五円を同年一二月一一日「現金仕入処理につき買掛分誤記振替す」としてそれぞれ振替しており、元帳の仕入勘定によれば、同日に「誤記分振替」として五月一四日分八、一三〇円(前記の八、四八〇円から運賃諸掛三五〇円を除算した金額)および一一月一二日分一万八、〇六〇円(前記の一万八、三九五円から運賃諸掛三三五円を除算した金額)を仕入金額から減額している。これは、仕切書綴に綴込まれている前田商店の五月六日付入日記および一〇月二〇日付の出荷御案内(乙第五四号証および第五五号証)によれぽ、この二口の仕入は明かであり、買掛明細帳の「前田商店」の口座の振替が現金仕入処理のためとすれば、現金仕入、買掛仕入の区別なく、その総額を記帳すべき元帳の仕入勘定において仕入金額から減額した記帳は誤りであることが明かである。

なお、金銭出納帳には、昭和二六年五月一四日同年一一月二〇日および同年一二月一一日のいずれの日にも別記二口に対する現金支払の記帳がない。

(六) 仕入先の一部について、原告との取引状況を調査したところ、調査の結果と買掛明細帳の記帳と不符合のものがあり係争事業年度末の買掛金のうち別表一「買掛金の過大計上額調」のとおり一三八万四、三一七円は架空計上であることが判明した。

さらに「第二の一仕入金額について」において後述するように仕入金額についても不符合である。

2 元帳の支払手形勘定について

係争事業年度末の元帳の支払手形勘定の残高は、二三四万九、二七二円四八銭であるが補助簿である先附小切手支払手形控帳(以下「支払手形控帳」という。)と不符合であり被告が調査した結果は、別表二「支払手形調」のとおりで八一万六、一五五円五〇銭が正しく、一五三万三、一一六円九八銭は架空計上であることが判明した。

3 金銭出納帳について

係争事業年度の金銭出納帳は、日付順に記帳はされているが一貫して、てい寧なかい書体にほとんど変化がなく、筆跡も一定期間同一であり、インクの色もほゞ同じ色調を保つており、毎日記帳しておる帳簿は相当に汚損しているのが、普通であるが、当該金銭出納帳はほとんど汚損していない。これらの点および前述1の(五)の事実等を総合して判断するに、金銭出納帳は明らかに毎日毎日記帳されたものとは認められない。このことは、記帳事実発生の都度記帳したと認められる支払手形控帳と対比して明らかである。

(元帳および買掛明細帳についても、金銭出納帳ほど明らかではないが、同様に判断される。)

現金小売業を営む法人は、毎日記帳してさえも売上金額を正確に計算するには、種々困難が伴うのであるが、現金出納帳を毎日記帳していないことは、現金収入たる売上金額を毎日記帳しないことであり、この事実のみによつても原告の計算全体の正しくないことがうかがわれる。

4 架空経費の計上について

(一) 原告は、昭和二六年四月三〇日阿部甚之助に対して給料四、五〇〇円及び同年一二月七日同人に対して東京、名古屋、大阪、広島出張旅費七、二九六円を支出したとして、元帳の給料勘定(乙第五六号証)及び旅費交通費勘定(乙第五七号証)にその旨の記帳(元帳の旅費交通費勘定には昭和二六年一二月一七日に「東京、名古屋、大阪、広島出帳阿部」とのみ記帳しているが、「昭和二六年一〇月一日以降の領収書綴」に綴込まれている受領書(乙第五八号証)によれば、阿部甚之助であることが明らかである。)をしているが、これは次の理由により架空経費と判断される。

(なお、給料勘定の五月以降は何月分給料として一括記帳されており、各人別の支払記帳がないので、その金額の計算は困難であるが、一二月に阿部甚之助に対する出張旅費の支出記帳があることから、五月以降の給料中にも同人に対する給料の架空計上があつたものと推測される。)

同人は

(1) 昭和二六年一月以降は、原告会社に勤務していない。このことは、「秋田南税務署収税官吏大蔵事務宮佐藤正の阿部甚之助に対する質問顧末書」(乙第五九号証)によつて明らかである。

(2) 昭和二六年一月以降はその生活が極度に困窮し、秋田市福祉事務所より生活扶助を受けている。このことは「秋田市福祉事務所長の証明」(乙第六〇号証)により明らかである。

(二) 原告は、昭和二六年一一月一三日社長外二名の東京出張旅費一万六、三六〇円を支出したとして元帳の旅費交通費勘定にその旨の記帳をしているが、この内訳は、「昭和二六年一〇月一日以降の領収書綴」に綴込まれていた受領書(仙台国税局収税官吏大蔵事務官渡辺武雄が昭和三一年四月六日原告会社において調査した際には存在したが、現在では領収書綴に綴込まれていない。)によれば次のとおりである。

(1) 山田久治分 東京出張七、一二〇円

内訳 二、四二〇円 秋田廻往復急行汽車賃

八〇〇  宿泊料(一泊一人分)

七〇〇  自動車電車賃(三人分)

