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仙台地方裁判所 昭和62年(行ウ)1号 判決 1994年2月22日

青森県十和田市東二番町六番三一号

原告

中野英喜

右訴訟代理人弁護士

島田種次

鈴木善和

青森県十和田市西三番町一番三四号

被告

十和田税務署長

右指定代理人

山下隆志

九城博

佐藤光英

庄司勉

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

【請求の趣旨】

一  被告がいずれも昭和五九年三月一〇日付けでした、原告の昭和五五年分所得税の更正のうち還付を求める税額八万一、〇四〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定、並びに昭和五六年分所得税の更正のうち還付を求める税額二万九、六四〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(ただし、以上のすべてにつき昭和六三年二月二日付けで減額更正及び変更決定がされた後のもの)をいずれも取り消す。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

【請求の趣旨に対する答弁】

主文同旨

第二当事者の主張

【請求原因】

一1  原告の昭和五五年分及び昭和五六年分の各所得税につき、原告がした確定申告、被告がした更正及び加算税賦課決定、並びに右処分に対して原告がした不服申立及びこれに対する応答の経緯は、次の2に付加するほかは、別表A記載のとおりである。

2(1)  昭和五五年分

被告は、昭和六三年二月二日付けで、昭和五五年分の総所得金額を一三四万一〇一五円、分離課税の土地等の雑所得金額を一億六一八三万二三九六円及び納付すべき税額を一億一八四八万五四〇〇円とする更正並びに過少申告加算税を五九二万八三〇〇円とする変更決定をした。

(2)  昭和五六年分

被告は、昭和六三年二月二日付けで、昭和五六年分の総所得金額を一五三万九六三〇円、分離課税の土地等の雑所得金額を七一四〇万〇一一八円及び納付すべき税額を四四四九万八九〇〇円とする更正並びに過少申告加算税を二二二万六四〇〇円とする変更決定をした。

二  しかしながら、以下のとおり、原告は、別表A一の5及び同二の5記載の各更正(以下「各再々更正」という。)及び各賦課決定(いずれも昭和六三年二月二日付けで更正又は変更決定がされた後のもの。以下、これらを一括して「本件課税処分」ともいう。)に対し、不服がある。

1 原告の昭和五五年分及び同五六年分の所得金額は、原告が右各年分につき被告に提出した確定申告書記載のとおりであるから、被告のした本件各再々更正は納付すべき税額を過大に認定したものであるとともに、各過少申告加算税の賦課決定は、その根拠がない。

2 更正処分は調査に基づいて行われなければならないところ、被告は本件課税処分を適切な調査に基づかずにしたものである。

3 本件課税処分は、原告に対し、不利益変更となる処分をしたものである。

三  よって、本件課税処分(ただし、各再々更正については、還付を求める税額を超える部分に限る。)の取消を求める。

【請求原因に対する認否】

一  請求原因一1及び2の事実は認める。

二  請求原因二1ないし3の主張は争う。

【抗弁】

一  主位的抗弁

原告の所得金額、納付すべき税額及び過少申告加算税額等並びにその算出根拠は、以下のとおりであるから、本件処分に違法はない。

1 昭和五五年分

原告の、昭和五五年分の所得税法六九条に規定する損益通算(以下「損益通算」という。)後の所得金額は、総所得金額一三四万一〇一五円及び分離課税の土地等の雑所得金額一億六一八三万二三九六円、納付すべき税額は一億一八四八万五四〇〇円並びに過少申告加算税五九二万八三〇〇円であり、その詳細については以下のとおりである(△は赤字を示す。)。

(1) 総所得金額 一三四万一〇一五円

右金額は、次のaとbの金額の合計額である。

a 給与所得の金額 七〇万円

右金額は原告の確定申告書に記載された金額である。

b 雑所得の金額 六四万一〇一五円

原告は、株式会社中野に対し、トラクター二台を賃貸しているが、当該賃貸による所得は所得税法三五条に規定する雑所得に該当し、右金額は、その収入金額一二〇万円から別表Bの算式に基づいて計算した減価償却費五五万八九八五円を控除した金額である。なお、原告は、右所得を不動産所得に含めて確定申告を行っている。

(2) 分離課税の土地等の雑所得金額 一億六一八三万二三九六円

右金額は、所得税法六九条、同法施行令一九八条及び租税特別措置法施行令一九条二三項の規定により、次のa(分離課税の土地等の雑所得金額(損益通算前))からb(事業(農業)所得の金額)及びc(不動産所得の金額)の各赤字の金額を控除した金額である。

a 分離課税の土地等の雑所得金額(損益通算前) 一億六四二一万一八三五円

原告は、不動産業者ではなくゴルフ場を経営する会社の役員をしている者であるが、その所有する青森県上北郡六戸町大字折茂字沖山一〇番三五七山林二四五平方メートルほか一一筆計二八万一九二八平方メートル(以下「本件交換譲渡資産」という。)と、三本木畜産農業協同組合(以下「畜産農協」という。)の所有する十和田市大字三本木字前谷地一七番四一〇牧場七、三五一平方メートルほか五筆計三万九六六九平方メートル(以下「本件交換取得資産」という。)とを昭和五三年一二月二二日に交換した(以下「本件交換」という。)。

その後、原告は、右交換取得資産に区画形質の変更を加えて、順次宅地造成し、この造成した宅地(以下「本件土地」ともいう。)を昭和五五年に一部(一万四二八九・六二平方メートル)分譲した(この分譲を後述する昭和五六年における本件土地の一部分譲と併せて「本件譲渡」という。)が、このために生じた所得について、原告は、昭和五六年法律第八号による改正前の租税特別措置法(以下「措置法」という。)三七条一項表一四の適用ありとして、譲渡所得の金額を〇円とする確定申告を行った。

しかしながら、右のように、宅地造成販売を業とする者でない者が土地増加益発生の原因となる改良を加えてこれを他に譲渡する場合については、措置法三七条一項表一四の適用はなく、同法二八条の四第一項の適用を受けるものであって、その結果、右譲渡による所得については、イ 収入金額三億五三五一万六〇七七円、ロ 取得費一億七九三五万六七三七円、ハ 譲渡費用九九四万七五〇五円、ニ 分離課税の土地等の雑所得金額(イからロ及びハを減じたもの。)一億六四二一万一八三五円となる。なお、右計算の基礎は以下のとおりである。

イ 収入金額三億五三五一万六〇七七円の内訳は別表Cのとおりである。

ロ 取得費一億七九三五万六七三七円は、一平方メートル当たりの取得費一万二五五一・五四円に昭和五五年中の分譲面積一万四二八九・六二平方メートルを乗じて算出したものである。

(算式)1万2,551・54円/m2×1万4,289・62m2=1億7,935万6,737円

右の一平方メートル当たりの取得費は、土地の取得価額と宅地造成費を合計したものを分譲有効面積で除して算出したものであるが、具体的には、土地の取得価額は二億八五六一万六八〇〇円、宅地造成費は一億二六二七万一五四〇円であり、分譲有効面積は三万二八一五・七六平方メートルであるので、次の算式に基づき、一万二五五一・五四円となったものである。

(算式)(2億8,561万6,800円+1億2,627万1,540円)÷3万2,815・76m2=1万2,251・54円

右の算式の土地の取得価額二億八五六一万六八〇〇円は、本件交換取得資産の取得日である昭和五三年一二月二二日における当該資産の一平方メートル当たりの時価七二〇〇円に取得面積三万九六六九平方メートルを乗じた金額であり、右七二〇〇円は、財団法人日本不動産研究所青森支所長高橋長吉(以下「高橋鑑定士」という。)が本件交換取得資産の隣接地(以下「鑑定評価地」という。)について時価を鑑定した際の一平方メートル当たりの時価六八〇〇円に時点修正率一〇六パーセントを乗じた金額(端数は切り捨てる。)である。

ハ 譲渡費用九九四万七五〇五円は、原告が被告に提出した「譲渡所得計算明細書」に記載された金額である。

b 事業(農業)所得の金額 △一二万二五九〇円

右金額は、原告の確定申告書に記載された金額である。

c 不動産所得の金額 △二二五万六八四九円

右金額は、収入金額一二二二万円(次のイ)から必要経費一四四七万六八四九円(次のロ及びハの合計)を控除した金額である。

イ 収入金額 一二二二万円

右金額は、原告が確定申告書に添付した不動産所得の収支内訳書(以下「収支内訳書」という。)に記載された不動産所得に係る収入金額一三四二万円から右(1)のbで述べたトラクター二台の賃貸料収入(不動産所得ではなく雑所得に係る収入金額である。)一二〇万円を控除した金額である。

ロ 賃貸に係る建物の減価償却費 五二九万〇六四九円

右金額の内訳は別表Dのとおりである。

ハ 減価償却費以外の必要経費 九一八万六二〇〇円

右金額は、原告の収支内訳書に記載された金額である。

(3) 納付すべき税額 一億一八四八万五四〇〇円

右金額は、損益通算後の総所得金額一三四万一〇一五円及び分離課税の土地等の雑所得金額一億六一八三万二三九六円を基礎とし、別表Eのとおり算出したものである。

(4) 過少申告加算税 五九二万八三〇〇円

右金額は、国税通則法六五条の規定により、右(3)の納付すべき税額一億一八四八万五四〇〇円から、原告の確定申告による納付すべき税額△八万一〇四〇円を控除した残額一億一八五六万六〇〇〇円(千円未満を切り捨てる。)に百分の五を乗じて計算した金額である。

2 昭和五六年分

原告の、昭和五六年分の損益通算後の所得金額は、総所得金額一五三万九六三〇円及び分離課税の土地等の雑所得金額七一四〇万〇一一八円、納付すべき税額は四四四九万八九〇〇円並びに過少申告加算税は二二二万六四〇〇円であり、その詳細については以下のとおりである。

(1) 総所得金額 一五三万九六三〇円

右金額は、次のaとbの金額の合計額である。

a 事業(営業)所得の金額 八三万九六三〇円

右金額は、原告の確定申告書に記載された金額である。

b 給与所得の金額 七〇万円

右金額は、原告の確定申告書に記載された金額である。

(2) 分離課税の土地等の雑所得金額 七一四〇万〇一一八円

右金額は、所得税法六九条、同法施行令一九八条及び租税特別措置法施行令一九条二三項の規定により、次のa(分離課税の土地等の雑所得金額(損益通算前))からb(不動産所得の金額)及びc(分離短期譲渡所得の金額)の各赤字の金額を控除した金額である。

a 分離課税の土地等の雑所得金額(損益通算前) 一億三九七一万五七七〇円

原告は、本件交換によって取得した本件土地の一部(五五九九・六五平方メートル)を昭和五六年中に分譲したが(前述のように、この分譲を昭和五五年中の分譲と併せて「本件譲渡」という。)、このために生じた所得について、原告は、措置法三七条一項の適用ありとして譲渡所得の金額を〇円とする確定申告を行った。

しかしながら、右のように、宅地造成販売を業とする者でない者が土地に増加益発生の原因となる改良を加えてこれを譲渡する場合については措置法三七条一項の適用はなく、むしろ同法二八条の四第一項の適用を受けるものであって、その結果、右譲渡による所得については、イ 収入金額二億一〇〇〇万円、ロ 取得費七〇二八万四二三〇円、ハ 分離課税の土地等の雑所得金額(イからロを減ずる。)一億三九七一万五七七〇円となる。なお、右計算の基礎については、以下のとおりである。

イ 収入金額二億一〇〇〇万円の内訳は別表Fのとおりである。

ロ 取得費七、〇二八万四、二三〇円は、一平方メートル当たりの取得費一万二五五一・五四円に昭和五六年中の分譲面積五、五九九・六五平方メートルを乗じて算定したものである。

