仙台高等裁判所 平成12年(ネ)293号 判決 2001年10月10日
主文
1 原判決主文第一ないし第三項を次のとおり変更する。
(1) 控訴人は,被控訴人有限会社シビル開発に対し,金335万円及び内金270万円に対する平成8年7月1日から,内金65万円に対する平成9年5月1日から各支払いずみまで年6分の割合による金員を支払え。
(2) 控訴人は,被控訴人Aに対し,金58万円及び内金45万円に対する平成8年7月1日から,内金13万円に対する平成9年5月1日から各支払いずみまで年6分の割合による金員を支払え。
(3) 被控訴人両名のその余の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを5分し,その1を被控訴人両名の,その余を控訴人の各負担とする。
3 この判決は主文第1項(1),(2)に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 控訴の趣旨
(1) 原判決中,控訴人敗訴の部分を取り消す。
(2) 被控訴人両名の請求をいずれも棄却する。
(3) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
2 控訴の趣旨に対する答弁
(1) 本件控訴をいずれも棄却する。
(2) 控訴費用は控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1 事案の概要
本件は,被控訴人有限会社シビル開発(以下「被控訴会社」という)及び被控訴人A(以下「被控訴人A」という)と控訴人(以下「控訴会社」という)間の,被保険者を被控訴人Aとする各入院保障特約付きの生命保険契約(被控訴会社が保険契約者及び保険金受取人となっている第一保険契約では,疾病により20日以上入院したときは入院給付金が1日当たり1万円が(成人病の場合は3万円)支払われることになっており,被控訴人Aが保険契約者及び保険金受取人となっている第二保険契約では,疾病により被控訴人Aが入院したときは,疾病入院給付金が1日当たり5000円宛が支払われることになっている)に基づき,被控訴人Aが保険金給付の対象となる成人病としての糖尿病による入院等の事由があったとして,控訴会社に対し,被控訴会社が金425万円及び内金360万円に対する平成8年7月1日から,内金65万円に対する平成9年5月1日から,各支払いずみまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いを,被控訴人Aが金75万円及び内金60万円に対する平成8年7月1日から,内金15万円に対する平成9年5月1日から,各支払いずみまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いをそれぞれ求めて提訴したところ,原審が被控訴会社の請求についてはこれを全部認容し,被控訴人Aの請求については金73万円及び内金60万円に対する平成8年7月1日から,内金13万円に対する平成9年5月1日から,各支払いずみまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の各支払いを求める限度でその請求を認容し,被控訴人Aのその余の請求を棄却したので,控訴会社が控訴した事案であって,控訴会社は被控訴人Aが罹患している糖尿病の病状は入院を要するほど悪化しているものではない,被控訴人らは他にも多数の保険契約を締結しており,上記各保険契約は過大付保であって公序良俗に反し無効である等と主張しているものである。
2 前提事実及び争点
本件における前提事実及び争点は,次のとおり付加・訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第二 事案の概要」中の「一 前提事実」,「二 争点」(原判決4頁8行目から同17頁10行目まで)と同一であるから,これを引用する。
(1) 原判決5頁3行目の「原告A」の次に「,保険金受取人を訴外技研総業株式会社」を加える。
(2) 原判決9頁5行目の「次いで,」から同6行目の「入院し,」までを削る。
