大判例

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仙台高等裁判所 昭和25年(ネ)134号 判決

控訴代理人は「原判決を取消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は主文第一項同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人において、

本件田地を返還したのは指定期日以後の昭和二十一年になつてからであり、従つて昭和二十年中は訴外千石惣蔵が耕作権を有していたのである。」と陳述した外、原判決事実摘示と同じであるからここにこれを引用する。(立証省略)

三、理  由

逢隈村農地委員会が被控訴人所有の別紙目録記載の田地につき、訴外千石惣蔵の請求により昭和二十年十一月二十三日を買収基準時期として昭和二十三年九月六日買収計画をたて、同日その公告をしたこと、被控訴人が右に対し同年九月十六日異議の申立をしたところ同年十月七日右委員会より却下され、その決定書が同月十日被控訴人に交付されたこと、被控訴人が同月十九日更に右決定に対し被告に訴願したところ同年十二月二十七日訴願は成立たないと裁決され、その裁決書が翌昭和二十四年一月十八日被控訴人に送付されたこと、被控訴人が訴外千石惣蔵に対し別紙目録記載の(一)の田地を昭和十一年に、同(二)の田地を昭和十四年に賃貸小作させたことは当事者間に争がない。被控訴人は本件田地は昭和二十年十月上旬右千石惣蔵より合意解約の上返還を受けた旨主張し、控訴人は千石惣蔵が本件田地を返還したのは昭和二十一年になつてからであると主張して争うから、この点につき判断する。原審証人斎藤義作の証言と当審における被控訴人本人訊問の結果とにより真正に成立したと認め得る甲第三号証、原審証人阿部武、斎藤義作、伊藤チヨ、当審証人渡辺初蔵の各証言並びに原審及び当審に於ける被控訴人本人訊問の結果を総合すれば、被控訴人は戦時中企業整備により祖先伝来の家業である酒造業を廃業し他に正業なきまま終戦となり、且つ応召中の三男仁三、二男仁郎が終戦直後の昭和二十年九月中旬迄に相次いで復員して来たため、同人等の希望も考慮した結果、従来小作地としていた農地を回収し、その一部は同人等に与え、以てそれぞれ自作して自活の途をたてようと考え、昭和二十年九月下旬頃千石惣蔵に対し右方途を告げて本件田地の返還を求めたところ同人も直ちにこれを快諾し同年度の稲作刈取完了と同時に返地することにしたことを認めることができる。原審証人千石惣蔵、千石克己、原審及び当審証人伊藤伝の各証言中右認定に反する部分は措信できないし、その他には右認定を左右するに足る証拠がない。しかして原審証人清野一馬、伊藤チヨ、千石克己、当審証人渡辺初蔵の各証言及び当審における被控訴人本人訊問の結果を総合すれば昭和二十年度における本件田地の稲刈はおそくとも昭和二十年十一月上旬頃迄には完了したものと認められるから、被控訴人と千石惣蔵間の本件田地を目的とする賃貸借関係は、前認定の合意解約により、少くとも同年十一月二十三日(基準日)以前に終了したものというべきである。これに反する原審証人千石克己原審並びに当審証人伊藤伝、当審証人小野鶴治の各証言は当裁判所の措信しがたいものであつて、他に右認定を覆すに足る証拠がない。さすれば指定期日である昭和二十年十一月二十三日現在においては、本件田地は千石惣蔵の小作地ではないのであるから、訴外逢隈村農地委員会がこれを千石惣蔵の小作地なりとしてたてた買収計画及びこれを維持して被控訴人の訴願を棄却した控訴人の裁決は共に違法である。

なお被控訴人が本件において右訴願棄却の裁決及び買収計画の取消を求めるのに対して、控訴人は買収計画の取消までも求める必要はないと主張するのであるが、右裁決を取消す判決が確定すれば、この確定判決はその事件について関係の行政庁を拘束し、関係行政庁はその事件について右確定判決の趣旨に反する行政処分をすることの許されないことはいうまでもない。しかし本訴において被控訴人が右裁決の取消を求める理由は要するに買収計画の違法を根幹とするもので両者の取消を求める原由は共通であつて、かような場合に裁決の取消と同時に買収計画の取消を求めることは、事態をより急速明確に解決するに役立つものということができる。即ち裁決の取消とは別個に買収計画の取消を求める法律上の利益がないものとはいえないから、控訴人の右主張は採用し得ない。

以上により訴外逢隈村農地委員会が昭和二十三年九月六日別紙目録記載の田地につき、たてた買収計画及びこれに関し被控訴人のした訴願に対し控訴人がした却下の裁決の取消を求める被控訴人の本訴請求は正当であつて、これと同趣旨の原判決は相当であり本件控訴は理由がない。よつて民事訴訟法第三百八十四条第九十五条第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 谷本仙一郎 猪狩真泰 小嶋作)

(目録省略)

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