二、〇〇〇  日当四日分

一、二〇〇  その他

(2) 真坂キミ子 東京出張四、〇二〇円

内訳 二、四二〇円 秋田廻往復汽車賃

八〇〇  宿泊料(一泊分)

八〇〇  日当四日分

(3) 山田干代江 東京出張五、二二〇円

内訳 二、四二〇円 秋田廻往復汽車賃

八〇〇  宿泊料(一泊分)

二、〇〇〇  日当四日分

原告における東京出張は、仕入用務と認められるが、原告程度の営業規模においては、仕入のために三人も同時に出張しなければならない必要性は認められないところである。しかして真坂キミ子は、昭和二六年一一月は勿論、原告会社に勤務中において東京方面に出張した事実がない。このことは、「本荘税務署法人資産係長鈴木一郎の同人に対する質問顛末書」(乙第六一号証)で明らかである。従つて昭和二六年一一月一三日旅費交通費勘定に記帳した前記一万六、三六〇円の中四、〇二〇円は架空経費と判断される。

二 原告の損益計算書および貸借対照表記載事項の真実でないことについて

「一原告の諸帳簿記載事項の真実でないことについて」において述べたとおりの真実性を欠く諸帳簿を基礎として作成した係争事業年度の損益計算書(甲第四号証の四)および貸借対照表(甲第四号証の二)の記載事項が真実でないことは容易に推認されるところであるが、更に次に述べる事実によつても一層明らかである。

1 原告の買掛明細帳により係争事業年度の仕入金額を各仕入先ごとに計算し、これを合計したところ六九件で一、〇七九万一、三七七円である。この金額には、運賃等の仕入諸掛の金額が一七万六、一六四円含まれているので、これを差引けば純仕入金額は、一、〇六一万五、二一三円であり損益計算書の損失の部に計上した「仕入高一、二一四万二、〇九二円九〇銭」は一五二万六、八七九円九〇銭過大である。

また、元帳の仕入勘定から買掛明細帳に口座のない仕入先からの現金仕入と認められるものを抽出するに三七件で仕入金額一〇三万七、九〇二円(別表四「仕入金額調」の番号七〇乃至一〇六参照)であり、これを買掛明細帳により調査した前記仕入金額一、〇六一万五、二一三円に加算しても、一、一六五万三、一一五円であり損益計算書に計上した「仕入高」は、なお過大である。よつて、損益計算書の仕入金額の不正確であることは明白である。

2 損益計算書によれば、損失の部に計上した「前期より繰越商品七四一万五、〇三三円六六銭」同じく「仕入高一、二一四万二、〇九二円九〇銭」利益の部に計上した「柵卸品五四四万二、七八〇円七〇銭」であるから売上商品原価は、前二者の合計から後者を控除した一、四一一万四、三四五円八六銭となり、利益の部に計上した「商品売上高」が一、四三二万七、一五九円八一銭であるから売買利益金額は、二一万二、八一三円五九銭となり、売買利益率(売買利益金額の売上金額に対する割合)は一、四%であり極端に低く、しかも原告の取扱商品中一七種目について調査した商品別売買利益率の平均は、一九、四%(別表六「原告の商品別売買利益率調」)であり、係争事業年度の売買利益率がこのように低くなるべき特別の事情は認められず、これは前述の諸帳簿の記帳状況から、売上金の除外によるものと判断される。

三 青色申告書提出承認の取消処分の適法性について

原告の諸帳簿の記載事項は、前述一および二のとおりであり、仕入に関する仕切書の大部分が保存されず、諸帳簿の記載事項が記帳それ自体から不実の記載であることが明らかであるばかりでなく、その実体について真実性を疑うに足りる不実の記載がある。

原告の主張する仕切書等が欠けている理由はそれ自体弁解にならぬものであり、法人税法施行細則第一九条により本件についていえば昭和二七年四月一日から五年間保存しなければならなかつたのである。

いずれにしても以上の事由は法第二五条第七項第一号および第三号に該当するもので、訴外本荘悦務署長が青色申告書提出承認を取消したことは、正当であり、これに対する審査の請求を棄却した被告の処分は適法である。

第二法人税課税標準(所得金額)関係

「第一青色申告書の提出承認の取消関係」において述べたように原告の諸帳簿記載事項は真実でないため、青色申告書の提出承認を取消したので、法第二五条第七項の規定により、原告の係争事業年度の青色申告書は、青色申告書以外の申告書とみなされた。

よつて次の方法により、係争事業年度の所得金額を計算した。

一  仕入金額について

1 「第一の一の1元帳の仕入金額および買掛明細帳について」および「第一の二原告の損益計算書および貸借対照表記載事項の真実でないことについて」において述べたように、原告の損益計算書(甲第四号証の四)の損失の部に計上した「仕入高」は信ぴよう性を欠くので、係争事業年度の総仕入金額を各仕入先ごとに具体的に調査した結果にもとづき別表四「仕入金額調」のとおり、一、二〇五万三、〇二三円と計算した。この計算根基は、別表四「仕入金額調」の「計算根基」欄のとおりであるが、いずれも運賃諸掛を除算した金額である。この金額から別表五「呉服まつり歳暮大売出等の景品に使用した商品の調」の七万六、一四三円を除算し、仕入金額を一、一九七万六、八八〇円と計算した。

