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仙台地方裁判所 昭和40年(ワ)324号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕四、被告の責任について

前記認定の事実によれば、本件バーナーおよび本件ボイラー室が土地の工作物に該当することは明らかであるというべきところ、原告は、本件火災は右土地の工作物の瑕疵から生じたものであるから、その占有者である被告は民法七一七条一項により責任を負うべきであると主張し、仮に失火責任法の適用があるとしても、本件火災が起るについては被告に重大な過失があると主張する。

1、そこでまず適用法条について考えると、失火責任法がわが国においては木造家屋が多いなどの事情のため、失火によつて一たん火災が発生した場合は附近の家屋に延焼して予想以上の被害が拡大し、失火者の責任が過大となることを考え、その責任を重大な過失にもとつく失火の場合に限定したものと解されるところ、一方民法七一七条一項は土地の工作物の具有する危険性に鑑み、その所有者または占有者は右工作物の設置または保存上の瑕疵によつて生じた損害を賠償すべきものと定め、一種の無過失責任を規定したものと解されるのであるが、土地の工作物から生じた火災についても前記失火責任法の趣旨を没却すべきものではなく、そうだとすれば土地の工作物から直接生じた火災にもとづく損害賠償責任については民法七一七条一項を適用し、これから延焼した部分にもとづく損害賠償責任については失火責任法を適用すべきものと解するのが相当である。

これを本件についてみるに、前記認定事実によれば、本件火災は被告方の本件バーナーから出火して被告方旅館に隣接する原告ら居任家屋に延焼したものであるから、原告らの請求については失火責任法を適用して判断すべきものである。

2、原告らはその主張のような事実にもとづき、被告には本件火災が生ずるについて本件バーナーおよび本件ボイラー室の設備上あるいはその取扱い上重大な過失があつたと主張する。よつて判断するに、

(1)まず本件バーナーおよび本件ボイラー室の設置上被告に重大な過失があつたかどうかを検討すると、前記認定事実によれば、本件ボイラー室は間口3.6メートル、奥行2.7メートルの広さでコンクリート土間に本件バーナーを設置しているもので東側壁を除く周囲の壁の大部分は板で造作されているが仙台市消防署員の査察にあたつて周囲の壁と本件バーナーとの距離は安全なものであると確認されており、その東側のトタン板壁が原告木島しげ子方の板塀に接着して設けられているものの、そのことのみでとくにそれが引火延焼し易い構造であつたということはできないし、また本件バーナーの灯油配管パイプの一部が構造上ビニールパイプであつたことは前記認定のとおりであるが、このことをもつて本件バーナーが著しく安全性を欠いていたということできない。(なお本件火災前約一カ月前にも被告方に小火災があつたことは当事者間に争いがないがそれが本件バーナーおよび本件ボイラー室からの出火であると認めるに足る証拠はない。)なるほど右のような諸構造は防火上からみて望ましいものとはいえず、また本件火災が拡大するについて一つの原因となつたことは推認するに難くないが、右の諸構造のゆえに本件火災が生じたものと認めるに足る証拠はない。なお原告が本件ボイラー室の設置および使用につき所轄消防署長に届出をしなかつたことは当事者間に争いがいないが、これをもつて本件火災を生ぜしめた注意義務違反ということはできない。

従つて被告には本件バーナーおよび本件ボイラー室の設置上重大な過失があつたとする原告の主張は採用し難い。

(2)次に本件バーナーの取扱い上、被告に重大な過失があつたかどうかを検討すると前記認定のとおり本件火災の出火の原因は本件バーナーの調整不良によつて空気出量と灯油出量との間にアンバランスを生じ、噴霧化されない灯油が漏油してこれに引火したものと推認されるのであるが、前記認定事実によれば、本件火災当日本件バーナーに点火した訴外鈴木義幸は当時満二一歳でこれに点火する等の取扱い方法については約一年の経験を有するのであり、右当日も通常の方法で点火し、点火後三分位は火勢を注意し、燃焼の安全を確認してからその場を離れているのであるからその取扱い上通常必要な注意はなしたというべきであり、結果的には調整不良による漏油が生じたのではあるが、このような結果は同人の予想しえなかつたものというほかなく、また本件バーナーが点火中常時監視人を置く必要があるほどの危険性があるものということもできない。

従つて被告に本件バーナー取扱い上重大な過失があつたとする原告の主張もまた採用できない。

以上の次第であるから、原告らの請求はいずれも理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。(佐藤幸太郎 若林昌俊 大内俊身)

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