大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台地方裁判所 昭和58年(わ)524号 判決 1984年3月21日

裁判所書記官

田中克俊

本籍

宮城県宮城郡宮城町大倉字上下六番地

住居

右同

会社役員

早坂定夫

明治四五年五月一〇日生

本籍

宮城県宮城郡宮城町大倉字上下六番地

住居

右同

会社役員

早坂陽一

昭和一五年六月一〇日生

右の者らに対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官金子良隆、弁護人柴田正治出席の上審理して、次のとおり判決する。

主文

一  被告人早坂定夫を罰金一〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間右被告人を労役場に留置する。

二  被告人早坂陽一を懲役一年に処する。

右被告人に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人早坂定夫は、宮城県宮城郡宮城町大倉字上下六番地に居住し、定義館の商号で旅館業、食堂業及び土産品販売業等を営んでいたもの、被告人早坂陽一は右早坂定夫の長男で右事業に専従し、経理、出納その他右業務全般を掌理していたものであるが、被告人早坂陽一は、被告人早坂定夫の業務又は財産に関し、同人の所得税を免れようと企て、売上金の一部を除外し、仮名・無記名定期預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和五五年分の右早坂定夫の実際所得金額が四八、〇六〇、三五九円で、これに対する所得税額が二〇、七〇四、二〇〇円であるにもかかわらず、同五六年三月一三日、仙台市上杉一丁目一番一号所在の所轄仙台北税務署において、同税務署長に対し、所得金額が八、九三五、六五一円で、これに対する所得税額が八三七、六〇〇円である旨の虚偽の所得税の確定申告書を提出して納期限を経過させ、もって不正の行為により同五五年分の正規の所得税額と右申告税額との差額一九、八六六、六〇〇円を免れ

第二  昭和五六年分の右早坂定夫の実際所得金額が五〇、一七八、八三四円で、これに対する所得税額が二三、四四〇、九〇〇円であるにもかかわらず、同五七年三月九日、前記仙台北税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六、七四五、一二四円で、これに対する所得税額が七五三、五〇〇円である旨の虚偽の所得税の確定申告書を提出して納期限を経過させ、もって、不正の行為により同五六年分の正規の所得税額と右申告税額との差額二二、六八七、四〇〇円を免れ

たものである。

(各年分の所得金額の内容は、別紙1、2の各修正貸借対照表に、税額計算の内容は同3のほ脱税額計算書にそれぞれ記載したとおりである。)

(証拠の標目)

一  被告人両名の当公判廷における供述

一  被告人両名の検察官に対する各供述調書並びに大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  検察官金子良隆外三名作成にかかる合意書面

一  大蔵事務官新田忠義作成の脱税額計算書(一)(判示第一)、同(二)(判示第二)

一  所得税の青色申告の承認取消し通知書謄本

一  検察事務官取扱の電話聴取書

一  早坂きみ子の大蔵事務官に対する質問てん末書五通(甲14ないし18)

一  阿部八喜の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(甲19、20)

一  大蔵事務官作成にかかる預貯金等の調査書ⅠⅡ(甲21、22)、仮払金調査書(甲23)、売上調査書(甲24)、仕入調査書(甲25)、経費調査書(甲26)、経費調査書(甲26)、不動産所得調査書(甲27)、一時所得調査書(甲28)、雑所得調査書(甲29)、山林所得調査書(甲30)、元入金調査書(甲31)、医療費控除調査書(甲32)、社会保険料控除調査書(甲33)、障害者控除調査書(甲34)、老年者控除調査書(甲35)、源泉徴収税調査書(甲36)

一  宮城県宮黒保健所長の捜査照会に対する回答書

一  所得税の確定申告書三通(昭和五八年押第一三九号の一、二、三)、所得税青色申告決算書三綴(同号の四、五、六)

(法令の適用)

一  被告人定夫に対しては、その従業者がその業務に関し判示各所為をなした場合であるから、所得税法二四四条一項により、判示各罪につきそれぞれ当該各本条である同法二三八条一項(第一については昭和五六年法律第五四号による改正前のもの)の罰金刑をもって処断すべきところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項によりその合算額の範囲内で被告人を罰金一〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条一項により金五万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

二  被告人陽一の判示各所為は、所得税法二四四条一項、二三八条一項(第一については前記法律改正前のもの)に該当するところ、所定刑中各懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内において同被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 小島建彦)

別紙1 修正貸借対照表

早坂定夫

昭和55年12月31日現在

<省略>

別紙2 修正貸借対照表

昭和56年12月31日現在

<省略>

別紙3 ほ脱税額計算書

<省略>

(注)課税総所得金額に対する税額 55年 42,754,000×65%-7,240,000=20,550,100

56年 48,009,000×65%-7,240,000=23,965,850

課税山林所得に対する税額 55年 3,105,000×12%-60,000=312,600

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例