仙台高等裁判所 昭和25年(う)398号 判決 1950年11月02日
被告人
文山義雄こと
崔衡根
主文
本件控訴を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
弁護人横山敬教の控訴趣意第一点について。
本件の起訴状には公訴事実として、被告人は法定の除外事由がないのにかかわらず、昭和二十五年一月中旬より二月十日頃までの間六回位にわたり肩書自宅において安達栄に対し「花春」の模造レツテルを貼付せる密造酒合計二十四本(二石四斗)を一本三百八十円にて販売したるものである、と記載している、弁護人はこれを以て、各売渡の所為が一罪を構成するものであり、結局右は併合罪の起訴である旨主張するけれども、起訴状の右被告人の所為は、継続、集合的なものであることが予期される性質のものであるから、包括して一個の犯罪を構成するものと解すべきであり、売渡の個々の所為が独立の一罪を構成するものであるとは解せられない。かく解する以上、その各個の所為の日時、内容を必ずしも特定する必要があるものでないことは論なく、従つて起訴状が罪となるべき事実を特定していない違法があるとはいい得ないし、原審が包括一罪と認定したのはもとより正当である。