大判例

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仙台高等裁判所 昭和23年(ろ)6号 決定

一、当事者

抗告人 ○藤ユキ○

相手方 ○藤健○

二、主  文

原決定を取消し、本件を本莊家事審判所に差戻す。

三、理  由

本件抗告の理由は

一、原決定は抗告人が他の男子と関係して妊娠し女兒を分娩したことをもつて直に著しい不行跡だとしたが、これをもつて親権喪失の理由とするには、更に抗告人の年齢、当時の事情殊に生活状況、子に対する愛情の変化等諸般の事情を勘案し、親権者として子の財産を処分する様な危險が右不行跡のために生ずる虞れがあるかどうか、並びに両性の本質的平等を宣告した新憲法の精神を基礎として認定すべきである。しかるに原決定はこの点の適法な判断を欠いていると思われる。

二、抗告人は相手方に対し、本莊家事審判所に子の引渡等を求める調停の申立をし、昭和二十三年七月三十日調停成立した結果、その調停條項の一として、本件親権喪失の申立は当事者双方の連署をもつて取下書を提出し、これを取下げることを約したのに拘わらず、相手方は右取下書に捺印することを拒み、取下に応じないものである。しかも、相手方は、弟である抗告人の夫末造死亡後、生活苦になやむ抗告人母子に何等生活上の援助を与えず、却て抗告人方からその留守中家財道具の大部分を持去り、唯一の不動産である抗告人居住の家屋をも自己の所有にしようと企図したのであるから、本件申立は不純の動機に出でたものである。

よつて、原決定を取消し、相手方の申立却下の裁判を求める。

というのにある。

案ずるに、原決定は、未成年者忠悦及び悦子の親権者である抗告人が、昭和二十二年中から○野○太なる者を同居せしめ、これと情交を継続し、遂に妊娠し、昭和二十三年二月中女兒を分娩した事をもつて直に抗告人に親権者として著しい不行跡あるものと認定し、相手方の申立を容れて、抗告人に対し、親権喪失宣告の決定をしたものであること審判書の記載に依つて明である。

しかし乍ら、親権を行う母がその夫の死亡後、偶々他の男子と情交を継続して子を生むに至つたことは、親権者として一応非難に値する行爲であることを免れないけれども、これをもつて直に親権喪失の原因である著しい不行跡に該当するものといふことは出來ない。けだし、親権喪失の原因である著しい不行跡とは、親権者の素行が甚だしく不良であるために、子をその親権の下におくことが子の不利益となる場合をいうのであるから、單に親権者の行爲だけでなく、その行爲をするに至つた事情及びその後の経過、その他諸般の事情を斟酌してその行爲のために子の利益が害されるかどうかによつてこれを定めなければならないものといはなければならないからである。しかるに原決定はこの点について何等説明するところなく、單に親権者である抗告人の前記行爲について、これを親權喪失の原因である著しい不行跡に該当するものとしたのは早計であることを免れない。しかも抗告人の当審において提出に係る本莊家事審判所昭和二十三年(家イ)第一八号調停調書謄本の記載によると、その後抗告人の申立により昭和二十三年七月三十日同家事審判所において抗告人と相手方との間に調停成立した結果、前記未成年者等のために新に財産保全及び養育方法が定められると共に、相手方は抗告人に対する本件親権喪失の申立を取下げることを確約した事が認められるが、かような事情も亦現在なお抗告人に対して親権喪失の宣告をすることが相当であるかどうかを判断するについて斟酌すべき重要な事柄といわなければならない。

よつて、本件抗告は理由があり、原決定は取消すべきものと認め、家事審判法第八條、家事審判規則第十九條第一項により、主文の通り決定する。

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