右の「呉服まつり」、「歳暮大売出」等の景品に使川した商品は原告の計算においても、元帳の仕入勘定より除算し、広告宣伝費勘定に振替記載しており、損益計算書の損失の部の諸経費二〇四万三、六六九円一一銭中の広告宣伝費四三万二、一四二円(甲第四号証の八)中に含まれている。

2 原告は、仕入金額の計算において別表一〇記載の二五万〇、二五九円を消耗品費として総仕入金額より除算しているが、これには次のような誤りがある。

(一) 北川文庫六万三、二一三円、三協商会五万二、三五七円および中近文庫紙部三万七、七七〇円として計算しているが、原告の主張するこれらの者からの仕入金額は、北川文庫四万三、二三三円(運賃三、〇九〇円を加算しても四万六、三二三円)三協商会五万二、二五七円五〇銭(運賃七二五円を加算しても五万二、九八二円五〇銭)、中近文庫紙部は三万二、五七〇円(運賃二、一三五円を加算しても三万四、七〇五円)であり、いずれも係争事業年度中の仕入金額をこえる金額を仕入金額から除算しており、誤りであることが明らかである。

なお、被告の計算においては、別表四「仕入金額調」のとおり、これらの者および大西泰一商店からの仕入は、いずれも営業消耗品と認められるので、仕入金額は零として計算している。

(二) 歳末売出二八、〇〇〇円、嫁衣裳売出三件で一万九、四二八円、合計四万七、四二八円を仕入金額から除算しているが、これは「第二の一仕入金額について」において述べたとおり、原告の帳簿においても別表五「呉服まつり、歳暮大売出等の景品に使用した商品の調」の金額七万六、一四三円を除算しており、前述の四万七、四二八円には「呉服まつり」分の二万八、二一五円がもれている。このことは、昭和二六年一一月三〇日、元帳の仕入勘定から二万八、二一五円を広告宣伝費に振替えていることで明らかである。

(三) 木村典平分三、〇〇〇円、大進商会分二万四、二〇〇円および寺本信吉分四、五〇〇円の値引を含めて計算しているが、これらの者からの仕入は既往事業年度分においてなされたもので、係争事業年度には、これらの者からの仕入金額は零であるからこれらの金額を係争事業年度の仕入金額から除算すべきでない。原告はこれらの者から買掛金債務の免除を受けたので、これを買掛金から除いて同額を営業外収益として計上すべきものを、仕入金額から除いたものである。

原告は「値引を受けて得意先に贈呈したのであるから、消耗品に振替えたのは正しい」と主張するが、値引と贈呈とは関係のないことであり、値引の金額を消耗品(損金)に振替えることは誤りである。

かりに、三、〇〇〇円の商品の仕入、贈呈、値引が同時に行われたとすれば、贈呈した商品の原価は零であり、これを贈呈しても損益が生じないはずであり、この値引を受けた金額三、〇〇〇円を消耗品(損金)に記載することの誤りは明白であり、まして本件のごとく仕入、贈呈、値引の行われた時が異なる場合には、それぞれの取引の帰属する事業年度が異なり、値引と贈呈を結びつけることが誤りであることは明白である。

二  売上金額について

「第一の一の3金銭出納帳について」および「第一の二原告の損益計算書および貸借対照表記載事項の真実でないことについて」において述べたように、原告の損益計算書(甲第四号証の四)の利益の部に計上した「商品売上高」は、信ぴよう性を欠くので、次のとおり売上金額を推計した。

1 「仕入金額について」において計算した仕入金額一、一九七万六、八八〇円を基礎として、損益計算書の損失の部に計上した「前記より繰越商品七四一万五、〇三三円六六銭」を加算し、利益の部に計上した「棚卸商品五四四万二、七八〇円七〇銭」を除算し、売上商品原価を一、三九四万九、一三二円九六銭と計算した。

2 最近の原告の取扱商品中一七種目について調査した商品別の売買利益率は別表六「原告の商品別売買利益率調」のとおりであり、その平均は一九、四%である。

3 昭和二七年八月に、国税庁法人税課において、資本金五〇〇万円未満の会社であつて、昭和二六年一二月一日から昭和二七年三月三一日までの間に終了した事業年度の調査事績に基き編さんした法人の効率表の入口五万未満の町村における洋服生地小売業(細目呉服小売を主とするもの)の売買利益率は最高二三、一%、最低一八、三%であり、その平均は二〇、六%である。(乙第六八号証の一および二)

また最近被告が秋田南税務署管内の衣料品小売業を営む三法人の代表者等について昭和二六年当時の状況について調査したところによると、当時は現在ほど競争が激しくはなく現在よりも売買利益率は高かつたことが明らかである。(乙第六四ないし六七号証)従つて最近における原告の商品別売買利益率の平均値一九、四%は本件係争事業年度における原告の衣料品小売による売買利益率を超えることはないと認むべきである。

