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仙台家庭裁判所 昭和54年(少)1453号 決定 1979年8月16日

少年 N・K(昭三八・二・五生)

主文

少年を中等少年院(一般短期)に送致する。

理由

(虞犯事由)

当裁判所の認定した虞犯事由は、仙台保護観察所長作成の通告書別紙IIのとおりであるからそれをここに引用する。

(適条)

少年法三条一項三号イ・ニ

(処遇理由)

少年は中学校二年の頃から生活態度に乱れが生じて目指す高校に入学できなかつたことから、ある私立高校に入学したが、当初から気がすすまず、入学直後の昭和五三年四月下旬には早くも登校拒否の状態になり、そのため母親とのいさかいが多くなつた。そして退学直後頃から母親に暴力を振つては金銭を強要し、浪費するという勝手気ままな生活を送るようになり、一向に改たまる様子がなかつたため、昭和五四年四月二三日当庁に虞犯として事件送致され、観護措置をとられるに至つた。当裁判所は、少年の暴力が家庭内にとどまつており、直ちに対第三者に向けられる怖れは少ないと認められたこと、初めての身柄拘束により少年が自立のきつかけをつかみかけたように思われたことから保護観察処分に付し、父親としての役割行動を期待できる保護司の助力を得て、自立の道を歩ませることにした。

しかし、少年は保護観察開始直後から以前と同じように母親に暴力を振つては金銭を強要し、また数ヶ所の稼働先もいずれも長続きせず、無為徒食の生活を続けたため、保護観察所より虞犯通告が為されるに至つたもので、稼働先の川崎市から一日で帰宅する等、精神的自立には未だ程遠い状況にある。

少年の資質面における問題点については二通の鑑別結果通知書に詳しく記載されているところであるが、対人場面で不満の適切な解消が為されず、不満や葛藤が蓄積・内向しやすいこと、過保護に育てられたため欲求耐性に乏しい点等が指摘できる。

少年の家庭は両親の離婚以来母一人子一人の生活を送つてきたが、母親は現在暴力の対象であり、監護できるような状況ではない。

これらの諸事情に鑑みると、少年は今後も同種行為に至る危険は大であり、保護観察後も暴力の対象は母親だけにとどまつていることを考慮しても、このまま放置すれば今後暴力傾向が固定化する怖れもあり、健全な社会人として自立させるためにも、この際、短期間ではあつても施設に収容して矯正教育を行ない、母親と離別させたうえで自立できる基礎作りをし、その後速やかに社会内処遇に移行することが望ましいと考えられる。

よつて、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項により主文のとおり決定する。

(裁判官 廣澤哲朗)

別紙 ぐ犯事由(仙台保護観察所長作成の通告書別紙II)

少年は、昭和五四年五月一七日、当庁の保護観察に付されたものであるが、当初から更生意欲がなく、同年七月一九日までの間に、母に金を強要し、カセットラジオを母に殴げる、ベルトで母の足をたたきつける等の暴力行為をかさね、定職に就く意思もないままに徒食している。

本決定後わづか二月で一〇万円以上の金を母から奪い、同年七月一七日には、○○○○署補導員、担当者が都合して少年の就職に援助した金五万円を費消した。

上記行為は少年法第三条一項三号イ・ニに該当している。

少年の無為な生活態度、粗暴性の根は深く、再三の当庁及び担当者の指導も効ない。母はもはや監護の限界であると訴えている。

以上のような少年の性格、環境に照すと、将来罪を犯すおそれが強く、保護観察による更生は不能である

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