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仙台高等裁判所 平成3年(ネ)500号 判決 1992年7月21日

控訴人 宮野亜夫

右控訴代理人弁護士 梅津昭一

被控訴人 株式会社丸運

右代表者代表取締役 高林悟

右控訴代理人弁護士 小笠原市男 竹田真一郎

主文

原判決中、控訴人の予備的請求を棄却した部分を取り消す。

被控訴人は控訴人に対し金一〇〇〇万円及びこれに対する平成元年四月一一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

事実及び理由

一  控訴人は主文同旨の判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

事実及び争点は、原判決の事案の概要(原判決二枚目表一行目から八枚目表末行まで)中の予備的請求に関する部分(主位的請求は当審において取り下げられた)のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決六枚目裏一〇行目の「入手しする」を「入手する」に、七枚目裏一行目の「被告」を「原告」にそれぞれ訂正する。

二  倉庫営業者が他人から寄託を受けて保管中の物品についても、これが売買あるいは担保権設定等の取引の目的とされることがあり、また、右の取引に際し、その物品が倉庫に保管されていることの確認が、倉庫営業者の発行する預かり書あるいは倉庫営業者に対する照会等によって行われることのあることはいうまでもない。

したがって、一般に、倉庫営業者は、虚偽の内容を記載した預かり書を発行したり、また、第三者からの照会に対して虚偽の回答をしたりしてはならない注意義務を負う。

このことから、倉庫営業者の被用者が、右の注意義務に違反して、内容虚偽の預かり書を発行しあるいは内容虚偽の回答をした場合において、右の預かり書の記載あるいは照会に対する回答を信用して取引を行った者が、これによって損害を被ったときは、その使用者である倉庫営業者は、民法七一五条一項の規定により、右の取引をした者に対し、その損害を賠償する責任を負うこととなる。

これを本件についてみると、本件の事実関係は、原判決の認定のとおり、<1>被控訴人の東北総括支店扇町営業所長である戸塚は、昭和六三年一二月二〇日、渡辺の依頼を受けて本件物件を被控訴人の扇町倉庫に保管し、同月二二日、これを渡辺に返還したにもかかわらず、渡辺の依頼に応じ、被控訴人が右の倉庫において本件物件を保管している旨の控訴人宛の内容虚偽の本件預かり書を発行し、これを渡辺に交付し、同月二三日、控訴人からの電話による照会に対し、本件物件を保管している旨及び控訴人以外の者にはこれを引き渡さない旨の虚偽の回答をした、<2>控訴人は、右の預かり書の記載及び戸塚の回答により、本件物件が右の倉庫に保管されており、控訴人以外の者に対しては引き渡されることがなく、本件物件が担保に供されたときは、債権者による本件物件に対する担保権の実行が可能であり、自己が現実に連帯保証債務の履行をする事態にはならないものと信じて、同月二六日ごろ、渡辺と共謀した山内が本件物件を譲渡担保として差し入れることを約して根本から借り入れた一〇〇〇万円の債務について連帯保証をした、<3>ところが、山内は右の債務を履行せず、また、本件物件が現実には右の倉庫に保管されておらず、譲渡担保権が実効性を有しなかったことから、控訴人は、連帯保証債務の履行をすることを余儀なくされ、根本に対し、平成元年一月二一日五〇〇万円、同年二月五日五〇〇万円を支払い、これにより同額の損害を被ったというものである。

そうすると、戸塚の使用者である被控訴人は、控訴人に対し、右の損害を賠償する義務があるものといわなければならない。

右のとおりであるから、被控訴人に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として一〇〇〇万円及びこれに対する訴状送達の翌日である平成元年四月一一日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める控訴人の請求は理由がある。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石川良雄 裁判官 山口忍 裁判官 佐々木寅男)

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