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仙台地方裁判所 昭和53年(ヨ)366号 決定 1978年8月10日

債権者 石森信好 ほか二名

債務者 日本電信電話公社

訴訟代理人 玉田勝也 山田厳 大衡淳夫 橘内剛造 ほか九名

主文

債権者らの本件仮処分申請はこれを却下する。

申請費用は債権者らの負担とする。

事実

第一当事者の申立

一  債権者ら

債権者らが債務者に対して、雇傭契約上の権利を有する地位を仮に定める。

債務者は、債権者らに対して、昭和五三年四月二一日以降、本案判決確定に至るまで毎月二〇日に別紙債権目録記載の金員を仮に支払え。

二  債務者

主文同旨

第二申請の理由

一  債権者らは、いずれも債務者日本電信電話公社の職員で、その入社年月日および昭和五三年四月当時の勤務部課、担当事務は次のとおりである。

(一)  債権者石森信好。昭和四三年四月一日入社、仙台電話局第一施設部市外線路課、市外電話回線保守業務。

(二)  債権者今福節男。昭和四五年四月一日入社、右同部課、右同業務。

(三)  債権者結城修一。昭和四五年一〇月一日入社、古川電報電話局線路宅内課、電話器設置市内線路保守業務。

債権者らはいずれも線路技術職二級として昭和五三年三月当時、毎月二〇日、別紙債権目録記載のとおりの賃金の支給を受けていた。

債権者らは昭和五三年四月一六日千葉地方検察庁より千葉地方裁判所に対し、兇器準備集合罪、火炎ビンの使用等の処罰に関する法律違反の罪、公務執行妨害罪、および債害罪で起訴された。

債権者らはいずれも昭和五三年三月二六日千葉県警察に逮捕され、現在千葉拘置所に勾留中である。

二  公社は右起訴された日の翌四月一七日、債権者らに対し、債権者らが、右罪名に問われる行為をしたこと、右行為により公社の信用を著しく失墜させたこと、ならびに各債権者においてそれぞれ左記期間無断欠勤したことが、公社職員就業規則五九条三号、七号、一八号および二〇号に該当するとして(なお債権者結城修一については同条三号は処分理由としてあげられていない)

公社法三三条により懲戒処分として免職する旨の意思表示をした。

(一)  債権者石森信好。昭和五三年二月二八日から三月二日まで三日間ならびに三月二五日から四月一六日までの間において一五日間。

(二)  債権者今福節男。処分辞令書受領を拒絶したため欠勤日数の詳細は不明。

(三)  債権者結城修一。同年四月三日から四月一六日までの間において一〇日間。

三  右処分は左記理由により無効である。

(一)  本件懲戒免職処分は懲戒権の濫用であり無効である。

(1) 本件処分の本質は、政治的目的による処分であり、懲戒権の濫用であつて無効である。

本件処分は、新東京国際空港の昭和五二年度内開港を、その反対派農民、労働者の実力闘争により阻止されたことに対する政治的報復目的により行われたものである。福田内閣は、国際的、国内的な政治責任を反対派に対する治安問題にすりかえ、成田新立法、破防法の適用検討、拳銃使用制限緩和、反対派大螢逮捕、大量起訴等々により反対派の徹底的弾圧政策を推し進めているが、公社当局は、右政府の方針に従い、開港反対派の労働者を理由も根拠もなく実力で封じ込めようとしており、本件処分もその一環として行われたものであつて、政治的思想、信条を理由とする処分であることが明らかであるから懲戒権の濫用であり無効である。

(2) 本件債権者らに対しては、起訴休職が適用されるべきであつて、これに違反してなされた本件懲戒免職処分は懲戒権の濫用であり無効である。

日本電信電話公社法三二条、公社就業規則五二条は公社職員が「刑事事件に関して起訴されたとき」は休職にされることがあり、「休職の期間は、その事件が裁判所に係属する間」として、起訴休職の制度を定めている。