原告は本件係争事業年度において極めて数多くの大売出をしたため売買利益率は低かつたと主張するが、そのいうほどの回数の大売出が為されていないことは後記のとおりであり、三割引・四割引というようなことは単なる宣伝文句であつて数回の大売出のため利益率が大きく左右されるものでないことは経験則上明らかといわなければならない。

4 そこで1により計算した係争事業年度の売上商品原価一、三九四万九、一三二円九六銭を基礎として、これを2の平均売買利益率一九、四%から得られる原価率八〇、四%で還元し、売上金額を一、七三〇万六、六一六円と推計した。

三  所得金額の計算について

原告の損益計算書(甲第四号証の四)損失の部に計上した「仕入高一、二一四万二、〇九二円九〇銭」は前述「1仕入金額について」により計算した一、一九七万六、八八〇円よりは一六万五、二一二円九〇銭を過大に計算してあるから、この金額を原告計算の仕入高より除算し、利益の部に計上した「商品売上高一、四三二万七、一五九円八一銭」は、前述「2売上金額について」により計算した一、七三〇万六、六一六円より、二九七万九、四五六円一九銭過少であるから、この金額を商品売上高に加算し、利益の部に計上した「過不足八万七、二七五円」は、売上計上もれに起因する現金過大分(金銭出納帳の残高より過大な現金)であり被告の計算においては、前述の売上金一、七三〇万六、六一六円に含まれるから、これを除算し、さらに「第一の一の4架空経費の計上について」において述べた架空経費一万五、八一六円(旅費一万一、三一六円および給料四、五〇〇円)を損失の部に計上した諸経費二〇四万三、六六九円一一銭から除算すれば、他の科目はすべて正しいものとしても、損益計算書の当期利益金額は九七万二、四二九円九三銭となる。

なお、原告主張額と被告主張額を対比した損益計算書は、別表七「原告主張額と被告主張額を対比した損益計算書」のとおりである。

四  法人税課税標準の決定処分の適法性について

原告の係争事業年度の確定申告書は、青色申告書提出承認の取消により青色申告書以外の申告書とみなされたので、法第三一条の四第二項の規定を適用し「一の3所得金額の計算」において一部推計により計算した係争事業年度の所得金額九七万二四二九円九三銭に法第九条第二項の規定により損金に算入しないことになつている損金に計算した法人税額九、五八八円を損金より除算し、係争事業年度において確定した前事業年度以前の法人税に対する利子税額二万五、六六四円を損金に加算すれば、法人税の課税標準たる所得金額は九五万六、三五三円九三銭(国庫出納金等端数計算法(昭和二五年三月三一日法律第六一号)第五条の規定により百円未満の端数を切り捨て、九五万六、三〇〇円)となりこの所得金額の範囲内において、訴外本荘税務署長が決定した所得金額六五万〇、三〇〇円とする決定は適法であり、従つてこれについて原告の審査請求を棄却した被告の処分も適法である。」

と述べた

立証<省略>

理由

原告が従前青色申告書提出の承認を受けた法人であつて、昭和二六年四月一日から同二七年三月三一日までの事業年度の法人税に関し、同二七年五月三一日本荘税務署長に欠損金額が二〇九万一、一九二円であつて納付すべき法人税がない旨の確定申告をしたこと、同税務署長が同二八年七月一五日原告に対し右事業年度以降の青色申告書の提出承認を取消す旨および同事業年度の所得金額を六五万〇、三〇〇円・徴収すべき法人税額二九万四、四八〇円(過少申告加算税一万四、〇〇〇円を含む)と決定する旨通知したこと、これに対し同年八月五日仙台財務局長宛「法人税課税根拠再調査願の件」と題する書面を本荘税務署に提出し、結局それが被告に対し適法に審査請求をしたものとみなされたが、同三〇年三月三〇日被告は各審査請求棄却の決定をし、同年四月五日原告にその通知をしたこと、は当事者間に争がない。

一、そこで先ず青色申告書提出承認の取消の適否について検討する。

(一)  原告がその所得計算を根拠づけるものとして提出した成立に争のない甲第四号証の二本件係争事業年度の決算書類綴中の貸借対照表には負債として買掛金二九五万五、三三六円七四銭が計上されて居り、その内訳を明らかにするものとして提出された甲第六号証の一、二(買掛明細帳)には九八口の明細が掲げられている。ところが成立に争のない乙第一・二・三号証、第四号証の一・二、第五・六・七号証、第八号証の一・二、第九・一〇号証、第一一号証の一・二、第一二ないし一五号証、第一六号証の一・二、第一七号証、第一八号証の一・二、第一九号証、第二〇・二一号証の各一・二、第二二ないし三五号証、第三六号証の一・二・四・六、第三者の作成にかかり右乙第三六号証の一・二・四・六との関連上真正に成立したものと認むべき同号証の三・五・七・八・九、成立に争のない乙第三七号証の一・二、第三八号証の一二・三、第三九号証の一・二、第四〇号証の一・二、第三者の作成にかゝり乙第四〇号証の一・二との関連上真正に成立したものと認むべき同号証の三・四・五成立に争のない乙第四一号証の一・二、第三者作成にかゝり右乙第四一号証の一・二との関連上真正に成立したものと認むべき同号証の三、成立に争のない乙第四号証の一・二、原本の存在ならびに成立につき争のない同号証の三・四(原告と富士被服間の往復書簡写)、成立に争のない乙第四五号証の一、第三者の作成にかゝり右乙第四五号証の一との関連上真正に成立したものと認むべき同号証の二に証人渡辺武雄の証言を綜合すると前記買掛明細帳に債権者として掲げられている九八名のうちには税務当局の本件係争事業年度末日現在における原告会社との取引残高の照会に対し「取引なし」又は「残高なし」の回答をしたもの、買掛明細帳の残高より少い金額を回答したもの、買掛明細帳その他の帳簿に記載されているその住所にあて発送した照会の書面が名宛人尋ねあたらずとして返送されたものが相当数あつて、この返送分を「取引なし」「残高なし」の回答のあつた分と同様に見ると、被告主張のとおり末尾添付別表(一)記載の四一口合計一三八万四、三一七円が税務当局の調査結果よりも多く計上されていることが明らかである。