(3) 原判決11頁9行目から同末行までを,次のとおり改める。
「 被保険者たる被控訴人Aは,平成9年3月8日から同月27日までの間,右突発性難聴,右糖尿病性網膜症合併症の診断で,青森市民病院に入院したが,「突発性難聴」は成人病たる糖尿病の合併症に起因するものである。」
(4) 原判決15頁6行目の「第一,第二保険契約は」を「第一,第二保険契約については,」と改める。
第3当裁判所の判断
1 当裁判所は,被控訴会社の請求は,控訴会社に対し,335万円及び内金270万円に対する平成8年7月1日から,内金65万円に対する平成9年5月1日から,各支払いずみまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いを,被控訴人Aの請求については金58万円及び内金45万円に対する平成8年7月1日から,内金13万円に対する平成9年5月1日から,各支払いずみまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で正当としてこれを認容すべきものと判断する。その理由は,次のとおり付加・訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第三 判断」(原判決17頁末行から同36頁6行目まで)と同一であるから,これを引用する。
(1) 原判決18頁1行目の「平成八年,平成九年入院は,」を「平成八年入院は,」と改め,同3行目の「一四」の次に「,19,21,22,」を,同4行目の「原告A本人」の次に「,当審証人B(但し,一部)」を,同6行目の「原告Aは,」の次に「平成6年5月ころには糖尿病が発病したものと推測され(甲3,乙30,31),」をそれぞれ加え,同じ行の「糖尿病を発病し,」を「糖尿病との診断を受けて,」と,同19頁2行目の「外来治療を受けていたが,」を「主としてインシュリン薬処方の目的で外来治療を受けていたが,」とそれぞれ改め,同9行目から同20頁6行目までを次のとおり改める。
「 被控訴人Aの入院開始直後である平成8年2月5日付けの糖化ヘモグロビン値(A1C/LAないしHbA1Cと表記し,約1か月前の時点の血糖コントロール状況を反映する指標である)は8.8パーセントであり,基準値である4.3ないし5.8パーセントを大きく上回り,糖尿病患者にとってコントロール不足の基準とされる8ないし9パーセントの値を示していた。また,血糖値(BS値)も同月3日午前11時40分ころの値で299ミリグラム/デシリットルを示し,基準値である70ないし110ミリグラム/デシリットルを大きく上回っていた。その後,HbA1Cは同年3月29日に7.8パーセントとなり,同年5月7日には7.1パーセントとなった。一方,血糖値も同年3月8日には193ミリグラム/デシリットル,3月18日には170ミリグラム/デシリットル,同月28日には1日の血糖値が143ないし187ミリグラム/デシリットルの範囲内,同年4月24日には1日の血糖値が113ないし175ミリグラム/デシリットルの範囲内となって血糖コントロールが改善していたが,同年5月7日昼食前には238ミリグラム/デシリットル,同月13日昼食前には261ミリグラム/デシリットル,退院日の同年6月5日には200ミリグラム/デシリットルと一時期より悪化していた。」
(2) 原判決21頁末行から同24頁6行目までを次のとおり改める。
「2 控訴人は,第一,第二保険契約の約款にいう「入院」とは,「医師による治療が必要であり,かつ,自宅等での治療が困難なため,病院又は診療所に入り,常に医師の管理下において治療に専念すること」であり,被控訴人Aの平成8年入院は同約款の「入院」に該当せず,入院給付金の支給対象にはならないと主張し,乙1,2(ご契約のしおり定款・約款のうち入院保障特約条項)にはこれに副う記載がある。このように保険約款中に「入院」の定義を定めた趣旨は,相互扶助を目的とする保険制度において,多数の契約者相互間の公平を図るために入院給付金の支払い事由を限定するとともに,生命保険,特に入院保障特約が,ともすると射倖性をもつことから,保険制度を濫用するような請求を排除する点にあるものと解される。したがって,本件の入院保障特約における「入院」に該当するかの判断をするに当たっても,上記のような趣旨に照らして,入院給付金の支給対象となる「入院」に該当するかどうかを判断すべきものである。