(算式)1万2,551・54円/m2×5,599・65m2=7,024万4,230円

b 不動産所得の金額 △六六一万一九三二円

右金額は、収入金額一二七九万八〇〇〇円(次のイ)から必要経費一九四〇万九九三二円(次のロ及びハの合計)を控除した金額である。

イ 収入金額 一二七九万八〇〇〇円

右金額は、原告の確定申告書に記載された金額である。

ロ 賃貸に係る建物の減価償却費 一一〇二万三二二二円

右金額の内訳は別表Gのとおりである。

ハ 減価償却費以外の必要経費 八三八万六七一〇円

右金額は、原告の収支内訳書に記載された金額である。

c 分離短期譲渡所得の金額 △六一七〇万三七二〇円

右金額は、原告の確定申告書に記載された金額である。

(3) 納付すべき税額 四四四九万八九〇〇円

右金額は、損益通算後の総所得金額一五三万九、六三〇円及び分離課税の土地等の雑所得金額七一四〇万〇一一八円を基礎とし、別表Hのとおり算出したものである。

(4) 過少申告加算税 二二二万六四〇〇円

右金額は、国税通則法六五条の規定により、右(3)の納付すべき税額四四四九万八九〇〇円から、原告の確定申告による納付すべき税額△二万九六四〇円を控除した残額四四五二万八〇〇〇円(千円未満を切り捨てる。)に百分の五を乗じて計算した金額である。

二  予備的抗弁その1

仮に、本件交換が所得税法五八条一項の適用を受けるものと仮定した場合においても、以下のとおり、原告の昭和五五年分及び昭和五六年分の所得税額等は、本件課税処分の所得税額及び過少申告加算税額を上回るから、本件課税処分は適法である。

1 本件譲渡に係る所得の区分

既に述べた(抗弁一3)ように、原告の本件譲渡による取得は雑所得に該当するものである。

2 本件土地の売上原価等(取得費)

雑所得の金額の計算上必要経費に参入すべき金額は、雑所得の総収入金額に係る売上原価その他雑所得を生ずべき業務について生じた費用の額とされている(所得税法三七条)ところ、原告が本件交換に当たり所得税法五八条一項の規定の適用を受けたとすると、本件土地は本件交換譲渡資産の取得費を引き継ぐから、本件土地の売上原価等(取得費)は本件交換譲渡資産の取得費と宅地造成費の合計額となる。

3 措置法三七条一項の不適用

措置法三七条一項は、その適用対象資産から、たな卸資産及びたな卸資産に準ずる資産を除外しているところ、本件土地はたな卸資産に準ずる資産であるから、本件譲渡による所得については、同項の適用がない。

4 措置法二八条の四第一項の不適用

措置法二八条の四第一項は「昭和四四年一月一日以後に他の者から取得した土地等」について適用されるところ、本件交換が所得税法五八条一項の適用を受けるとすると、取得の時期は本件交換譲渡資産の取得の時期(昭和四四年一月一日以前)とみなされる(措置法施行令一九条二〇項)から、措置法二八条の四第一項の適用はないことになる。

5 所得税額等

本件交換が所得税法五八条一項の適用を受けるとすると、原告の昭和五五年分及び昭和五六年分の所得税額等は次のとおりである。

(1) 本件譲渡に係る雑所得の金額

a 昭和五五年分 二億八二三六万五〇四九円

右金額は、別表Iにより算出したものである。

b 昭和五六年分 一億八六〇一万六二七五円

右金額は、別表Iにより算出したものである。

(2) 所得税額及び過少申告加算税の額

右(1)の金額を基として、原告の昭和五五年分及び昭和五六年分の所得税額及び過少申告加算税額を計算すると、別表Jのとおりである。

三  予備的抗弁その2

仮に、本件交換が所得税法五八条一項の適用を受け、かつ、原告は本件土地を造成販売を目的として取得したものではないと仮定した場合であっても、以下のとおり、原告の昭和五五年分及び五六年分の所得税額等は、本件課税処分の所得税額及び過少申告加算税の額を上回るから、本件課税処分は適法である。

1 本件譲渡に係る所得の区分

本件交換が所得税法五八条一項の適用を受け、かつ、原告は本件土地を販売を目的として取得したものではないとすると、本件譲渡による所得は、以下のように、所得税法三五条に規定する雑所得(総合課税)及び譲渡所得に該当する。

(1) 一般に、固定資産である土地に区画形質の変更を加えて宅地として譲渡した場合の、当該譲渡による所得は、事業所得の基因となるたな卸資産又は雑所得の基因となるたな卸資産の譲渡として、その全部が事業所得又は雑所得に該当し、右事業所得か雑所得かの区分は、社会通念上営利を目的として継続的に行われる事業と認められる行為から生ずる所得は事業所得とされ、それに該当しない場合は雑所得とされる。

そして、右固定資産である土地が極めて長期間(おおむね一〇年以上)引き続き所有されていたものであるときは、当該土地の譲渡による所得のうち、区画形質の変更等による利益に対応する部分は事業所得又は雑所得とし、その他の部分は譲渡所得として差し支えないものとされている(所得税基本通達三三-五)ことは、原告主張のとおりである(原告の反論一4)。

右のように譲渡所得と事業所得又は雑所得に区分する趣旨も原告の主張するとおりである(原告の反論一4)が、これに敷衍して述べれば、次のとおりである。

すなわち、固定資産であった土地つまり販売以外の目的で保有していた土地に、販売することを目的として宅地造成等の加工を加えた場合には、その土地は、固定資産からたな卸資産又はたな卸資産に準ずる資産に転化したと考えられ、右たな卸資産化した土地を譲渡したときは、その譲渡による所得は、その全部が事業所得又は雑所得に該当するが、極めて長期間保有していた土地に宅地造成等の加工行為を加えた後に譲渡した場合は、その譲渡による所得のうちには、その資産の長期間にわたる保有期間中に潜在的に生じていた資産の価値の増加益に対応するものが相当部分含まれているといえる。そこで、土地に宅地造成等の加工を加えて譲渡した場合であっても、その保有期間中における資産の価値の増加益が大きいと認められる極めて長期間保有していた土地の譲渡であるときは、その宅地造成等の加工行為に着手する時点までの資産の価値の増加益に対応する部分の所有は譲渡所得とし、その後の値上がり益及び加工利益に相当する部分の所得については事業所得又は雑所得に該当するというように区分して課税すべきものと解される。

(2) 本件土地が、仮に、本件交換について所得税法五八条一項の規定の適用を受けたとした場合、本件交換譲渡資産の取得時期を引き継ぐことになるから、右所得税基本通達三三-五に定める「極めて長期間(おおむね一〇年以上)引き続き所有されていた」ことになるとともに、本件交換譲渡資産の取得価額を引き継ぐことになる(所得税法施行令一六八条)。

したがって、本件譲渡による所得は、宅地造成等に着手する時点までの価値の増加益に相当する部分の所得は譲渡所得に、また、宅地造成等に着手した時点後の値上がり益及び加工利益に相当する部分の所得については雑所得(総合課税)にそれぞれ該当する。

2 本件土地の取得費

本件土地は、本件交換により取得したものであって、当該交換について所得税法五八条一項の適用を受けたとされた場合には本件交換譲渡資産の取得費を引き継ぐから、譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費の額は、本件交換譲渡資産の取得費となる。

また、宅地造成費は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入される。

3 雑所得に該当する部分についての措置法三七条一項の規定の不適用

措置法三七条一項は、その適用対象資産から、たな卸資産及びたな卸資産に準ずる資産を除外しているから、本件土地の譲渡による所得のうち雑所得に該当する部分については、措置法三七条一項の適用がない。

4 所得税額等

本件交換について所得税法五八条一項の規定の適用を受けたとした場合の、原告の昭和五五年分及び昭和五六年分の所得税額等は次のとおりである。

(1) 本件譲渡に係る雑所得の金額及び分離長期譲渡所得金額

a 昭和五五年分

雑所得の金額 一億八〇七二万五五八八円

分離長期譲渡所得金額 〇円

右金額は、別表Kの第2により算出したものである。

b 昭和五六年分

雑所得の金額 一億四六一八万六九八六円

分離長期譲渡所得金額 〇円

右金額は、別表Kの第3により算出したものである。

(2) 所得税額及び過少申告加算税の額

右(1)の金額を基として、原告の昭和五五年分及び昭和五六年分の所得税額及び過少申告加算税額を計算すると、別表Lのとおりである。

【抗弁に対する認否】

一  抗弁一(主位的抗弁)について

1(1) 抗弁一1の(1)の事実及び主張は認める。

(2) 抗弁一1の(2)については、以下のとおりである。

冒頭の分離課税の土地等の雑所得金額の主張は争う。

a 分離課税の土地等の雑所得金額(損益通算前)の主張は争う。

不動産業者ではなくゴルフ場を経営する会社の役員をしている原告と畜産農協との間で、昭和五三年一二月二二日に本件交換がされた事実、その後原告が本件譲渡をし、これによる所得について譲渡所得金額を〇円とする確定申告を行った事実は認める。

右譲渡につき措置法二八条の四第一項の適用がある旨の主張は争う。

また、計算の基礎として示された事実のうち、イは認める。ロは取得価額が二億八五六一万六八〇〇円であった事実は否認し、宅地造成費が一億二六二七万一五四〇円であった事実及び分譲有効面積が三万二八一五・七六平方メートルであった事実は認める。

b 事業(農業)所得の金額及びそこに併せて述べられた事実は認める。

c 不動産所得の金額及びそこに併せて述べられた事実は認める。

(3) 抗弁一1の(3)の主張は争う。

(4) 抗弁一1の(4)の主張は争う。

2(1) 抗弁一2の(1)の主張及び事実は認める。

(2) 抗弁一2の(2)については、以下のとおりである。

冒頭の分離課税の土地等の雑所得金額の主張は争う。

a 分離課税の土地等の雑所得金額(損益通算前)の主張は争う。

原告が本件交換の後に本件譲渡をし、これによる所得について譲渡所得金額を〇円とする確定申告を行った事実は認める。

右譲渡につき措置法二八条の四第一項の適用がある旨の主張は争う。

また、計算の基礎として示された事実のうち、イは認め、ロは分譲有効面積が五五九九・六五平方メートルであった事実は認めるが、その余は否認する。

b 不動産所得の金額及びそこに併せて述べられた事実は認める。

c 分離短期譲渡所得の金額及びそこに併せて述べられた事実は認める。

(3) 抗弁一2の(3)の主張は争う。

(4) 抗弁一2の(4)の主張は争う。

二  抗弁二(予備的抗弁その1)について

1 抗弁二1の主張は争う。

2 抗弁二2の主張は認める。

3 抗弁二3の主張は争う。

4 抗弁二4の主張は認める。

5 抗弁二5の主張は争う。

三  抗弁三(予備的抗弁その2)について

1 抗弁三1の主張は争う。

2 抗弁三2の主張は認める。

3 抗弁三3の主張は争う。

4 抗弁三4の主張は争う。

【原告の反論】

一  被告は、本件譲渡による所得には措置法二八条の四第一項が適用されると主張するが、右所得には以下に述べる理由から、同法三七条一項表一四を適用する余地があり、譲渡所得とされた部分については、所得がなかったことになる。

1 本件交換には所得税法五八条一項の適用がある。

(1) 所得税法においては、税額確定方式として申告納税方式が採用されており、右申告納税方式においては納付すべき税額が原則として納税者の申告により確定するところ、原告は、本件交換に係る譲渡所得について、所得税法五八条三項の規定に基づき、昭和五三年分の所得税の確定申告書に所得税法五八条一項の適用を受ける旨記載して申告し、原告の昭和五三年分の所得及び所得税額は、原告の右申告どおり確定したものであるから、原告は所得税法五八条一項の適用を受けたことになる。

