仙台地方裁判所 昭和54年(わ)95号 判決 1979年7月16日
本籍
宮城県石巻市立町二丁目一〇五番地
住居
同県塩釜市宮町二番二〇号
歯科医師
目黒文雄
大正一二年六月一五日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官中屋利洋出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金三〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、肩書住居地に目黒歯科医院の名称で歯科診療所を設け自ら歯科医療業を営んでその業務全般を統括しているものであるが自己の所得税の一部を免れようと企て、自由診療収入の一部を除外し、簿外貸付信託を設定するなどの不正な方法により所得を秘匿したうえ
第一 昭和五〇年一月一日から同年一二月三一日までの被告人の総所得金額は五〇七八万六四五〇円で、これに対する所得税額は二二九七万〇八〇〇円であるのにかかわらず、昭和五一年三月一五日、宮城県塩釜市旭町一七番一五号所在の所轄塩釜税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は一五四六万六二五七円で、これに対する所得税額は二七六万一五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税二〇二〇万九三〇〇円を免れ
第二 昭和五一年一月一日から同年一二月三一日までの被告人の総所得金額は八三六二万四九九四円で、これに対する所得税額は四五三九万五八〇〇円であるのにかかわらず、昭和五二年三月一四日、前記税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は、一八一七万八五九八円で、これに対する所得税額は三八七万七三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税四一五一万八五〇〇円を免れ
第三 昭和五二年一月一日から同年一二月三一日までの被告人の総所得金額は八八三四万〇四六〇円で、これに対する所得税額は四八六四万七四〇〇円であるのにかかわらず、昭和五三年三月一五日、前記税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は一八七三万七〇八〇円で、これに対する所得税額は四〇二万七三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税四四六二万〇一〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部につき
一、被告人の検察官に対する各供述調書
一、被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書(但し昭和五三年七月二六日付及び同年一〇月五日付のものは判示第二、第三の事実にかかる。)
一、被告人作成の各上申書(但し昭和五三年九月五日付及び同年一〇月一六日付のものは判示第二、第三の事実に同年一〇月四日付のものは判示第三の事実にかかる。)
一、青砥朝衛の検察官に対する各供述調書
一、目黒茂子、阿部由美子、青砥朝衛、杉田忠臣、荒川忠良、石川要、塚辺重司の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、大蔵事務官作成の「診療収入合計調査書」「一般診療収入(一括ノート分)及び未収金残高残調査書」「銀行調査書」「証券会社の調査書」と各題する書面
一、大蔵事務官作成の臨検てん末書、各検査てん末書
一、石川要、塚辺重司、湯目好江作成の各上申書
一、内山光太郎作成の売掛帳謄本証明書
一、塚辺重司、稲木みよ、木島和子、新藤勝善、杉田忠臣、千葉文衛作成の各取引内容照会に対する回答
一、大蔵事務官作成の「仕入金額明細調査書」「仕入除外調査書」「簿外給料調査書」「受取利息等の総合課税分源泉徴収税額調査書」「預金残高等調査書」「貸付金の調査書」と各題する書面
一、検察官作成の捜査報告書
一、検察事務官作成の電話聴取書
一、押収にかかる一般診療収入帳四冊(昭和五四年押第五四号の七、八、九、一〇)、同矯正名簿一冊(同号の一一)
判示第一の事実につき
一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和五〇年分にかかるもの)
一、押収にかかる昭和五〇年分の「所得税の確定申告書」一通(昭和五四年押第五四号の一)、同所得税青色申告決算書(昭和五〇年分)一通(同号の四)
判示第二の事実につき
一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和五一年分にかかるもの)
一、押収にかかる昭和五一年分の「所得税の確定申告書」一通(昭和五四年押第五四号の二)、同所得税青色申告決算書(昭和五一年分)一通(同号の五)
判示第三の事実につき
一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和五二年分にかかるもの)
一、押収にかかる昭和五二年分の「所得税の確定申告書」一通(昭和五四年押第五四号の三)、同所得税青色申告決算書(昭和五二年分)一通(同号の六)
判示第二及び第三の事実につき
一、大山厳の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、大蔵事務官作成の「大山厳に対する貸付金及び受取利息の調査書」と題する書面
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項、一二〇条一項三号に各該当するところ、二三八条一項後段により懲役刑及び罰金刑とを併科することとし、なおその逋脱額が五〇〇万円をこえるので同法二三八条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重いと認める判示第三の罪の刑に法定の加重をし、各罰金刑については同法四八条二項により各罪について定めた罰金額を合算し、その刑期及び罰金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金三〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、右懲役刑については、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間その刑の執行を猶予することとする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 伊藤紘基)