他方就業規則五九条一六号は「刑事事件に関し有罪の確定判決があつたとき」懲戒処分を受けることがあると規定している。

即ち公社の職員が刑事事件に関し起訴されたときは、原則として休職処分を受け、有罪判決が確定したとき始めて懲戒処分を受けるのである。

その趣旨は刑事訴訟法上、被告人は確定判決があるまで無罪の推定を受けるのであるから、単に起訴されたという事実だけから、直ちにその職員を免職にして公社外に排除することは許されないので、事件が裁判所に係属する間は休職といういわば暫定的な、取扱をなし、確定判決によつて正当な懲戒処分を行うとするものである。

それは職員の企業外非行については、公社にこれを独自に調査する権限も能力もないことから、事実関係および罪責の認定は全て裁判所の公権的判断に任せ、確定判決があつたときに始めて懲戒処分を決定するということに他ならない。しかるに公社は右起訴休職制度の趣旨を無視し、債権者らの行為、その違法性、有責性の有無、程度を何一つ具体的に認定することなく、債権者らが起訴されたという一事のみをもつて、本件懲戒免職処分を行つたものである。

公社の懲戒処分としては、免職、停職、減給、戒告の四段階あるが、債権者らに対し右いずれの懲戒処分を適用するのが妥当であるかは、刑事事件の審理を通じて債権者らの罪責が明らかにならなければ判断できないのであつて、刑事事件の判決を侯つ他はない。

債権者らは本件起訴事実につき、公判において左の諸点を争う。

<1> 債権者ら個人の行為としての兇器準備集合、火炎びん行使、公務執行妨害、傷害の各行為の不存在、および共謀共同正犯としての共謀の不存在。

<2> 公務執行妨害罪における適法な公務の不存在。すなわち新東京国際空港開港は違法であり、それを強行するために警備に当つた機動隊員らの職務行為は違法であり、従つて公務執行妨害罪は成立しえない。

<3> 債権者らの行為は正当行為であり違法性を阻却する。右空港の建設と開港は違法又は不当なものであり、これを阻止する目的をもつて行われた債権者らの行為は正当行為であつて違法性は阻却される。

<4> 債権者らの全体の行動に対する関与の形態、故意の内容からして債権者らに責任は存在しないかあるいは存在したとしても軽微である。

以上種々の法律的判断を含む事実認定を行わなければ債権者らの罪責の有無、程度を明らかにすることはできないのであつて、債権者らの刑事責任が明らかにならない以上独自の調査権能を有しない公社が債権者らに対して懲戒処分を下すことはできないのである。これに違反して行われた本件懲戒免職処分は懲戒権の溢用であつて無効である。

(二)  本件処分は懲戒理由が存在せず無効である。

(1) 就業規則五九条七号、二〇号の「非行」「不都合行為」について

<1> 債権権らが起訴罪名に問われる行為を行つていないことは、前述したとおりであり従つて「非行」ないし「下都合行為」が存在しないことは明らかである。

<2> 仮に、赴訴事実に該当する行為が存在したと仮定しても、右起訴事実は、左記理由により「非行」ないし「不都合行為」に該らない。

労働者は雇傭契約によつて一定の時間、一定の場所において労務を提供し、その対価として賃金を受けるという法律関係にあり、このような労働力の提供を離れて、使用者に身分的に従属し、生活上の監督を受くべき地位にあるものではない。もつとも労働力が労働者個人を離れて抽象的に存在するものではないことから、労働者の私生活上の行為が、労働力提供の場たる企業内の秋序、職場規律に影響を及ぼす場合がありうるが、それはあくまで原則に対する例外として、当核行為と企業秩序の関連が明確なものでなければならない。

ところで本件債権者らの起訴事実は客観的に全く公社業務と関係のない企業外行為であり、また主体的にも債権者らはいずれも単純な肉体労務を提供するに過ぎない一般職員であつて、管理職でもなく、まして公社を代表する地位にあるものでもないから右企業外行為が企業秋序に影響を及ぼすことはありえない。

よつて本件起訴事実は、いかなる意味でも就業規則五九条七号、二〇号の「非行」ないし「不都合行為」に該当しない。

(2) 就業規則五九条一八号の無断欠勤について

値権者らは本年三月二六日干葉県警察に逮捕され、勾留された後、直らに休暇届を作成し、最初の弁護士接見の際、それぞれ弁護士に対し、公社に届けるよう依頼して、右休暇届を手渡し、右接見した弁護士より債権者らの同僚を通じて、それぞれの職場の上司に対して右休暇届が提出されたものである。

