仙台地方裁判所 昭和56年(わ)107号 判決 1981年12月18日
本店所在地
仙台市中央三丁目六番七号
株式会社京美苑
(旧・京苑)
右代表者代表取締役
田澤将身
本籍及び住居
宮城県泉市緑が丘四丁目八番地の九
会社員
内海政行
昭和一〇年一二月一〇日生
右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官大野恒太郎出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社京美苑を罰金一、五〇〇万円に、被告人内海政行を懲役一年に、それぞれ処する。
被告人内海政行に対しこの裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社京美苑(以下、被告会社という)は、昭和五二年一一月から株式会社京苑の商号で仙台市一番町二丁目二番八号に本店を置いて設立され、昭和五五年一二月商号を現商号に変更後は同市中央三丁目六番七号に本店を置いて呉服の委託卸販売業を営むもの、被告人内海政行は会社設立当初から昭和五六年九月三〇日までの間被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人内海政行は被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、仕入れ、売上げの一部を除外して架空名義の預金にするなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和五三年三月一日から昭和五四年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が九、四五九万六、一一五円で、これに対する法人税額が三、六九九万八、四〇〇円であったにもかかわらず、昭和五四年四月一六日仙台市中央四丁目五番二号の所轄仙台中税務署において、同税務署長に対し、所得金額が〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における法人税額三、六九九万八、四〇〇円につき法人税を免れ、
第二 昭和五四年三月一日から昭和五五年二月二九日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が一億三、〇五七万九、六五五円で、これに対する法人税額が五、一三九万一、六〇〇円であったのにもかかわらず、昭和五五年四月三〇日前記仙台中税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八、〇六五万四、六五八円で、これに対する法人税額が三、一四二万一、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額五、一三九万一、六〇〇円と右申告税額との差額一、九九七万円につき法人税を免れ
たものである。
(証拠の標目)
全事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書(検察官請求証拠等関係カード乙第一号証-以下乙一のように表示する。)
一 被告人大蔵事務官に対する供述調書一六通(乙二ないし四、六ないし八、一〇ないし一三、一五ないし一九、二三)
一 被告人作成の上申書四通(乙五、一四、二〇、二一)
一 登記官作成の登記簿謄本二通(甲二、弁護人請求証拠等関係カード第一二号証)
一 検察事務官作成の電話聴取書
一 大蔵事務官宗像日出雄作成の脱税額計算書説明資料(甲九)
一 田澤将身及び鈴木幸子の検察官に対する各供述調書(甲一三、一四)
一 大蔵事務官菅原義光作成の売上除外額調査書(甲一五)
一 同人作成の簿外仕入本数・金額調査書(甲一六)
一 鈴木昇の大蔵事務官に対する供述調書(甲一七)
一 大蔵事務官菅原義光作成の簿外値引、賞金等調査書(甲二三)
一 同人作成の簿外行商現地経費調査書(甲二四)
一 同人作成の簿外雑給料及び旅費交通費調査書(甲二五)
一 大蔵事務官宗像日出雄作成の代表者(内海政行)勘定調査書(甲二六)
一 同人作成の管理手数料調査書(甲二七)
一 同人作成の銀行預金調査書(甲二八)
一 同人作成の簿外預金調査書(甲二九)
一 押収してある法人税確定申告書一綴(昭和五六年押第九九号の一)、売上帳一綴(同号の五)
第一事実につき
一 被告人作成の上甲書(乙九)
一 大蔵事務官宗像日出雄作成の脱税額計算書(甲七)
一 押収してある法人税確定申告書一綴(前同押号の二)、売上帳一綴(同号の四)
第二事実につき
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書(乙二二)
一 大蔵事務官宗像日出雄作成の脱税額計算書(甲八)
一 鈴木昇作成の上申書(リベートの支払明細について(甲三一))
一 大蔵事務官菅原義光作成の受取手数料除外額調査書(甲三二)
一 田澤将身の大蔵事務官に対する質問てん末書三通(甲三三ないし三五)
一 鈴木一郎の大蔵事務官に対する質問てん末書(甲三六)
一 押収してある法人税確定申告書一綴(前同押号の三)、売上帳二級(同号の六、七)、御計算書(田中貴金属販売一枚(同号の八))
(累犯前科)
被告人内海は、昭和四八年六月一六日東京地方裁判所で殺人未遂、覚せい剤取締法違反の罪により懲役三年六月に処せられ同五一年一一月七日その刑の執行を受け終ったものであり、その事実は検察事務官作成の前科調書及び判決書謄本により認める。
(法令の適用)
被告人内海の判示第一及び第三の行為はいずれも昭和五六年法律第五四号附則五条により同法による改正前の法一六四条一項、一五九条一項に該当するので所定刑中懲役刑を選択し、同被告人には前示の前科があるので各刑法五六条一項、五七条により再犯の加重をし、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重いと認める第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年に処し、同法二五条一項二号によりこの裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予し、被告会社については被告人内海の判示第一及び第二の行為は被告会社の業務に関してなされたものであるから前示改正前の法人税法第一六四条一項一五九条一、二項を適用し各罪について免れた法人税の額に相当する金額以下の罰金刑を科するが、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪についての右の金額の合算額の範囲内で、被告会社を罰金一、五〇〇万円に処することとする。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 渡邊達夫)