仙台地方裁判所 昭和49年(わ)37号 判決 1974年6月26日
本店所在地
宮城県名取市閑上字町二五〇番地の一
有限会社 佐々直
右代表者代表取締役
佐々木市郎
本籍
宮城県名取市閑上字町四九番地
住居
同県同市字町二五〇番地の一
会社役員
佐々木市郎
大正五年一〇月一一日生
右被告人らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官桜井正史出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人有限会社佐々直を罰金六七〇万円に、
被告人佐々木市郎を懲役八月に
それぞれ処する。
ただし、被告人佐々木市郎に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人有限会社佐々直は、名取市閑上字町二五〇番地の一に本店を置き、水産物加工および水産物加工品の販売等を業とする会社であり、被告人佐々木市郎は同会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、同人は同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を公表帳簿から除外し、これによって得た資金から五五パーセントの配分を取り、無記名、架空名義、家族名義などによる預貯金等として蓄積し、残りの四五パーセントを専務取締役佐々木圭司に配分する等の行為により所得を秘匿したうえ、
第一、昭和四五年一月八日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額は四一、二七八、三四七円で、これに対する法人税額は一四、六九八、九〇〇円であるにもかかわらず、昭和四六年三月一日、仙台市長町七丁目二番一号所在所轄仙台南税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額は八、六四七、五九六円でこれに対する法人税額は、二、七二六、五〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額一一、九七二、四〇〇円の法人税を免れ、
第二、昭和四六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額は、三七、五六七、二三八円で、これに対する法人税額は一三、三〇四、六〇〇円であるにもかかわらず、昭和四七年二月二九日、前記仙台南税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額は、九、四二五、三九二円で、これに対する法人税額は、二、九七九、四〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額一〇、三二五、二〇〇円の法人税を免れ、
第三、昭和四七年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額は、四七、六五六、二一九円で、これに対する法人税額は、一六、八四三、五〇〇円であるにもかかわらず、昭和四八年二月二七日、前記仙台南税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額は、二一、三六一、〇九六円で、これに対する法人税額は七、一九一、二〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額九、六五二、三〇〇円の法人税を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全部の事実につき
一、被告人佐々木市郎の当公判廷における供述
一、被告人佐々木市郎の検察官に対する供述調書
一、被告人佐々木市郎に対する大蔵事務官の質問てん末書二五通
一、被告人作成の上申書八通
一、佐々木圭司作成の上申書六通
一、佐々木圭司の検察官に対する供述調書
一、佐々木圭司に対する大蔵事務官の質問てん末書一七通
一、佐々木あつに対する大蔵事務官の質問てん末書四通
一、佐々木すみに対する大蔵事務官の質問てん末書九通
一、佐々木すみ作成の上申書
一、吉川優子に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、樋口勝江に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、大蔵事務官作成の昭和四五年度売上金額の調査書
一、大蔵事務官作成の銀行調査書
一、大蔵事務官作成の生産量調査書
一、大蔵事務官作成の各事業年度の売上除外等調査書
一、大蔵事務官作成の簿外預金等調査書(社長分)
一、大蔵事務官作成の簿外預金等調査書(専務分)