従つて債権者らはいずれも公社に対し、債権者らが不当に逮捕、勾留されているために出勤できないことを遅滞なく通知しているのであつて無断欠勤ではない。

就業規則の本条項は出勤が可能であるにもかかわらず、職員の恣意により欠勤することを懲戒事由としたものであつて、職員が出勤の意思を有しているにもかかわらず出勤が不可能な特別の客観的事情があり、かつその旨を公社に届出ている場合には適用されないことは明らかである。

四  公社は本年四月一七日以降、債権者らをその職負として扱わず、賃金も支払わないので、債権者らは公社に対し、雇傭契約関係存在確認、および賃金支払請求の訴を提起すべく準備中であるが、債権者らはいずれも労働者であり、資産はなく、公社からの賃金のみによつて各債権者およびその家族の生活を維持しているものであつて本案訴訟の確定を待つていては著しい損害を蒙るので本件仮処分の保全の必要性がある。

第三答弁および債務者の主張

一  申請の理由一項および二項記載の事実は認める。ただし、二項(二)の債権者今福の処分理由たる無断欠勤日数は昭和五三年三月二七日から同年四月一六日までの間における一六日間である。三項中(一)の(1)は否認する。同(2)のうち債権者ら主張のとおり刑事休職制度の定めがあること、「刑事事件に関し有罪の確定判決があつたとき」が懲戒事由として掲げられていることは認めるが、その余は否認する。三項中(二)の(1)は否認する。同(2)のうち、債権者らが昭和五三年三月二六日逮捕されたのちひきつづき勾留されていることは認めるが、休暇届作成提出の経過は不知、その余は否認する。四項は争う。

二  債権者らは、いずれも過激派集団第四インター(日本革命的共産主義者同盟の略称。以下単に第四インターという。)のメンバーと目されているものであるところ、いわゆる三・二六成田空港閉港阻止闘争に参加し、(一)債権者今福、同結城においては、(1)多数のものと共謀のうえ、昭和五三年三月二六日午後一時三〇分過ぎ項、千葉県成田市古込所在の新東京空港警察署前路上付近において、警備中の多数の警察官らに共同して危害を加える目的で、火炎びん、鉄パイプ・石塊などの兇器を準備して集合し、(2)前記日時頃、前記場所において、前記警察官らに対し、鉄パイプで殴打し、石塊・火炎び八を投げつけるなどして右警察官らの職務の救行を妨害し、多数の警察官らに傷害を負わせ、(二)債権者石森においては、多数の者と共謀のうえ、(1)右同日午後二時過ぎ頃、同市古込字古込先路上付近において警備中の多数の警察官らに共同して危害を加える目的で、火炎びん、鉄パイプ・石塊などの兇器を準備して集合し、(2)同日時頃、同場所において、前記警察官らに対し、鉄パイプで殴打し、石塊・火炎びんを投げつけるなどして、右警察官らの職務の執行を妨害し、警察官一名に傷害を負わせた。

債権者らの右行為は、公社職員としてはもとより一般市民としても許すことのできないものであり、債権者らが右所為に及んだことは、公社職員としての品位信用を著しく傷つけ、かつ公社の社会的評価、信用を甚だ害するものであつて、これは就業規則五九条七号の「職員としての品位を傷つけ、または信用を失うような非行があつたとき」および同条二〇号の「その他著しく不都合な行為があつたとき」の各懲戒事由に該当する。

三  債権者らは、前記各行為の現場において現行犯逮捕され、勾留されて取調べを受けたうえ債権者ら主張のとおり起訴されたものであるが、債権者らは次のとおり無断欠勤をした。