このことは、<1>措置法施行令一九条二〇項一号あるいは同施行令二五条一三項一号の規定上、(所得税法第五八条第一項の)「規定の適用を受けたもの」とされており「規定に該当しかつ適用を受けたもの」とされていないこと、したがって、<2>納税者のその後の税負担に対する予測可能性の確保及び租税法律主義の見地から、「規定に該当しかつ適用を受けたもの」との意味に解釈してはならないことが要請されるというべきであることから、当然に導かれる結論である。

(2) 仮にそうでなくとも、原告は、次のように、本件交換取得資産を本件交換譲渡資産の譲渡直前の用途と同一の用途に供していたから、本件交換は、所得税法五八条一項の適用を受けるべくして受けたものである。

a 本件交換譲渡資産の譲渡直前の用途は牧場であり、この牧場は、原告が林間放牧の用に供していた土地であった。

b 原告は、昭和五三年一二月ころから昭和五四年六月ころまで、本件交換取得資産を放牧又は仮説の牛舎により肉牛の飼育に利用することによって、牧場の用に供していた。

2 原告の、本件交換譲渡資産の取得時期は、昭和四四年一月一日以前である。

3 本件交換取得資産は、措置法施行令一九条二〇項一号により、原告が昭和四四年一月一日以前より引き続き所有していたものとみなされるから、「昭和四四年一月一日以後に他の者から取得した土地」という措置法二八条の四第一項の要件を充たさない。同項の適用があるとする被告の主張は、失当である。

4 本件のように極めて長期間保有していた(所得税法五八条一項の適用を受けた場合も同様)土地等に対し、宅地造成工事等の加工行為を加え、その後それを譲渡した場合には、その譲渡による所得の内には、その資産の長期間にわたる保有期間中に潜在的に生じていた資産の価値の増加益に相当するものが相当部分含まれている。したがって、その資産の価値の増加益に相当する部分の所得は、理論上譲渡所得となるのである。

これは、所得税基本通達三三-五によって、実際の税務行政上も確立していることである。すなわち、土地の譲渡による所得が事業所得又は雑所得に該当する場合であっても、その区画形質の変更等に係る土地が極めて長期間(おおむね一〇年間)引き続き所有されていたものであるときは、当該土地譲渡による所得のうち、区画形質の変更等による利益に対応する部分は事業所得又は雑所得とし、その他の部分は譲渡所得として差し支えなく、この場合において譲渡所得に係る収入金額は区画形質の変更等の着手前における当該土地の価格とする扱いが実務上されているところである。

二  本件交換取得資産の取得価額

1 被告は、本件土地の取得費の算定につき、前提となる本件交換取得資産の取得価額について、高橋鑑定士の作成に係る鑑定評価書《乙一八。以下「高橋鑑定書」という。》に依拠して二億八五六一万六八〇〇円と算定しているが、これは誤りであって、以下の理由から、本件交換取得資産の取得価額は八億〇六八七万七九三六円となる。

(1) 土地の取得価額とは、土地を取得する者がその取得のために出捐した金額であり、出捐した物が金銭でない場合には、その出捐した物の時価をもって取得価額とすべきであるから、本件では、交換譲渡資産の時価をもって取得価額とするのが本筋である。

(2) 右(1)に述べたように、交換により取得した資産の取得価額は、交換譲渡資産の時価によるべきであり、本件交換取得資産の取得価額は、本件交換譲渡資産の一平方メートル当たりの時価に譲渡面積を乗じて得られた金額であると考えられる。

そして、本件交換譲渡資産の一平方メートル当たりの時価は、青森不動産鑑定事務所の鑑定評価額《甲四》一平方メートル当たり二七〇〇円に時点修正率一〇六パーセントを乗じて算出した二八六二円であり、これに本件土地の譲渡面積二八万一九二八平方メートルを乗じて得られる八億〇六八七万七九三六円が本件交換取得資産の取得価額となる。

(3) 以上によれば、分譲有効面積一平方メートル当たりの取得費は二万八四三六・〇二円となり、分離課税の土地等の雑所得金額も〇円となるから、被告の主張するように本件交換に所得税法五八条一項の適用がなく、本件譲渡に係る所得が雑所得というべきであったとしても、なお、被告のした本件課税処分は過大であり、違法となる。

2 仮に、右1に主張した金額が認められないとしても、次に述べるとおり、本件交換取得資産の取得価額は、少なくとも七億六、一二〇万五六〇〇円となる。

(1) 本件交換において、原告と畜産農協は、本件交換譲渡資産の価額を一平方メートル当たり二七〇〇円とする決定を行い、その上で、交換差金の授受のない等価交換とする旨の決定を行った。

このように、当事者間において明確な価額決定を行ってされた交換による資産の譲渡において、仮に事後的に交換譲渡資産と交換取得資産との鑑定評価額に開差があることが判明した場合、当事者間で合意された価額をもって譲渡収入金額とすべきである。なぜなら、このような相対的に限定された当事者間で成立する資産の価額についても、一つの客観的価額と考えるべきものだからである。

(2) これによれば、本件交換取得資産の取得価額は、原告と畜産農協との間で決定された一平方メートルあたりの本件交換譲渡資産の価額二七〇〇円に本件交換譲渡資産の譲渡面積二八万一九二八平方メートルを乗じた七億六一二〇万五六〇〇円となる。

(3) 以上によれば、分譲有効面積一平方メートル当たりの取得費は二万七〇四四・二四円となるから、本件課税処分は過大であることになり、違法となる。

3 高橋鑑定書の信用性

被告は、高橋鑑定書に依拠して、本件交換取得資産の時価を算定し、これを基礎として本件譲渡に係る所得額を算定するという手法をとっている。しかしながら、以下に述べる理由で、高橋鑑定書自体、信用性を有しない。

(1) 高橋鑑定書は、買受を目的として大洋基礎株式会社の依頼により作成されたものであるが、同鑑定書記載の金額かあるいはそれに近い金額で対象不動産が取引されたという話は、当地では皆無である。かえって、対象不動産は、その所有者である畜産農協が昭和五七年一一月に六億四〇〇〇万円(一平方メートルあたり一万四五五六円)で売却しているのである。したがって、右鑑定書の信用性は疑わしい。原告本人としても、仮に本件交換取得資産の隣接地がそのような低価格であった(したがって、本件交換取得資産も相当に低額である。)とすれば、自らの七億円以上もする資産と交換するはずはない。

(2) 高橋鑑定書においては、鑑定評価方法として取引事例比較法が採用されているが、取引事例比較法は前提として多数の事例の収集が必要とされる《甲二〇》ところ、高橋鑑定書においてはわずか三件の取引事例しか収集されていない。しかも、その三件の事例は、単に同一需給圏内と認識している範囲内の宅地見込地であるというだけであって、鑑定評価地や本件交換取得資産のように大規模宅地開発による良質の住宅地域となることが予定されている土地に関するものではない。そもそも、当時、近接地域はもとより、同一需給圏内においても、大規模開発に適した土地の取引事例などなかったのである。

したがって、鑑定評価にあたっては、不十分な資料しかない宅地見込地自体の取引事例を収集して算出される比準価格によるのではなく、良質な分譲地の取引価格、例えば近接地域である本件鑑定評価地及び本件土地の西側や東側の土地の取引事例を収集し、これに時点修正や事情補正を行い、かつ、個別要因等の比較を行って、造成後の想定更地価格を求め、これから造成費相当額等を控除して素地価格を求める作業こそが不可欠であった。ところが高橋鑑定書では最重要な近接地域についての事例収集が全くされていないという点で、事例収集における欠陥があり、また、その不十分な資料に基づいて算出された価格を鑑定評価額として採用している点で、鑑定手法を誤ったものである。

(3) 高橋鑑定書の採用する数値に基づいて本件譲渡による利益を算定しようとすると、以下のとおり不合理な結果となる。

すなわち、原告は、三万九六六九平方メートルの本件交換取得資産に宅地造成費一億二六二七万六六四〇円を投下して分譲用の宅地を造成したものであるから、一平方メートル当たり三一八三円(一円未満切捨)の造成工事費を投下したことになる。

(算式)1億2,627万6,640円÷3万9,669m2=3,183円/m2

これに高橋鑑定書で用いられている投下資本収益率六パーセントを乗ずると、一平方メートル当たりの収益は一九一円となり、さらに、本件交換取得資産の有効宅地化率は八二・七パーセントであるから、造成後の宅地一平方メートル当たりの収益は二三一円となる。

(算式)3万2,815・76m2÷3万9,669m2=0・827

191円÷0・827=231円

したがって、高橋鑑定書に用いられている標準的な宅地造成による対投下資本収益率によっても、区画形質の変更等による利益は、昭和五五年においては三三〇万〇九〇二円、昭和五六年においては一二九万三五一九円にしかならないのである。

(算式)231円×1万4,289・62m2=330万0,902円

231円×5,599・65m2=129万3,519円

ところが、被告は、昭和五八年一一月七日付けの更正においては、昭和五五年分として八九一四万七一二五円、昭和五六年分として一億一五六四万三二〇九円の区画形質変更等による利益があると認定しているのであるが、これでは、原告は通常では考えられない高額の利益をあげたことになる。しかしながら、不特定多数のものを買い手とする宅地の売買において、原告に右のような以上な利益を上げ得るような特殊な能力がないことは当然であって、このような不合理は、被告の依拠する高橋鑑定書の評価額の妥当性を無理に維持しようとした結果、生じたものである。

(4)a 既に述べたように、本件交換取得資産の取得価額の評価にあたっては、造成後の想定更地価格から造成費相当額等を控除して求めた価額(控除方式による素地価格)を算定することが必要であるところ、一般に控除方式による素地価格の算定に当たって鑑定評価上最も重要な事項は、宅地造成後の更地価格である。

この点、高橋鑑定書においては、鑑定評価地における右価格を一平方メートル当たり一万五五〇〇円と査定している。しかしながら、以下の事情のもとでは、本件交換取得資産の宅地造成後の更地価格を求めるに当たり、高橋鑑定書の右金額に依拠することは誤りである。

イ 原告が昭和五四年一月二八日に桝田礼三に対してした売買予約における価格は、一平方メートル当たり三万六〇〇〇円であり《乙一四》、実際にもその金額で昭和五六年に売買されている(桝田に売却したのは甲二二の図面中「病院」とされている部分である。)。なお、売買予約の際には、売却面積は五〇〇〇平方メートルであったが、実際の売却面積は三三〇〇平方メートルであった。このため、売買予約の段階では総額一億八〇〇〇万円であったものが実際の売却代金としては一億二〇〇〇万円となっている。

ロ 原告がした第一期分譲広告では、その平均分譲価額は一平方メートル当たり三万一〇五五円であった《甲二二》。

(算式)分譲価格合計4,689万3,277円÷分譲面積1,510m2=3万1,055円

ハ 原告が本件土地を宅地造成して昭和五五年及び昭和五六年に売却した際の平均取引価格は一平方メートル当たり二万八三三二円であった。

(算式)譲渡収入金額合計5億6,351万6,077円÷分譲面積合計1万9,889・27m2=2万8,332円

b 本件交換取得資産の宅地造成前の価格(控除方式による素地価格)は、少なくとも以下のとおり一平方メートル当たり一万六六九一円となるはずである。

イ 本件交換取得資産の造成後の更地価格は、昭和五五年及び昭和五六年に販売された宅地の売買価格によると、一平方メートル当たり二万八三三二円となる(右aハ。これは、当該土地そのものに係る不特定多数との間で成立した取引価額としてのものであるから、精度は高い。)。

ロ 宅地造成費は一億二六二七万一五四〇円で、一平方メートル当たり三一八三円である(右(3)。)。

ハ 開発負担金は〇円とする。

ニ 開発費及び一般管理費は、昭和五五年分について九九四万七五〇五円とされているので、一平方メートル当たり六九六円となる。

ホ 以上の数値を前提に高橋鑑定書《乙一八》の計算式をもって本件交換取得資産の宅地造成前の価格(控除方式による素地価格)を求めると、一万六六九一円となる。

(算式){2万8,332円×0・827-(3,182円+3,185円×0・06+0円+696円)}×1/1・16=1万6,691円

(5) そもそも不動産鑑定評価は不動産の価格に関する専門家の判断であり、意見であって、それは事前の判断にすぎなく、実際に形成された取引価額を否定できる性質のものではない。