ところで,証拠(乙15,18,27,当審証人B(但し,一部))並びに当裁判所に顕著な事実によると次の事実を認めることができる。
被控訴人Aが罹患した糖尿病は,持続的な高血糖・糖尿を呈する代謝疾患であり,インシュリンの欠乏・作用障害があり,糖・蛋白・脂肪の代謝異常を伴い,口渇・多飲・多尿を呈し,網膜症・腎症・動脈硬化症を併発するとされており,その治療としては,血糖値を下げて代謝を正常化するためのインシュリンの投与(皮下注射)のほか,基本的には1日に摂取する必要熱量を最低限度に抑えるバランスの取れた食餌療法が必要であり,また日々の適度な筋肉活動(運動療法)が有益であるといわれている。そして,糖尿病患者にとっては,以上のようなインシュリン投与,食餌療法,運動療法を適正に実施し,これにより良好な血糖コントロールを維持することが,動脈硬化症等の合併症の発症・進展を阻止し,健康人と同様の日常生活の質の確保と寿命の確保につながる唯一,不可欠な治療方法とされる。したがって,糖尿病の治療は一般には外来治療が原則とされているが,糖尿病のため極度の高血糖状態による昏酔を呈した場合(糖尿病性ケトアシドーシス,高浸透圧性昏酔),低血糖性昏酔となった場合,高度の感染症等の合併症を併発した場合,腎症を発症した場合,若年者に多いI型糖尿病(インシュリン依存型糖尿病)の場合等には必ず入院が必要となる。また,必ずしも入院が必要とはいえないが,場合によっては入院が必要とされるものとして,インシュリン療法導入時の入院(インシュリン投与の未経験者については,初期において低血糖の危険があるため,通常1,2か月程度医師の管理下でインシュリン療法を習熟させる必要がある),教育入院(病態の把握や栄養指導などの教育のために行われる2週間から1か月程度の入院)がある。
また,糖尿病の病勢,血糖コントロールの指標としては,血糖値とHbA1Cがあり,日本糖尿病学会による次のような基準が示されており,不可の状態が続き,生活改善,指導による努力によっても可以上にならないときは専門医による受診が必要であるとされている。
優 空腹時血糖値 100㎎/dl未満
食後2時間後の血糖値 120㎎/dl未満
HbA1C 5.8パーセント未満
良 空腹時血糖値 100~119㎎/dl
食後2時間後の血糖値 120~169㎎/dl
HbA1C 5.8~6.5パーセント
可 空腹時血糖値 120~139㎎/dl
食後2時間後の血糖値 170~199㎎/dl
HbA1C 6.6~7.9パーセント
不可 空腹時血糖値 140㎎/dl以上
食後2時間後の血糖値 200㎎/dl以上
HbA1C 8.0パーセント以上
そこで,以上を前提に,被控訴人Aの平成8年入院が入院給付金の支給対象となる「入院」に該当するかどうかについて検討する。
前記一1(一)(二)認定の事実及び証拠(乙8,15,27,当審証人B(但し,一部))によると,被控訴人Aは,平成8年1月ころから神経症の増悪,血圧の動揺が認められ,下肢のしびれ感,全身の掻痒感,視力低下を訴えてトスクリニックを来訪し,同医院において血糖のコントロールが不十分であると診断されて入院したものであり,入院直後の平成8年2月5日のHbA1Cが8.8パーセント,同月3日午前11時40分ころの血糖値が299ミリグラム/デシリットルと高い値を示していたことが認められ,これらの事実に照らせば,同被控訴人は医師の監視の下で食餌療法,運動療法を行い,血糖コントロールを行う必要が高かったものというべきであるから,同月1日の同被控訴人の入院は,「医師による治療が必要であり,かつ,自宅等での治療が困難なため,病院又は診療所に入り,常に医師の管理下において治療に専念する」ためになされたものであって,入院給付金支給対象となる保険約款上の「入院」に該当するものと認めるべきである。もっとも,糖尿病においては,前記認定のとおりインシュリン投与,食餌療法,運動療法を適正に行い,血糖コントロールを適正に維持することがその病状の進展や合併症の発症を阻止するための唯一,不可欠な治療であるところ,これらの治療方法はいずれも在宅治療が可能であるから,原則として入院治療を必要とせず,その治療は外来治療を原則とするものである。