大判例

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仙台高等裁判所 昭和25年(う)800号 判決

要するに所論は原審検察官が刑事訴訟法第三百条の規定に基き同法第三百二十一条第一項第二号所定の書面の取調請求した場合においては裁判所は一応該書面の証拠能力を取調べ然る後断罪の資料となすべきや否やを判定しなければならないのに原審判事は弁護人の意見を聴いたのみで決定をもつて直ちに検察官が取調べを請求した原田庄一、鈴木源七、山岡三男治、宮川福松等の検察官並びに検察官事務取扱検察事務官の面前においてなした供述調書の取調べ請求を却下したのは採証の法則に違反するというのであつて記録を査閲するに原審第七回公判調書の記載によれば原審検察官は「刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号により(記録中刑事訴訟法第三百二十一条第二項とあるのは第三百二十一条第一項第二号の誤記と認める)原田庄一、鈴木源七、山岡三男治等の各検察官や検察事務官に対する供述調書の取調べを請求した(検察官は宮川福松に対する検察事務官の供述調書を被告人の同意があれば取調べを請求すると述べたことはあるが同人の同調書又は検察事務官の調書について刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号に基く取調べを請求した証跡はない)のに対し原審判事は弁護人より右取調請求については異議がある旨の意見を聴いた上該書面の取調請求を却下した事実を認められる。しからば右の決定は採証の法則に違反する違法のものであるか否かを調べてみるに、刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号は、検察官の面前における供述を録取した書面(検察官事務取扱検察事務官も検察官の中に包含されるものと解する)が証拠となるには、一、公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異つた供述をしたとき、二、但し公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限ると明定しているので検察官の供述調書が是等の条件を具備しているかどうかを判定するには其の内容を取調べ比較検討して始めてなしうるものであるから刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号後段に規定する証拠能力の条件は一応検察官の見解に委ねる外なく従つて検察官が同法第三百条の規定に基き証拠調の請求をした場合には裁判所は必ず之を受理して該書面の取調をしなければならないものであろうか当裁判所は然らずと断ぜざるを得ない。

何とならば、若し裁判官が事案の如何にかかわらず証拠の採否決定前に証拠の内容調査をすることを要するものとしたなら其の採否前に既にそれによつて心証を動かされる危険を招来することは必然である。

(中略)

なお刑事訴訟法第三百条に関する所論について、同条は同法第三百二十一条第一項第二号後段の規定により証拠とすることが出来る書面について検察官に其の取調を請求する義務を命じている規定であつて右供述書を取調べるか否かは裁判所の権限に委せられ裁判所を義務づけるものでないことは勿論である。前説示のとおり信用すべき情況にないことが認められる検察官の面前における被告人以外の者の供述録取書の如きは裁判所において取調請求を認容するの限りでないこと言を俟たないところである。

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