大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台家庭裁判所 平成4年(家)2107号 1993年1月21日

主文

別紙遺産目録記載の不動産持分の競売を命じ、その売却代金から競売費用を控除した残額を、申立人に2分の1、相手方らに各8分の1あて分配する。

理由

第一当事者の請求

申立人 主文同旨

相手方ら 本件申立を却下する。

第二事案の概要

以下に認められる事実は、当事者間に争いがない。

申立人の妻花子は平成3年10月22日死亡し、その相続人は、夫の申立人、子の相手方らであり、法定相続分は、申立人2分の1、相手方ら各8分の1である。

別紙遺産目録に記載された土地(以下「本件土地」という。)は、被相続人(花子)と申立人が各2分の1の持分を有する共有の土地であり、このうち被相続人(花子)の持分が遺産である(以下「本件遺産」という。)。その本件遺産については、平成4年3月10日に、平成3年10月22日相続を原因として申立人及び相手方らに法定相続分に応じた持分移転登記がなされており、その結果、本件土地の持分は、相手方らが各16分の1、その余が申立人、となった。

本件土地上には、申立人と相手方甲野一郎共有にかかる家屋及び甲野三郎所有の家屋があり、この2棟が本件土地の大部分を占有している。前者の家屋に申立人と相手方甲野一郎が同居している。

第三当事者らの主張

相手方らのうち、長女乙山春子と次男丙川二郎は、本件遺産であるところの本件土地の持分2分の1と申立人が有する残りの持分とを合わせて、将来申立人が死亡した後に相手方ら4名で平等に相続するため、本件遺産の分割に強く反対した。

申立人は、将来自分が死亡した後に相手方ら子供同志で本件土地の遺産分割を巡って争いが生じて不仲となることを憂慮し、自己の生存中にその禍根を絶つために本件申立をしたことが推察される。

第四判断

本件遺産は本件土地の2分の1の持分であり、しかも本件土地上には2棟の家屋があるから、現物分割は不可能である。また、本件土地の時価額は1億5000万円を超えることが推察され、年金生活の申立人、給料生活の相手方甲野2名、主婦の相手方乙山、負債のある相手方丙川のいずれも、他の者に代償を払って本件遺産を取得できそうもない。そうすると、本件遺産を競売に付してその売却代金を相続分に応じて分配するより他なく、申立人は、競落人に対して自己固有の持分を同価額で売り渡す意思のあることを示して本件申立をしたのであるから、これが本件遺産の分割として相当な方法と認められる。

よって、本件申立は理由があると認め、主文のとおり審判する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例