したがって,被控訴人Aの上記入院についても,入院時に血糖コントロールが不十分であったために上昇していたHbA1C値や血糖値が改善され,在宅治療によっても血糖のコントロールが可能であると判断されるような症状の改善があった場合には,もはや上記のような意味における入院の必要性はなくなり,在宅治療によっても十分病状に対応できるに至ったものと解すべきであり,それ以降の入院は「自宅での治療が困難なため,病院又は診療所に入り,常に医師の管理下において治療に専念するための入院」とはいえないというべきである。そこで,被控訴人Aの入院が保険約款上の「入院」と認めることができるのはいつまでかについて検討すると,同被控訴人の症状は入院後次第に改善されてゆき,HbA1C値は平成8年3月29日には7.8パーセントとコントロール状況を可とする領域に改善され,同年5月7日ころには7.1パーセントとさらに改善した。一方,血糖値についても同年3月28日には1日の血糖値が143ないし187ミリグラム/デシリットルに改善され,同年4月24日には1日の血糖値が113ないし175ミリグラム/デシリットルとコントロール状況を可とする範囲の数値に改善され,また,被控訴人Aが入院していたトスクリニックのB医師も同年5月6日ころには「いつ退院してもOK」との判断を示していたこと(乙8)が認められる。そして,被控訴人Aは,前記認定のとおり,平成8年5月1日から同年6月5日までの間,12回外出して,そのうち6日も外泊し,病院において食事をしていない回数が42にも及んでいる。また,被控訴人Aに,入院を必要とするような糖尿病の合併症が発症していたことや高血糖あるいは低血糖による昏酔等の症状が発症していたことを窺わせるような資料は見当たらない。加えて,既にインシュリンの投与を受けている糖尿病の患者が血糖コントロールの目的で再入院するような場合には,その期間としては2週間から1か月程度で十分であるとされており(乙15,27),以上の事実を総合して判断すれば,被控訴人Aについては遅くとも平成8年4月末日には,常に医師の管理下において治療に専念するための入院は必要でなくなったというべきである。
なお,被控訴人Aの血糖値は,同年5月7日昼食前には238ミリグラム/デシリットル,同月13日昼食前には261ミリグラム/デシリットル,退院日の同年6月5日には200ミリグラム/デシリットルと悪化しているが,これは同年4月以降,同被控訴人の外泊外出が増加し,病院での食事を摂取せずに外食の摂取が多くなったことによるものと推測でき(乙8,15,27),同年5月ころには入院治療の効果が上がっておらず,入院の必要性が喪失していたことが窺われる。
以上によれば,被控訴人Aの入院のうち,平成8年5月以降の入院は入院給付金支給対象となる保険約款上の「入院」に該当しないというべきである。」
(3) 原判決24頁8行目から同25頁8行目までを次のとおり改める。
「 そこで,前記一1(三)認定の右突発性難聴による入院(甲22によれば,被控訴人Aの平成9年3月10日から同月24日までの入院の原因となった傷病名は右糖尿病性網膜症と記載されているから,突発性難聴のみを原因とする入院は同月8日と9日及び同月25日から同月27日だけとなる)が成人病による入院と認められるかどうかについて検討するに,突発性難聴は糖尿病の合併症として発病することのあること(甲16)に加え,前記認定のとおり被控訴人Aは糖尿病に罹患し,過去2回にわたって入院治療を受けていたこと,突発性難聴による入院直後にも糖尿病の合併症である糖尿病性網膜症が判明しその手術を受けるなど糖尿病の合併症を併発していること等の事実をも併せ考慮すると,被控訴人Aの罹患した右突発性難聴は糖尿病の合併症と解するのが合理的であり,自然である。なお,甲4の1,21の入院証明書(診断書)によると,突発性難聴の原因につき「不明」と記載されいるが,同記載は突発性難聴の原因が一般的に解明困難であることから(乙19),そのような記載となったものとみるべきであり,被控訴人Aの突発性難聴が糖尿病の合併症として発病したことを否定する趣旨であると解すべきではない。