この点につき原告は、右四一口の分は概ね昭和二四・五年度から繰越された古い買掛金の債務であるため債権者側では或は残高がないものとして処理したにしても、原告としてはどこまでも債務は債務として支払う意思があり、さればこそ前事業年度の法人税の申告の際決算書類にも次年度へ繰越すべき買掛債務として計上し、これを本件係争事業年度に引継いでいるのであつて、右前年度の決算は税務当局においてそのまゝ承認しているから、右繰越分をその主体とする前記四一口の買掛金をいまさら否定することは許されないと主張する。そして前顕甲第六号証の一、二買掛明細帳のこれら四一口の各口座の記載を見ると、たしかに係争事業年度期首における前年度からの繰越残高がそのまゝ期末の残高と一致し又は幾分増大して期末の残高となつているような形のものが多いことが明らかであるばかりでなく、これら各期首の繰越残高は、その体裁内容からして原告会社の前年度の法人税申告の際申告書に添付した決算書附属書類であると認められる甲第一四号証の一〇勘定科目内容説明書(買掛金)と題する書面と対比すると、夫々当該各口座の金額と符合することが認められるから、右買掛明細帳は前事業年度の帳簿と簿記上の連絡を保ちこれを引継いで記帳されたものであつて、前記四一口一三八万円余は一応原告主張のとおりその大部分が前年度からの繰越分をそのまゝ期末に持越した形になつているといわざるを得ず、且つ又原告が前年度の法人税に関し申告をそのまゝ認容されていることは弁論の全趣旨によつてこれを肯定し得るところである。

しかし原告が本件係争事業年度の前年度からしかも被告のいう自然承認の形で青色申告書提出の承認を得たにとどまることはその明らかに争わないところであり、税務当局が前事業年度において調査の結果積極的に原告が計上した同期末の買掛金残高の存在を確認したものと認むべき証拠はないから、冒頭に認定したとおり、本件係争事業年度において原告の計上している買掛金のうち口数においても金額においてもその半分に近いものについて債権者とされている者の側からその存在を積極的又は消極的に否定する資料が出されている以上、これに対する合理的な説明が為されないかぎり、単に前年度において計上買掛金の金額やその関係帳簿の記載が税務当局によつて否認されることがなかつたというだけの理由でその真実性が確定されるいわれはない。

原告会社代表者山田久治本人の第三回の供述中には、これらの調査・回答はすでに原告が各債権者から債務の免除を得たのちに行われたため前記のような結果となつているに過ぎず、係争事業年度においては現存の債務であつた旨の部分があるけれども、同供述によると、債務の免除を得た時期は昭和二八年四月にはじまる同年度中であつて、その頃自ら一々各地の債権者を訪ね夫々免除の確約を得たというのであるが、前記調査・回答はそれ以前に行われていることが前顕各証拠によつて明らかであるから、右供述自体何ら有効な弁明となり得ないのみならず、免除の有無に関する点においてその第二回の供述と全く相反し到底措信することができない。そして右以外にはこの点に関し何ら首肯すべき説明は為されていない。(原告の提出にかゝる甲第一六ないし四八号証(枝番のあるものは枝番とも)は、その体裁・内容からするとこれら取引先とされている者から交付された仕切書類と認められるが、いずれもそれ自体原告主張の前記買掛金残高を裏付ける内容を有するものとは認められない。)

そうだとすると、前記四一口総額一三八万四、三一七円の買掛金は、照会書が返送されたもののうちには廃業転居等の事由で名宛人に届かなかつた分があるかも知れぬということや、残高なしという回答を寄せたもののうちには質問されている時点について誤解したか又は自己に対する課税上の考慮から回収困難な債権は早目に切捨てた形にしておいた方が有利だとしてそのような回答をした債権者があるかも知れぬということも全く考えられないわけではないから必ずしもその全部が架空とは断じがたいにしても、反面取引なし又は該当なしといううちには明らかに一度も取引したことがないという趣旨に解されるものもあつて、少くとも大半は架空計上と認めざるを得ないところである。そしてそれが概ね過年度において架空過大に計上されたものであつて、その繰越の形でそのまゝ係争事業年度の期末残高を過大にふくらませているものであり、係争事業年度において新しく計上されたものでないことは前認定のとおりであるが、いずれにしでも買掛金過大計上がそれ自体貸借対照表上利益をそれだけ低くあらわす働きをもつものであることにかわりはない。