(一)  昭和五三年三月二四日現在において、債権者石森および今福は、昭和五二年四月一日から同五三年三月三一日までの年次休暇年度における年次休暇二〇日をすべて費消し、残余年休日数はゼロであつたところ、同年三月二四日、両名は上司の佐々木課長に対し、債権者石森において三月二五日から同月三一日まで、債権者今福において三月二七日から同月三一日まで休みたい旨申出で、佐々木課長から年休の余りはないし欠勤は承認できないから出勤せよと命じられたにもかかわらず、債権者石森においては三月二五日から四月一六日までの間において一五日間、債権者今福においては三月二七日から四月一六日までの間において一六日間無断欠勤した。なおそのほかに債権者石森は上司の命に反して同年二月二八日から三月二日までの三日間も無断欠勤した。

(二)  債権者結城は、昭和五三年三月二七日から同月三一日まで上司の承認を得て年次休暇をとり、四月一日と同月二日は週休日であつたが、四月三日からは勤務日であるにもかかわらず、不当逮捕勾留を受けて出勤出来ないと記載した書面を申請外佐藤隆社員に託したまま四月一六日までの間において一〇日間無断欠勤した。

(三)  債権者らのこれら無断欠勤は、その動機が前記犯罪行為遂行のためにあり、また逮捕勾留されて長期の欠勤にわたることとなるのを充分覚悟のうえでなされたものである。これは、就業規則五条一項にいう「みだりに欠勤し」に該当し、同規則五九条一八号の懲戒事由である「第五条の規定に違反したとき」に該当することは明らかであり、また債権者石森、今福が事前に上司から欠勤を禁じられ、強く出勤を命じられたのにこれを無視して欠勤に及んだ所為は、同規則五九条三号の懲戒事由「上長の命令に服さないとき」にも該当する。

四  以上のとおり、本件懲戒免職処分は正当であるから、債権者らは仮に職員たるの地位を求めるに足る被保全権利を有しない。

また、債権者石森の妻は迫電報電話局に勤務して給与を得ており、債権者今福の母は鹿島建設に、妻は地方公務員として保育所に勤務して給与を得ているし、債権者結城は独身で扶養家族はないから、保全の必要性も無い。

理由

一  債権者らが債務者の職負であるところ、昭和五三年四月一六日に千葉地方検察庁検察官より千葉地方裁判所に対し、兇器準備集合罪、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反の罪、公務執行妨害・傷害罪で起訴されたこと、債務者が債権者らに対し、申請の理由二項記載のとおり(ただし債権者今福の処分理由の一となつた無断欠勤日数は昭和五三年三月二七日から同年四月一六日までの間における一六日間である)懲戒処分として免職する旨の意思表示をしたこと、以上の事実は当事者間に争いがない。

二  債務者は、債権者らが第四インターのメンバーとして起訴された事実に該当する行為をなし、右は公社職員就業規則五九条七号および二〇号の各懲戒事由に該当する旨主張するので検討する。

<証拠省略>によると、債権者石森は、昭和五三年三月二六日、成田市古込字古込一〇の二、朝日台三又路付近で多数の者らと共に機動隊員に対して火炎びんや石を投げつけたり鉄パイプをふりまわすなどした集団の一員として、同日午後二時一〇分頃右同所付近で現行犯逮捕され、その時同人は赤ヘルメツトをかぶり、エンジ色のヤツケを着用しライターを所持していたこと、債権者今福は、右同日、ほか多数の者と成田空港内にある管理ビルあたりまで進入し、集団で機動隊員らに火炎びんや石を投げつけたり、鉄パイプをふりまわすなどしていた一員として、同日午後一時四三分頃成出市古込字込前一三三付近で現行犯逮捕され、その時同人は、赤ヘルメツトをかぶりエンジ色のヤツケを着用しライターを所持していたこと、債権者結城は、右同日、ほか多数の者と成田空港内にある管理ビル付近まで進入し、集団で機動隊員らに火炎びんや石を投げつけたり鉄パイプをふりまわすなどしていた一員として、応援にかけつけた機動隊員らに追われて逃げる途中、同日午後一時五六分頃成田市古込字込前一二二付近で現行犯逮捕され、その時同人は、赤ヘルメツトをかぶり、エンジ色のヤツケを着用し、ライターを所持していたこと、以上の事実が疎明され、また<証拠省略>によると、債権者石森および今福はこれまでひんぱんに他の出勤職員に対して第四インターの機関紙「世界革命」の号外やビラなどを配つていたことが疎明され、右疎明事実にてらすと、反対の疎明がない以上は債権者らが前記懲戒免職処分の理由とされた行為をしたものと推認される。そして反対の疎明はない。