しかるに、原告は、会社を経営し個人でも畜産業を営む者であり、決して社会の実情に疎い人物ではないところ、あえて本件交換譲渡資産の価値は約七億円、本件交換取得資産の価値も約七億円と評価して本件交換をし、また、本件交換取得資産の造成後の販売価額は既に述べたように一平方メートル当たり二万八三三二円であり、鑑定評価地自体も六億四〇〇〇万円(一平方メートル当たり一万四五五六円)で売却されているのである。

このように、実際に形成された価額と事前の判断とを比較してそこに大きな不一致があるならば、鑑定評価自体に非があると考えなければならない。

4 被告は、高橋鑑定書に依拠し、同鑑定書の対象不動産である鑑定評価地と本件交換取得資産の単位面積当たりの価額が等しいことを前提として、本件交換取得資産の時価を算定しているが、以下のように、この前提をとること自体が誤りであって、本件交換取得資産は単位面積当たりの価額において鑑定評価地を上回っている。

(1) 本件交換取得資産は三方を道路で囲まれているのに対し、鑑定評価地は一方のみが道路に面しているにすぎない。

(2) 鑑定評価地は、本件交換取得資産に比べて間口が狭い。

(3) 本件交換取得資産の方が鑑定評価地よりも宅地造成率において優っている。

(4) 交換取得資産と北里大学の間にある六メートル道路の存在は、有効宅地化率に直接的な影響を与える。現に本件交換取得資産の有効宅地化率は八二・七パーセントであり、これに対して高橋鑑定書が想定した鑑定評価地の有効宅地化率は七三パーセントである。したがって、本件交換取得資産の価額は、少なくとも鑑定評価地の価額の一・一三倍となるはずである。

(算式)82・7%÷73%=1・13

(5) 本件交換取得資産の南側には、原告が本件土地を取得する以前から、教職員団地が存在していたのに対し、鑑定評価地の南側は農地にすぎなかったのであり、鑑定評価地よりも本件交換取得資産の方が宅地見込地としての立地条件は優っている。

5 被告は、本件交換取得資産の一平方メートル当たりの価額を一万三、六八八円と認定したうえ、昭和五八年一一月七日付けの更正を行ったのであるが、本件訴訟では、右昭和五八年一一月七日付け更正に際しては認定の根拠とされなかった高橋鑑定書のみを根拠として、右価格を七二〇〇円(本件交換時点)又は七五四八円(造成工事直前)としている。

このように、当初は、被告自身が本件交換取得資産の価額に関し、本件訴訟における主張とは異なる額を認定していたのであるから、被告の主張する本件交換取得資産の取得価額は信用することができない。

三  手続的違法性

1 更正処分は調査に基づいて行われなければならない(国税通則法二四条、二六条)ところ、以下の事情のもとでは、本件課税処分は適正な調査に基づいた課税処分とはいい得ない。したがって、本件更正処分は権利の濫用として違法である。

(1) 本件交換がされた昭和五三年分の原告の所得税の確定申告は昭和五四年三月一五日にされているが、この際にされた所得税法五八条一項の適用を受ける旨の申告については、昭和五八年一一月七日付けでされた昭和五五年分及び昭和五六年分の所得税の申告に対する更正処分においても全く問題にされず、右更正処分は本件交換に対する同法五八条一項の適用を前提としてされたのである《乙九別表》。

そして、右更正処分等に対し、原告がその釈明を求めて異議申立てをしたところ、被告は、昭和五八年三月九日付けでその旨認める減額更正をしておきながら、その翌日付けで増額更正を行った。

(2) 被告は、右の増額更正にあたって、本件交換譲渡資産において林間放牧が行われていたとする原告の主張については全く調査をしなかった《乙九(一四頁)》。

(3) 右の経緯に照らすと、被告は、本件交換に対する所得税法五八条一項の適用について全く問題視していなかったのに、原告が異議申立てをして以降、それをかわすために、本件交換譲渡資産において林間放牧が行われていたとする原告の主張については調査をしないまま本件更正処分を行ったものである。

2 国税に関する処分に対する不服申立制度の第一義的目的は、納税者の権利救済にあるから、不服申立人に対し、不利益に処分を変更することは許されないところ、本件は、原告の不服申立に対し、その不服申立の対象となった更正処分を減額再更正して実質上取り消したうえ、その翌日には不服申立の対象となった更正処分に比較して金額の点で増額となる再々更正処分を行っているのであって、不服申立てに関する一連の審査手続の中で、納税者にとって不利益変更となる処分を行ったものというべきである。

【原告の反論に対する認否】

一  本件譲渡による所得に措置法三七条一項表一四の適用がある旨の原告の主張については、以下のとおり争う。

1 反論一1(本件交換には所得税法五八条二項の適用があること)の主張は争う。

(1) 措置法施行令一九条二〇項一号及び同施行令二五条一三項一号にいう「所得税法第五八条第一項の規定の適用を受けたもの」とは、「所得税法五八条所定の要件を充足して適用を受けたもの」との趣旨に解すべきであって、本件交換はその要件を充足するものではなかったから、右「所得税法第五八条第一項の規定の適用を受けたもの」には該当しない。

(2) 所得税法五八条一項を適用するにあたっては、交換により取得した資産を交換により譲渡した資産と同一の用途に供するものであることが必要であるところ、本件交換譲渡資産の譲渡直前の用途と、本件交換取得資産の用途とは、以下のように同一ではないから、本件交換は所得税法五八条一項の適用要件を欠くものである。

a 本件交換譲渡資産の譲渡直前の用途は、その大部分が山林であった。

本件交換譲渡資産二八万一九二八平方メートルのうち、二七万五八六四平方メートルの地目は登記簿上山林であり、現実にも山林としての用途に供されていた。

仮に本件交換譲渡資産が譲渡直前において林間放牧に利用されていたとしても、その面積は七万平方メートルに過ぎず《乙九》、右山林に家畜を放牧していたとしても、それは単に山林を放牧にも利用したというだけであって、そのことによって山林が牧場になるものではない。

b 本件交換取得資産の取得後の用途は、宅地である。

本件交換取得資産の原告における取得目的は、宅地に造成して転売することであったことは明らかである。現に、原告は本件交換取得資産を取得した後、同資産を全面的に宅地造成し転売行為を行っているのである。

2 反論一2(原告の本件交換譲渡資産の取得時期が昭和四四年一月一日以前であること)の事実は認める。

3 反論一3(本件交換取得資産の取得時期に関して、措置法施行令による交換譲渡資産の取得日の引き継ぎがあること)の主張は争う。

本件交換が所得税法五八条一項の適用を受けるものでない以上、本件交換取得資産を取得した時期は本件交換の行われた昭和五五年一二月二二日である。

4 反論一4(長期間保有していた土地等に加工行為を加えた後にこれを譲渡した場合の譲渡所得としての処理)の主張自体は認める。

二  本件交換取得資産の取得価額について

1 反論二1の主張(本件交換取得資産の取得価額が八億〇六八七万七九三六円であること)は争う。

(1) 本件交換取得資産の取得価額は、本件交換の時における本件交換取得資産の取得のために通常要する価額(再取得価額)、すなわち、本件交換取得資産の時価額とすべきであるから、本件交換譲渡資産の時価をもって本件交換取得資産の取得価額とすべき旨の主張は、失当である。

(2) 仮に、原告の主張するように本件交換譲渡資産の時価を本件交換取得資産の取得価額とみなすとしても、原告の依拠する青森不動産鑑定事務所長久保田秋平作成の不動産鑑定評価書《甲四》の評価額には以下の問題点があり、右鑑定評価額を基礎として算定した本件交換取得資産の取得価額は妥当なものとはいえない。

a 鑑定評価対象地は、農業振興地域の整備に関する法律等により宅地開発が厳しく規制されている土地で、この規制の有無は土地の価額に大きく影響を及ぼすところ、右鑑定評価額は、規制の有無を無視し工場地又は住宅地として宅地開発が可能であることを前提に算定されている。

b 右鑑定評価の対象不動産には本件交換譲渡資産とは地勢、道路条件等価格形成要因が全く異なるかなりの土地が含まれており、右鑑定評価額は本件交換譲渡資産の時価とはなり得ないから、本件交換譲渡資産の一平方メートル当たりの時価を算定するに当たって、単に右鑑定評価額に時点修正率を乗じた算定の仕方は妥当でない。

2 反論二2の主張(本件交換取得資産の取得価額が七億六一二〇万五六〇〇円であること)は争う。

(1) 原告と畜産農協との間で本件交換譲渡資産の一平方メートル当たりの価額を二七〇〇円とする旨の合意がされた事実はない。

(2) 交換譲渡資産と交換取得資産との鑑定評価額に開差がある場合、交換両当事者が合意した価額をもってその譲渡収入金額とすべきである旨の主張は、以下のとおり理由がない。

a 等価交換の場合の譲渡収入金額は交換により取得した資金の価額(時価)となるのが原則であり、例外的に交換当事者間で合意した価額を譲渡収入金額とみなすためには、<1>その鑑定評価額が真に交換資産の客観的価値を反映したものであること、<2>交換譲渡資産と交換取得資産の客観的価額に開差があるにもかかわらず交換をするに至った特別の事情があること、<3>交換両当事者が合意した価額は、交換をするに至った事情からみて合理的に算定されていること、の諸要件を充たすことが必要である。

b ところが、本件交換においては、<1>原告が本件交換譲渡資産の評価の基礎としたと主張する不動産鑑定評価書《甲四》による価額は、右1で述べたとおり本件交換譲渡資産の客観的価額を正確に示したものとはいえず、<2>本件交換に至る経緯からみて、交換両当事者とも売り急ぎや買い進み等交換資産の客観的価額に著しい開差があっても交換をしなければならないような特別の事情は認められず、<3>原告が交換両当事者の合意のいえ定めたと主張する本件交換譲渡資産の一平方メートル当たりの価額二七〇〇円は、右鑑定評価書の価額を基とした価額であるから《甲九》、右<1>のとおり本件交換をするに至った事情等に照らし合理的に算定されたものとはいえない。

3 反論二3の主張(高橋鑑定書には信用性がないこと)は争う。

4 反論二4の主張(鑑定評価地と本件交換取得資産の単位面積当たりの価額が等しい事を前提とする本件交換取得資産の価額評価は誤りであること)は争う。

鑑定評価地と本件交換取得資産の立地条件は、ほぼ同等か、鑑定評価地の方が優れているから、両土地の単位面積当たりの価額が等しいことを前提とする価額評価は正当である。

5 反論二5の主張(被告は、昭和五八年一一月七日付け更正において認定根拠とされなかった高橋鑑定書を持ち出して、本件交換取得資産の取得価額につき当初とは異なる額を認定しているので、信用性がないこと)は争う。

三  手続的違法性の存否について

1 反論三1の主張(本件課税処分は適正な調査に基づかないものであること)は否認ないし争う。

被告は、調査を行ったからこそ、本件交換に所得税法五八条二項の適用がないと判断し、本件課税処分をおこなったものであるから、原告の主張は失当である。

2 反論三2の主張(本件課税処分は不利益変更禁止の原則違反であること)は争う。

第三証拠

訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一1  請求原因一の事実(課税処分の経緯)は当事者間に争いがない。