(二)  又原告会社の本件係争事業年度の総勘定元帳には(1) 昭和二六年四月三〇日阿部甚之助に対し給料四、五〇〇円を支払つたことを意味する記帳、(2) 同年一二月七日同人に対し東京・名古屋・大阪・広島への出張につき旅費七、二九六円を支払つたことを意味する記帳、(3) 同年一一月一三日真坂キミ子に東京への出張旅費四、〇二〇円を支払つたことを意味する記帳が為されて居り、原告が右各金額を営業経費に計上していることは原告の争わないところであるが、成立に争のない乙第五九・六〇号証および証人渡辺武雄の証言により成立を認め得る乙第六一号証によると阿部甚之助は昭和二六年一月以降は原告会社に勤務せず生活困窮者として秋田市福祉事務所から生活扶助を受けていたこと、および真坂キミ子が本件係争事業年度中東京に出張した事実のないことが認められ、右認定に反する原告会社代表者山田久治本人の第一・二回の供述はたやすく措信しがたく同供述により成立を認め得る甲第一〇・一一号証の記載内容もその作成の事情に徴し真実性に関して十分の心証をひきがたく、他に右認定を妨ぐべき資料は存しない。従つて右(1) (2) (3) の各経費の記帳はいずれも架空のものと認むべきである。

(三)  原告が仕入に関する仕切書類のうちかなりの部分を所持していないことはその自認するところである。原告は本件係争事業年度の当時はいわゆるやみ取引に類する仕入が多く、これらの仕入については当初から仕切書は作られなかつたとか、その後年月の経過により昭和三〇年頃に至つて失われたものもあるなどと主張するが、法人税法施行細則第一九条により青色申告書を提出する法人は取引に関して相手方から受取つた注文書・契約書・送り状・領収書、見積書等は取引のあつた事業年度の翌事業年度開始の日即ち本件においては昭和二七年四月一日から五年間保存しなければならないことが明らかであるから、かゝる原告の弁解はそれ自体失当といわなければならない。

(四)  更に原告の本件係争事業年度の金銭出納帳であることに争のない甲第七三号証の一・二は、その各葉の汚損の程度について日付の古い分も新しい分もさして差異が認められないこと、および特にその内容をなす各葉各行の記載も数日分宛字体やインクの色が同一のように見受けられることからして、一年三六五日毎日克明に記帳されたものとはたやすく認めがたいものがある。そして特に日々の現金の出入りを記録すべき金銭出納帳は、その性質上毎日順を追つてありのまゝに記帳されることによつてはじめてその存在意義をもち従つて信憑性をもそなえるものというべきであつて、前記のとおりその体裁自体からしてそのように認められない場合は、そのことについて特に首肯すべき事情のないかぎりその記載内容の真実性についての信憑力は著しく損われるものといわざるを得ない。

(五)  のみならず成立に争のない甲第四号証の四(原告が本件係争事業年度の決算書類として所得計算の基礎としている損益計算書)によると、原告の同年度における仕入高は一、二一四万二、〇九二円九〇銭・前記からの繰越商品七四一万五、〇三三円六六銭・商品売上高一、四三二万七、一五九円八一銭・期末棚卸商品五四四万二、七八〇円七〇銭となつていて、売上原価は繰越商品と仕入高を加えたものから期末棚卸商品を引いた一、四一一万四、三四五円八六銭にあたり、これを前記売上高と比較すると係争事業年度における原告の売買差益率はわずか一・五パーセントにも及ばない計算になることが明らかである。そのことは端的にいうと、原告は年間を通じて一〇〇円で仕入れたものを一〇一円五〇銭にしか売らなかつたというに等しいから、弁論の全趣旨により明らかな洋品呉服類の小売業者としての原告の業態からいつて、格別の事情がないかぎりかゝる計算は常識上たやすく首肯しがたいところといわなければならない。

(六)  これらの諸点に関し原告は、その帳簿書類は全部正当に記帳作成されたもので相互に矛盾するところがなく、全体として事実と認めなければならないものと主張する。なるほど原告がその主張の所得計算の根拠として提出した前顕貸借対照表・損益計算書を含む本件係争事業年度の決算書類(成立に争のない甲第四号各証)は一応形の上では総勘定元帳・買掛金明細帳・現金出納帳その他の帳簿によつて基礎づけられて居り、且つこれら帳簿は原告会社の前事業年度の決算関係書類であると認められる甲第一四号各証中の各勘定科目の記載とも簿記上の連継を保つているように見えないではないけれども、そのこと自体はむしろ青色申告を目的として複式簿記により経理を行なつている以上たてまえとして当然のことであつて、その故をもつて帳簿書類の記載内容を真実とするわけにはいかない。