したがって,被控訴人Aの右突発性難聴による入院は,本件保険約款上の「入院」に該当し,かつ,「成人病」による入院と認めて差し支えないものというべきである。」
(4) 原判決26頁2行目の「原告」を「被控訴人A」と改める。
(5) 原判決26頁6行目の「一〇」の次に「12」を加え,同9行目の「別表」を「別紙」と改め,同30頁7行目の末尾に続けて,「前記各会社は,被控訴人Aが特許を有している技術を元にしたスーパーウォール工法と称する土木工事,土木建築資材の製造,建築資材の販売等を業務とするグループ会社であり,その経営はその実質的オーナーである被控訴人Aがワンマン的に行っている。」を加え,同31頁末行の「高かったものの,」の次に「当期利益は76万4119円しかなく,」を,同32頁6行目の「前記繰越利益が」の次に「3346万6068円」を,同9行目の「前記繰越利益が」の次に「4158万8231円」を,同33頁1行目の「前記繰越利益が」の次に「4507万3120円」をそれぞれ加え,同34頁2行目の「解約」を「合意解除」と,同6行目の「オーナー的存在で,」を「実質的オーナーであり,同人がワンマン経営に当たっていたもので,」とそれぞれ改め,同35頁1行目の「いえない。」の次に「また,被控訴人Aは前記のとおり,グループ会社の実質オーナーとしてワンマン経営に当たっていたものであって,同被控訴人の入院により,グループ会社が不測の損害を被る危険も少なからず存在するものといえるから,入院給付金の総額が多額であるとしても,これが過大付保であるとまではいえない。」を加え,同2,3行目の「相談の上保険契約を解除しているが」を「交渉の上保険契約を合意解除しているが」と改め,同5行目を次のとおり改める。
「 また,前記認定のとおり被控訴人Aの平成8年入院のうちに,入院給付金支給対象となる保険約款上の「入院」に該当しない部分があるとしても,そのことから直ちに同被控訴人に関する保険契約が全体として不当なものであると評価することはできない。」
(6) 原判決36頁3行目の「入院も」の次に,「その期間の一部が保険約款上の「入院」に該当しないものがあるとしても,入院そのものは」を加える。
2 以上によれば,平成8年入院については,平成8年2月1日から同年4月30日までの90日分が入院給付金(被控訴会社については成人病による入院給付金)を支給すべき入院となり,被控訴人らの平成8年入院分の請求については,被控訴会社については360万円の請求のうち270万円の支払いを求める限度で理由があり,被控訴人Aの請求については60万円の請求のうち45万円の支払いを求める限度で理由がある。
また,平成9年入院については,被控訴会社が平成9年3月8日から同月27日までの20日分につき成人病による入院給付金として60万円及び手術給付金5万円の支払いを求める請求はすべて理由があり,被控訴人Aが上記20日分の入院給付金10万円を求める請求のうち,入院開始日から4日間の不支給分2万円を差し引いた8万円及び手術給付金5万円の支払いを求める限度で理由がある。
そうすると,被控訴人らの請求は,控訴人に対し,被控訴会社が金335万円及び内金270万円に対する平成8年7月1日から,内金65万円に対する平成9年5月1日から各支払いずみまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で,被控訴人Aが金58万円及び内金45万円に対する平成8年7月1日から,内金13万円に対する平成9年5月1日から各支払いずみまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度でいずれも認容すべきであり,その余は失当として棄却すべきであるから,これと一部異なる原判決をこの趣旨に変更することとする。
よって,訴訟費用の負担につき,民事訴訟法67条2項,64条,65条1項,61条を適用し,仮執行の宣言につき,同法259条1項を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 喜多村治雄 裁判官 小林崇 裁判官 片瀬敏寿)