2  抗弁一1の(1)(昭和五五年分の総所得金額とその算定根拠)の主張及び事実は当事者間に争いがない。

二  以下では、抗弁一1の(2)(昭和五五年分の分離課税の土地等の雑所得金額)について検討する。

1  原告と畜産農協との間で、昭和五三年一二月二二日に本件交換がされた事実、その後原告が本件交換取得資産に区画形質の変更を加えて順次宅地造成した後、これを目的物として本件譲渡をした事実、右譲渡による所得について原告が譲渡所得金額を〇円とする確定申告をした事実、本件譲渡のうち昭和五五年分に対応する収入金額及びその根拠となった事実、同年分の譲渡費用及びその根拠となった事実、同年分の原告の事業(農業)所得金額及び不動産所得金額とその根拠となった事実は、当事者間に争いがない。

2  被告は、本件土地は雑所得の基因となる土地であるから本件譲渡につき措置法三七条一項表一四の適用はなく、かえって措置法二八条の四第一項の適用がある旨主張し、これに対し、原告は、本件交換に所得税法五八条一項の適用があり、また、そのことを前提として、本件譲渡に措置法三七条一項表一四が適用され得る旨反論するので、この点につき判断する。

(1)a  所得税法は、資産の譲渡によって生じた所得を課税の対象とする場合において、税負担の公平を図るために、所得の性質に応じて取扱いに差異を設けている。まず、臨時的・偶発的に発生する所得については、経常的・計画的に発生する所得に比較して担税力に劣るところから、これを譲渡所得として、経常的・計画的に発生する所得と区別して課税の対象としている。すなわち、所得税法上、譲渡所得に対する課税は、資産の長期にわたる保有期間中に、所有者の意思によらない外的条件の変化(例えば物価の高騰、社会条件の変化等)に基因して逐年生じた資産の値上がりによる増加益を所得とし、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税しようとするものである。

これに対し、同じく資産の譲渡による所得であっても、経常的・計画的に発生するものは、所有者の意思に基づかない値上がり分という性格を有しないから、譲渡所得には該当しないものというべきであり、所得税法三三条二項一号が、たな卸資産の譲渡その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得を譲渡所得から除外しているのは、右の趣旨を示すものである。また、同号がさらにたな卸資産に準ずる資産として政令で定めるものの譲渡による所得をも譲渡所得の範囲から除外すべきものとして、同法施行令八一条一号が、「雑所得を生ずべき業務に係るたな卸資産に準ずる資産」をたな卸資産に準ずる資産として定めているのも、同趣旨である。

そうだとすると、例えば山林・原野の所有者がその土地を宅地に造成して他に譲渡するような場合は、宅地として造成することによって生じた土地の増加益を譲渡行為によって実現しようとするものであって、譲渡による所得の発生は計画的であるから、このような譲渡行為から生じた所得は譲渡所得ではなく、事業所得又は雑所得となるものと解するのが相当である。

b  本件譲渡は、原告が、本件交換によって取得した本件交換取得資産に区画形質の変更を加えて順次宅地造成し、この造成した土地を昭和五五年及び昭和五六年に一部分譲したものであることは当事者間に争いがない。そうすると、本件譲渡による所得は譲渡所得ではあり得ず、事業所得又は雑所得に当たることになるところ、事業所得か雑所得かの区分は、社会通念上「営利を目的として継続的に行われる事業」と認められる行為から生ずる所得であるか否かによる(前者であれば事業所得、後者であれば雑所得。)ものと解するのが相当である。そして、原告が昭和五六年、翌五七年の二年にわたり本件譲渡を行ったことは当事者間に争いがないが、他方、原告が不動産業者でないことも当事者間に争いがなく、他に原告が営利を目的として継続的に右譲渡を行ったことを窺わせる証拠はないから、結局、本件譲渡による所得は雑所得に該当するものと認めるのが相当である。

c  以上により、本件土地は措置法二八条の四第一項にいう雑所得の基因となる土地に該当する。そして、同法三七条一項本文かっこ書きにより、たな卸資産に準ずる資産で政令で定めるものには同項表一四の適用がなく、さらに措置法施行令二五条により、雑所得の基因となる土地がたな卸資産に準ずる資産に属するものとされているのであるから、本件譲渡につき同項表一四の適用がある旨の原告の主張は、その余の判断をするまでもなく、失当である。

(2)  ところで、原告の、本件交換譲渡資産の取得時期が昭和四四年一月一日以前であることは当事者間に争いがないから、仮に原告の主張のように本件交換に所得税法五八条一項の適用があるとすると、措置法施行令一九条二〇項一号により、原告は本件交換取得資産を昭和四四年一月一日以前から継続して所有していたものとみなされることになり、「昭和四四年一月一日以後に他の者から取得した土地」という措置法二八条の四第一項の要件を充足しないこととなるので、以下、所得税法五八条一項の適用の有無について判断する。

a 原告は、本件交換に係る譲渡所得について、昭和五三年分の所得税の確定申告書に所得税法五八条一項の適用を受ける旨記載して申告し、原告の同年分の所得及び所得税額は、右申告通りに確定したものであるから、原告は所得税法五八条一項の適用を受けたことになると主張する。

しかしながら、措置法施行令一九条二〇項一号及び同施行令二五条一三項一号にいう「所得税法五八条第一項の適用を受けたもの」とは、同項所定の要件を充足し、その結果として同項の適用を受けたものを指す趣旨であると解するのが相当である。ただし、更正の除斥期間が経過する等のことによって、同項の適用を前提とする確定申告が申告どおりに確定した場合に、同項の要件を充足していない交換についてまでその適用を受けたものとし、そのことを前提としてその後の右交換に由来する所得税等の計算の全てを処理することは、租税正義に反するのみならず、課税庁が課税権を行使し得る期間であるにすぎない除斥期間の制度趣旨を没却するものであるからである。

そこで、本件につき所得税法五八条一項の要件が充足されているかについて、以下検討する。

b まず、証拠《乙六ないし一二》によれば、<1>原告及び畜産農協の双方とも、昭和五三年一二月一一日の時点では、本件交換譲渡資産二八万一、九二八平方メートルのうち宅地・畑地及び無立木の地域を除いた少なくとも二〇万平方メートル以上の土地が現実に山林としての用に供されていた旨の認識を有していたこと、<2>本件交換譲渡資産からは取引価額にして五〇〇〇万円に達する木材が現実に生産され、これが原告と畜産農協との間で売買されたこと、<3>原告は、本件交換譲渡資産の他に、通称沖山道路を挟んだ西側に約二〇万平方メートルの牧場を有しており、同牧場においては設備を整えて牛の飼育をしていたこと、<4>右<3>の事実は、本件交換譲渡資産の隣接地所有者であり、かつ、右隣接地において耕作をしていた沼田ヒヨ、本件交換の際に事前に本件交換譲渡資産を調査した畜産農協理事佐々木留吉及び本件交換の前後に原告から牛の飼育預託を受けて原告と取引のあった後澤敏博がそれぞれ認識していたこと、<5>しかしながら、本件交換譲渡資産において牛の放牧・飼育をしていた事実は、右三名ともこれを認識していなかったこと、<6>原告が本件交換譲渡資産において牛の放牧をしていたとしても、右放牧に利用されていた面積は七万平方メートル程度にすぎなかったことがそれぞれ認められる。以上の事実によれば、本件交換譲渡資産の本件交換直前の用途は山林であったと認めるのが相当である。

c 次に、証拠《乙一三ないし一五、原告本人》によれば、<1>畜産農協が牧場として使用していた本件交換取得資産を交換に供しようとしたのは、同資産の周辺が市街化し、近隣住民から家畜の糞の処理につき苦情が出る等の事情から、牧場に適さなくなったためであること、<2>本件交換に際し、交換当事者である原告と畜産農協との連名で昭和五三年一二月八日付けで青森県知事宛に提出された、国土利用計画法二三条一項の規定に基づく「土地売買等届出書」の「5土地の利用目的等に関する事項」に、別紙として「宅地造成地・内訳・住宅用地、病院用地、寮アパート用地、ショッピングセンター、商店用地、保育園、道路用地」と記載されていること、<3>原告は、本件土地の一部につき、桝田礼三との間で、昭和五四年一月二八日付けで「土地売買予約証書」を取り交わしており、したがって、両者間の土地売買に関する交渉はそれ以前に存在していること、<4>原告は、昭和五四年八月七日付けで、株式会社紺野工務店との間で本件造成工事の請負契約を締結し、昭和五四年八月から同年一一月にかけて造成工事を行ったことがそれぞれ認められ、これらの事実に加えて、<5>原告は、右造成にかかる本件土地(宅地)を昭和五五年以降において転売した事実(当事者間に争いがない。)をも考慮すると、原告の本件交換取得資産の取得目的は宅地に造成し、これを転売して利益を得ることにあったと認めるのが相当であり、右目的及び右に認定した宅地造成行為及び転売行為の存在を総合すれば、原告の本件交換取得資産の取得後の用途は宅地であったと認めることができる。

d 以上によれば、本件交換譲渡資産の譲渡直前の用途は山林であるに対し、本件交換取得資産の取得後の用途は宅地であるから、本件交換に所得税法五八条一項の適用はないというべきである。したがって、措置法施行令に基づく取得日の引き継ぎは認められないから、本件交換取得資産の取得時期は本件交換の時、すなわち昭和五三年一二月二二日であることになる。

(3)  以上によれば、本件譲渡は、雑所得の基因となる土地にして昭和四四年一月一日以降に他の者から取得したものの譲渡であると認められるから、措置法二八条の四第一項の適用がある。

3  被告は、本件譲渡による所得の算定につき、高橋鑑定書に依拠し、本件交換取得資産の取得価額を二億八五六一万六八〇〇円(一平方メートル当たり七二〇〇円)と査定し、これを基礎として取得費を算定しているところ、原告は、これに対し、高橋鑑定書の信用性を争うとともに、本件交換取得資産の取得価額は八億〇六八七万七九三六円又は七億六一二〇万五六〇〇円であると反論するので、次にこれらの点につき検討する。

(1)  まず、被告は、本件交換取得資産の取得価額は同資産の取得時における時価であるとの前提をとるのに対し、原告は、本件交換譲渡資産の時価であると反論する。

この点、所得税法施行令一〇三条一項三号によれば、交換によって取得したたな卸資産の取得価額は、その取得の時における当該資産の取得のために通常要する価額及び当該資産を消費し又は販売の用に供するために直接要した費用の額の合計額であるとされているのであって、そこにいう「当該資産の取得のために通常要する価額」とは、その文言上明らかなように、取得資産の再取得価額すなわち時価と解するのが相当である。

そして、既に判示したように、本件譲渡による所得は雑所得に区分され、本件交換取得資産はいわゆるたな卸資産に準ずる資産に該当するものであるところ、たな卸資産に準ずる資産の取得価額につき明文の規定はなく、たな卸資産に関する規定を準用するのが相当である。

そうすると、本件交換取得資産の取得価額は、同資産の取得時における時価であるというべきであるから、原告の右反論は失当である。

(2)a  また、原告は、<1>本件交換の際、畜産農協との間で、本件交換譲渡資産の価額を一平方メートル当たり二七〇〇円とする旨決定し、その上で、本件交換は交換差金の授受を伴わない等価交換とする旨の決定を行ったこと、<2>このように当事者間で明確に価額決定を行ってされた交換による資産の譲渡において事後的に交換譲渡資産と交換取得資産との鑑定評価額に開差があるときは、交換当事者の合意した額をもって譲渡収入金額とすべきであること、<3>したがって、本件交換取得資産の取得価額は、二七〇〇円に本件交換譲渡資産の譲渡面積を乗じた額である七億六一二〇万五六〇〇円であることをそれぞれ主張する。

b  しかしながら、証拠《甲九、甲一九、乙三〇、乙三一、原告本人》によれば、<1>原告と畜産農協との間で、本件交換譲渡資産(及び本件交換取得資産)の価額を一平方メートル当たり二七〇〇円とする旨の合意書《甲九》を作成したのは、本件交換のあった昭和五三年一二月二二日から数年後である昭和五九年初めころのことであったこと、<2>それにもかかわらず右合意書においては作成日として五三年一二月二二日と記載されていること、<3>畜産農協は、昭和五七年一二月二二日に、古里トスからその所有する土地六、九四二平方メートルを七六一万九〇〇〇円(一平方メートル当たり一〇九七円)で買い受けたこと及び右土地は本件交換譲渡資産に隣接する平坦な畑であったこと、<4>原告は、昭和五三年一二月一五日、本件交換譲渡資産に隣接する土地一九二二平方メートルを古里勘次郎から二二五万円(一平方メートル当たり一一七〇円)で買い受けたこと、<5>原告は、畜産農協に対し、右<4>の土地を昭和五四年六月一九日、三〇七万五二〇〇円(一平方メートル当たり一六〇〇円)で売却したことがそれぞれ認められ、以上の事実によれば、本件交換譲渡資産の価額について明確な取決めがされた事実を窺うことはできないばかりか、二七〇〇円という価額は近隣の土地の取引価額に比べて著しく高額であるというほかはなく、結局、原告と畜産農協との間で、本件交換に際し、本件交換譲渡資産の価額を一平方メートル当たり二七〇〇円とする旨の合意がされた事実を認めることはできない。

c  そうすると、その余の点を論ずるまでもなく、本件交換譲渡資産の価額ひいては本件交換取得資産の取得価額が七億六一二〇万五六〇〇円である旨の原告の反論は理由がない。