ところで、債務者たる日本電信電話公社が高度の公共性を有する公法上の法人であつてその廉潔性の保持が社会から要請されていることを考慮すると、債権者らが前記行為を職場外において職務遂行に関係のない行為として日曜日に行なつたものであるとしても、これをもつて前記懲戒免職事由にあたるとしてなした債務者の本件懲戒処分が裁量権の範囲を著しく逸脱したものであるとは解し難い。

三  債権者らは、成田空港の建設および開港は違法であつてこれを警備する機動隊員の職務行為は適法な公務と言えず、これに対する阻止行動は正当行為であるし、また公務執行妨害罪は成立しないから、債権者らにおいて前記起訴罪名に該当するとされた行為をなしたとしてもそれは違法性を阻却するものであるので、これをもつて懲戒事由にあたるとして債務者が行なつた本件懲戒免職処分は懲戒権の濫用であつて無効であると主張するが、債権者ら提出の<証拠省略>のみでは右債権者らの行為が違法性を阻却し従つて本件懲戒処分が懲戒権の濫用で無効であるとは認め難く、他にこれを認めるにたりる疎明はない。

四  債権者らは、債務者は債権者らを「刑事事件に関し起訴されたとき」に該当するものとして刑事休職に付し、有罪の確定判決があつたとき始めて懲戒にすべきものであつて、これに反してなした本件懲戒免職処分は懲戒権の濫用であると主張する。

しかし、公社職員就業規則五九条の懲戒事由をみると、有罪の確定判決が無くとも同条七号その他各号の懲戒事由があるときに懲戒できることその規定上明らかであり、また債務者の債権者らに対する本作懲戒が、債権者らにおいて刑事事件として起訴されたことをその事由としているものでなく起訴された罪名に該当する所為を行ないそれが同条七号に該当すると判断されたことによるものであることは明らかである。そして、債務者において、債権者らが右各所為を行なつたと認定したことに事実誤認があつたという疎明がないことおよび右各所為を行なつたことが懲戒免職事由にあたると判断したことに著しい裁量権の逸脱があつたとは認められないこと前述のとおりであるから、債権者らの右主張は採用できない。

五  債務者の債権者らに対する本件懲戒免職処分は、債権者らが無断欠勤をしたことをも理由の一としている。そしてその無断欠勤とされた日数の大部分は債権者らが前記のとおり成田空港開港阻止闘争に参加し兇器準備集合罪や公務執行妨害罪等に該当する行為をなして現行犯逮捕された以後のものであつて、これは債権者らが逮捕された後引続き勾留されていることによるものと認められる。債務者はこれをも無断欠勤として免職懲戒処分の理由の一に掲げている。しかし、無断欠勤は右懲戒処分の理由としては付随的なものであつて、主たる理由は債権者らにおいて前記犯罪行為をなしたことにあること、本件懲戒処分の経過にてらして推察されるところである。そして、債権者らにおいて右行為を休日に職務遂行と関係なしに犯したものであつてもこれをもつて懲戒免職にあたる行為であるとしてなした債務者の処分が著しく裁量権を逸脱したとは認められないこと前述のとおりであるから、債権者らが逮捕された後欠勤しているのが懲戒事由たる無断欠勤に該当するか否かについては判断の限りでないと解する。

六  以上のとおりであるから、債権者らの主張についてはその被保全権利について疎明があつたとは認めることはできない。

よつて、保全の必要性について判断するまでもなく債権者らの本件申立は理由がないのでこれを却下することとし、申請費用の負担について民事訴訟法八九条を適用し、主文のとおり決定する。

(裁判官 伊藤和男 後藤一男 斎藤清実)

債権目録

一、石森信好 金一五万円

二、今福節男 金一五万円

三、結城修一 金一二万三、九六四円

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