(七)  右次第で、前記(四)、(五)の事情のもとにおいては、(一)、(二)の事由はそれぞれ法人税法第二五条第七項(現行第八項)第三号に、(三)の事由は同項第一号に各該当するというべきであるから、被告主張の他の事実関係につきあらためて検討を加えるまでもなく原告に対し本件係争事業年度以降の青色申告書の提出承認を取消した本荘税務署長の処分は適法といわなければならない。

二、そこで次に原告の申告に対する決定処分の適否について判断する。

(一)  原告に対する青色申告書提出の承認が本件係争事業年度の初に遡つて適法に取消されたものと認むべきことは前段認定のとおりであるから、その効果として原告の提出した青色申告書は青色申告以外の申告書とみなされる。(尤も被告は本訴において、本荘税務署長が本件決定処分において認定した所得金額を推計の方法によつて根拠づけようとするのであるから、そのためには法人税法第三一条の四の規定との関係上右決定処分当時すでに同税務署長の為した青色申告書提出承認取消処分の効力が生じていることが必要というべきであるが、その関係は必ずしも承認取消処分が時間的間隔をおいて決定処分に先行していなければならないものではなく時間的にこれにおくれていなければ足りるものと解するのを相当とするところ両処分が同一日付を以て為され同一の日に原告に通知されていることは前述のとおりであるから反対の証拠のない以上両処分は同時に成立し且つ効力を生じたものと推認すべく、従つて本件決定処分における所得認定を根拠づけるため推計の方法を用いること自体には前記法条に関するかぎり法律上の障碍はないということができる。)

原告は推計課税が許されるのは納税者が収支を明かにすべき帳簿書類を全く備えていないか又は備えていてもなきに等しいほどに不完全な場合にかぎらるべきであつて、原告はそのような場合に該当しないと主張するけれども、推計課税が許容されるのは必ずしも原告のいうほど狭い範囲にかぎられるわけではない。

原告の帳簿書類には買掛金ならびに営業経費について過大架空の金額の計上があること、売上金についてこれを記帳した金銭出納帳の信憑性に欠けるところのあること、および売買差益率に関し常識上首肯しがたい数字を示していることは前段認定のとおりである。ところで一般に物品の現金売りを営業とする企業が簿記上利益を低く見せ又は損失を作り出すためには貸借対照表勘定において負債科目を過大に計上し損益計算書勘定において売上金を過少に計上することが最も安易な方法である(これらの科目に関する簿記の記帳は事の性質上取引先によつて作成交付される仕切書受領書などの証憑書類を基礎としないから、せいぜい当該企業かぎりの伝票などを証憑書類として備えれば足りる点で任意に増減の操作を加えるに適している)ことは簿記上の常識であるから、原告の帳簿書類に前記のような諸点があり、しかも本訴においてこれらの勘定科目の内容について有効な裏付けの立証がなされていない以上それにはかような操作の加えられている疑が濃厚といわざるを得ない。

即ち税務当局としては、原告提出の損益計算書に掲げられた売上金額およびこれを裏付ける各証憑書類帳簿等の金額は実際の売上のうちなにがしかを削つて過小につけ出しこれによつてその分だけ利益をかくしているもの・従つてまたその提出の貸借対照表はそれだけ負債科目の金額に水増しをしてつじつまを合わせているもの、という前提のもとに、原告の所得を認定しなければならないことになるわけである。

ところが、実際の売上がいくばくかを確定するについての直接の資料は事の性質上原告の手持以外にはなく、しかもその資料は当然原告の主張を裏付けるよう適当にとゝのえられていると見なければならないし(実際にそうなつていることは前敍のとおりである)、又それかといつて貸借対照表上負債科目の的確な数字を把握して資産および資本との対照から間接に所得を見出す方法をとろうにも、その負債科目なるものは前記のとおり問題のある買掛金以外のものでも、たとえば前顕甲第四号証の九にその内訳が掲げられている借入金をとつてみれば、その借入先を単に社員として一〇〇万円という金額が計上されているのであつて、原告会社の社員から第三者からのそれと同様な公正な調査結果をひきだすことは到底困難といわなければならないし、そのほか支払手形勘定にしても手形控その他の原始記録の保存されていないものが大部分であることは弁論の全趣旨により明らかであるから、いずれにしても税務当局としては調査によつて所得の実額を確定することはこれを望み得ない場合にあたるということができる。従つて本件において推計の方法によつて係争事業年度の原告の所得金額を認定することは当然許容さるべきものといわなければならない。

(二)  そこで被告主張の売上金額推計の計算根拠について検討するに、証人佐藤正の証言によると、同証人が昭和二八年頃原告会社の店舗に臨みその主要取扱商品について一品毎の仕入価額と販売価額とを調査したところ、末尾添附別表第六記載のとおりその平均売買利益率は販売価額に対し一九・四パーセントという結果が得られたことを認め得べく、又証人渡辺武雄の証言によつて成立を認め得る乙第六四ないし六七号証に同証言を綜合すると、本件係争事業年度中の衣料洋品等小買業者の売買差益率は大体において右調査の時期よりも高かつたことを窺うに足り、なおかつそのことは成立に争のない乙第六八号証の一、二(法人の効率表)によつても裏付けられるところであるから、特段の事情のないかぎり原告会社の本件係争事業年度における営業上の平均売買差益率は前記一九・四パーセントを下らなかつたものと認むべきである。