(3)  さらに、原告は、被告の依拠する高橋鑑定書の信用性について争うので、この点について検討する。

a まず、原告は、高橋鑑定書の金額あるいはそれに近い金額で鑑定評価地が取引されたという事実はなく、かえって鑑定評価地は畜産農協が東北殖財に対し、昭和五七年一一月に六億四〇〇〇万円(一平方メートル当たり一万四五五六円)で売却しているのであるから、高橋鑑定書の評価額(一平方メートル当たり六八〇〇円)は誤りである旨主張する。

確かに、鑑定評価地が東北殖財に対し一平方メートル当たり一万四五五六円で昭和五七年一一月に売却された事実は証拠《甲一九》によって認めることができる。

しかしながら、証拠《乙一八、乙三二の一、乙三三の一、乙三四(一一問答、二三問答)、証人高橋》及び既に認定した事実によれば、<1>高橋鑑定書の鑑定評価額が決定された時点(価格時点)は昭和五二年三月一六日であり、この時点では、鑑定評価地に隣接する本件交換取得資産は宅地造成前であったこと、<2>右価格時点においては、昭和五七年ころに比較して周辺の宅地化が進展していなかったこと、<3>鑑定評価地が東北殖財に譲渡された時点においては本件交換取得資産の宅地造成が完了していたこと、<4>鑑定評価地が東北殖財に譲渡された時点では、昭和五二年ころに比較して同地の周辺の住宅が増加していることを認めることができ、これらの事実によれば、鑑定評価地が東北殖財に譲渡された時点においては、同地は宅地造成の動きに取り残された土地となっていたというべきである。そうすると、東北殖財に譲渡された時点での鑑定評価地の宅地としての熟成度は、相当に高くなっていたと認めることができる。また、証拠《乙三〇、乙三一》によれば、原告自身昭和五三年一二月一五日に本件交換譲渡資産に隣接する土地を二二五万円で取得し、その約半年後である昭和五四年六月一九日には同土地を三〇七万五二〇〇円で畜産農協に転売したことが認められ、その地下上昇率は約半年で一・三七倍であると認めることができる。

(算式)307万2,500円÷225万円=1・37

以上によれば、昭和五二年三月一六日(価格時点)に二億七六五〇万円と評価された土地が、周囲の 状況が大きく変化した五年八か月後の昭和五七年一一月に六億四〇〇〇万円で取引されたとしても、不合理であるということはできず、したがって、このことをもって高橋鑑定書の信用性が減殺されるとはいえない。

b 原告は、また、高橋鑑定書は、その採用する取引事例比較法の前提となる十分な資料収集をしておらず、事例の選択の点でも不適切であると主張する。

イ そこで、まず、高橋鑑定書が十分な資料収集を経て作成されたものであるかについてみるに、証拠《乙一八、乙三四、証人高橋》によれば、<1>高橋鑑定書の作成者である高橋鑑定士は当時財団法人日本不動産研究所青森支所長であり、同人は、現行の不動産評価鑑定士精度発足以来一貫して不動産鑑定業務に従事してきた者であること、<2>高橋鑑定士は、高橋鑑定書作成にあたって、実際に現地を検証し、位置・形状・規模を把握したものであること、<3>右鑑定評価においては、評価額決定の基準として、まず「比準価格」と、「造成後の想定更地価格から造成費相当額等を控除して求めた価額」の両者を試算し、これを精度、評価の手順等から比較検討していること、<4>右比準価格は「近隣地域の標準的使用における標準価格」を基礎としており、その査定にあたっては、取引事例比較法を採用し、取引事例価格・評価先例標準価格その他の価格資料を比較検討していること、<5>高橋鑑定士は、取引事例の選定にあたり、自ら取引事例の収集に努めるとともに、財団法人日本不動産研究所が収集蓄積した資料を利用したこと、<6>それにもかかわらず、鑑定評価地の近隣地域には適切な取引事例を見い出せなかったこと、<7>高橋鑑定士は、地目・造成後の用途等、本件鑑定評価地と類似点が多く、極端に土地の規模に差異がないなど修正の必要性が少ないもの、高橋鑑定書の鑑定評価の時点と時間的隔たりが少ないもの、という基準で取引事例を選択したことを認めることができる。

ところで、取引事例比較法においては、取引事例は、原則として、近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産に係るもののうちから選択すべきものであるが、必要止むを得ない場合には近隣地域の周辺の地域に係るもののうちから選択することも合理性を有するものというべきである《甲二〇参照》ところ、右に認定した事実によれば、高橋鑑定士は、取引事例比較法を採用するにあたって、近隣地域内における適切な取引事例の把握漏れがないように、その職責を尽くしたものと認めるのが相当である。

ロ 次に、高橋鑑定書の取引事例の選択した事例自体が適切なものであったかをみるに、証拠《乙一八、乙三四、証人高橋》によれば、<1>高橋が採用した取引事例は、昭和五一年八月ないし昭和五二年三月における評価対象地の近辺の宅地見込地に関する事例であること、<2>高橋が採用した取引事例の面積は六八〇〇平方メートルないし七九〇〇平方メートルであり(他の一事例の面積は不明。)、これに対し鑑定評価地の面積は四万〇六六〇平方メートルであることをそれぞれ認めることができ、右事実によれば、高橋の選択した取引事例は、その規模において鑑定評価地には及ばないが、一般的な一戸建宅地のそれを相当程度上回るものというべきであって、良好な住宅地域となる可能性が高いものであったと認めるのが相当であり、この点において鑑定評価地との類似性を肯定することができる。

ハ さらに、証拠《乙一八、乙三四、証人高橋》によれば、高橋鑑定士は、<1>高橋鑑定書において、鑑定評価地の造成後の想定更地価格から造成費相当額等を控除して素地価格を求めるにあたり、造成後の更地価格は高橋鑑定書別表の土地価格資料を基礎として一平方メートル当たり一万五五〇〇円と算定し、有効宅地化率は鑑定評価地の地図上に高橋自身が造成事例を参考に道路・緑地等の図を描き、これら道路・緑地等の部分を除いた部分の割合をもって七三パーセントと算定し、造成工事費は実際の分譲地の事例その他高橋が業務上入手した資料を基礎として一平方メートル当たり二八五〇円と算定し、対投下資本収益は分譲地の事例等高橋鑑定士が業務上入手した資料に基づき一平方メートル当たり一七〇円と算定し、販売費及び一般管理費は高橋鑑定士が業務上入手した類似地の造成費用の資料を参考に一平方メートル当たり一一三〇円と算定するなど、計算の基礎となる数額は鑑定評価地において真実妥当する数額ではなく、高橋鑑定士の知識・経験に基づく見込み額であったこと、及び<2>右のようにして得た素地価格よりも取引事例比較法に基づく比準価格の方が精度が高いと判断した結果、比準価格として得た一平方メートル当たり六八〇〇円という数額をもって最終的な評価額と決定したことをそれぞれ認めることができる。

ニ 右イないしハに検討したところを総合すると、高橋鑑定士は、高橋鑑定書作成の過程において、取引事例比較法に基づいて比準価格を算定するにつき、取引事例の把握漏れがないように職責を尽くし、類似性を有する事例を採用したものであり、併せて検討した想定更地価格から造成費相当額等を控除して得られた素地価格よりも比準価格の方がより精度が高いと判断したことには合理性があるというべきである。

c 原告は、高橋鑑定書が造成後の想定更地価格から造成費相当額等を控除して素地価格を求めるのに用いた投下資本収益率を実際の造成費に乗じて、本件譲渡に係る「区画形質の変更等による利益」を計算し、昭和五五年においては三三〇万〇九〇二円、昭和五六年においては一二九万三五一九円にしかならないはずであるとして、被告の主張する区画形質の変更等による利益すなわち雑所得金額は多きにすぎる(投下資本の二・四倍)と非難するとともに、このような不合理は、被告の依拠する高橋鑑定書の評価額の正当性を無理に維持しようとした結果であるとして、高橋鑑定書の信用性を争う。

しかしながら、現実の不動産取引において、区画形質の変更等による利益の額が投下資本の数倍になることはないわけではなく、また、区画形質の変更等による利益は、造成後の宅地の販売価額から区画形質変更直前の土地の価額と造成費及び販売費等を控除した結果として事後的に算定されるものであるところ、右販売価額は、需要供給の事情・社会情勢の変化等の種々の状況が反映され、当事者の思惑等に基づいて決せられる極めて流動的なもので、その結果、区画形質の変更等による利益の金額自体もまた、流動的であることを免れない。

本件でも、既に認定判示したように本件交換取得資産は当初山林であり、同土地が宅地に造成されて分譲されたのが本件譲渡であって、そのような土地の取引において、社会情勢の変化や需要供給の事情が影響して、区画形質の変更等による利益が投下資本の二・四倍に達したとしても、決して不合理ということはできない。そうすると、このような利益の存在によっては高橋鑑定書の信用性は減殺されないというべきであり、原告の主張は失当である。

d 原告は、本件交換取得資産の宅地造成後の想定更地価格から造成費相当額を控除して求めた価額(控除方式による素地価格)の算定にあたり最も重要な事項は造成後の更地価格であるところ、本件交換取得資産の控除方式による素地価格を求めるにあたって、高橋鑑定書が採用した鑑定評価地の造成後の更地価格に依拠することは誤りであり、本件交換取得資産の造成後の素地価格は、少なくとも一平方メートル当たり一万六六九一円となる旨主張する。

イ この点、証拠《甲二二、乙一四》によれば、<1>原告は、桝田礼三との間で、昭和五四年一月二八日に本件土地の一部につき売買予約を締結しているが、その際の価格は一平方メートル当たり三万六〇〇〇円であり、実際にもその価格で昭和五六年に売買されていること、<2>原告がした本件土地の第一回分譲広告では、その平均分譲価格は一平方メートル当たり三万一〇五五円であったことがそれぞれ認められる。

(算式)分譲価格合計4,689万3,277円÷分譲面積1,510m2=3万1,055円/m2

さらに、<3>原告が本件土地を宅地造成して昭和五五年及び昭和五六年に売却した際の平均取引価格が一平方メートル当たり二万八三三二円であったことは当事者間に争いがない。