一、大蔵事務官作成の簿外割引債券等調査書(専務分)
一、小島善雄、大内重美、守清之助、丹野武治に対する大蔵事務官の各質問てん末書
一、橋浦せつ、伊藤政男、鈴木泰吉、遠藤あきよ、斉匡作(二通)、佐藤勝美、佐藤正吾に対する大蔵事務官の各質問てん末書
一、桜井寅雄、木皿茂義に対する大蔵事務官の各質問てん末書
一、渡部ヨシ、相沢よしゑ、相沢秋生、田中直志、針生忠五郎、小斎はしめ、相原俊策、木皿なつ、赤間みい子、柴崎さみえ、橋浦みね、小斎実、佐藤さき、新橋博に対する大蔵事務官の各質問てん末書
一、高橋源治、高橋孝雄に対する大蔵事務官の各質問てん末書
一、押収にかかる金銭出納帳一冊(昭和四九年押第三二号の五)
一、同賃金台帳一綴(同号の九)
一、同決算関係綴(同号の一二)
一、同勤務割(同号の一五)
一、同給与関係メモ一冊(同号の一七)
一、同償却資産購入帳一冊(同号の一九)
一、同所有権移転登記済権利証一綴(同号の二一)
一、同贈与証書一綴(同号の二二)
一、同労働災害動向調査票控一綴(同号の二三)
判示第一の事実につき
一、自昭和四五年一月八日至同年一二月三一日事業年度分の修正確定申告書謄本
一、大蔵事務官作成の同年度脱税額計算書
一、押収にかかるあら売上帳一冊(昭和四九年押第三二号の一)
一、同売上帳三綴(同号の二の一ないし三)
一、同原価計算書一冊(同号の三)
一、同月別生産量控一冊(同号の四)
一、同手帳一冊(同号の六)
一、同「アラ」売上帳一冊(同号の七)
一、同手帳一冊(同号の八)
一、同登記済権利証一綴(同号の一〇)
一、同開始貸借対照表三枚(同号の一一)
一、同登記済権利証一綴(同号の一三)
一、同預り金勘定元帳写ほか一綴(同号の一四)
一、同失業保険適用事業設置届及び個人資格取得届一綴(同号の一六)
一、同給料計算書トラの巻一冊(同号の一八)
一、同現金預金出納帳一冊(同号の二〇)
一、同有限会社佐々直の昭和四五年確定申告書(同号の二四)
一、同総勘定元帳一綴(同号の二五)
一、同賃金台帳一綴(同号の二六)
判示第二の事実につき
一、自昭和四六年一月一日至同年一二月三一日事業年度分の修正確定申告書謄本
一、大蔵事務官作成の同年度脱税額計算書
一、前掲押収にかかるあら売上帳一冊(昭和四九年押第三二号の一)
一、前掲同給料計算書トラの巻一冊(同号の一八)
一、同賃金台帳一綴(同号の二七)
一、同経費明細帳一冊(同号の二八)
一、同手形受払帳一冊(同号の二九)
一、同就業規則一綴(同号の三〇)
一、同簿外給料支払内訳メモ一八枚(同号の三一)
一、同出勤簿一綴(同号の三二)
一、同有限会社佐々直の昭和四六年度確定申告書(同号の三三)
一、同労働者災害補償保険申告書関係綴一綴(同号の三四)
一、同社会保険資格取得届、被扶養者届一綴(同号の三五)
判示第三の事実につき
一、自昭和四七年一月一日至同年一二月三一日事業年度分の修正確定申告書謄本
一、大蔵事務官作成の同年度脱税額計算書
一、前掲押収にかかる月別生産量控一冊(昭和四九年押第三二号の四)
一、前掲同手帳一冊(同号の八)
一、前掲同賃金台帳一綴(同号の二七)
一、前掲同就業規則一綴(同号の三〇)
一、前掲同労働者災害補償保険申告書関係綴一綴(同号の三四)
一、前掲同社会保険資格取得届、被扶養者届一綴(同号の三五)
一、同毎月末在庫表一冊(同号の三六)
一、同棚卸帳一冊(同号の三七)
一、同仕入帳一冊(同号の三八)
一、同手帳一冊(同号の三九)
一、同有限会社佐々直の昭和四七年度確定申告書一綴(同号の四〇)
一、同出張簿一冊(同号の四一)
一、同納品書控一綴(同号の四二)
(法令の適用)
被告人佐々木市郎の判示第一ないし第三の各所為は、いずれも法人税法第一五九条第一項、第七四条第一項第二号に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で同被告人を懲役八月に処し、諸般の情状により刑の執行を猶予するのを相当と認めるので、同法第二五条第一項第一号により本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予すべく、同被告人の右各犯行は、それぞれ被告人有限会社佐々直の代表者として右被告人会社の業務に関して為されたものであるから、右被告人会社に対し、法人税法第一六四条第一項第一五九条第一項、第七四条第一項を各適用し、右第一ないし第三の罪は、刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項により各罪につき定めた罰金の多額を合算した金額の範囲内で被告人有限会社佐々直を罰金六七〇万円に処すこととする。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 杉本正雄)