原告は本件係争事業年度は納税資金等を調達するため採算を無視して屡々三割引・四割引の大売出を行つたため差益率が極めて低かつたと主張し、証人伊藤勇次郎の証言ならびに原告会社代表者山田久治本人の第一・二回の供述中にはこれに副う部分が存するけれども、原告がその期間行なつた大売出のチラシであるとして提出した甲第一二号証の一ないし一三のうち同号証の八・一二・一三以外のものは、大蔵事務官作成の部分の成立に争がなく証人渡辺武雄の証言によつてその余の部分の成立を認め得る乙第七〇・七一号証によると本件係争事業年度のそれとは認めがたいばかりでなく(原告は甲第一三号証の一ないし七を前記各チラシの印刷代の領収証であるとして提出するが、右乙第七〇号証によると、そのような関係にあるものは甲第一二号証の八と第一三号証の六、第一二号証の一二と第一三号証の七の二組に過ぎず、特に甲第一三号証の二は係争事業年度中に依頼した印刷物の印刷代に関するものでないことが明らかである)、これらのチラシ自体夫々に掲げられた大売出期間に該当する日の売上とされている金額を原告の提出にかゝる各月売上伝票綴(甲第五〇ないし六一号証各枝番とも)やその集計表である同第四九号証の一・二についてそれ以外の日の金額とを対照して見ても(尤もこれらの金額も必ずしも毎日の売上の全部を正確に掲げたものと認めがたいことは前敍のとおりであるが)秋の収穫期・年末年始、新学年直前など当然売上が増加して然るべき時期を除くと、前記甲第一二号証の一二の花嫁衣裳大売出にあたる期間以外特に売上が増加しているような形になつてはいないのであるから、本件係争事業年度中に何回かの大売出が行われたことは事実であろうけれども、そのため特に普通の同業者の売買差益率との比較において著しくこれを低下せしめるほどの濫売が行われていたと認める根拠に乏しいものというべく、従つて前記証言ならびに供述部分はその意味においてたやすく措信することができない。

また原告会社代表者本人の第二・三回の供述によると、原告会社は昭和三五年頃倒産して事実上営業を廃したことが認められるが、九年を経過したのちの倒産をもつて直ちに係争事業年度の経営の不振を推定することは困難というべく、この点に関し原告会社は仕入が下手で本件係争事業年度以降終始十分な利益を挙げることができず累年の損失の結果倒産に至つたものである旨の同本人第二回の供述部分は、それだけではその言葉どおり特に本件係争事業年度の決算が真実欠損であつたことを肯認せしめるだけの心証を惹くに足りない。そして右以外に前記認定の反証となるべき資料はない。

そうだとすると、係争事業年度の期首繰越の商品在高・仕入高・期末棚卸商品在高によつて算出される同期間の売上原価を、前記売買差益率一九・四パーセントから当然得られる原価率八〇・六パーセントで還元すれば、当期売上金額を推計し得ることとなるわけであるが、原告の主張によるとその基礎となる売上原価は一、四一一万四、三四五円八六銭となるところ、被告は仕入金額には減額補正すべき点があるとして売上原価は一、三九四万九、一三二円九六銭が正しいと主張している。そして売上原価から売上高を推計しこれによつて所得を計算する場合は、実額を計上する通常の場合とは逆に原価を低くとることが所得計算上納税者即ち原告にとつて有利になることは明らかであり、且つ被告の主張する金額の補正は合理的であると認められるから、売上原価を被告主張のとおりの金額として計算すると、推計売上高は一、七三〇万六、六一六円となることが明らかである。

従つて原告主張の所得計算の内容を表示した前顕甲第四号証の四損益計算書の各項目中、売上高および仕入高は右により夫々補正さるべきであり、また諸経費は前段一の(二)において認定したところに従つて合計一万五、八一六円が減額されなければならないから、末尾添付別表七記載の各被告主張の金額はすべて正当であつて、損益計算上原告が当期損失として二一〇万〇、七八〇円一六銭を掲げたことは不当であり、却つて当期利益九七万二、四二九円九三銭が計上されなければならないこととなる。そして右利益金に税法上の加除修正および端数整理を行えば結局原告会社の係争事業年度の課税所得金額が九五万六、三〇〇円となる旨の被告の主張は首肯し得るところであるから、右金額の範囲内において原告の所得金額を六五万〇三〇円と認定しこれにより納付すべき税額を定めた本荘税務署長の決定処分には原告の所得を過大に認定した違法はないといわなければならない。

三、よつて前記本荘税務署長のなした原告に対する青色申告書提出承認の取消ならびに法人税課税標準ならびに税額の決定処分を正当として維持した被告の本件各審査決定には原告主張のような違法はないというべきであつて、その取消を求める原告の本訴請求はいずれも理由がないから失当としてこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 飯沢源助 蓑田速夫 小泉祐康)

別表一ないし一〇<省略>

附表一ないし三<省略>

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