(算式)譲渡収入金額合計5億6,351万6,077円÷分譲面積合計1万9,989・27m2=2万8,332/m2

そして、原告は、これらの金額を根拠として、本件交換取得資産の造成後の客観的価値(更地価格)は、高橋鑑定書が査定している鑑定評価地の造成後の更地価格一万五五〇〇円《乙一八》よりも大であり、特に右<3>の平均取引価額は本件土地そのものに係る不特定多数との間で成立した取引価額であるから精度が高いものとし、この価額をもって本件交換取得資産の造成後の更地価格とし、この価額を基礎として算定した本件交換取得資産の控除方式による素地価格(一平方メートル当たり一万六六九一円)は、被告の主張する高橋鑑定書の評価額(一平方メートル当たり六八〇〇円)を基礎として得られた本件交換取得資産の時価(一平方メートル当たり七二〇〇円)よりも精度が高いことを主張するものであると解される。

ロ しかしながら、造成後の想定更地価格から造成費相当額を控除して求めた素地価格なるものは、評価対象地の取得時から販売完了時までの全期間にわたる各種数値を想定して求められるものであるから、算定の基礎となる数値は、理想的には、右期間全体で、かつ、評価対象地全体に係るものであるべきである。具体的には、「造成後の更地価格」は全有効分譲面積の一平方メートルの平均販売単価、「有効宅地化率」は取得地の総面積に対する分譲有効面積の割合、「造成工事費」は直接又は間接工事の総費用を取得地の総面積で除した一平方メートル当たりの費用、「造成工事費に対する金利等負担月数」は造成工事着手後販売完了までの所要月数、「販売費及び一般管理費」は販売完了までの販売費及び一般管理費を取得地の総面積で除した一平方メートル当たりの費用、「宅地販売完了までの所要月数」は造成工事着手後販売完了までの所要月数であるべきである。

ところが、原告の主張する計算方法をみるに、「造成工事費」及び「有効宅地化率」は実額を採用しているけれども、「造成後の更地価格」は全有効分譲面積のうち昭和五五年及び昭和五六年中における分譲面積に係る一平方メートル当たりの平均販売単価であり、「販売費及び一般管理費」は昭和五五年中の販売費及び一般管理費を同年中の販売面積で除した一平方メートル当たりの費用であり、さらに「造成工事費に対する金利等負担月数」及び「宅地販売完了までの所要月数」は証拠《乙一八》によれば高橋鑑定書で採用されている数値をそのまま採用したものであると認めることができるとともに、高橋鑑定書の右数値は、既に右bハで判示したように、高橋鑑定士がその知識・経験に基づいて採用した見込み額であるにすぎないのである。

ハ そうすると、これらの数値を基礎として求めた素地価格が、高橋鑑定書の比準価格に基づく評価額及びこれを基礎として得られた本件交換取得資産の時価よりも精度において優るとは断じ難いところである。したがって、原告の右イの主張によっても、高橋鑑定書の信用性は何ら減殺されるものではないというべきである。

e 原告は、さらに、不動産の鑑定評価は事前の判断にすぎないから、実際に形成された取引価額を否定できる性質のものではなく、両者の間に大きな差があるときは鑑定評価自体に非があると考えるべきところ、原告は本件交換譲渡資産と本件交換取得資産をともに約七億円と評価して本件交換をし、本件交換取得資産の造成後の販売価額、本件交換譲渡資産の売却価額は高橋鑑定書の評価額を大きく上回ったものであるから、高橋鑑定書は合理性がないと主張する。

しかしながら、不動産の実際の取引価額が取引当事者の意思、社会情勢等によって変動する可能性を有することは当然であるから、鑑定評価の方法自体が誤っている場合はともかく、鑑定評価自体に合理性があると認められる以上、鑑定評価額をもって評価時における当該不動産の適正な価額であると認めることは何ら差支えないばかりか、不動産鑑定士の制度からすれば、むしろ法的にも要請されるものというべきである。そうすると、仮に原告主張のとおりの事実が認められたとしても、そのことをもって直ちに高橋鑑定書の合理性が損なわれるものではない。

(4)  原告は、被告の、本件交換取得資産と鑑定評価地との単位面積当たりの価額が等しいことを前提とする算定方法を争うので、この点を検討する。

a まず、証拠《乙一八、乙三二の一、乙三三の一、乙三四》によれば、<1>本件交換取得資産と鑑定評価地は、もともと一体の土地であって、一個の牧場として使用されていたこと、<2>右一体の土地が東西に二分され、西側が鑑定評価地に、東側が本件交換取得資産になったものであること、<3>鑑定評価地及び本件交換取得資産の地勢は、南側と東側にゆるい傾斜をなしていること、<4>本件交換取得資産は北側の幅員一六メートルの道路(以下「一六メートル道路」という。)の他、東側及び南側の幅員六メートルの道路(以下「六メートル道路」という。)に面していること、<5>鑑定評価地は一六メートル道路の他は、南側の一部が六メートル道路に面しているのみであること、<6>本件交換取得資産はほぼ長方形であること、<7>鑑定評価地はやや扇形であること、<8>一六メートル道路に通じる間口は鑑定評価地の方が本件交換取得資産よりも広いこと、<9>本件交換取得資産の東側一帯は、北里大学用地がある他はおおむね宅地化されていない地域であること、<10>鑑定評価地の西側一帯はすぐそばまで住宅地となっていること、<11>本件交換取得資産はほとんど全てが牧草地であったこと、<12>鑑定評価地には木造の建築物が多く建てられており、その敷地及び周辺部分は相当程度宅地化された状態であることを認めることができる。

b 右aに認定のとおり、本件交換取得資産はその東側及び南側の全部が六メートル道路に接しているのに対し、鑑定評価地はその南側の一部のみが六メートル道路に接しているにすぎない。しかしながら、本件交換取得資産の東側は主として北里大学用地が存在するのみであるから、六メートル道路は、一六メートル道路に通じること以外にはさほど効用を認めることができない。

そして、証拠《甲二二、乙三三の一、乙三五図面》によれば、本件交換取得資産及び鑑定評価地の双方とも、団地として宅地造成された後は、当該土地の内部に数本の道路を設置し、それぞれの画地の利用可能性を確保して、結局団地内の画地の全てが一六メートル道路に通じるようになったことが認められ、また、本件交換取得資産や鑑定評価地の程度の規模を有する団地であれば、右のような数本の道路が通常設置されるものであることは公知の事実であるというべきである。

そうすると、六メートル道路に接している部分の大小は、本件交換取得資産と鑑定評価地との間で、その価格形成に大きな差異を生ぜしめるような影響を有しないものと認めるのが相当である。

c 右aに認定のとおり、鑑定評価地がやや扇形であるに対し、本件交換取得資産は長方形をなしており、扇形地が鑑定評価において整形地に劣るものとされることは不動産の鑑定理論上一般に認められた経験則である。しかしながら、証拠《乙三五図面》によれば、相当規模の団地となった造成後の鑑定評価地には、部分的な不整形があるとはいえ、個々の画地自体がその不整形によって具体的に不都合を生じているとはにわかに断定できない。そして、右aに認定のとおり扇形の広がった部分が一六メートル道路に面しているのであり、この点はかえって鑑定評価地に有利な材料であると認めるのが相当である。

d さらに、右aに認定のとおり、鑑定評価地は本件交換取得資産の西側に隣接しているのであるが、証拠《乙三二の一、乙三三の一》によれば、本件交換取得資産及び鑑定評価地周辺の地域は、鑑定評価地の側、すなわち西側の方が市街化が進展していたものと認めることができるのであって、この点は鑑定評価地に有利な材料であるというべきである。なお、原告は、本件交換取得資産の南側には既に宅地化された大学職員用の団地があり、これに対し鑑定評価地の南側は農地であるから、本件交換取得資産の方が宅地見込地としての立地条件において優っている旨主張するが、原告の主張する事実が仮に認められたとしても、鑑定評価地の西側の宅地化の動きに優位するほどの重要性があるものとは認められない。

e 既に右2(2)に認定のとおり、本件交換取得資産は本件交換時点においては造成着手前の牧草地であり、これに対し、証拠《乙三二の一、乙三四》によれば、鑑定評価地は、高橋鑑定書作成の時点において、既に、部分的に木造建物の敷地として使用されており、したがって、当程度整地されていたものと認めることができる。そうすると、将来同土地を宅地に造成するに当たっては、本件交換取得資産のように未だ造成工事については何ら着手されていない土地とは異なり、単位面積当たりの造成費用は少なくてすむとともに、工事そのものが容易になることも考えられるというべきであって、この点は鑑定評価地に有利な材料であると認めることができる。

f 右aに認定のとおり、本件交換取得資産は鑑定評価地よりも低い地勢であって、この点は鑑定評価地に有利な事情である。

g ところで、原告は、本件交換取得資産の有効宅地化率は鑑定評価地のそれを上回っており、本件交換取得資産の単位面積当たりの価額は鑑定評価地のそれを上回る旨主張する。

この点、証拠《乙三五図面》によれば、鑑定評価地の有効宅地化率は七九・四パーセントであることが認められ、本件交換取得資産のそれが八二・七パーセントであることは、当事者間に争いがない。

しかしながら、有効宅地化率がどのような数値となるかは、その土地に物理的に宅地化できない部分がどれだけ存在するかという点のほか、造成段階において造成者が宅地以外の領域(公園・道路等)をどれだけ取るかという点に依存するものである。そして、物理的に宅地化できない部分がどれだけ存在するかは、宅地造成以前に客観的に把握し得るものであるから、その部分の広狭が有効宅地化率の高低ひいては宅地造成前の素地価格の高低に反映するものということができるが、造成段階において造成者が宅地以外の領域をどれだけ取るかは、造成者の事業方針の如何にかかっている。そうすると、本件交換取得資産の現実の有効宅地化率が鑑定評価地のそれを上回っているからといって、本件交換取得資産の宅地造成前の単位面積当たりの価額が鑑定評価地のそれを上回っていることにはならないというべきであるから、原告の主張は失当である。

h 以上検討したところを総合すれば、単位面積当たりの価額において、本件交換取得資産が鑑定評価地を上回っていると認めることはできず、鑑定評価地の単位面積当たりの価額は、本件交換取得資産のそれと同等かそれ以上であると認めるのが相当である。そうすると、高橋鑑定書が、本件交換取得資産と鑑定評価地の単位面積当たりの価額が同等であることを前提に、鑑定評価地について求めた比準価格に時点修正率を乗じて本件交換取得資産の時価を算定したことは、合理的な方法として是認すべきものである。

(5)  原告は、さらに、被告が昭和五八年一一月七日付けの更正(以下「第一次更正」という。)に際して、本訴と異なる根拠に基づいて本件交換取得資産の価額を認定し、本訴に至って初めて高橋鑑定書を持ち出し、これを新たな根拠として新たな主張を開始したものであると捉え、加えて第一次更正における認定額と本訴における被告の主張額とに格差があるとして、被告の主張する本件交換取得資産の取得価額を非難する。

この点、証拠《乙三六》によれば、原告の昭和五五年分及び昭和五六年分の所得税調査に携わった小倉良一は、本件交換取得資産の取得価額を高橋鑑定書に依拠することなくして、一平方メートル当たり一万三六八八円と認定していたことが認められる。

しかしながら、課税処分取消訴訟においては、原処分の正当性を維持するために、口頭弁論終結時まで、原処分時に明らかにされていなかった事実に基づいて主張立証することができるものであるから、仮に本訴以前には被告において高橋鑑定書に依拠した本件交換取得資産の価額認定がされていなかったとしても、そのことをもって本件交換取得資産の価額に関する被告の認定を非難することはできず、問題は高橋鑑定書の信用性及び高橋鑑定書に依拠する価額認定自体の合理性如何にかかるというべきであるから、原告の右主張は失当である。

