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仙台高等裁判所 昭和24年(を)447号 判決 1949年11月08日

被告人

大沼寅治

外一名

主文

被告人藤島嘉孝の控訴及び原判決中同被告人に対する部分の原審檢察官の控訴は各棄却する。

原判決中被告人大沼寅治に対する部分は之を破棄する。

被告人大沼寅治を禁錮六月に処する。

本裁判確定の日から参年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用中原審証人藤島吉郞右衞門に支給した分は被告人大沼の負担とし、その余は被告人両名の連帶負担とする。

理由

原審が認定した被告人大沼寅治の所爲は時と場所とを異にし異なる相手方に対して別々に原判示村長選挙立候補の断念を勧告したというのではあるが、それは右選挙において候補者高橋新助を当選せしめるため、対立競爭者の立候補を阻止しようという單一の計画の下に同じ日に午後六時頃には中鉢幸吉に、午後七時頃には藤島吉郞右衞門に、しかも同じ家の單に室を異にした場所においてなされたものであるから、選挙運動としては之を包括して一個の行爲と解するのを相当とする。從つて原審が被告人大沼の右所爲を二罪として、併合罪の規定を適用したのは誤りで、この違法が判決に影響を及ぼすことは明白である。原判決中被告人大沼に対する部分は破棄を免れない。

控訴趣意

五、原判決は擬律錯誤の違法があり破毀せらるべきである。即ち被告人寅治に判示第一及(昭和二二年勅令第一号第一六條第一項第七号第十五條違反)第二の如き事実があつても同人の斯る所爲は所謂政治上の活動であり包括的一罪と見るべきである。從て同被告人の斯る所爲に対し刑法第四十五條同第四十七條、同第十條を適用した原判決には擬律錯誤の違法があり破毀せらるべきである。

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