(6)  以上検討のとおり、原告の、本件交換取得資産の取得価額すなわち同資産の本件交換時における時価が八億〇六八七万七九三六円である旨の主張((1))及び七億六一二〇万五六〇〇円である旨の主張((2))並びに被告が昭和五八年一一月七日付け更正において高橋鑑定書に依拠した価額認定をしていなかったゆえに被告の本件訴訟における価額認定が不当である旨の主張((5))はいずれも失当であり、他方、高橋鑑定書が取引事例比較法に基づいて算定した鑑定評価地の価額には合理性があり((3))、右価額に時点修正率を乗じて本件交換取得資産の価額を導く方法も合理的である((4))。そして、証拠《乙一九》によれば、本件交換取得資産の昭和五二年三月から昭和五三年一二月までの地価上昇率はおおむね一〇六パーセントであり、したがって、本件において、鑑定評価地の価額に乗ずるべき時点修正率は一〇六パーセントであることになるから、結局、本件交換取得資産の取得価額は、被告主張のとおり二億八五六一万六九〇〇円であるということになる。

4(1)  本件譲渡による収入金額に対応する取得費は、右譲渡の目的物である本件交換取得資産一平方メートル当たりの取得費に分譲面積を乗じたものであるというべきであり、右一平方メートル当たりの取得費は、本件交換取得資産の取得価額と右宅地造成費の合計額を右分譲有効面積で除したものであるということができるところ、本件交換取得資産の取得価額は右3(5)に判示したとおりであり、右宅地造成費及び昭和五五年中の分譲面積については被告主張のとおり当事者間に争いがないから、昭和五五年分の本件譲渡による収入金額に対応する取得費は、被告主張のとおり一億七九三五万六七三七円となる。

(2)  また、原告の昭和五五年分の分離課税の土地等の雑所得金額(損益通算前)は、同年分の本件譲渡収入金額から取得費と譲渡費用を控除したものであるというべきところ、同年分の譲渡収入金額及び譲渡費用は被告主張のとおり当事者間に争いがなく、取得費は右(1)のとおりであるから、昭和五五年分の分離課税の土地等の雑所得金額(損益通算前)は、被告主張のとおり一億六四二一万一八三五円となる。

(3)  原告の、昭和五五年分の分離課税の土地等の雑所得金額は、右(2)の金額から事業(農業)所得及び不動産所得金額を控除したものであるというべきところ、これらの金額は被告主張のとおりで当事者間に争いがないから、昭和五五年分の分離課税の土地等の雑所得金額は、原告主張のとおり一億六一八三万二三九六円となり、抗弁一1の(2)は理由がある。

三  抗弁一1の(3)(昭和五五年分の納付すべき税額)及び同(4)(昭和五五年分の過少申告加算税額)の主張について検討する。

(1)  右に判示したところによると、原告の昭和五五年分の納付すべき税額は、別表Eの算定方法に従って求めることができるから、その金額は一億一八四八万五四〇〇円であるというべきであり、抗弁一1の(3)は理由がある。

(2)  また、右納付すべき税額から、原告の確定申告による納付すべき税額△八万一四一〇円(この金額については当事者間に争いがない。)を控除した一億一八五六万六〇〇〇円に百分の五を乗じた五九二万八三〇〇円が原告の昭和五五年分の過少申告加算税額であると認めることがきで、抗弁一1の(4)は理由がある。

四  抗弁一2の(1)(昭和五六年分の総所得金額とその算定根拠)の事実は当事者間に争いがない。

五  以下では、抗弁一2の(2)(昭和五六年分の分離課税の土地等の雑所得金額)について検討する。

1  原告が本件譲渡(昭和五六年分)をした事実、右譲渡による所得について原告が譲渡所得金額を〇円とする確定申告をした事実、本件譲渡のうち昭和五五年分に対応する収入金額の主張及びその根拠となった事実、同年分の不動産所得金額の主張とその根拠となった事実は、いずれも当事者間に争いがない。

2  既に判示したように、本件譲渡による所得は雑所得に区分されるものであり、本件譲渡につき措置法三七条一項表一四の適用はなく、かえって措置法二八条の四第一項が適用されるものと解される。

3  被告は、本件譲渡による所得の算定につき、高橋鑑定書に依拠し、本件交換取得資産の取得価額すなわち本件交換時点における同資産の時価を一平方メートル当たり七二〇〇円(合計二億八五六一万六八〇〇円)と査定したものであるところ、既に判示したように、右金額は合理性を有するものと認めることができる。

4(1)  昭和五五年分について判示したところと同様に、原告の主張する昭和五六年中の分譲面積五五九九・六五平方メートル(この点については当事者間に争いがない。)を乗じて得られた金額である七〇二八万四二三〇円をもって、昭和五六年分の本件譲渡収入金額に対応する取得費とした旨の被告の主張は、正当として是認することができる。

(2)  原告の昭和五六年分の分離課税の土地等の雑所得金額(損益通算前)は、同年分の本件譲渡収入金額から取得費を控除したものであるというべきところ、同年分の譲渡収入金額は被告主張のとおり当事者間に争いがなく、取得費は右(1)のとおりであるから、昭和五五年分の分離課税の土地等の雑所得金額(損益通算前)は、被告主張のとおり一億三九七一万五七七〇円となる。

(3)  原告の、昭和五六年分の分離課税の土地等の雑所得金額は、右(2)の金額から不動産所得及び分離短期譲渡所得の金額を控除したものであるというべきところ、これらの金額は被告主張のとおり当事者間に争いがないから、昭和五六年分の分離課税の土地等の雑所得金額は、被告主張のとおり七一四〇万〇一一八円となり、抗弁一2の(2)は理由がある。

六  抗弁一2の(3)(昭和五六年分の納付すべき税額)及び同(4)(昭和五六年分の過少申告加算税額)について検討する。

1  右に判示したところによると、原告の昭和五六年分の納付すべき税額は別表Hの算定方法にしたがって求めることができ、その金額は四四四九万八九〇〇円となるから、抗弁一2の(3)は理由がある。

2  また、右納付すべき税額から、原告の確定申告による納付すべき税額△二万九、六四〇円(この金額については当事者間に争いがない。)を控除した四四五二万八〇〇〇円に百分の五を乗じた二二二万六四〇〇円が原告の昭和五六年分の過少申告加算税であるということができ、抗弁一2の(4)は理由がある。

七  原告は、被告が当初本件交換に所得税法五八条一項の適用があることにつき全く問題視せず、同項の適用を前提に昭和五八年一一月七日付けの更正処分をしたが、これに対して原告の異議申立てがあった後、本件交換譲渡資産において林間放牧が行われていたとする原告の主張につき調査せず本件更正処分を行ったものであり、調査に基づかない更正処分として、国税通則法二四条・同二六条に違反し違法であると主張する。

しかしながら、国税通則法二四条・同二六条にいう調査とは、課税庁による証拠の収集・評価、課税要件事実の認定、法令の解釈適用から更正処分に至る思考判断等の諸活動を包括する概念であり、かかる調査の時期・方法等に関して法律上の定めは存しないところ、被告は本件更正処分を必要と判断したことによって同処分をしたものであるから、同処分は適正な調査に基づいてされたものというべきであり、原告の右主張には理由がない。

八  原告は、本件更正処分は不利益変更禁止の原則に違反する旨主張するので、以下この点について判断する。

国税に関する処分に対する不服申立てにおける不利益変更の禁止(国税通則法八三条三項、同九八条二項等)は、処分の変更の決定又は裁決をする場合に、不服申立人に不利益に処分を変更することを禁ずるものであるところ、課税標準又は税額についての不服申立てにあっては、異議申立てが棄却される他に異議申立人に不利益に異議決定がされることはないから、原告の右主張は失当である。

九  以上によれば、原告の請求は理由がないことに帰するから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 塚原朋一 裁判官 六車明 裁判官 大島雅弘)

別表A

一昭和五五年分

<省略>

二昭和五六年分

<省略>

別表B

<省略>

別表C

<省略>

別表D

<省略>

別表E

<省略>

別表F

<省略>

別表G

<省略>

別表H

<省略>

別表I

本件譲渡による雑所得(総合課税)の金額の計算

<省略>

別表J

(1)昭和五五年分

<省略>

(2)昭和五六年分

<省略>

別表K

雑所得の金額及び譲渡所得金額の計算

第1 宅地造成工事着手直前の1m2当たりの時価額の計算

宅地造成工事着手直前の1m2当たりの時価額は、本件課税処分における分離課税の土地等の雑所得の金額の計算上の取得費の算定(昭和63年5月10日付け被告準備書面(三)・第三)と同様の方法により、次のとおり算定した。

1 宅地造成工事着手時期 昭和54年8月(乙第15号証)

2 鑑定評価額(昭和52年3月16日) 6,800円(乙第18号証)(<1>)

3 時点修正

(1) 市街地価格指数(乙第19号証)

<省略>

(2) 時点修正率の計算

<省略>

4 本件土地の宅地造成工事着手直前の1m2当たりの時価

6,800円(<1>)×1.11(<2>)=7,548円

第2 昭和55年分の雑所得の金額及び分離譲渡所得金額の計算

<省略>

(注)1 収入金額は、次により算出した。

(1) 分離長期譲渡所得

(前記第1の4の金額) (55年中の分譲面積)

7,548円×14,289.62m2=107,858,052円(A)

右算式中の「55年中の分譲面積」は、昭和63年2月22日付け被告準備書面(二)の一の1の(二)の(1)の(ロ)(6ページ)の数値である。

(2) 雑所得

(55年の譲渡収入金額の合計) (A)

353,516,077円-107,858,052円=245,658,025円

2 売上原価等(取得費)は、次により算出した。

(1) 分離長期譲渡所得

(A)

107,858,052円×0.05=5,392,903円

右算式中の「0.05」は、措置法31条の4(長期譲渡所得の概算取得費控除)第1項に規定する概算取得費率である。

なお、原告は、本件交換に係る昭和53年分の確定申告において、交換譲渡資産の取得の時期を「28年以前」とし、実際の取得時期を明らかにせず、かつ、取得価額についても記載していないことから右概算取得費率を適用したものである。

また、措置法31条の4第1項の規定は、昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地等の譲渡所得の金額の計算につき適用されるのであるが、昭和28年1月1日以後に取得した土地等の取得費についても、実務上同項の規定に準じて計算して差し支えないものとして取り扱われている。

(2) 雑所得

(宅地造成費) (55年中の分譲面積)

<省略>

(分譲有効面積)

右算式中の「宅地造成費」及び「分譲有効面積」は、昭和63年2月22日付け被告準備書面(二)の一の1の(二)の(1)の(ロ)の(注)(7ページ)の数値である。

3 譲渡に要した費用は、昭和63年2月22日付け被告準備書面(二)の一の1の(二)の(1)の(ハ)(7ページ)の数値である。

4 買換資産の取得価額欄の( )書きは、原告が昭和55年分の確定申告に当たり買換資産の買取り予定価額として記載した金額である。

第3 昭和56年分の雑所得の金額及び分離譲渡所得金額の計算

<省略>

(注)1 収入金額は、次により算出した。

(1) 分離長期譲渡所得

(前記第1の4の金額) (56年中の分譲面積)

7,548円×5,599.65m2=42,266,158円(A)

右算式中の「56年中の分譲面積」は、昭和63年2月22日付け被告準備書面(二)の一の2の(二)の(1)の(ロ)(14ページ)の数値である。

(2) 雑所得

(56年の譲渡収入金額の合計) (A)

210,000,000円-42,266,158円=167,733,842円

2 売上原価等(取得費)は、次により算出した。

(1) 分離長期譲渡所得

(A)

42,266,158円×0.05=2,113,308円

右算式中の「0.05」は、措置法31条の4(長期譲渡所得の概算取得費控除)第1項に規定する概算取得費率である。

(2) 雑所得

(宅地造成費) (56年中の分譲面積)

<省略>

(分譲有効面積)

右算式中の「宅地造成費」及び「分譲有効面積」は、昭和63年2月22日付け被告準備書面(二)の一の1の(二)の(1)の(ロ)の(注)(7ページ)の数値である。

3 買換資産の取得価額欄の( )書きは、原告が昭和56年分の確定申告に当たり買換資産の買取り予定価額として記載した金額である。

別表L

(1)昭和五五年分

<省略>

(2)昭和五六年分

<省略>

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